アニメ見てて思い付いたネタを書いただけ。タグでピンときた人は仲間。
 メインで執筆してるのが別にあるので続きは……更新はかなり遅いです。更にはアニメ1、2話の内容で多分終わります。設定は一応考えてますが、投稿時点で原作18章の途中しか終わってないので続けるつもりは無いです。それでもOKな方だけどうぞ。
 上記の内容と、タグを見て駄目な方はブラウザバックを。


 一応保険としてアンチ・ヘイトを付けてます。明確に貶めるつもりはありません。

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1万字ちょい有ります。
無理して読む必要は無いので気に入らないならブラウザバックをどうぞ。
序盤からクライマックス()


1枚目 貴公との約束を

 無機質さを感じさせる乳白色のレンガで正方形に囲われた部屋。窓には強固な鉄格子が嵌められ、外へ繋がるたった一つのドアは冷たく重厚な鋼鉄で出来ていて、一目で牢屋か、監禁部屋だと解るような場所に、その少女は居た。

 晴れ渡った空の様な美しい長髪と純粋な碧眼であり、胸には同じく蒼く煌めく大きな宝石の様なものをつけ、汚れ一つ無い純白の服を着た、モナリザの様な美しい手をした少女だ。

 その部屋には、簡素なベッドが一つと、トイレとシャワーの為の小さな個室、そして軽く3桁はありそうな程の本がいたるところに積まれていた。

 ベッドと個室は直ぐにこの部屋備え付けの物であるのは解るだろう。だが、逆に言えばいくつも有る本以外に私物といえる物が見当たらないのだ。更に言えば、その本を良く見れば全てが印刷ではなく直筆なのが、ますますこの部屋の異質さを浮き彫りにしていた。

 だが、それでもその部屋に居る少女は、楽しそうに、笑みを浮かべながら、何度も読んだのであろうくたびれた本を捲っていた。

 

「…………ふふふ、やっぱり何度読んでも面白いです。………明日には、お別れなんですね……」

 

 少女は、そう呟くと少し、悲しそうな顔を浮かべた。

 

「持っていけないのは残念ですけど、私の心の中に、しっかりと記憶してます。最近なら、趣味と言い切り、何の見返りも求めず過酷なトレーニングの果てに一撃で全てを倒すヒーローさんのお話。逆に、正義を成すために小を切り捨て大を救い続けた果てに、万能の願望機に全てを託して、でもその願望機が壊れ果てていたため、夢を捨てた戦闘機械になりきれなかった人(正義の味方)の話。そしてその意思を、夢を受け継いだ、受け継いでしまった一人の青年とその果てに、自分殺しをなそうとする人類の防衛装置となった人(正義の味方)の話。

 記憶力には自信がありますから、教えて貰った、本当に色々な物語は全部覚えてます。でも、私が一番好きなのは、直接聞かせてくれる、ーーーーの体験した冒険のお話です」

 

 少女は、目を閉じ、ゆっくりと言葉にしながら一つ一つの物語をもう一度心に刻みながら思い返していた。

 喜びがあった、怒りがあった、哀しみがあった、楽しみがあった。

 思いがあった、願いがあった、理想があった、夢があった。

 家族愛があった、友愛があった、恋愛があった、博愛があった。

 善があった、悪があった、恩返しがあった、復讐があった。

 平穏があった、平時があった、平和があった、日常があった。

 非日常があった、闘争があった、戦闘があった、戦争があった。

 

 

 

 

 

「――――私に、文字を教えてくれた事、常識を教えてくれた事、道徳を教えてくれた事。

 私の、初めての友達になってくれた事、初めて誰かと一緒に食事を食べた事、初めてプレゼンと貰った事。」

 

 そして、少女はいつしか、自分の記憶(物語)を思い返していた。

 ーーーー貴公、これが文字である。これから、共に文字を学ぼう。

 ーーーー貴公よ、これからは外の世界での一般的な常識を教えよう。

 ーーーー貴公よ、では駄目な事は何故駄目なのか、良いことは何故良いのか学んでいこう。だが忘れてはいけない。今から貴公に教えるのは一般的な道徳である。

 

