焼け野原に存在する簡素な建物の列、あの最初の空襲のあと幾度となく空襲を受けたこの町の仮設住宅と言ったところだ。
横に並んだその仮設住宅の一番左端、海岸に最も近い場所に友希は今住んでいた。
「そんじゃ、俺は学校行ってくるから、ここは頼むぜ!ヲシャ!」
「ヲ!」
最初の空襲から早二年、鎮守府に艦娘が増え鎮守府近海の制海権を奪還した現在、やっと町の方の復興が始まったのだ。
現在友希は鎮守府が開いている学校に通っている。
来年高校生となる友希の希望は、深海棲艦と戦うのに関われる職種である提督を養成する学校である。
友希はまだ自分の家で家事をしてくれる、あの日助けた彼女が深海棲艦ヲ級だと知らなかった。
ヲ級自身も正体がバレないよう必死に特徴を消しており、現在は目立つ頭の発艦出来る被り物も収納しているため回りからみると色白の美人なのである。
日本語も覚え始めており、口癖としてヲが残っている。
友希がこのヲ級を呼ぶためにつけた名前がある。それが先程のヲシャである。
「あらヲシャさんこんにちは」
「コンニチワ、スズキサン」
片言な日本語で仮設住宅に住む人と挨拶する。正体がバレていないのは回りから見たら在日外国人だとしか思えないことと、市民には未だに深海棲艦は悪というイメージを叩き込むため人型の深海棲艦の姿は公表されていないのである。
はっきり言ってしまえば、この仮設住宅を破壊することぐらい今のヲ級ことヲシャにも可能である。
7-4-5左から、現在ヲシャが格納している艦戦、艦爆、艦攻の数である。あの空襲の日、この三倍以上の艦載機を乗せたヲ級は敵水雷戦隊旗艦の魚雷により大破、舵のコントロールが効かなくなり結果的に浜辺へと打ち上げられていた。
発艦していた艦載機は母艦損失により未帰還、予備として残していたこの艦載機だけが残されていた。
発着艦は可能な大破、友希に助けられた後は陸上形態として深海棲艦の能力は一度機能を停止していることにより、現状深海棲艦としての残っていた能力はそのままである。
しかし、ヲシャはこの二年間友希という人間と過ごすこにより人間を殺すことへの抵抗を覚えてしまった。
最初は体がろくに動かせない状態だったから人間を始末出来ないことは仕方がなかった。
しかし、体が動く頃には友希という少年の心の温かさが移っていた。
「ソノオコメヲイタダキマス」
「ん?三千円な」
「コレデ」
「あい、丁度受け取りやした」
買い物を済ませたヲシャは自宅に帰り友希が帰ってくるまでにご飯の用意をする。
ヲシャは、今の生活に満足していた。