モノクロの世界   作:琲世。

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ウルside

ウルside

 

少年達に能力説明を終え、俺はいつもの場所でくつろいでいた

 

椅子に揺られながら無糖の珈琲と本を読む

 

ウル「やっぱりここが落ち着くな

しかし、まあこのモノクロの世界にも慣れたもんだ」

 

最初は違和感ありまくりだったが、今では気にもしなくなったなこの景色にも

 

棚にはたくさんの本が並び種類も恋愛、ホラー、ミステリー、ラノベ、ファンタジー、SFと色々だ

 

因みに今読んでいるのはミステリーだ

この「心霊探偵◯雲シリーズ」は最高だ

特にこの物語の主人公である八雲、彼がとにかく面白いんだよな

 

快斗「丁度良かった!ウル、ここどこなんだよ?」

 

ウル「……」

 

快斗「あれ?聞こえなかったのかな

ねえねえ、ウル。ここどこかわからない?」

 

ウル「………」

 

快斗「も、もう無視するなんて酷いぞー!

冗談はいいからさ、ここがどこか教えてよ」

 

ウル「…………」

 

快斗「ちょっと俺の話聞いてる?!ねえ!ウルってば!…ま、まさか俺の姿がコイツには見えてないのか」

 

ああ、読んでしまった。次で最終巻か名残惜しい気もしてしまうがこれを読まなくちゃ今日は眠れない!いいところで終わっていたからな続きが気になって気になってさて、読むぞ

 

快斗「あは、あはは。

 

……ちょっと?!ちょっとウル、ねえ?!俺のこと見えてる?!見えてるんだよね?!こえ、声もちゃんと聞こえてるんだよね?!その上で無視をしてるだけなんだよね?!そうだよね?!」

 

ウル「さっきからうるさいな、マジック少年の声は聞こえてる。わかってて無視をしてるんだ。全くせっかくの読書の時間を邪魔しないでくれ」

 

快斗「そ、そうだよな。ごめんごめん」

 

はあ、全くせっかくの読書タイムを邪魔されたくないものだ。さて、どこまで読んだっけな?珈琲を一口飲み本を読み進めようとした所で、ピタリと手を止める。そして、我に返ったように読んでいた本を乱暴に閉じ、目の前にいるマジック少年を凝視する

 

ウル「な、なな、なんでマジック少年がここにいる?!お、お前ここに何しに来た?!いや、そもそもどうやってこの場所に来た?!」

 

二度、三度とマジック少年を見てあまりの驚きに椅子から転げ落ち、尻餅をついたままわなわなとマジック少年を指差しまるで幽霊でも見たかのような眼差しを向ける

 

快斗「いや、今驚く?!俺さっきから声をかけてたんだけど!!つーか、それは俺が聞きたいくらいだよ!!ここは一体どこなんだ?」

 

ウル「ほ、本に、本に集中してて気付かなかった

ここは新一の精神世界だ。普通はオレ達以外立ち入れないはずなんだ。この場所には」

 

倒れた椅子を起こして深く腰掛け、貧乏揺すりをしながら呟く。ああ、それにしてもびっくりした。今でも心臓がバクバクしてる

 

快斗「なるほど、なんとなくそう思っていたけどやはりか。にしても、珈琲と読書って似合わないな」

 

珈琲を持つ手が震え俺は仕方なくカップをテーブルに置きそれを悟られないよう、できるだけかっこよく努める

 

ウル「ふん、余計なお世話だ。オレはお前より本を読んでると思うが?それにこの珈琲はブラックだ。おこちゃまなお前には飲めんだろ?クククッ」

 

よし決まったな、さっき震えた拍子に珈琲をこぼして熱くて叫び声をあげそうになったが、どうやらそれにも気付いてないようだな。グッジョブ、俺。

 

快斗「いやブラックかどうかなんて聞いてないから?!それに、おこちゃまは余計だ!俺だって頑張れば飲めるし!」

 

ウル「へえ、そうなんだ。飲めるんだ~、へえ~」ニヤニヤ

 

快斗「ホント嫌味な奴。

 

あ、そうそうずっと不思議に思ってたんだけど、なんで新一の精神世界はモノクロなんだ?」

 

周りをキョロキョロと見渡しながら首を傾げるマジック少年に俺もさあね、というように肩をくすめる

 

ウル「さあな。それはオレにもわからないんだ

色を付けたくてもつかないのさ。ほら、このリンゴもこの通り」

 

能力によって出てきたりんごは、熟れた真っ赤なりんごではなく色のないりんごだ

 

快斗「ほんとだ。色がない」

 

ウル「だろ?でも、味は変わらず美味いがな」

 

ほれ、と言ってマジック少年にりんごを投げる

それを上手くキャッチして、がぶりと齧り付く。

「な?美味いだろ」と問いかければ頷く

 

快斗「うん、普通に美味い」

 

ウル「ククッ、だろ?

まあせっかく来たんだ。この世界を案内しよう」

 

よいしょ、と言って椅子から立ち上がり大きく伸びをする。本に栞をはさみ本棚に直してマジック少年と向き合う

 

快斗「それは助かる。俺も色々歩き回ってたんだけど迷子になりそうだったんだ」

 

ウル「…そう言えばオレからもお前に聞きたいことがある。ここにはどうやってきた?ここにきて時間はどれくらい経った?」

 

矢継ぎ早になってしまったが、重要なことだからな

今までこんなことが無かっただけに、少しの不安を覚える

 

快斗「さあ、目を覚ましたらもうここにいたんだ。時間は…一時間はもういるんじゃないかな。多分」

 

一時間か、案外経ってるな。それだけ読書に集中していたってことか、俺は。マジック少年の心の声が滝のように流れこんでくるのを感じながら顎に手を添え考える

 

ふむ、考えたって時間の無駄だな

そもそも俺だってこの世界の仕組みを全て知っているわけでもない。

だから、きっと今日マジック少年がきたことにも何か意味があるんだろう

 

ウル「なるほどな。何故マジック少年がこの世界に来てしまったのかはわからない。が、この場所に来たってことは、なにかしらかの理由があってきたんだろう

 

それに、新一の強さをお前が一番知ってるはずだ」

 

まあ、心配することはない、とマジック少年の肩をポンッと叩いてグッと親指を上げる

 

快斗「ウルって、優しいよな」

 

それにしみじみした様子で呟くマジック少年に俺はそうか?と首を傾げる

 

ウル「え、何、今更気付いたの~?

