Fate Grand Heros   作:河野木

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大変遅れて申し訳ありませんでした。
これからはなるべく早く投稿出来るようにしますのでよろしくお願いします。
それと、設定などについてですが、もう少し登場人物が出揃ってから投稿することにしました。


炎上都市での出逢い

 西日本のとある県に【冬木】と自分ばれる都市があった。

 活気も溢れ、『少し前までは』人々が賑わう平和な土地であった。

 

 

 

 

 

「イテテテ…あの野郎、いきなりこんな所へ飛ばすことがあるかよ……………で、これはどういうことだ…?」

 

 紅渡の手により冬木の地へと着いた貴利矢が見たのは活気の溢れる街並みからかけ離れたものではなかった。

 まさにこの世の地獄であった。

 

「辺り一面瓦礫や炎、人っ子一人見えねえな…」

 

 貴利矢の見たのは建物が原型が残らないほど崩れた大量の瓦礫、地面を見せないほどに燃え広がる炎の海と化した冬木であった。

 

「チッ…いきなり厄介そうな土地に俺を送りやがってよあの紅渡ってのは…」

 

 貴利矢は周りの光景を見て、恐怖よりも何も説明無しにこのような異常過ぎる状況のこの冬木に自分を送り込んだ渡への呆れと苛立ちを感じていた。

 そして、貴利矢は渡への嫌みをボヤきながらこの土地の現状と生存者の確認のために動き出した。

 

 

 

 

 二時間ほどが経過し、貴利矢はボロボロになっていた資料などを見つけこの土地が冬木ということを知ったが、結局人間の姿どころか生き物の姿すら見つけれずに広場の跡地でたたずんでいた。

 

 

「………はぁ、これからどうしようにも情報がねえと動きようがない…」

 

 貴利矢はどうすればいいのか分からない現状にモヤモヤしながら、肩に掛けた鞄を下ろす。

 この鞄は貴利矢がこの冬木に着いた時から彼の横に置いてあり、どうやら渡が貴利矢に必要な道具を入れていたらしい。貴利矢はその中から3つの【ガシャット】と変わったデザインのベルトを取り出して確認する。

 

 ガシャットとは九条貴利矢が生前仮面ライダーに変身する際に使っていたアイテムの一種で、そしてもう1つのベルト【ゲーマドライバー】、このドライバーにガシャットを刺してレバーを引くことにより貴利矢は仮面ライダーに変身する。

 

「(これが俺が使ってた物と同じなら変身出来るんだろうが、これがある時点でいつでも戦えるようにしろってことだろうな……)」

 

 貴利矢は念のためのことを考えゲーマドライバーを腰に巻いておく。

 貴利矢はなぜ死ぬ間際にとある青年に託したゲーマドライバーとガシャット、自らを倒した者に奪われたガシャットがあるのか気になったが深くは考えなかった。  

 

 それよりも彼は周囲から聞こえてくる動物の走るような音に気が付いて警戒する。

 

 

「………ィィィイ…カ…ルゥゥ…!」

 

「おいおい……嘘だろ!」

 

 貴利矢は目の前に現れた存在に驚愕する。

 どういう人種かは判別出来ないがハッキリと見れる漆黒の身体、白い布で包まれた頭部、何よりも3mは越すであろう身体で立つ大男、こんな現実では絶対見ないような存在に貴利矢は警戒する。

 

「ここの生き残り…ってわけじゃないよなどう見ても!」

 

 貴利矢は咄嗟に大男から距離を取る。

 大男は黙って貴利矢の方を向き、両手に持つ鋭利な刃の戦斧を構える。

 

「やる気のようだな、なら仕方ねえ…乗ってやるよ」

 

 貴利矢は右手に黄色の【爆走バイク】のガシャットを持ちボタンを押す。

 

 

 

【爆走バイク!】

 

「変 身!」

 

 貴利矢は身体を一回転させ、ゲーマドライバーにガシャットを刺す。

 

【レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャゲーム!?】

 