 ーーーーこんな私でも良ければ、喜んで貴公の友となろう。

 ーーーー友よ、一緒に食事をしよう。メニューは簡素にオニオンフープとオニオンフライ、それとパンだ。

 ーーーー友よ、私からのプレゼントだ。これはゾロアスター教と言う物について私が書いた本だ。これもまた道徳の勉強である。次に来るときにはギリシャ神話の本を書いてこよう。その時までに貴公はこの教えをどう思って、どう感じ、どう考えたのか聞こう。

 

 

「――――ふふふ、■■■■は覚えていますか?数年前、何気ない会話の中でした、ちょっとした約束。」

 

 

 ーーーわたしも、この本の様に冒険してみたいです。

 ーーーーふむ………。であればいつか私と貴公で何処かに行こうか。

 ーーーーあっいいですね。約束ですよ!

 ーーーーあぁ、約束だ。

 

 

 少女がその約束を思い出していた。少女が言っていたように、その約束はちょっとした会話の中でかわされた程度の約束だった。何年も前の約束だった。忘れてても何ら不思議ではない約束だろう。

 

 唐突に、部屋が大きく揺れた。

 

「きゃぁ!……どうしたんでしょう?()が乱気流にでも巻き込まれたんでしょうか……」

 

 そう口にしている少女であるが、この部屋でも揺れを感じる程にこの船を揺らせる乱気流など無い事など知っている。友達から聞いた話ではこの船は移動要塞であり、自然の風程度ではどれ程強風であろうと揺るぎはしないはずなのだ。

 であるなば、自然の事では無いのだろう。魔物だろうか。いや、まさか……そんな思考が少女の脳内を駆け巡る。

 きっとさっき考えていたからそう思ってしまうだけ。あんな約束を覚えてる筈がない。だからあの揺れもただ魔物に襲われただけの事だ。だって、だってもし考えてる通りなら、あの人は裏切った事になる。積み上げた半生を投げ捨てる事になる。追われる事になる。だから、きっと違う、違って欲しい。

 理性として、少女は否定する。優しい少女は、あの人のためを思って否定する。

 だが、少女の心は、本音は、願いは

 

 

 助けて!!

 

 

 

 と、叫んでいるのを、何よりも少女自身が自覚していた。

 

 

 そして、揺れから数分後

 

     ガシャン……キィィィィ

 

「っ!………」

 

 

 ――――友よ、約束を果たしに来た

 

 そう言って、鋼鉄の扉を開け、入ってきたのは、一言で言えば

 

 

 

 

 

玉葱の様な全身鎧(フルアーマー)を着た騎士だった。

 

 

 

 

 

 

声は鎧のせいでこもっているのもあって中性的に聞こえるため、性別は判別出来ないが、それでも優しい声音で少女へ手をさしのべた。

 少女は、口に手を当てて驚いた顔をした後、酷く顔を歪ませ、そのままうつむいき、ポツリポツリと言葉を発し始めた。

 

「………約束を覚えていてくれたことは嬉しいです。……でも、そのせいで帝国を敵にまわすんですよね?」

 

 その言葉に対し、玉葱騎士は、「ふぅむ」と少し唸った後、話を切り出した

 

ーーーまぁ、そうなるな。

 

 最初は、肯定の言葉からだった。

 確かに、この少女は、この広い世界に無数に存在する国家の中でも特に国力、軍力、権力が高い帝国という国の船で厳重に保護(・・)されているのだ。そしてこの玉葱騎士は、明らかに襲撃という形で少女の元まで来たのだ。それもこの玉葱は本来帝国に所属している高名な騎士である。普通に考えれば完全に帝国にたてついた裏切り者である。

 

「……なら、騎士様ならまだ引き返せる筈です!」

 

 そう、普通なら(・・・・)である。残念ながら見た目からしてこの玉葱騎士は普通では無い。それこそ要因は様々ではあるがトラブルを多発する。そしてさも収穫期の玉葱の如く、そのトラブルを帳消しにして有り余る程大量の功績を積み上げている。そしてこの少女はそれらの話も聞いているため、気付いていた。