オレ、根は良い奴だから!そう、優男なのさ」キラッ☆

 

キラッ☆という効果音のあと渾身のキメポーズをする俺にマジック少年は何故か哀れみの目を向け無言で俺の肩にポンと手を置く

 

ウル「ちょっ、ちょっと待った!!

なんで今オレがスベったみたいな雰囲気になっている!」

 

快斗「いや、大丈夫。あるよな、そういうの」

 

ウル「なにが?!おい、なにが大丈夫なんだ!!」

 

快斗「まあ落ち着けって。

わかるよ、わかる。若気の至りみたいなさ」

 

うんうんと頷いて「ドンマイ」と背中を叩かれたが全く意味がわからない。そんなに俺はおかしなことをしていたのか?

 

ウル「オレ、そんなおかしいこと言ったかな」

 

快斗「いや、まあそう気にするな。

ほら、それより案内してくれるんだろ?」

 

ウル「むっ。そうだな、マジック少年が目を覚ました時周りの景色はどんなとこだった?」

 

快斗「…サイレン世界」

 

ウル「サイレン世界?」

 

快斗「そう。サイレン世界に似てた

でも、似てるってだけで違うんだよなー

なんていうか、建物の造りもだけどサイレン世界は荒れ果てた土地って感じで、ここは草花もある空には雲が浮かんでいて全部モノクロだけどでも全然違うんだ」

 

そう呟いて空を見るマジック少年につられ俺も空を眺める。どこまでも続く空は今日も曇天模様

 

ウル「なるほど、彼処か。

新一の精神世界は記憶や思い出なんかを具現化したものが多い。だから、大半がサイレン世界にどこか似てる」

 

快斗「へえ、だからどこも見たことある景色なのか!」

 

ウル「まっ、そういうことだな」

 

そんなことを喋りながら歩いていると、上に上に続く階段を見つける。

左には心臓破りの坂が右には森が茂って砂利道が広がる

 

ここは、初めて来た場所だな

もしかして、マジック少年がきたことで少し影響をうけたのか?

 

快斗「…これは、どこに進むべきなんだ」

 

ウル「ふむ、知らない内にこんな階段があったとは。左の坂には色んな仕掛けがある、遊び半分で踏み入ると死ぬぞ。右の森にはまあそうだな、オレが遊ぶ為に離したトラやライオン、クマなんかがいる」

 

左の坂には色々あったな、 マジック少年といったら面白いかもしれないな。ひとつひとつの反応が面白いし何かあれば俺だけ逃げて高みの見物ってのもいいな

 

快斗「ちょ、ちょっと待った?!今聞き捨てならない言葉があったぞ!!おまっ、動物を放置してるのか?!」

 

ウル「仕方ねえだろー?ここにいたら退屈なんだもん。だから遊び相手に色んな動物をだしてじゃれあってた」

 

ほんといろんな動物とじゃれあってたな。チーターとおいかけっこもしたっけ、あれはやばかったな。チーター超速いんだもん。危うく捕まって喰われるかと思ったよ。まあ、殺られる前に殺るがな

 

快斗「じゃれあうって、お前な」

 

ウル「え、なに?どうじゃれあってたか聞きたいって?仕方ねえなー、マジック少年ってばほーんと聞きたがりなんだからー!」

 

快斗「いや、誰も聞いてねえから!

 

それより、この階段を登ってみようぜ!

なんか、探検してるみたいで楽しくなってきた」

 

ウル「お、マジック少年もわかってきたか!

ならば、早速登ってみよう!さあ、行くぞマジック少年!オレについてこい!」

 

冒険だ冒険だ!と言って右手を腰に左手を天にかかげ意気揚々と階段を進んでいく

 

快斗「で、ウル隊長これからどうします?」

 

ウル「んー、そうだな。

まっ、とりあえずこのまま進んでみよう!」

 

快斗「了解であります!」

 

ビシッと敬礼をするマジック少年を横目にどんどん階段を上っていく

 

ウル「うーむ、まるで何も無いな」

 

快斗「そうですねー。階段の周りは壁で囲まれてるようですし。このまま進んでいきますか、隊長?」

 

ウル「あったりまえだろ、隊員!このまま進むぞ!」

 

隊長呼びにも慣れてきた頃、俺はふと足を止める。

むむっ、これは何かのスイッチか?

[押したら、殺す]ってハハッ、地下室にある張り紙に似てるなコレ

 

ウル「…押すなって言われると押したくなるってのがヒトの心理だよなー」

 

スッとスイッチに手が伸び、押す直前ピタリと手を止める。

 

…よくあるパターンだが、こういうスイッチを押すと落とし穴に落ちたり鉄球が転がってきたりするよな。

 

ウル「…殺す、ねえ。ふっふふ、面白れえ

殺れるもんなら殺ってみろ」ポチッ

 

ふん、やはり何も起こらないじゃないか

つまらねえな。まあ、一応この紙は回収しとくか

マジック少年には…、言わないでいいだろ。

何かあればその時は…クククッ。高みの見物ってのもありだな

 

ウル「おーい、マジック少年!

