お粥
雁夜は夢を見ていた。一人の男が三人の少女に向かって何か喋っている。
「レクレス、ブレイブ、クリュエル。私達の処分が決まったよ、廃棄だそうだ……。」
その言葉に二人には諦めの表情が、一人には不満の表情が現れていた。
「そんな!!何故ですか!?私達の兵器としてのレベルはあいつ等が一番解っているはずなのに!?」
水色の髪の少女が叫ぶ。男はただ言った。
「兵器に余計な感情はいらない、兵器に感情を持たせるお前自身も欠陥品だ。そう言っていたんだ。」
「そ、そんな……!!」
「すまない、お前達だけでも助けたかったが、無理だった、せめてあれが完成していればよかったのに……。」
「……あれが完成していれば博士は死なずに済むんだよね?」
紫色の髪をした少女が博士に尋ねる。
「何を考えている。」
男の問いに紫の髪の少女が答える。
「簡単なことだよ、僕が感情を消して兵器として完成すれば、あいつ等も僕達に利用価値が有る、って考えてくれるかもしれない、その間にあれを完成させてレクレスに移植できれば、ブレイブと博士は助かる。」
「しかし私とブレイブの為にお前たちを犠牲にするなんて私には……。」
「……私も反対だ、自分の家族を見殺しになんか、私には出来ない……。」
男と水色の髪の少女は反対しているが2人の意思は変わらない。
「反対しても無駄です。私達は、博士にも、ブレイブにも生きて欲しいから。……さよなら、お父様。それにブレイブ、貴女は勇気ある者ですよ、それを忘れないで、涙なんか流さないで。」
「今のは、一体?」
雁夜さんが目を覚ました場所は自身の部屋でパジャマを着てベットで横になっていた。
(俺は確か昨日地下で蟲爺とサーヴァントを呼びだして、そのサーヴァントがいきなり噛みついてきて爺を殺して、魔力切れで気絶したのか?)
大体会っています。後もう一つ異常が有るのですけど解りますか?
「!!?身体の中の刻印虫が居ない!?なのに魔術回路が有るだと!?それに左腕も、左足も……。」
そう言ってまだ右腕より動作が遅い腕を上げた時、自分の腹の上辺りにいる。何かと目が会った。
「むにゃむにゃ~、マスター‥‥‥、むにゅ。」
そしてそのまま二度寝しようと、お腹の上に頭を落としました。
「何しているんだ!!お前はーーーーー!!?」
変態だ!いいえ、バーサーカーです。
「ほえ~?おはようございます~?マスター、よく眠れましたか?」
「……と言う訳で、あのくたばりぞこない蟲爺を消☆滅させた後、倒れたマスターをお部屋まで運んで着替えついでに身体を拭いた後、ワクチン系治療用ナノマシンを打ち込んで左側の麻痺を治して、蟲をぜーんぶ駆除したのですよ~。後ナノマシンはマスターの体の中で疑似の魔術回路として動いています。クソ蟲と違ってマスターの体を蝕むことは有りません、ブイッ!!」
説明を聞いた雁夜は頭が痛くなった。まぁ一つだけ言えるのは……。
「お前って本当にバーサーカーか?」
現代科学や魔術でも雁夜の命は残り一ヶ月程度のはず、だがいまの雁夜の体は昨日とは別人の如く変化していた。
麻痺していた左半身は完全とは言えないがまともに動くようになり、白髪こそ治りはしなかったが顔筋の麻痺はなくなり、死相のような顔は見られなかった。
いや、一番の驚きは壊死した眼球が僅かだが、光を取り戻していたことだ。
「多分ですけど、バーサーカーだと思いますよ。生前の私より今の私はかなりハイテンションです!!」
「狂化もしていない上に、ハイテンション、完全な理性、を持っていてもか?」
「~~~♪、~~~♪」
「現実逃避するなよ!?」
トントンッ!!
「レクレス様!お粥ができましたがマスターはまだ起きていないのですか!?桜様もキリエももう席についています、早く降りてきてください!!」
ハキハキとした女性の声、雁夜の知らない人の声だったがレクレスは、「分かっているわよ~!今行きま~す。」と気軽に返事をしている。
そして雁夜の手を引きながらこう言った。
「まずはご飯を食べましょう、ね!マスター!」
こうして、奇妙なサーヴァントと間桐雁夜による、聖杯戦争が始まった。