 まだ引き返せるラインである事を。この程度なら上が揉み消してくれるレベルである事を。

 

ーーー友よ、貴公は知っているであろう。私はしっかりと選択する方であると。

 

ーーー既に覚悟など完了している。

 

 だが玉葱騎士は動じない。しっかりと芯の通った力強い声で、その思いを伝えてきた。

 そして、そのままうつむく少女の手を強引にとり、今度はイタズラっぽい声音で宣言した。

 

ーーーそれに、普段の私なら貴公の意見を尊重するところだが既にこの身は紫玉葱(狂った闇霊)である。

 

ーーー知っているであろう?悪い騎士()であれば、城で守られている(檻に閉じ込められている)美しい()拐う(救う)ものだ。

 

ーーーもう一度言おう。()よ、約束を果たしに(連れ去りに)来た。

 

「っ!!……なら、しょうがないですね。ーースゥーー連れ去って(助けて)ください、悪い騎士様(カタリナ)!!」

 

 再び言われた宣言に、うつむいていた少女は息をのみ、深呼吸と共に顔を上げた。そして、その目にはうっすらと涙を滲ませながら、輝く様な笑顔で、玉葱騎士(カタリナ)の胸に飛び込んだ。

 

ーーーあぁ、ここから連れ去って(助けて)やろう、お姫様(ルリア)

 

 こうして、騎士カタリナと少女ルリアの逃走劇が始まった。

 新に、若き天才団長と、謎の生物が仲間になる、3時間前の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちだ友よ」

 

 カタリナは現在ルリアと一緒に船の中からの脱出を試みていた。一応道順は事前に調べたため、スイスイと目的地まで進んでいる。

 

「カタリナ……」

 

 が、しかしいくらなんでも順調すぎる(・・・・・)。それに気付いたルリアが一層に強くカタリナの手を握った。

 

ーーーいや、()なら私が強行手段に出るなどとうに想定しているだろう。なにせ知略で上に昇り詰めてきた強者だ。私がそう信頼している様に向こうも私が来ることを信頼……いやこの場合は確信していただろう。もう少しで小型艇の格納庫だがその前に広い空間が存在する。恐らくそこに居るだろう。だが脱出するにはそこしかない。

 

 カタリナが覚悟を決めて通路から広場に出れば予想通り帝国兵が進路を塞ぐ形で数十人並び、その先頭に明らかに上官であろう服装を来た男性が立っていた。

 

「困りますねぇそれを勝手に持ち出されるのは」

「………………………」

「黙りですか。まぁ良いでしょう。それより引き返すならまだ間に合いますよ?確かにそれの価値や危険性は非常に高いですが、それでもあなたを失うのは帝国にとって少なくない損害なのですよ。」

「私は既に何の罪もない兵達を手にかけたのだぞ?確かにここまでならまだ無かったことには出来るのだろう。だが、私がここでどう答えるかなど、貴公ならもう解っているのだろう」

「……えぇ、確かに貴方がどう答えるかなど解りきってましたが上に報告する際聞かないと不味いのですからねぇ。」

 

 そう言った先頭の男、ポンメルンはカタリナとの会話を辞め、視線を外し、隣のルリアへと新たに視線を向けた。

 

「良いんですか?お前は危険な兵器なのですよ。そんな危険な()が帝国の管理下から盗まれたとなれば多少強引な方法(・・・・・・・)を用いてでも取り返さなければいけないんですよ。つまりお前が逃げる先々の人に迷惑がかかるのですよ。いえ、そもそも私達帝国が何もしなくてもお前があの時(・・・)の様に全てを殺し尽くす可能性だって十分に高いのですよ。そしてそれらを踏まえて細心の注意を払って行動したところでどうあがいても隣に居るお前の大切な存在は常に命を脅かされるのです。そう、お前のせいで不幸があちこちに撒き散らされるのですよ!」

「っ!それ……は」

 