なにやってんだー、おいてくぞー!」

 

快斗「はーい!今行く!」

 

マジック少年に声をかけ、ポケットに手を突っ込み背を向け階段をのぼっていく

 

快斗「なあ、ウル」

 

それから、15分ほど歩いた頃

マジック少年に声をかけられ俺は足を止め振り返る

 

ウル「ん?どうした、マジック少年?疲れたか?」

 

首を傾げる俺に「ううん」と首を横に振り、告白前の女子のようにモジモジとして俯き小さな声であのさ、と口を開く

 

快斗「あの時言った事、覚えてるか?」

 

ウル「あの時?」

 

快斗「うん。俺が新一を助けたいって話したこと」

 

ウル「ああ。あの時か

マジック少年が声も出ないくらいにビビってた時な」

 

俺はその時のことを思い出し、ニヤニヤと口元を歪めマジック少年を見る。いやー、あの時のマジック少年は面白かったな~、クククッ

 

快斗「ちがっ、いや違くはないけどお前から言われると腹立つ」

 

ウル「ハハッ、でもめちゃくちゃビビってたじゃねえか」

 

今思い出しても、あれは傑作だった

マジック少年にバレないよう、こっそりその時の動画を撮っていたが「ぷっ、ふふ」ああ、やばいやばい。ついその時のことを思い出して笑ってしまった

 

快斗「うるさいなー!それはいいんだよ!」

 

ウル「ふっくく。悪かったよ

で、それがどうしたってんだ?」

 

よいしょ、と階段に腰掛け有幻覚によって出した、たい焼きをもしゃもしゃとほうばる。

 

マジック少年にもたい焼きをと思ったが、そう言えば魚嫌いだったけ?と思い出し悩んだ末、青リンゴを出しほれ、と投げる。それを「おっとと…!!」と手のひらで転ばせ、両手で受け取り階段に座る

 

快斗「サイレン世界のことをもう少し詳しく聞いときたいんだ」

 

ウル「サイレン世界のこと、ねえ。

と言ってもほとんど話しちまったからなー

他に話すことと言っても、そうさな…うーん。」

 

快斗「じゃあ、サイレン世界に行ったら能力を持てるようになるんだろ?」

 

ウル「まあ、そうだな。でもそれは運がいい奴だけだ。おまえも行ってわかったろ?あそこがどんな場所か」

 

それに、マジック少年はその時のことを思い出しているのか視線を足元に落とす

 

ウル「それでもお前は行きたいのか?

あの時は運が良かった。オレ達がお前を助けたから死ななかったものの、次もオレ達がお前を助けるかなんてわからない。いや、その前に死んでるかもな。クククッ」

 

ニタァと黒い笑みを浮かべる俺に、マジック少年は苦笑いを浮かべる

 

快斗「ああ、わかってるよ

俺がもう一度あの場所に行って、生きて帰る保証なんてない」

 

ウル「どうしてそこまでしてサイレン世界に行きたがる?新一を助けたいからか?そうだとしたら、お前死ぬぞ」

 

それに、新一を助けるのはこの「俺」なんだからな。ここ重要

 

快斗「もちろん、新一を助けたいからってのが一番さ。でも最近思うんだ、自分の身は自分で守らなきゃって。いつまでも、新一やウルに助けられてばかりもダメなんだって」

 

は?何言ってんだこいつ。俺がお前を助けてるって?

 

ウル「ふん、別にオレはお前を助けてるつもりはないがな」

 

だって、マジック少年が死んじまったら色々つまらなくなるだろ?少年をいじめるのも楽しいがマジック少年も反応がいちいち面白いからな。それに、いづれ能力開花する時があるだろうし、その時遊び相手がいないとつまらないからな

 

快斗「はいはい、わかってるって」

 

むっ、なんだコイツ。何にやにやしてんだ

ムカつく顔をしていたので、べシッと無表情で頭を叩く

 

快斗「痛っ?!ちょっ、いきなり殴る?!」

 

ウル「あ~ごめんネ~?いや、でもさほらお前が変なこと考えてたもんだから。シカタナイヨネ」

 

ニッコリと満面の黒い笑みを浮かべれば

 

快斗「ハイ、ソウデスネ。スミマセン」

 

土下座をする勢いで謝るマジック少年に俺は黒い笑みを浮かべながら、有幻覚によってマジック少年がこの世で一番恐れる“アレ”を両手に持つ

 

恐る恐る頭を上げるマジック少年は俺の両手に持っているものを見て、ピタリと動きを止める

 

快斗「う、うう、ウルさんその両手に持ってるものは」

 

ウル「あ、これ?

見てわからない?魚だよ。さ か な」

 

語尾にハートが付きそうな口調でいってにんまりと笑みを浮かべる。ぷるぷると顔を真っ青に染めて俺の手に持つ魚を凝視するマジック少年

 

ウル「ククッいいだろ?これ

刃物ってのはさ、外面しか傷付けることができないだろ?でも、コイツはお前を精神的に痛めつけることが出来る。なあ?最高だろ」

 

最高だろ?と笑みを浮かべる俺に「ヒッ」と悲鳴をあげるマジック少年。おいおい、そう怖がるなって?大丈夫、俺はとーっても優しいからそんな酷いことはしないさ…ふふふ。

 

快斗「それだけは勘弁してください。本当お願いしますから。マジでお願いしますよ!ウル様ー!アビスちゃんとのデートプランたてるから、ね!」

 

ウル「なんだと?!本当だな!絶対だぞ!約束だからな!アビスの姉ちゃんとのデートプランをたてるって、破ったらお前の部屋いっぱい魚で埋め尽くすからな」

 

たくさんの金魚鉢でマジック少年を囲ってやる

 

快斗「ああ、約束は守る。

だから、それを早く直してくれ!」

 

仕方ねえな、パチンと指を鳴らし魚が消える

ふふ、アビスの姉ちゃんとデートか!

楽しみだな、何しようかなー?

やはりまずはレストランに予約を入れ、女の子はデザートとか好きだから美味しいケーキ屋さんを予約して、その後は映画、水族館、動物園、いや遊園地なんかもいいかも!

 

ウル「あ、そう言えばマジック少年って絵描くの得意だったよな?」

 

前なんかメモ帳に書いてた絵を見て上手だった覚えがあるが、マジック少年だったよな多分。

 

快斗「ん?いや、まあ得意って程でもないけど。なんで?」

 

ウル「んー、いやちょっと面白いものがあってな」

 

パチンと指を鳴らし、キラキラとした透明のペンと髑髏のついたノートを出す

 

快斗「なにそれ?」

 

ウル「これはファンシーノートと言って、このキラキラした透明のペンとノートを使う能力だ !

