ここは白と黒のモノクロの世界。
全てが反転しているこの世界で俺は奴に会っていた
一見すれば俺と同じ容姿をしているがそれもそのはず
奴は俺であり、俺は奴なんだから
俺が黒であるなら奴は白。人に裏表があるように表が黒い俺であるなら裏が白い俺。まあ俺達に表裏なんてものないのかも知れないが
──────よお、新一。早くオレに代われよ
と、その時テレビのノイズが入ったような声で白い俺が話しかけてきた
ああ、わかってる。
もう少し楽しんだら代わってやるよ
──────絶対だぞ?退屈過ぎて死にそうなんだ
そうか。じゃあ、コイツは退屈しのぎにはもってこいだな。丈夫だし簡単には壊れない。
──────へぇ~、それは面白い。
イイな、早く遊びたいぜ
ふっ、お前も相変わらずだな
──────ククッ、お互い様だろ?
戦いに対する絶対的な渇望さ。
それは俺もお前も変わらねぇ事実だぜ?
それもそうだな。
まあ、でも白い俺と黒い俺、どっもあるから楽しいんだよ。…おっと、もう時間だ。
「「さあ、ラストダンスといこうか」」
二人の意思が重なった時
俺は白い俺と代わるように奥底へと
沈んでいく
新一sideend
ウルside
ウル「やあッと出てこれた
さあ、続きを楽しもうぜ…少年。」
そう、口元に黒い笑みを浮かべて俺をバケモノでも見るかのような眼差しを向ける少年に笑いかける
アゲハ「アンタ…一体何者だ?」
ウル「何者って、酷エな~
どこからどう見ても「工藤 新一」だろ?」
アゲハ「いやいやいや、どこからどう見ても違うだろ?!」
ウル「うっるせえなー
俺がアイツだって言ってんだから
それでイイだろ?
ごちゃごちゃ言ってと…ぶっ殺しちゃうゾ」
最後の言葉を強調するように言って近くにある壁を素手でかるーくドンっと殴ればヒビが入る。
これ以上なにか言えばこうなるぞ、という警告も兼ねて言ったつもりだったがどうやら効果がありすぎたのか引いた目で見られる
アゲハ「アイツもお前も、バケモノかよ…」
────ククッ、おい新一
お前バケモノ呼ばわりされてるぞ?
────うるさい、お前もだろーが。
いやいや、俺はお前よりかまだヒトだぜ
精神世界にいる新一に語りかけ俺は目の前に彼等に再び視線を戻す
ウル「しかし、まあアイツもまだ甘いよな
そこにいるお嬢ちゃんも連れの少年もさっさと殺せばイイのに」
アゲハ「ってめぇ、コイツ等には「あー、わかってるわかってる」??」
俺はジッと品定めをするように少年を足先からてっぺんにかけ舐めるように見る
アゲハ「な、なんだよ…やんのかコノヤロー!!」
ファイティングポーズをとる少年に、俺は無表情のまま静かに歩み寄り少しずつ歩行スピードをあげ顔面スレッスレで拳を止める。いや、少年によって止められる
ウル「…ククッ、殴られると思ったか?」
アゲハ「ったりめえだろーが!!」
俺の拳を受け止め冷や汗をかきながら少年が怒号をあげる
拳から伝わるように少年の心の声が俺へと流れ込む
(あっぶねー!少し反応が遅かったら殴られてた、けどこれでわかった。やっぱりコイツはアイツだ)
ククッ、なるほど新一が言っていたことも頷ける
反応はまあ合格てとこか、瞬発力も悪くない
これならアレを試してもいいかもしれないな
少年から少し距離を取るようにしてふぅ、と息を吐く
ウル「───穿て 銀陰(ぎんいん)」
空から雪が舞い氷の結晶が床に落ちた瞬間眩い光に包まれる、そこから浮かび上がるように氷と電撃を纏った花の刃を召喚し構える
ウル「っと、その前に…」
構えていた刀を一旦おさめてパチンと指を鳴らす
そしてお嬢ちゃんと連れの少年を隔離するようにして透明の壁を隔てる
アゲハ「おい、てめぇなんのつもりだこれは」
怒りを顕にして俺に突っかかってくる少年に俺はやれやれとでも言うようにため息をつく
──────新一、この少年はカルシウムが足りないんじゃないか?
──────そうかもしれないな、今度牛乳を勧め よう
ウル「なんのつもりって、これからもっと
激しい戦いになるだろ?
お嬢ちゃん達は部外者だからこうして壁を作って守ってやってるんだ。…別にいいんだぜ?お嬢ちゃん等が死のうがオレには関係ないんだから今すぐこの壁を消しても。」
アゲハ「ッ待て!いや、いい壁はそのままで!