 ポンメルンはカタリナを説得するのは最初から諦めていたためか、矛先をルリアへと変えた。

 精神攻撃は基本中の基本だ。そしてカタリナがルリアに豊かな心と豊富な知識を与えたためにその攻撃は効果抜群となっている。

 ルリアは、想像した。想定した。帝国が自分を捕らえるために、逃げた先の島に攻撃する可能性は高い。そうなれば島の一般の人達が巻き込まれてしまう。何処かの某次元単位で管理する裁判所と警察を混ぜたような組織の様に非殺傷設定など存在しない、兵器は兵器だ。全てを壊し、潰し、殺すだろう。全ては、自分という存在が逃げたために。

 そして何より、友達であるカタリナが最も命の危機に晒される。それは嫌だ。なら、この手を振り払って、元の部屋に戻ればまだ無かったことにできる……

 

「それは違うぞ。ルリアは強引に拉致されたのだ。帝国は連れ去られたルリアを必死に探すだけだ。その過程で起こる死は、不幸は、悲しみは全てテロリストである私の責任だ。他の誰の責任でもなく、疑いようもなく、極悪人である私、カタリナのせいなのだ!」

「っ!!そこまで解っているなら何故!!」

「何故?ふん、私にとってそこらの何も知らぬ有象無象の命よりも友であるルリアが大切なだけだ。どうだ、悪党らしい動機であろう?さぁ貴公らが恨むべきは私だけだ!帝国が討つべき極悪人は私だけだ!世に不幸を撒き散らすテロリストは私である!!」

「カタリナ……っ」

「友よ、貴公はどこまでも被害者でしかないのだ。責任を感じる必要はない。さぁ、ここを通してもらうぞ!」

 

 ルリアの葛藤を吹き飛ばすほど、カタリナは力強く宣言した。

 その固い意思をそのまま殺気へと変え、立ちはだかる帝国兵とポンメルンへとぶつけた。

 

「……騎空艇の中で貴方と戦闘するほど愚かな事はありませんよ。通りたければ通りなさい。帝国は常に貴方達を追いかけます」

「………あっさり通すではないか。貴公は罠を張り巡らせ獲物を仕留める計算高き獣狩りの狩人だと思っていたのだが」

「そこら辺の小動物と違い貴方はその罠ごとねじ伏せることが出来る猛獣でしょう。下手に暴れられてこの騎空艇ごと落とされてはたまりませんからね。精々これから追っ手に怯え眠れぬ夜を過ごし続けなさい」

「では精々追っ手に備えて夜は夢を見るほどぐっすりと眠ろうではないか」

 

 だが、ポンメルンはため息を吐き首を横に振り、手払い一つで部下に道を開けさせた。

 ポンメルンがカタリナ等を素通りさせる理由は飛行艇ごと破壊されかねないからだ。

 この騎空艇は確かに外壁は恐ろしく堅くつくられている。当然中の構造もそれなりに丈夫に作られているが、それなり程度なのだ。つまり外からの衝撃は強いが内側からの衝撃はそこそこでしかないのだ。

 ポンメルンはカタリナの実力をもってすれば何時までも雛鳥を閉じ込める卵の殻の如く容易に真っ二つにしてしまうことを良く知っているのだ。

 そしてカタリナとしても立ち塞がるならこの騎空艇ごと斬るのも致し方なし。と思っていたので流石はポンメルンだ。と警戒度をあげながら威風堂々と帝国兵の間をリルアを連れ通っていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

「対象の乗った騎空艇の行方は?」

「は!順調に捕捉しています!」

「宜しい。用意した奥の手を使うには室内は狭すぎますからね。出来れば保険を使わないで片付けば良いですが……まぁ無理でしょうね。あれでも帝国の中でも最上位クラスの実力を持つ騎士ですからねぇ。」

「ですがあの……」

「どうしました?何か問題でも?」

「いえその………対象の騎空艇が恐らく墜落してる真っ最中だと思われる動きをしているのですが」

「……………………は?」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「カタリナって騎空艇飛ばせたんですね」

「一応小型の免許なら昔にな」

「へぇ~ちなみにさっきから鳴り響いてるアラートは何の警告なんですか?」

「うむ、私にも解らん。なにぶん昔取った物だからな、見たこともない警告ランプだ」

「つまり今墜落中なんですか?」

「まぁ、そうなるな」

「これが……これが墜落する感覚なんですね!この感覚こそが、じぇっとこーすたーとかで体験するたまひゅんって感覚なんですね!!」

「ハハハハハハハ!早速知らない感覚を知ったな!」

「はい!」

「太陽万歳!」

「太陽ばんざーい」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 暖かな太陽の陽射しが降り注ぎ、爽やかなそよ風の吹き抜ける草原に、二つの影が浮かんでいた。