 

使い方は簡単!このノートにこうして絵を描き…

それをちぎって投げる。そしたら、あーら不思議!こうして実体化するわけだ」

 

……うん、まあ。俺にしては上手く書けたのでは!俺の両手に握られるのは、魚の双剣だ。うわ、なにこれ自分で描いたのはいいけど気持ちわるっ

 

快斗「うわぁ、なんだそれ。もうほんとお前嫌い」

 

ウル「ハハッ、まあそういうなよ

ほれ、お前にやるよ。オレからのプレゼント」

 

快斗「え、俺にくれるの?!やったー!」

 

相当嬉しかったのか子供みたいに、ぴょんぴょん飛び跳ねてその場でくるくる回る

 

ウル「試しになんか描いてみれば?」

 

ぱああっと顔を輝かやかせ「うん!」と返事して、サラサラとノートに何かを描いていく

 

快斗「できた!」

 

出来たと言って、ノートから出てきたのは手のひらサイズの小さな小さなうさぎだ

 

快斗「え、ちっちゃ?!」

 

ウル「ぷっ、あは、あはははは!!

なんだよそれ!あはは!なにその小さなうさぎ!あははっ、面白すぎ!!」

 

描いたうさぎは、マジック少年の手のひらでぴょんぴょん跳ねてちょこんと座る

 

腹を抱え笑う俺にムッとした表情をするマジック少年。いやいや、それを見て笑わない奴なんていないぞ!まあ。まだ、慣れてないからだろうが、それはあまりに…ぷっ、ふふっ

 

快斗「いいんだよ!

手のひらサイズのうさぎって可愛いだろ!」

 

ウル「はいはい、可愛い可愛い(棒)

 

さーてと、そろそろ行くか!まあ、なんだ新一を助けるどうかはこのあとにしようや。今は冒険を楽しもうぜ?なかなかこういう経験はねえんだからよ」

 

快斗「そうだな、まだまだ知りたいこともたくさんあるし。さ、冒険再開だ!」

 

ウル「さあ、行くぞ!マジック少年!」

 

快斗「おお!ウル隊長!!どこまでもついて行きます!」

 

あれからどれくらい歩いただろう?

いい加減頂上についてもいい頃だというのに…

マジック少年も何か違和感を感じるところがあるのか足を止め考え込むように顎に手をやる

 

ウル「どうした?マジック少年?」

 

快斗「…やっぱりそうだ。さっきから何かおかしいと思ってたけど、ここ少し前にも通ってる」

 

ウル「は?まさか、んなわけ」

 

何言ってんだコイツ、とでも言う顔をする俺に、マジック少年は首を横に振り冗談じゃないぞって真面目な顔をする

 

ウル「てことはつまりなんだ

オレ達はずっと同じ所を歩いていたと?」

 

快斗「そういうことだな。これ見て」

 

ウル「ん?これはなんだ?」

 

壁には石で書いたのか☆印がかかれている

さっきから何をしていたのかと思えば、目印をつけていたのか。流石、というべきか

 

快斗「目印をつけてたんだ、道に迷わないように

で、この☆印の目印これは10段目につけたやつなんだけど」

 

ウル「つまり、最初の場所に戻ったと」

 

快斗「そうなるな」

 

ウル「まじかよー。いや、変だと思ったんだよな

歩いても歩いても頂上につかないからさ」

 

はあ~、疲れた。と言って階段に座る

しかし、困ったな。てことはつまりこの階段は無限階段的なものだろ?いやー、困ったな。ほんと困った

 

ウル「くっふふ、ワクワクが止まらねえ」ニヤニヤ

 

ひとりごとのように呟いて慌てて口元を隠す

マジック少年に見られたら「何、ニヤニヤしてんだ!こんな時に!」とか言われそうだからな

 

快斗「壁に阻まれていること…、ん?」

 

ウル「なんだ、今度はどうしたマジック少年?」

 

全く今度はなんだっていうんだ。

別に変わったことなんて

 

 

ギギッ‥ギギギッ…

 

 

ウル「ん?なんだ?なにか今聞こえたような」

 

快斗「…なあ、俺の見間違いかな?なんかこの壁動いてない?」

 

は?んなバカな

壁が動くなんてことあるわけ…

 

ウル「…動いてるな」

 

快斗「動いてるよね。狭まってきてるよね」

 

ウル・快斗「「…………」」

 

2人で無言&無表情でジッと顔を見合わ、猛ダッシュで階段を駆け上がっていく

 

快斗「ど、どど、どうしよう?!

やばくない?!やばいよね?!」

 

ウル「うるさい!今どうするか考えてる!!

とにかく今は上へ上へ走るぞ、マジック少年!!」

 

快斗「わかった!!」

 

マジック少年の前を行くように階段を駆け上がっていく。

 

ウル「ふ、ふふふ」

 

きたきたきたー!俺が望んでいた展開通りだ!

やっぱり冒険はこうじゃなくっちゃな!少しのスリルがあるほうが燃えるってもんだ。一体どうして壁が動いたのかわからないが、まあいい!今は存分に楽しませてもらおう

 

全力疾走しているマジック少年の前でジョギング程度に階段を駆け上がる俺は、息をきらすことなくどんどんマジック少年との距離を遠ざけていく

 

ウル「…足音が聞こえなくなったな」

 

先程まで聞こえてた足音がピタリと止み、俺はその場で立ち止まり後ろを振り向く

 

ウル「おい、マジック少年!何立ち止まってる!」

 

俺より5~6段下に、膝に手を置き激しく咳き込むマジック少年の姿が視界にうつる

 

声をかけても聞こえていないのか、それとも返事をする余裕さえないのか、俺の声にかぶさるように口を開く

 

快斗「はあはあ、はあ…。ごめっ、ん。先行ってて

後から追い付くか「チッ、クソッ」ちょっ、え?!ウル何して」

 

チッと舌打ちして、俺はマジック少年の元まで降りまるで幽霊でも見たかのような表情をするマジック少年をおんぶし階段を駆け上がっていく

 

ウル「うるさい!黙ってろ!お前がいなくなったら誰がオレとアビスの姉ちゃんのデートプランをたててくれる!マジック少年には絶対その約束を守ってもらう、いいな!」

 

アビスの姉ちゃんとのデートを無駄にしてたまるか!それにこんなとこでくたばられたら困るんだよ。さっきも言ったように、遊べなくなっちまうだろ?