 貴利矢は周りに浮かぶ画面のようなものの一つを蹴る。

 

【アイム ア カメンライダー!】

 

 

 

 貴利矢の姿が変わる。彼は【仮面ライダーレーザー】へと変身したのだ。

 しかし、その姿はあまりにも変わっており、両手にバイクのタイヤが装着され、全体的にマスコットキャラのような等身でとても大きく可愛らしい頭部が目立っていた。

 

「■■■■■■■ーッッ!!!」

 

 レーザーへと変身した貴利矢を見た大男は戦斧を構えてレーザーへと向かってきた。

 

「おおっと!」

 

 レーザーはすぐさま動き大男の突進を避け、右腕部にある銃撃装置な銃口を大男へと向けてそこから光弾を発射する。

 

「■■■■■!」

 

 光弾は大男に命中するがまるで効いたようには見えず、ただ怒らせただけなのか再びレーザーへと向かってくる。

 

「少しぐらいは痛がれって!この野郎が!」

 

 レーザーは今度は光弾を連射し、さらに大男が眼前へと近づく寸前で横に身体を動かし、左腕のタイヤを回転させて大男の左脚に攻撃する。

 

「■■■■■■■ッ!」

 

 さすがに抉るようなタイヤの回転は効いたようで大男の動きが止まる。

 

「こうなったらレベル3で一気に…って何ぃ!?」

 

「■■■■!」

 

 大男の激しい動きに耐えきれなかったのか、2人の立つ地面が崩落していく。

 

「チィ!」

 

 レーザーは即座にジャンプして崩落から逃れるが大男はそのまま崩れた地面の下へと落ちていった、爆走バイクを除く2つのガシャットと共に…。

 

「ちょっ!?俺のガシャット!?」

 

 レーザーは手を伸ばそうとするが時は既に遅し、ガシャットは暗い地下へと消えていた。

 

「せっかくレベルアップ出来ると思った矢先にこれかよ…」

 

【ガッシューン…】

 

 レーザーの変身を解いた貴利矢は近くの瓦礫の上へと腰掛けて脱力感に包まれる。

 もう使えないと思っていたガシャットが手元にあったのにそのガシャットを使う前に再びそのガシャットを失ったため内心とても落ち込んでいた。

 

 そんな状態だったためか、貴利矢は自分に近づく新たな2人の人影に気がつかないでいた。

 

 

「今にも俺みたいに地獄に落ちそうな男だな…」

 

「いきなり何言ってんだ影山…不気味なこと言うんじゃねえよ」

 

「騒がしいな…って、誰だお前ら!?」

 

 貴利矢の前に現れた2人の男。

 1人は顔に切り傷があり、黒い服にダウナーな雰囲気を纏った男で、もう1人はフードの付いた水色の法衣を纏い、木製の杖を持った風変わりな男であった。

 

「魔術師と根暗男の2人組さね。それでテメエもあれだろ?仮面ライダー」

 

「なんでそれを知ってんだ…」

 

 貴利矢が変身した姿は見られたかもしれないが、少なくとも自分の世界ではないこの場所でその単語を言った法衣の男へ貴利矢は強く警戒する。

 そんな貴利矢の様子にどこか呆れたような顔の法衣の男は、もう1人の男へ杖を向ける。

 

「そんなにピリピリすんなって、お前さんだけじゃなくてコイツも仮面ライダーで少なくともお前の敵ではねえから」

 

「そういうこと…」

 

 切り傷の男は不気味な笑みを浮かべ、貴利矢は敵意が無いのだと判断は出来るものの目の前の2人の胡散臭さについ後ろに下がってしまう。

 

「…敵じゃねえってんならお前達について、それとこの街について教えろ」

 

「言われなくたってそのつもりだ」

 

 法衣の男は近くの壊れたベンチに腰をかけ、ベンチの上に杖を下ろす。

 

「まあとりあえず名乗っとくわ、オレの名は【クー・フーリン】、それでもう1人が」

 

「……【影山瞬】だ、それと仮面ライダーパンチホッパー……って名前らしい」

 