 

「なぁジータ、今のって」

「うん、普通に墜落事故だったよね」

「黒煙吐いて森の中落ちていっちまったな」

「…………一応見に行ってみよう。生きてるかもしれない!」

「(けっこう勢い良く落ちていったし無理じゃねぇかな)」

 

 一人は絹の様な艶やかな金髪に意思の強そうな琥珀色の瞳をした、ミロのヴィーナスの様に美しい手をした少女だ。

 もう一人、いやもう一匹は一言で言えば動いて喋るデフォルメしたドラゴンのぬいぐるみであろう。はっきり言って謎生物だ。

 先ほど一人と一匹は、ジータの父親から届いた手紙を平原にて広げ、夢を馳せていた。そしてその最中に空から一つの小型騎空艇が森へ落ちるのを目撃したのだ。

 ジータはもうしかしたら生き残っているかもしれない。と考え、あの森は魔獣の住みかだから助けにいかないと。という生来からの優しさと希望的観測を胸に墜落現場まで行くことに決めたのだ。

 そして、一人と一匹が森に入った頃、大量の小型騎空艇と中型輸送騎空艇が数隻墜落現場に向かって高速で飛んできた事を一人と一匹は気づかなかった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「うぅぅぅ……気持ち悪いです」

「ふむ、友にはまだカタリナ式緊急脱出は早かったか」

 

 燃え盛る元小型騎空艇から数m離れた場所にて、無傷のルリアを小脇に抱えた焼き玉ねぎ(少し煤けたカタリナ)が歩きながらそう言った。

 

「友よ、そろそろ一人で歩けるか?」

「うぅ……歩くくらいなら出来ると思います」

 

 持ち方は優しくないがおろすときは非常に優しくルリアをおろす騎士の鏡カタリナ。

 少しふらついた足取りをしているルリアの手を引きながら、二人は進んでいった。

 

「これから何処にに行くんですか?」

「元々はこの島の村に住んでいる師の所まで騎空艇で行く予定だったのだ。そして落ちる最中に草原とその向こうに例の村が見えたのできっちり位置と距離を覚えておいた。そこそこ歩く事になるからキツくなったら遠慮無く言いたまえ」

「はい、解りました」

 

 二人は歩く。一人と一匹は走る。物語の始まりまで、もう少し。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 最初に気付いたのはカタリナだった。

 

「友よ、下がっていろ。前方から何か来る」

「は、はい!」

 

 ルリアを後ろに隠しながら今まで手を繋ぐために左手に持っていた独特な形をした大剣を両手で持ち直し、半身になり、剣をおおよそ鼻の高さに来るようし水平に構えた。

 ほんの1~2秒程で灰色だった剣身が淡い白色に発光し、それと共に剣か嵐を纏ったかの様に風が大剣全体を包み込み、ヒュゴォォォォォォという音を発していた。

 万全の体制となったカタリナの前に茂みを掻き分けて現れたのは。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「あ、「カタリナ!!」じゃねぇか!」

「おお……おぉ!!ジータ(妹弟子)殿とビィ殿ではないか」

「カタリナ~」

「おっと、ハハハハハハハ元気にしていたか?」

「はわわ、凄い音しましたけど……」

「毎回こうだぞ」

「うん、元気いっぱいだよ」

「そうかそうか、ではそろそろ学習したまえ」

「えへへへ。嬉しくってついつい」

 

 草原から墜落現場まで向かっていたジータ達と、墜落現場から草原の向こうに有る村に向かっていたカタリナ達が出会うのは必然であろう。

 そして、ジータ(ついでに謎生物ビィ君)とカタリナはお互い知り合いのようであり、顔(と鎧姿)を確認したとたんにとても驚いた様に名前を呼びあった。カタリナの台詞からジータはとうやらカタリナの妹弟子、つまりジータの師匠がカタリナの師匠という事だ。