…アイツ等を守ってくれて、ありがとう」
ウル「ククッ、どーいたしまして」
まあ、守ってやるなんて嘘だけど、俺がお嬢ちゃん達を守る義理はないわけだし。
ただ、少年とは全力で殺りあいたいからな
その時にお嬢ちゃん達を理由にされちゃ困るただそれだけだ
ウル「さあ、そう言うことだ少年
───────殺す気でコイ」
最後の言葉を強調するようにドスの効いた声で言う
少年が何やらギャーギャー騒いでいるがそれを全て無視してニヤニヤとした笑みを浮かべる
少年はそんな俺の表情をみて諦めたようにため息をこぼし、そして何かをぼそぼそと呟いたと同時に少年の纏う空気がガラリと変わった。それと同じく部屋の空気も変わる
部屋いっぱいに張り裂けるような殺気が満ち、圧縮された空気を前から浴びせられるような異様な威圧感に俺はブルっと背中を震わせる。…まさかこの俺がビビっているのか?
藻掻けば藻掻くほど沈んでいく
底なし沼のように妙な緊張感が俺を襲う
ごくりと生唾を飲み込み自然と表情も硬くなる
少年を見れば、大きく息を吸ってゆっくりと時間をかけ息を吐き、それを繰り返したかと思えば身体全体の力を抜くようにだらりと手をぶら下げ顔も下を俯くように脱力している。
───────来るっ!!!
突風がふいて俺は思わず目をギュッと瞑る
そして、閉じていた目を開くと全くの別人が俺の目の前に佇んでいた。
黒く禍々しい靄(もや)のようなものが少年を包み酔っぱらいのように右に 左にとユラユラと身体を揺らしている。
ウル「おいおい、新一こんなの聞いてないぞ」
引き攣った笑みを浮かべて俺は精神世界の新一に語りかける
──────俺も初めて見た。何か隠してると思ったがこれだったか。まあ、お前のことだから油断はしないだろうが一応気を付けとけよ?
──────おいおい、誰に物言ってんだ?
油断なんて最初からしてねえよ。戦う相手が弱かろうが強かろうが全力で叩き潰してぶっ壊すまで
──────ふっ、そうだったな。
じゃあ、健闘を祈ってるよ。ああ、でも殺すなよ?
ウル「ああ、わかってるさ相棒
オモチャが壊れちゃ遊べねえもんな…」
そう誰に呟くでも無く呟いて、再び目の前にいる少年に視線を戻す。さあ、今度はどんなびっくりを見せてくれるんだ?そんな期待の眼差しで少年をみる
ウル「さあ、こいよ少年」
アゲハ「………」
挑発するように手の平を上に向けクイクイとするが、聞いてないのか聞こえてないのか俺の挑発に応えることなく無言で天井を仰ぐようにして壊れた操り人形のようにユラユラと身体を揺らしていたが、突然動きがピタリと止まりグリンと首がもげるんじゃないかってなくらいの勢いで顔を俺の方に向けたかと思うと、もの凄いスピードで襲い掛かってくる
ウル「っし!!」
なんちゅう力だよこりゃ、たった一撃の拳を受け止めるのでやっとだなんて新一に嘲笑われる
カタカタと刀を震わせながらも拳を受け止め跳ね返す。後ろを振り返れば爆風で壁に穴があいている
ウル「ヒュー、ブラボー」
思わず驚きの声を上げ少年に向け喝采をおくるようにぱちぱちと拍手をする。
イイねー、戦いはこうじゃないと面白くない。
俺は再び刀を構えグっと体勢を低くしつま先に力を入れいつでも攻撃に対応できるようにする
少年の周りには無数の黒い球をができ一斉に俺を襲う。それを待ってましたと言わんばかりに駆け出しひとつ残らず刀で斬っていき、攻撃を囮にして正面突破してくる少年を斬る
ウル「あり?手応えがねえな」
斬られた部分は一瞬にして消え、無尽蔵かつ無造作に無数の流星と円盤を再び俺に叩きつける
ウル「チッ、こりゃきりがねえな」
バットで球を打つように無数に飛んでくる流星を少年に向けて打ち飛ばす
ウル「おらよっ!お返しするぜ!!」
飛ばされた攻撃を自身を守るように竜巻状のもので取り囲み一斉に薙ぎ払う
アゲハ「…あまり時間はかけてらんねえ。
次の攻撃で、一気にカタをつける」
ウル「あ?一気にカタをつける、だと?
おいおい、そいつァ困るな…。
せっかくここまで楽しくなってきたのによォ!!!