 

快斗「やっぱウルってツン「それ以上言ったら放り投げるぞ」ゴメンナサイ。でもありがとう、絶対約束は守る」

 

マジック少年からの心の声が流れ込み「放り投げるぞ」と脅しをかければ、ロボットのように「ゴメンナサイ」と片言で言って黙り込む

 

ウル「はあ…。しかし参ったな、マジック少年の言う通りであればこの無限階段から逃れることはできないぞ。加えて壁まで動き出しってなると」ウキウキ

 

快斗「いやいやいや、何この状況でウキウキしてんの?!」

 

ウル「いやいや、こういう状況だからこそ血が騒ぐってもんだろ?」

 

快斗「いや、意味わかんないから」

 

呆れたように言うマジック少年を気にすることなく階段をあがっていく。

 

ウル「しかしまあなんでいきなり壁が動き出したんだ。…あ。」

 

あ、と声をだしピタリとその場に固まる

マジック少年を地べたに下ろし、俺は申し訳ない表情でマジック少年を見る

 

快斗「??え、なにどうしたの?」

 

ウル「いや、えっと、ごめんこれオレのせいかも」

 

多分、ていうか絶対あの時の「アレ」のせいだよな

 

快斗「え?どういうこと?」

 

あー、やっちまったな。マジック少年怒るよな

俺は思い当たる節のある「アレ」をポケットからとりマジック少年にみせる

 

快斗「……これ、もしかして押しちゃった?」

 

ウル「押しちゃった」

 

快斗「まじか」

 

ウル「うん」

 

快斗・ウル「「………」」

 

二人の間に暫しの沈黙が流れ

 

快斗「っておいいいい?!何してくれてんのお前?!もう、絶対これじゃん!!これ以外考えられないじゃん?!なんで、押しちゃうかなー!!バカなの?!ねえ、バカなの?!」

 

ウル「いや、だって「押すな」とか書かれてたら押したくなっちゃうだろ?!それがニンゲンってもんだろ!!」

 

マジック少年の激しいツッコミに反撃するように口を開けば、呆れた眼差しを俺に向ける

 

快斗「確かにその 気持ちわからんでもないが[押したら、殺す]って書いてあるんだから押しちゃいけないことくらいわかるだろ!」

 

ウル「いやいやいや!「殺す」って書いてあったら押しちゃうだろ!「いや、なんで?!」だって、明らかにオレを挑発してるじゃねえか!うられた喧嘩はかう!お約束だろ!」

 

「マジで、何言ってんだこいつ」

っていう心の声が聞こえてきたが、俺じゃなくてもこの貼り紙みたら押すぞ!新一や少年なんかは100%押す

 

ウル「問題はこれを書いた奴が誰かってことなんだが…って何してるんだ、マジック少年?」

 

俺があげた「ファンシーノート」を使って何かを書いている。しかし、まあ絵を描く才能はあるんだな

これはこれで…クククッ。イタズラを思いついた子供のような笑みを浮かべる俺にマジック少年は気付くことなく絵を描いていく

 

快斗「ん?ちょっとね。試してみたいことがあって

…っと、よしかけた。うん、これくらいの大きさなら大丈夫かな」

 

ウル「ほー、これはまた巨大な風船だな」

 

ノートには人一人分は飛べるくらいの風船が二つ。

一つをマジック少年にもう一つを俺に手渡す

 

快斗「多分これで空を飛べるはずだ

このせまる壁と無限階段から逃れる手はこの他にない」

 

ウル「へえ、すごいな

さっきの短時間で考えたのか?」

 

単純にすごいと思う。そういうところは尊敬する

捩花からは「頭のいいバカ」なんて言われていたが

 

マジック少年って確かに頭いいし、理解力もある。

観察力もある、そしてピンチに陥ってバカみたいにあたふたとしていても俺達じゃ思いつかないようなことを思いついたり。けど、どこか抜けてるんだよなー

 

快斗「まあね、今の俺にはこれくらいしかできないから。さあ空の旅と行きましょうか、ウル隊長」

 

ウル「ふふ、ああ。楽しい楽しい空の旅に行こうか」

 

風船を手に階段を駆け上がり思いっきりジャンプをする。俺の隣でぐらりとバランスを崩すマジック少年はなんとか体勢を戻し上に上に飛んでいく

 

ウル「なんとか、成功したな」

 

快斗「一瞬落ちるかと思ったけど、飛んでよかった」

 

冷や汗を流すマジック少年に、俺は片手にもつ針を見る。今風船割ったら怒られるだろうな、流石に

 

そして一時、空の旅を楽しんでいると遠くに電波塔が見えてくる。

 

ウル「マジック少年、あそこに降りるぞ」

 

快斗「りょーかい。

丁度風船の空気も抜けてきたところだ」

 

ゆっくりゆっくりと下降しながら地面に足をつける

マジック少年が指を鳴らすと、風船が消える

 

ウル「へえ、ここにも初めて来たな

この世界にもオレの知らない場所が案外あるもんだな」

 

電波塔があったのは知っていたがこんな花畑は見たことない。これもマジック少年がこの世界にきた影響か?まあ、俺にとっては別にどうでもいいがな

 

快斗「ひらけた場所だな。

あの小さな建物はなんだろ?トイレかな」

 

ウル「トイレには見えないな」

 

快斗「だよなー。…ん?」

 

ウル「どうした?」

 

快斗「え?あ、いやほらあそこ

電波塔のとこに誰かいない?」

 

電波塔を指差し「ほら、あそこ!あの真ん中ら辺に寝そべってる」とぴょんぴょん飛び跳ね俺に教えるマジック少年に目を細めてみる

 

ウル「……。ほんとだあれは、捩花だな」

 

間違いなく捩花だな。アイツあんなとこで何してんだ?