 感動の再会の様に突進してくるジータをカタリナは温かく受け止めた。ただしガン!という音が響き渡ったが。しかもビィ君(いわく)毎回鎧に突撃しているらしい。

 陽気な口調でその事を(いさ)めるカタリナに対し、ジータは胸にうずくめていた顔を上げた。そのおでこは赤くなっており、若干涙目ではあったが、満面の笑みを浮かべて嬉しさを表現していた。

 

「さて、友よ、こちらが前に私が言っていた妹弟子のジータ殿と、ビィ殿だ。ジータ殿、ビィ殿よ、こちらが前に言っていた私の友であるルリアだ」

「宜しくね」

「よろしくな!」

「よろしくお願いします!」

 

 二人の少女と一匹はカタリナの紹介を皮切りにお互いに手を膝の上に置きペコリと深く腰を曲げ丁寧な一礼をした。

 

「ところでカタリナ」

「なんだジータ殿」

「私がカタリナから聞いた話だとルリアちゃんって確か帝国に監禁されてる筈だよね?」

「ん?なに、拐ってきただけの話だ。これで私も規格外玉葱(お尋ね者)であるな。ハハハハハハハ」

「」

「いやそれ笑ってる場合なのかよ!?」

 

 ジータが満面の笑み(目は笑っていない)をカタリナに向けながら質問し、それに対してカタリナは朗らかに笑いながら答えた。ジータとビィは絶句した。

 

「あ!もうしかしてさっき墜落してた騎空艇って」

「ああ。十中八九私達の乗ってた騎空艇だろう」

「軽い!凄く軽いよカタリナ」

 

 ジータの言葉もどこ吹く風と軽く受け止めるカタリナにジータも呆れ顔に。そろそろ頭空っぽ疑惑が浮上しそうである。

 

「!…静かに」

 

 唐突に、カタリナが静かにのジェスチャーを取った。最初は首をかしげたジータだったが、耳をすませ、すぐに気付いた。

 

「大きい足音が近付いてきているな……しかも木々をなぎ倒しながら。この足音に聞き覚えは?」

「………いや、聞いたことない足音だよ」

「であれば帝国からの刺客と考えるのが無難であろう。村まで走るぞ」

 

 当然カタリナは逃げ切れるとは思っていない。いや、きっとカタリナだけなら逃げ切るだろう。ジータとビィも、この森が庭同然なのもありカタリナの全力にギリギリついてこれるだろう。だがルリアはそうはいかない。そもそも今まで監禁されていたルリアが今のところしっかり付いてきているだけでも立派であろう。

 少しずつ縮まっていく距離。ついにはルリアの耳にもバキボキと木をなぎ倒しながら近づいてくる大きな足音が聞こえる程に。

 

ーーー不味いな……追い付かれるまで後2分といったところか。追い付かれるのは予想はしてたが思ってたよりも速いな。仕方あるまい、殿をやり時間を稼ぐ。

 

「ジータ殿、このままでは追い付かれる。私が殿をやる、その間に村の師匠の元に行け。既に話はつけてある、なにも言わずともあの師匠なら察してくれる。行け!」

「っ!!……解った!」

「!?カタリナ!」

「安心しろリルア、ジータ殿ならきっと村まで送ってくれる。……ハイヤァァァァ」

 

 カタリナは殿として180度ターンし、大きな足音が迫ってくる方向に大剣の切っ先を向け、先程のような構えをとり、嵐を纏った。

 

「さぁ、こっちだよルリアちゃッ!?危ない!!」

「キャッ!!」

「ウワァァァ食べら」

「何!?」

 

 しかし、ジータ達の進行方向には、まるでルートを予測して予め潜伏させておいたかの様に、今追ってきている足音と同じ足音のナニカが、横から突如現れ、一塊になっていたジータ達をさらっていった。

