────少し、時は遡り
俺はウルより早く新一の精神世界へ戻っていた
捩花「…静かだね」
どうやらまだ、ウルは戻ってきてないようだな
さて、まあ思うことは色々あるわけだけどその前に
捩花「ここか」
ここは後にウル達が壁に挟まれるイベントを発生させた階段へと俺は足を運んでいた
ぐずぐずしてはいられない。めんどうだが、でもそれで面白いものが見れるんならしてみる価値はある
階段の半分も歩かない距離の壁に俺はわかりやすく[押したら、殺す]の張り紙ともう押してくださいと言わんばかりの主張が激しい赤のボタンを設置する
捩花「ふふ、楽しみだな」
まず、間違いなくこれを見つけたら押さずにはいられないだろう。ニンゲンってのは、そんなもんだ
しかも、こうして「殺す」なんて挑発的な言葉さえ書かれた紙を見つければ100%ウルは押す。
捩花「俺と遊ぶ約束したんだから、その約束は守ってもらうよ」
ふふ、といつものやる気のない気だるげな表情とは異なりどこかいきいきとした目で何かを企むような黒い笑みを浮かべ、姿を消した
─────それから少し時間は進み
捩花「ふう、なんか面白いことないかな」
ウルはあの見え見えの罠に引っ掛かっただろうか。暇だから少し横になっとこう。誰もいない電波塔で見晴らしのいい頂上ではなくあえて中間の位置でボーッと横になる
???「──少年、───に降りるぞ!」
ん?今声が聞こえたような
やる気なさげにだらーっと身体を起こし手で望遠鏡を作るようにして空に浮かぶ二つの風船を視界に捉える
捩花「…あれはウルと誰だっけ?」
ゆっくりゆっくりと二人は下降し、何かを話している。どうやらまだ俺には気付いてないらしい
まあ別に俺から話しかける必要も無いし、二人を無視して再び横になる
ウル「へえ、ここにも初めて来たな
この世界にもオレの知らない場所が案外あるもんだな」
快斗「ひらけた場所だな。
あの小さな建物はなんだろ?トイレかな」
ウル「トイレには見えないな」
快斗「だよなー。…ん?」
ウル「どうした?」
快斗「え?あ、いやほらあそこ
電波塔のとこに誰かいない?」
俺に気付いたか?
挨拶するのも面倒だし聞こえないふりしとこう
ウル「……。ほんとだあれは、捩花だな」
ウルの声も聞こえたが、それにも俺は全くの無反応と無視を貫く
快斗「え?!まじか?!って勝手に出てきていいわけ?!」
ウル「まあいいんじゃねえの?新一も困ってるわけではないし」
へえ、流石ウル。よくわかってるじゃん
それに俺は、新一の迷惑になることは極力しないよ
新一以外の誰かが、たとえ目の前で血飛沫上げて死のうがどうだっていいしね
ウル「まあ、そういうことだ。
おーい、捩花そんな所で何してんだー!」
そんなウルの声が聞こえ、俺は横になったまま面倒くさそうに
捩花「…昼寝」
そう呟いて猫みたいに伸びをして「ふあ…ぁ」と欠伸をし鉄骨から足をぶら下げ下を見下ろす
捩花「ここから君達を見下す景色も、なかなか悪くない」
足を組み頬杖をつきながら二ヤァと人をイラつかせる笑みを浮かべる俺にウルは真っ黒い笑みを浮かべる
ウル「ああ、そう
捩花少し降りてこいよ、マジック少年も来てるんだ」
捩花「マジック少年?って誰だっけ
ああ、そこにいる君か。えーと、確か名前は…」
思い出す気も全くないが一応思い出すふりだけする。あくまでふりだけな
だから当然の如く思い出せず俺は、適当に返答をする
捩花「あー、ごめん。思い出せない(棒)
あ、でも頭のいいばかってのだけ覚えてる」
捩花「あ、そうだ。あの張り紙はみた?」
思い出したように二人に問えば、ハッとしたように顔を見合わる
捩花「ふーん。押したんだ」
快斗「俺は押してないが、ウル「が」押した
そのせいで壁はせまってくるし散々だった」
だろうね、君がこの世界に来ること事態予測できなかったし
まあどうでもいいんだけどね、そんなの。俺が気になるのはそんなことじゃなくて
捩花「で、どうだった?押した感想は」
ウル「ああ、スリリングで楽しかったぜ?なあ、マジック少年。
普通じゃなかなかできない経験だからなー。クククッ」
捩花「へー。それは俺も是非経験したかったな」
あの時カメラをセッティングすべきだったなと少しの後悔を抱きながら残念そうにため息をこぼす。しかし、その後悔の念もすぐに消え俺の考えは全くの別方向にいっていた
快斗「ウル?お前何か企んでないよな…?」
彼の言葉など右耳から左耳に流れるようにスッと消え、かわりに俺は心底楽しそうに口元を歪め「クククッ」と肩をゆるわせ笑い出す
それはウルも同じなのか
ジッと俺を見て同じように愉快な笑い声をあげる
快斗「え?え?なに?なんなの?