「影山瞬にクー・フーリンね。………え、今クー・フーリンって言わなかったか…?」

 

 貴利矢は聞き覚えのある名前に大きく目を見開き法衣の男を見る。それもそのはず、クー・フーリンとは日本ではマニアックな部類だが、歴としたアルスターの大英雄の名前だからだ。

 

「まあそれが普通の判断だよな…まあ、手短に教えてやるよ、オレについても含めて」

 

「お、おう…わかった」

 

 貴利矢は正直理解が追いついていなかったが、おとなしく話を聞けば理解出来ると判断し返事だけした。

 

 

 法衣の男、クー・フーリンは自分達とこの冬木について話し出す。

 まず、クー・フーリンはその名の通りアルスター、ケルト神話の英雄であり、死後に【英霊】と呼ばれる存在となり、特別な魔術による召喚儀式によって【サーヴァント】という人間と契約し、とある目的のために戦う戦士として召喚されたらしい。

 

「本来なら【ランサー】っていう槍兵のクラスのサーヴァントで召喚されたかったんだが、オレの格好見りゃ察せるかもしれねえが、どうやら先にランサーで呼ばれた奴がいるのか今回は魔術師の【キャスター】ってクラスで呼ばれちまってな」

 

「槍兵、そういやクー・フーリンってヤバい槍の伝承とかあったよな」

 

 クー・フーリンは影の国の女王から渡された【ゲイ・ボルク】と言う槍を使ったと言われ、他にも戦車に乗り戦場で無双したなど数多くの武勇を持つ。

 

「そういうこと、それでこっちの影山もどういうわけかオレみたいに召喚されたサーヴァントらしい」

 

「マジかよ…」

 

「マジだよ」

 

 影山はどこか怠そうな様子で貴利矢を睨みつけている。

 

 

「そんなに睨むなって!で、アンタのクラスは何だ?」

 

「チッ…【バーサーカー】だ…説明しなくてもクラス名の意味くらい分かるだろ?」

 

 影山は相変わらず貴利矢は睨みつける。貴利矢はバーサーカーのクラスが即座に狂戦士のことだと察した。

 

「そういうわけね…狂戦士か、だからそんなに睨んでくるってわけ?」

 

「いや、単にお前が気に入らないだけだ。絶望的な状況にいても希望を無くさないって雰囲気のお前が」

 

 貴利矢は何か言い返そうとしたが、どうせまた面倒くさいことを言われるだけだと口を閉じた。

 

「クラスの影響か知らねえが影山の面倒くさいところは放っておいた方がいいぞ、それよりもここで起きてる戦いについて教えてやるよ」

 

「そうだな、さっきのデカブツについても知ってそうだから話してくれ」

 

 クー・フーリンは続けてこの冬木で起こった出来事について話し出す。

 

 この冬木の地では7騎のサーヴァントによる【聖杯戦争】が起きていたらしいが、聖杯戦争の中心的存在である【大聖杯】が原因不明の事態が起き、冬木は火の海と化し人々はいなくなり、その事態が起因したのか聖杯戦争が狂い、サーヴァント達は沈黙状態となった。

 その中で真っ先に【セイバー】のサーヴァントが動きだし、キャスターを除く5騎のサーヴァントはセイバーによって倒され、セイバーの僕となったという。

 先ほど貴利矢が戦ったサーヴァントもセイバーの僕となった【ライダー】のサーヴァントであるらしく、理性が崩壊しているらしくマトモな意志疎通は不可能だという。

 そんな中、キャスターはセイバーに倒されることなく、他のサーヴァントとの戦いを続けており、戦いの中で冬木の大聖杯とは違う力によって召喚されたらしいバーサーカーの影山と出逢い、共闘することになり今に至るという。

 

「ただ影山の奴、どういうわけか記憶がかなり無くしてるらしく自分が仮面ライダーってのと、あとは名前と似たような仮面ライダーと共にいたらしいってことぐらいしか覚えてねえんだよ」

 