 その時のジータ達の声を聞き、振り向いたカタリナだったが、既にジータ達を横から襲ったナニカは、破壊の痕跡だけを残し、見えなくなっていた。

 幸いにもナニカが通った後は非常に分かりやすく破壊され尽くしていたので、直ぐ様カタリナは追いかけた。

 しかし、結果的にジータ達を襲ったナニカを追いながらも少しずつ距離を離され、別個体のナニカに徐々に距離を詰められながら追われることとなったカタリナは、自分達の旗色が悪くなっているのを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 追いかけたカタリナは、急に森の中であるにも関わらず、木が生えていない視界の通った平原に出た。そしてその平原にて、ナニカの正体が解った。

 それは、全体的には狼や犬に近いだろう。体高はおおよそ2.5m程、体長は尻尾を含めておおよそ3m程だろうか。体は殆どが黒に近いグレーの毛並みに覆われている。

 だが、特長的なのはその大きさではない。顔は真上から見れば二等辺三角形の様な形をしており、何と目が左右に3つ、計6個ある。更にはその二等辺三角形型の顔は、頂点から底辺までの二辺がほぼ全て口となっており、凶悪な牙がズラリと並んでいる。

 そして腹の部分は、本来あるはずの肉と毛が無くなっており、肋骨と、蠢く筋肉が丸出しになっていた。

 

「サリヴァーンの獣だと!?」

 

 そのナニカの名は、サリヴァーンの獣。本来なら、別な世界に居る筈のゲロ以下の糞犬(獰猛な番犬)である。

 

 カタリナが到着した頃には、カタリナに背を向けているサリヴァーンの獣の視線の先に、明らかに致命傷であろう傷から、夥しい量の血を流すジータ。泣きながらジータにすがり付くルリアとビィが居た。

 

「クソォォォォォォ!!ハァァァァ!!」

 

 それを見たカタリナは、後ろから間近に迫るソレを無視し、腰にくくりつけてあった不思議な形の鈴を右手につかみとった。そのまま右手を大きく天に振り上げたとたん、その鈴を基点に、黄金に輝く雷が産み出された。その雷こそ、太陽の攻撃的な方面の偉大さを象徴するもの。そして、その雷を、背を向けた獣へと投げつけた。

 

Gaaaaa!!

 

「カタリナァ、ジータが、ジータが!!」

 

 雷が直撃し、驚き叫ぶ獣。そしてそれを切っ掛けにビィがカタリナに気づいたが、ルリアは集中してるのか、目を閉じ、祈るように胸の前で手を合わせていてた。

 

「グッ!」

 

 後ろから追ってきた獣に轢かれるカタリナの声。

 前方宙返り5回ひねりをしながらカタリナの前方に居た獣を飛び越え、ビィとルリアとジータ(故)を飛び越え、両足揃え無事着地した。当たった瞬間に自ら飛んだのもあり実質ノーダメージだった。

 すると、どこからともなくポンメルンの声が聞こえ始めた。

 

「昔に貴方が話していた獣。それの再現、クローンですよ。まだプロトタイプですがねぇ。あぁ、よもや、『姿を見せろ、卑怯者』と言う臭い台詞など吐きませんよねぇ」

「ふん、私の前で姿を晒す事の危険性を良く知っている相手にその様な事言わぬさ。言えば出てくる様なたまでもあるまい?」

「えぇ、その通りですよ。さて、早速何の罪もない憐れな村人が巻き込まれ、その命を散らした所ですねぇ。それも貴方のせいで、ですが」

「それで揺さぶりのつもりか?既に覚悟は決めてあると申した筈だが、はて、貴公の記憶力はそこまで弱かったか?」

「……大人しく引き渡す気は?」

「……私がやすやすと友を売り渡す奴に見えるか?」

「…………ええ、今度こそサヨウナラですねぇ。やりなさい」

「あぁ、サヨナラだ。………太陽万歳!!!」

 

 カタリナVSサリヴァーンの獣(プロトタイプクローン)2匹の熾烈な戦いが始まった。




始まった(同じ話で描写されるとは言ってない)

こんな感じになります。次の更新は1ヵ月近くお待ちください。1ヵ月使ってもこのクオリティーなのでこれ以上は期待しないでください、お願いします。

Q.メインの方より丁寧やんけ!
A.メインの方はギャグ寄りでこっちはシリアス寄りだから(震え声)



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