二人していきなり笑い出したんだけど」
それに意味がわからず俺達の顔を交互に見て「?」を頭いっぱいに浮かべる彼に、俺達は気にすることなく腹を抱えるように笑ってスっと真顔になる
ウル・捩花「クククッ…アハハ、ハハッ、アハハハハハはは!!」スッ
ウル「捩花、お前も考えてる事は一緒だろ?」
なあ?と俺を見て本当に楽しそうに目を細め笑うウルに、俺もニッコリとこれ以上ないくらいに口元を歪め笑みを浮かべる
捩花「そうだね。俺も丁度そう考えてたところだよ」
快斗「いやいやちょっと待って!一体お前等、何を考えて…」
まさか、と呟き俺達を交互にみて「だからやなんだよ。この戦闘バカめ!!」とため息交じりに悪態つく彼に俺はふんと人を馬鹿にするような嘲笑を浮かべる
ウル「クククッ、それなら話が早い。
後からなんて言わず今すぐ遊ぼうぜ?なあ、捩花」ウズウズ
捩花「クククッ、ああそうだな」ウズウズ
戦闘バカ?クククッ。当たり前でしょ
戦闘以外に楽しいことなんてある?ないよね
逆に聞きたいね、戦って遊ぶ以外に楽しいことがあるんならさ。まあ、俺にはそんなの興味もないからどうでもいいんだけど
突風が吹き、一瞬目を瞑る。
モノクロの世界に佇む二人と、それを呆れたように見守る一人。
二人の視線が重なった瞬間、同時に動き出す
ウル「───穿て 銀陰(ぎんいん)」
空から雪が舞い氷の結晶が床に落ちた瞬間眩い光に包まれる、そこから浮かび上がるように氷と電撃を纏った花の刃を召喚し構える、あれがウルの斬魄刀「銀陰」
捩花「─────水天逆巻け 捩花」
ふわっと自ら風を起こすように髪や服が舞い上がる。鞘から出した刀は三叉の槍(矛)に変化し、同時に多量の水を発生させる
頭の上で槍を回すと、その遠心力で周りの砂埃が巻き上げられ更に勢いを増す。そしてそのまま、槍を背にして構える
ウル「さあ、始めようか」
ニィと、黒い笑みを浮かべ同時に地面を蹴り衝突しあう
衝突した衝撃で電波塔が激しく揺れる
金属音が響き渡り、
剣と剣が闇の中で火花を散らし交錯する
槍よりも双剣の方が近距離の戦闘にはいいかもな、そう思い形状をかえ双剣を両手に持つ
腰を深く落とし身体を正面に倒し、刀をクロスするように交差させ斬りかかる
ウル「チッ」
チッと、厄介そうに俺の攻撃を受け止めるウルに、俺は無邪気な笑みをこぼす
ウル「おいおい…なんて笑顔してんだよ」
ぴくぴくと口の端を動かし引き攣った笑みを浮かべるウルに俺は無邪気な笑顔のまま
捩花「ふふ。あんたを氷漬けにするのもいいかもね」二ヤァ
刃を纏うように氷の刃ができ軽く剣を振っただけで床にヒビが入り一瞬にして凍りつく
ウル「氷漬けね。へえ、そりゃ面白れえ
やれるもんなら…やってみろ」黒い笑み
俺から距離をとるように離れ、これ以上吊り上がらないとこまで口元を歪ませ挑発するように手のひらを上に向け動かす
ウル「………」
捩花「………」
二人の間に沈黙が流れる
俺はヒトの心を読むことはできないが、きっと今俺達は同じことを考えてるだろう
問題は、その先だ
((…相手より早く攻撃を仕掛けるかによって勝敗が決まると言っても過言ではない。
そして、その勝負に勝つのはあんた(お前)じゃなくこの俺だ))
強風が吹き砂埃がたち、二人の姿を隠したその時同時に動き出す
ウル「ッ!!」
捩花「ククッ。残念、俺の勝ち」
ウル「ッるせ!まだ、これからだろうが!」
コンマ何秒か俺の攻撃が勝りウルに斬りかかる。それを受け止める苦しそうに顔を歪める。
俺の攻撃に耐えきれくなったのか、がくんと膝がおれる。その一瞬の隙を当然の如く見逃さずウルの首を撥ねるように刃を振るう
捩花「首、もーらいっ」
ウル「っぶねえ!!」