もっともっともっと楽しもうぜええええ!!!」
狂ったように笑いながら一心不乱に刀を振り回し少年に斬りかかっていく
ウル「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!オラオラオラ!!!!まだまだ殺れんだろっ!!!」
ゾクゾクと鳥肌が立つように快感が身体中に流れる。斬っても斬っても面白いように傷は一瞬で消え、それと同じくらい少年に殴られ蹴られるがそれを俺は避けることなく全て攻撃を嗤いながら受けとめ
少年の髪を鷲掴みし床に思いっきり叩きつける アゲハ「ガッ」
ウル「ククッ、おら立てよ!
こんなもんじゃねえだろ!!」
アゲハ「クソ、マジでバケモノ並の強さだな…!!」
少年に追撃を仕掛けようと刀で斬りかかるが寸前で避けられ、逆に回し蹴りをくらい壁に吹き飛ぶ
アゲハ「はあ、はあ、っはあ…ぁ」
砂埃をはらって立ち上がり首を左右にポキポキッと鳴らし手足をぶらぶらとさせふっと短く息を吐く。もう、限界みてえだな。少年を見ながら小さく呟く
刀を胸の前に出し右手に添えるように左手をおきゆっくりと目を瞑る
自身から風を巻き起こすようにビューと辺りに強風が吹く、風で髪が巻き上がりカッと目を見開き
ウル「─────卍解 天墜銀陰(てんついぎんいん)」
天から堕落した悪魔が俺の背後にその漆黒の羽を羽ばたかせ宙を舞う、ように見えてんだろうなあの少年には。クククッ
多分少年のあの力は長時間はもたない
元に先程から少年の息はあがり立っているのもやっとという状態だ
ウル「少年、久しぶりに楽しめたぜ。これで終わりだ」
少年に称賛の言葉をかけ風をきる速さで一瞬で少年の間合いに入り
ウル「チェックメイト」
床に大の字になって倒れる少年と
そ のそばに駆け寄るお嬢ちゃん達を見下ろし、くるっと後ろを振り返り壁にあるスイッチを押す。部屋の背景がサイレン世界からモノクロの世界にもどる
ウルsideend
新一side
──────よお、新一。俺はそろそろ戻るぜ
──────ああ。俺はもう少しコイツ等と遊んでる
──────ククッ、お前ってほんと戦い好きだよな。んじゃ、俺は上の階でゆっくりしてるよ
──────それはお互い様だろ?
ウル「ククッそうだなでも、「白い俺と黒い俺、どっもあるから楽しいんだよ」」
二人の言葉が重なり俺は新一の身体から幽体離脱するように実体化し上の階へと上がっていく
ウルティアが上の階にあがるのを確認して俺は彼等に視線を戻す。
新一「俺にかすり傷つけられなかったのは残念だったな、だがまあ暇つぶし程度に遊んでやるよ」
アゲハ「暇つぶしって、つーかアンタあんなのがいるなんて反則だろ!!」
あんなのとはウルティアのことだろうか?
新一「アイツは俺で俺はアイツ、二人で一人なんだから反則も何もねえだろ?
それに、弱者が何を言おうとそれは負け犬の遠吠えにしかならねえんだよ。悔しかったら強くなることだな」
アゲハ「確かに、アンタは強いよ。俺が知ってる中で断トツに。でも、次は絶対負けねぇ」
新一「ふーん、まあ期待してるよ」
挑戦的な笑みを浮かべ俺は髪にバンダナ のようなものをつけてジッと俺を観察するように見ている彼に視線をうつす
新一「そういや、見ない顔だな。お前、名前は?」
カブト「…霧崎 兜だけど。アンタは?」
きりさき かぶとか、なるほど面白い男だ
人の良い笑みを浮かべて俺は彼に手を差し出す
新一「俺は、工藤新一。よろしくなカブト」
アゲハ「ええ?!なんで初対面のカブトには懐いてんだよ?!」
コイツはいちいちツッコミをいれないと喋れないのか、ギャーギャーと口やかましい彼を横目に俺はカブトとお喋りをする。と、それまで静かにその様子を眺めていた彼女が俺に話しかけてくる
雨宮「新一さんはどうしてそこまで弱い人に対して…」
新一「むかつくんだよ弱いやつを見てると、捻り潰してやりたくなるね。
なにもできないくせに、口だけは達者で
弱い奴で群れて人の周りをハエみたいに飛び回る
潰したくなるのさ”プチ”っとね」
彼女の言葉を遮りニコリとも笑わず無表情でそう言って丁度近くを飛び回るハエを言葉の通り“プチッ”と殺す
新一sideend