「……そういうことね…で、その似たようなライダーは召喚とかされてなかったの?」

 

 貴利矢は影山の方を見る。影山はなんとも言えない哀しげな顔で口を開く。

 

「…俺しかいなかった…いたらもう再会してるはずだしな…兄貴…」

 

「なんか悪いこと聞いたようだな…」

 

 貴利矢には影山の言葉一つ一つはどんよりとした重苦しさが感じ取れ、これ以上は詮索しないことにした。

 

「はいはい、お前ら二人が暗くなってどうすんだ…ったく、こんな所に延々といても埒があかねえし場所を変えるぞ」

 

「わかった」

 

「それが良いだろうなぁ、あのデカブツがまた出てきたら洒落にならねえし」

 

 3人はこの場を離れることにした。

 貴利矢は落ちていったガシャットを探したかったが、他の2人と一緒にライダーに倒されることを危惧して先に進むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃

 

 貴利矢がいた場所から冬木南西の別の廃墟にて小野寺ユウスケは目を覚まし、周辺を走り回っていた。

 ユウスケは周りの悲惨な状況が気になって仕方なかったが、おそらく自分のようにここにいるだろうマシュと立香の2人を探すことを最優先とした。

 

 

 

 ユウスケは5分ほど2人の捜索をしていると、瓦礫にもたれかかるように倒れて意識を失ってる立香の姿を見つけ出した。

 ユウスケはすぐに立香の元へ走る。

 

「おい藤丸君!藤丸ゥ!」

 

 ユウスケは藤丸に呼び掛けるがまだ目覚めそうにない。しかしどうやら命に別状は無いようだ。

 

「良かった…だがこのままじゃマズいよな…」

 

 ユウスケはこのまま意識の無い立香をこの場に置いておくのはとても危険な事は周りの状況からして理解出来るため、少しでも安全な場所に立香を移すために彼を背中に背負おうとした。

 しかし、ユウスケは複数の足音に気が付き立香を一旦下ろす。

 

「…さっきからガタガタガタガタ、どこのどいつだ…って骸骨ゥ!?」

 

 ユウスケが振り向くとそこにいたのは骸骨の群れであった。上顎は無いが、それより下が人間の骨格と同じ姿をした動くまるで骸骨の戦闘人形のようであった。

 

「お、驚いてる場合じゃないな…しかし、手に骨の剣なんて物騒な物持ちやがって…どうやらやるしかないようだな…」

 

 ユウスケは剣を構えて少しずつ自分とユウスケに迫る骸骨の群れが自分達の命を奪おうとしてる事を察し、戦う覚悟を決め腰に手を添える。

 

「今度は上手くいってくれ…!」

 

 ユウスケは強く念じる。

 すると、ユウスケの腰に変わった形状のベルトのような物が出現する。

 

「よし!これで【クウガ】に変身出来る!」

 

 ユウスケは即座に右手を左肩の上へと上げ、右側へ動かす。

 

「変身!」

 

 左腰側に右手を下ろし、両腕を広げるとユウスケの姿が徐々に変化していき、赤い身体、金色の角の仮面の戦士へと変わっていく。

 

「うおおおおお!」

 

 仮面の戦士…【仮面ライダークウガ】へと変身したユウスケは変身し、そのまま拳を構えて目の前の骸骨目掛けて拳をぶつけ、骸骨をバラバラに粉砕する。

 

「藤丸には近づかせない!いくぞ!」

 

 クウガは両手の拳を構え、骸骨の群れに突っ込む。

 骸骨達も容赦なくクウガへと剣を振るが、クウガは手刀を振り剣を砕いていき、そのまま拳を振り下ろし、回し蹴りをし、次々と骸骨を倒していく。

 

「ハアァ!」

 

 クウガは倒した骸骨達の落とした剣を2本を両手に持ち二刀流で骸骨達を切り裂いていく。

 

「ハッ!」

 

 そしてクウガは最後の一体目掛けて剣を振るい、横一文字に真っ二つに斬った。

 

 

 