身体を後ろに仰け反らせるように避けるが、完全には避けきれなかったのだろう頬から流れる血は俺の刃によって凍りついている
捩花「あー…、惜しかったな
そのまま静かにしてれば綺麗に斬首できてたのに」
実際の感情以上に大袈裟な表情を作り、心底残念そうにため息をこぼす
まあ、でも首斬りしたかったのは確か。
首斬りとか一度は経験してみたかったんだけどなー、ほんと残念だよ。
でも、まあいいや。今じゃなくてもできるしね
ウル「ククッ、残念だったな
いや、しかし今のは流石にビビったよ~。
まあちょっとだけ、だけどな」
捩花「ふーん、かなり焦ってたように見えたけど」
ウル「ふっ、バカ言え」
まあそれが、ただの虚勢にしろ
次は確実に仕留めちゃうよ、ふふ。
あ、でもそんなことしたら遊べなくなっちゃう
それは嫌だから、もっと楽しいことをしよう
ウル「さあ、続きをしようぜ。
まだまだ遊びは始まったばかりだ」
捩花「そうだね、じゃあ早速」
瞬きをする間も与えず、間髪入れずに刃を振るう
ウル「おいおい、こんなもんじゃオレを氷漬けなんてできねえぞ」
捩花「そうみたいだね、じゃあこれならどうかな」
さっきよりスピードをあげ攻撃の手をはやめる。が、それを軽々と剣で受け止め、これまでの仕返しとばかりに腹に強烈な蹴りをいれられる
捩花「ッ!!」
トイレのような小屋にまで吹き飛ばされ壁に激突する。瓦礫の中から身体を起こし埃をはらい首を左右に鳴らす
捩花「いってえーな」
なーにしてくれてんだ、クソが。
凄まじい怒りが眉の辺りに這い、殺意のこもった瞳でウルを睨み、歯を剥き出しにするような笑みをする
ウル「ふっ、クククッ。
どうした?そんな怒った顔して。
そんなしかめっ面してると老けるぞ
ククッ、お前の力ってこんなもんだったけ?
まだまだいけんだろ!なあ!こんなもんじゃねえ、だろ!!」
だろ、の部分で俺の背後に素早くまわり斬りかかる。それを、にやりと笑って振り向くことなくその剣を片手で掴む
快斗「なっ?!掴んだ?!」
ウル「わーお、すごいねー。
ハハッ、もしかして後ろにも目があったりしてー」
冗談とも本気ともつかないおどけた口調で言うウルに、俺はまさかと笑みをこぼす
捩花「ふっ、まさか。あまりに軟弱な攻撃だったからな。ウルお前弱くなったか?」二ヤァ
嘲うようにニヤニヤした笑みと見下すような口調でウルを見れば、無表情を浮かべ俺から距離をとるように地面にゆっくりと足をつけ、子供のような無邪気な笑い声をあげる
ウル「ふっふふ。捩花、お前面白いこと言うね~
いやー、あまりにおかしな事を言うもんだから笑っちゃったよ」
ねえ?と、首を傾げ黒い笑みを浮かべるウルに、俺は全く臆することなく逆に今の状況を楽しみ、顔に嬉しさを隠しきれないようにニヤニヤと笑って一瞬でウルとの距離を縮め勢いよく斬りかかるが、その刃はウルに届く3センチ手前でピタリと止まる
ウル「おーい、どうした~?
ほら、斬りかかってこいよ。ほらほらほら!」
捩花「………」
ウル「あ、そっか!時間を止めてるから動けねえんだったな~。ごめんごめん、忘れてたわ」
捩花「…………」
ウル「シャボン玉にはご注意を」
ウルに斬りかかる3センチ手前で、違和感を感じまさかと声を漏らす
捩花「シャボン玉?…これは、」
クソッ、まずいぞ!
ハッとしたようにその場から離れる前に、ひとつのシャボン玉に身体が触れた瞬間一気に爆発していく
ウル「あーあ、だから言ったのに」
捩花「チッ、やってくれる」
爆風がおさまり煙から姿を現し、ペッと血痰を吐き口元を袖で拭い悪態をつく
完璧にしてやられた。タイムレコードとあのシャボン玉を使った攻撃か…でも、こんなんで俺を満足させようとするなら残念だよ。ウルやっぱりお前、弱くなったんじゃないの?
ウル「で、えーとなんだっけ?