 

快斗「え?!まじか?!って勝手に出てきていいわけ?!」

 

ウル「まあいいんじゃねえの?

新一も困ってるわけではないし」

 

快斗「な、なるほどね。それならいいのか」

 

ほお、いつもならツッコミいれるとこなのに俺の対応にも慣れてきたか?納得いかないような表情をしながらも渋々頷くマジック少年は捩花がいる電波塔に近付いていく

 

快斗「そっか、捩花も新一の斬魄刀だからこの世界にいても何らおかしいことはないのか」

 

ウル「ああ、そういうことだ。

おーい、捩花そんな所で何してんだー!」

 

横になる捩花に声をかければ

 

捩花「…昼寝」

 

ウル・快斗「「(いや、それは見たらわかるし)」」

 

そんな当たり前の反応が返ってきて、俺とマジック少年は無言で見つめ合い視線を捩花へとうつす

 

捩花「ここから君達を見下す景色も、なかなか悪くない」

 

足を組み頬杖をつきながら二ヤァと人をイラつかせる笑みを浮かべる捩花に俺は真っ黒い笑みを浮かべる

 

ウル「ああ、そう

捩花少し降りてこいよ、マジック少年も来てるんだ」

 

捩花「マジック少年?って誰だっけ

ああ、そこにいる君か。えーと、確か名前は…」

 

俺もだが、捩花もほんとイイ性格してる

名前くらい覚えてるだろうに、まあマジック少年が思ってるように「弱いヤツに興味ない」ってのは確かだが。

 

捩花「あー、ごめん。思い出せない(棒)

あ、でも頭のいいばかってのだけ覚えてる」

 

快斗「いや、いいよ。頭のいいばかで」

 

めちゃくちゃな棒読みだな。捩花

それに対しマジック少年もあまり気にしていない様子。こうなることを予想していたからかそこまで落ち込んではないみたいだな

 

捩花「あ、そうだ。あの張り紙はみた?」

 

あの張り紙と言われ俺とマジック少年がハッとしたように顔を見合わる

 

捩花「ふーん。押したんだ」

 

快斗「俺は押してないが、ウル「が」押した

そのせいで壁はせまってくるし散々だった」

 

今の言い方に少しの悪意を感じたがまあいい。実際のとこ俺が押したせいであんな結果になってしまったからな

 

ウル「まあまあ、いいじゃねえか

スリリングで楽しかったろ?普通じゃなかなかできない経験だぜ」

 

でも、壁がせまるまではよかったがもう少し刺激が欲しかったのも確か。例えば、猛獣がでてくるとかせまる壁から針がでてくるとか、マジック少年の嫌いな魚が空から降ってくるとか、まあこんなファンタジーなことないだろうけど

 

捩花「へー。それは俺も是非経験したかったな」

 

しかし、ここで捩花にあうとは予想外だった。

…待てよ。これはチャンスなのでは?

 

快斗「ウル?お前何か企んでないよな…?」

 

嫌な予感を感じたのだろう、俺に「頼むから変なことはするなよ」というような表情を向けてくる

 

ウル「むっ、なんだマジック少年?

別に何も企んじゃいないさ。ただ、」

 

ただ、と言ってジッと捩花を見て「クククッ」と笑い出す。それに、捩花もつられるように笑い始める

 

快斗「え?え?なに?なんなの?

二人していきなり笑い出したんだけど」

 

ウル・捩花「クククッ…アハハ、ハハッ、アハハハハハはは!!」スッ

 

ウル「捩花、お前も考えてる事は一緒だろ?」

 

捩花「そうだね。俺も丁度そう考えてたところだよ」

 

快斗「え、何を?」

 

意味がわからず俺と捩花をみて「?」を浮かべるマジック少年

 

ウル「クククッ、それなら話が早い。

後からなんて言わず今すぐ遊ぼうぜ?なあ、捩花」ウズウズ

 

ククッ、心が荒ぶっているぞマジック少年

「この戦闘バカめ!!」なんて悪態をつけられてるぞ、捩花。

 

捩花「クククッ、ああそうだな」ウズウズ




二人の視線が重なった瞬間、同時に動き出す


ウル「───穿て 銀陰(ぎんいん)」


空から雪が舞い氷の結晶が床に落ちた瞬間眩い光に包まれる、そこから浮かび上がるように氷と電撃を纏った花の刃を召喚し構える


捩花「─────水天逆巻け 捩花」


クククッ、いいね~。やっぱりこうじゃねえとな?
この、捩花という斬魄刀。持ち主によって形状や能力は千差万別。新一の場合、鞘から出した刀は三叉の槍(矛)に変化して、同時に大量の水を発生させていたが

捩花の場合も同じように、三叉の槍に先端が針のように尖っている

ウル「さあ、始めようか」

ニィと、黒い笑みを浮かべ同時に地面を蹴り衝突しあう

衝突した衝撃で電波塔が激しく揺れる

金属音が響き渡り、
剣と剣が闇の中で火花を散らし交錯する

捩花の槍は形状を変え双剣になる
刃物が陽炎のように揺らめいて
稲妻のような剣さばきで俺に斬りかかってくる

ウル「チッ」

流石、新一の斬魄刀なだけはある
全くもって嫌なとこをついてくる
でも、だからこそ楽しみがいがあるってもんだ

一瞬、ほんの一瞬捩花と目が合う

ウル「おいおい…」

なんて無邪気な笑顔をしてんだ
無邪気というと聞こえはいいが、きっとこんな笑顔マジック少年や少年なんかが見たらトラウマものになるぞ

捩花「あんたを氷漬けにするのもいいかもね」二ヤァ

刃を纏うように氷の刃ができ軽く剣を振っただけで床にヒビが入り一瞬にして凍りつく

ウル「氷漬けね。へえ、そりゃ面白れえ
やれるもんなら…やってみろ」黒い笑み

捩花から距離をとるように離れ、これ以上吊り上がらないとこまで口元を歪ませ挑発するように手のひらを上に向け動かす

ウル「………」

捩花「………」

二人の間に沈黙が流れる
少しの隙も見逃さまいと、瞬きもせず銀陰を持つ手にも自然と力がはいる。
強風が吹き砂埃がたち、二人の姿を隠したその時


──────────来るッ


ウル「ッ!!」

グッと足に力を入れ捩花からの攻撃を受け止める
がくんと膝がおれ、その一瞬の隙を見逃すまいと俺の首を斬るように刃を振るう

ウル「っぶねえ!!」

身体を後ろに仰け反らせるようにギリッギリで避け、バク転をし地面に足をつけ冷や汗を流す

頬から流れる血は捩花の刃によって凍りついている

捩花「あー…、惜しかったな
そのまま静かにしてれば綺麗に斬首できてたのに」

ウル「ククッ、残念だったな
いや、しかし今のは流石にビビったよ~。
まあちょっとだけ、だけどな」

捩花「ふーん、かなり焦ってたように見えたけど」

ウル「ふっ、バカ言え」

実際のとこかなり焦った。
いや~、今のはほんと危なかった
久しぶりだぜ、こんなに胸が高鳴るのは

ウル「さあ、続きをしようぜ。
まだまだ遊びは始まったばかりだ」

捩花「そうだね、じゃあ早速」

瞬きをする間も与えず、間髪入れずに刃を振るう
それを俺は、顔を顰め「チッ」と舌打ちをして剣をさばいていく

ウル「おいおい、こんなもんじゃオレを氷漬けなんてできねえぞ」

捩花「そうみたいだね、じゃあこれならどうかな」

さっきよりスピードをあげ攻撃の手をはやめる
甘い。甘えよ、捩花?言ったろ、こんなもんじゃオレを氷漬けになんてできないと。

もう、てめえの攻撃は見切った。
次にくる攻撃を軽々と剣で受け止め、腹に強烈な蹴りをいれる

捩花「ッ!!」

トイレのような小屋にまで吹き飛ばされ壁に激突する。瓦礫の中から身体を起こし埃をはらい首を左右に鳴らす

捩花「いってえーな」

ウル「ふっ、クククッ。
どうした?そんな怒った顔して。
そんなしかめっ面してると老けるぞ

ククッ、お前の力ってこんなもんだったけ?
まだまだいけんだろ!なあ!こんなもんじゃねえ、だろ!!」

だろ、の部分で捩花の背後に素早くまわり満面の笑みで斬りかかる。それを、にやりと笑って振り向くことなく、まるで初めからわかっていたかのようにその剣を片手で掴む

快斗「なっ?!掴んだ?!」

遠くからそんな声が聞こえ、俺はブラボーとでも言うように口笛を吹く。

ウル「わーお、すごいねー。
ハハッ、もしかして後ろにも目があったりしてー」

まあ、そんなことあるわけねえけど。
完璧に攻撃を見切られてたな、今の
チッ、一筋縄じゃいかねえってか?
クククッ、いいね。遊びがいがある

捩花「ふっ、まさか。あまりに軟弱な攻撃だったからな。ウルお前弱くなったか?」二ヤァ

その言葉に俺は無表情で捩花から距離をとり地面にゆっくりと足をつけ、込み上げてくる子供のような笑い声でいつまでも可笑しそうに笑って

ウル「ふっふふ。捩花、お前面白いこと言うね~
いやー、あまりにおかしな事を言うもんだから笑っちゃったよ」

ねえ?と、首を傾げ黒い笑みを浮かべる
捩花はそれに全く臆することなくニヤニヤと笑って一瞬で俺との距離を縮め斬りかかるが、その刃は俺に届く3センチ手前でピタリと止まる

ウル「おーい、どうした~?
ほら、斬りかかってこいよ。ほらほらほら!」

捩花を挑発するような笑みでニヤニヤと見る

捩花「………」

ウル「あ、そっか!時間を止めてるから動けねえんだったな~。ごめんごめん、忘れてたわ」

ごめんと何の感情もこもってない言葉を言って捩花の肩をポンポンと叩き

クククッ、と完全に悪役がするような笑い声をあげ、捩花から離れキセルからシャボン玉を膨らませ捩花の周りをシャボンだらけにする

パチンと指を鳴らすと止まっていた時が進みだす

ウル「シャボン玉にはご注意を」

捩花「シャボン玉?…これは、」

ハッとしたようにその場から離れる前にひとつのシャボン玉に身体が触れた瞬間、一気に爆発していく

ウル「あーあ、だから言ったのに」

クスクスと肩をゆるわせ笑う俺に

捩花「チッ、やってくれる」

爆風がおさまり煙から姿を現す捩花は、ペッと血痰を吐き口元を袖で拭い悪態をつく

ウル「で、えーとなんだっけ?
オレが弱いって話…、だったけ?」

ニコッと口の端を吊り上げ、銀陰を片手に捩花から視線を逸らすことなく言う
それに対し捩花は、ハハッと空笑いをして真っ黒い笑みを浮かべる

捩花「そうだね。もしかして、ここで俺に負けて消えちゃうかもねー。ふふっ」

悪魔的とも言える挑発した表情で俺をみて言う捩花に

ウル「あはっ。何言っちゃってんの~?

オレと捩花って互角じゃん。
それにさ、オレと新一どっちかが消えるとか考えられないからね。

今でさえ退屈なのにこれ以上退屈な日々を送るなんて嫌だからね、オレも新一も」

悪魔も怯えるほどの笑顔を浮かべ殺気で髪が逆立つ

捩花「ホント君達ってすごく仲良いよねー。
全然対立しないしさ。…対立しちゃえば面白くなりそうなのに」

ボソッと呟いた言葉にピクッと眉を動かす。
先程の笑顔はどこへやら、無しかない。能面のような無表情でくつくつと喉の奥を鳴らすように笑って

ウル「なあ~に言っちゃってんの~?

白いオレと黒いオレどっちもあるから楽しいんだろ?」

なあ?と言って口元を歪ませ凶悪な笑みを浮かべる俺に、悲鳴が聞こえたがそんなに酷い笑顔だったのだろうか?爽やかな笑顔を心掛けたつもりだったがどうやら失敗したようだ

捩花「…それ、新一もよく言ってる」

快斗「( ゚д゚)ハッ!しまった!俺はこの二人を止めようとしていたんだった!