オレが弱いって話…、だったけ?」
ニコッと口の端を吊り上げ、銀陰を片手に俺から視線を逸らすことなく言う。それにハハッと空笑いをして真っ黒い笑みを浮かべる
捩花「そうだね。もしかして、ここで俺に負けて消えちゃうかもねー。ふふっ」
ウル「あはっ。何言っちゃってんの~?
オレと捩花って互角じゃん。
それにさ、オレと新一 どっちかが消えるとか考えられないからね。
今でさえ退屈なのにこれ以上退屈な日々を送るなんて嫌だからね、オレも新一も」
あはは、俺の挑発にまんまと乗せられちゃって。単純だなー、君も。悪魔も怯えるほどの笑顔を浮かべ殺気で髪が逆立つ
捩花「ホント君達ってすごく仲良いよねー。
全然対立しないしさ。…対立しちゃえば面白くなりそうなのに」
それとも、俺がその場を作ってあげようか?
ふふ、そしたら少しは退屈しのぎにもなるんじゃないかなー。ねえ?そう思わない
ウル「なあ~に言っちゃってんの~?
白いオレと黒いオレどっちもあるから楽しいんだろ?」
なあ?と言って口元を歪ませ凶悪な笑みを浮かべるウルに、俺は冷めた表情をする
捩花「…それ、新一もよく言ってる」
快斗「( ゚д゚)ハッ!しまった!俺はこの二人を止めようとしていたんだった!
ちょっと二人とも、ストップストーップ!」
ウル「ククッ、ちょっと遊んで終わりにしようかと思ったけどやめた。本気で行くぞ」
それは俺もだよ、元から遊びで終わりにするつもりなんてなかったけどね。
快斗「よし、描けた。で、これを破ってと」
捩花「────卍解 擂砕け 龍渦水捩花(すりくだけ りゅうかすいねじばな)」
普通の状態の捩花が長くなり、前後についた刃の部分に大量の水が龍のように渦まく
ウル「─────卍解 天墜銀陰(てんついぎんいん)」
天から堕落した悪魔がウルの背後にその漆黒の羽を羽ばたかせ宙を舞う
ウル「───いざ、参る」
捩花「さあ、行こうか」
一歩踏み出したその時、俺とウルの間にそびえたつでかいでかい鉄の壁
それを無かったように壊す俺達
快斗「……え」
そしてまた、立派な鉄の壁ができるが
槍を一突きすることなく、へにゃへにゃと倒れる
快斗「……」
ウル・捩花 「「………」」
まさか、こんなんへっぽこな攻撃で俺達を止めようとでもしてるのか?
…バカだな。うん、やっぱり頭のいいバカだ
二人で彼を軽蔑する目で見て、そして何事も無かったかのように再び剣を交わし合う
快斗「って違う!ちょっとそこの二人さっきから何殺りあってんの!」
そこでやっと、俺達は彼の存在に気付く
ウル「…あれ?
マジック少年そんなとこで何してんの?」
快斗「何してんのってこっちが聞きたいわ!!」
捩花「ごめん、君の存在忘れてたわ」
これは驚いた。本当にびっくりした
いつからいたっけ?あー、無理。思い出せない思い出す気もないけど。
快斗「いや酷くない?!何となくそうだろうなってわかってたけど酷くない?!」
ほーんとよく喋る口だな。君のその舌を引っこ抜いたら、喋らなくなるかな?なーんて、そんなこと興味無いからしないけど。てか、よくそんなに喋って舌噛まないよね。
ウル「まあまあまあ。
ほら、マジック少年影薄いから」
ポンポンと慰めるように肩を叩いてさらりと毒を吐くウルにすかさずツッコミをいれる
今度から彼のことは、
「頭のいいバカ」ではなく「九官鳥」とでも呼ぼうか
快斗「…だから何だよ!仕方ないって言うのか!全くフォローにもなってねえよ!」
ウル「ハハッ、ごめんって。
それに、 最初からフォローしてないし」
快斗「でしょうね!!」
彼等のやり取りを興味無さげにみて、わざとらしく大きなため息をこぼす
捩花「全く興醒めしちまったな。
今度は誰の邪魔も入らない時に続きをしようね」
ウル「ああ、勿論だ。次は地下で遊ぼうぜ」
捩花「今の忘れないでね、絶対だよ!
約束だからね!さて、じゃあ俺は昼寝でもしよっかな」
そう言ってふらりと立ち姿を消す
捩花「さて、新一の所に行こうかな」
ふふ、と艶めかしい笑みを浮かべ姿を変え俺は新一の元に向かった
捩花sideend