ちょっと二人とも、ストップストーップ!」

ウル「ククッ、ちょっと遊んで終わりにしようかと思ったけどやめた。本気で行くぞ」

銀陰を構え卍解の型にはいる

快斗「よし、描けた。で、これを破ってと」

刀を胸の前に出し右手に添えるように左手をおきゆっくりと目を瞑る

自身から風を巻き起こすようにビューと辺りに強風が吹く、風で髪が巻き上がりカッと目を見開き


ウル「─────卍解 天墜銀陰(てんついぎんいん)」


天から堕落した悪魔が俺の背後にその漆黒の羽を羽ばたかせ宙を舞う


ウル「───いざ、参る」


一歩踏み出したその時、俺と捩花の間にそびえたつでかいでかい鉄の壁

それを無かったように壊す俺達

快斗「……え」

そしてまた、立派な鉄の壁ができるが
ヒュン!と剣を軽く振っただけで壁が紙のようにへにょんと倒れる

快斗「……」

ウル・捩花 「「………」」

二人でマジック少年を道端に落ちてるゴミでも見るような目で見て、そして何事も無かったかのように再び剣を交わし合う

快斗「って違う!ちょっとそこの二人さっきから何殺りあってんの!」

そこでやっと、俺はマジック少年の存在に気付く

ウル「…あれ?
マジック少年そんなとこで何してんの?」

快斗「何してんのってこっちが聞きたいわ!!」

捩花「ごめん、君の存在忘れてたわ」

捩花もマジック少年の存在に驚きを隠せないように目を真ん丸くして本当にびっくりした顔をする

快斗「いや酷くない?!何となくそうだろうなってわかってたけど酷くない?!」

それに、マジック少年も間髪入れずツッコミをいれる。まるで芸人のようだ。

マジック少年お前、怪盗キッドなんかより芸人の方が向いてるんじゃないか?相方はそうだな…少年と組んだら最高じゃないか!あ、でもそれだとどっちもツッコミだから成り立たないか

ウル「まあまあまあ。
ほら、マジック少年影薄いから」

ポンポンと慰めるように肩を叩いてさらりと毒を吐く

快斗「…だから何だよ!仕方ないって言うのか!全くフォローにもなってねえよ!」

ウル「ハハッ、ごめんって。
それに、 最初からフォローしてないし」

フォローするつもりもない!実際、本当に今の今まで全くマジック少年の存在に気付かなかった。何かいるな~、くらいには思ってたけどそれ程遊びに夢中だったんだな

快斗「でしょうね!!」

俺達の黒い笑みと反応を見て大方のことは理解したのだろう。諦めたように大きなため息をこぼし目には涙を浮かべている

捩花「全く興醒めしちまったな。
今度は誰の邪魔も入らない時に続きをしようね」

ウル「ああ、勿論だ。次は地下で遊ぼうぜ」

捩花「今の忘れないでね、絶対だよ!
約束だからね!さて、じゃあ俺は昼寝でもしよっかな」

そう言ってふらりと立ちどこかに消えていく捩花の背中をマジック少年と一緒に見ながら、俺もそろそろ戻ろうかと思った時「あ!」とマジック少年が思い出したように声を上げる

ウル「ん?どうした?」

快斗「あ、いやそう言えばここ新一の精神世界だったなって。どうやって現実世界に戻ったらいいのかと」

そう言えばそうだったな。
そのこともすっかり忘れてた

ウル「あー。まあ、向こうで目が覚めれば自然と帰れるんじゃね?」

適当な相槌をして、俺は大きく伸びをする
マジック少年がこの世界に来た理由は最後まで謎だったが、まあ捩花と遊べたからよしとするか

快斗「それならいいんだけど…」

そう呟いたマジック少年の顔が、不安そうに歪む
これは心を読むまでもないな、そりゃまあ誰だって新しい環境や自分の知らない場所に来ると不安にもなるよな

まっ、俺は違うけどね?
俺の場合、自分の知らない場所に来たらそりゃもう嬉しいねー。ついでにそこに俺より強い敵なんかがいたらもっと最高だ

ウル「…まあ、そう気にするなって。
それよりオレもずっと気になってたんだが

マジック少年、なんか透けてきてない?」

快斗「は?」

俺の言葉に、意味がわからないとでも言うように「は?」と言って自分の手のひらをみる。
不安気な表情から一変、全身から血の気が引いたように真っ青になり唇を引き攣らせわなわなと震える

快斗「え?!な、なんで?!」

え?え?え?!と慌てふためき、俺の手を掴もうとするがその手は俺の手をすり抜ける

ウル「マジック少年、お前もしかして幽霊?!」

え!ウソ!やだー、マジック少年が幽霊だったなんて!ぷぷぷ。おっといけない、思わず自分の発言に笑うとこだった。

俺はわざとらしく驚き両手で口元を隠し両目を大きく見開く

快斗「バカ?!なわけねえだろ!」

ってんなこといいから、助けてよ?!と掴めもしない俺の腕を掴み涙目で叫ぶマジック少年。

マジック少年には悪いが、正直、すげえ面白い。
マジック少年の必死さに笑えるのもだが、別に死ぬわけでもないのにまるで“この世の終わり”とでもいうような表情をするマジック少年が何よりも「ぷっ!ンッンん!ゴホンゴホン」危ない危ない、吹き出すとこだった

マジック少年の言葉も虚しく足元から徐々に消えていき、そして

ウル「…どうやら、現実世界に戻ったようだな」

俺の前から消えたマジック少年。
まるで、初めから存在していないかのように跡形さえ残ってない

ウル「さーて、どうしましょうかね」

もう少しこの場に留まるか、それとも

ウル「……。ふっふふ、いいこと思いついた」

黒い笑みを浮かべ、俺はこれから起こるであろう出来事を想像し高笑いを響かせ姿を消した

ウルsideend
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