「………これで終わりだな」

 

 クウガは周囲を見渡し骸骨がいないことを確認し、変身を解こうとする。

 

「変身を解いた方がいい万が一ってことがあるしなぁ…仕方ない」

 

 ユウスケはクウガの変身を解くのを止める。先ほどの骸骨のような敵がいきなり現れてまたすぐに対応出来るように、しばらくはクウガの姿でいることにしたのだ。

 

「まだ藤丸は目覚めてないようだし、とっとと移動させなきゃな」

 

 クウガは立香を背中に背負い、この場を後にする。

 

 

 

 

 10分後、北の方へと歩いていたクウガは未だに安全そうな場所を見つけれなかったが、先ほどと同じ骸骨と同じ種と思われる残骸が大量に転がっているのを見て足を止める。

 

「いったい誰がこれを…ッ!」

 

 クウガは何者かの気配を感じてすぐに立香を下ろす。

 

「どこにいる!…上か!」

 

「ハアアアアア!!」

 

 クウガは上から迫り来る巨大な盾を両手で塞ぎ、そのまま盾を掴む。

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

 クウガは盾と、その盾を後ろ側に隠れた人物ごと地面へと叩きつける。

 

「誰か知らないが思い知ったか!……ってマシュ…?」

 

「その声はもしかして…小野寺さん?」

 

 クウガは姿を現した盾の持ち主の顔を見て驚く。

 なんとマシュだったのだ、しかも見たこともない戦闘服を身に纏っている。

 

「そうそう、ってこの姿じゃ分からないよな…」

 

 そんな2人の声を聞いたせいか、先ほどまで意識を失っていた立香が目覚めたようで、目を開いて2人の方を見る。

 

「う、う~ん…二人の声がするな…どうしたんですかユウスケ……さん?それに……マシュ?」

 

 ユウスケの声を発するクウガ、変な格好をしたマシュの姿を見た立香は困惑した反応をする。

 

「先輩!無事だったんですね良かった!」

 

 マシュは嬉しさのあまりつい立香に強く抱きしめる。

 

「痛い痛い!」

 

「す、すいません…」

 

 マシュはすぐに手を離す。

 

「こんな所でも騒がしいなお前らは…とりあえずマシュ、何があったか説明してくれ。俺もこの姿について教えないといけないから」

 

 クウガは変身を解きユウスケの姿に戻る。

 

「分かりました…」

 

「俺が一番説明欲しいな…」

 

「藤丸にもちゃんと説明するよ」

 

 

 

 まずはマシュが自分の姿等について説明した。

 彼女はユウスケ達のようにこの冬木にレイシフトされたが、やはりユウスケ達のように離れた場所に倒れており、瀕死の身体だったマシュは周りの炎に焼かれただ死を迎えるのみだと思っていた。

 

「そんな私を一人の英霊が助けてくれました。名前も知らない英霊でしたが、彼は私の事を思って自らが消滅することを引き換えに自身の霊基と力を私に託してくれたんです」

 

 名も分からぬ1人の英霊、マシュはその英霊から霊基と力を引き継いだことによりこの【デミ・サーヴァント】の力を獲得し、今の彼女の姿がそのデミ・サーヴァントなのだ。

 英霊が何者なのかはマシュ本人にも分からないようだが、盾を使う英霊だったらしく、マシュが持つ十字架の付いた巨大な盾こそ消滅した英霊を象徴する重要な物なのであろう。

 

「一応サーヴァント扱いなので私にもクラスがあるんですよね。前に読んだ資料通りなら盾をメインに扱うクラス【シールダー】、このクラスが今の私のクラスですね」

 

「シールダー…か、まさか逢ってからそんなに経ってない職員の女の子がこんなに頼もしそうになるなんて驚いたよ」

 

 立香はまるで自分の事のように嬉しそうに微笑む。

 マシュが無事だった嬉しさと、1人でも戦える姿なので安心した気持ちがあるからだ。

 

「じゃあ次は俺だな…ただ訳ありだから、あくまでさっきの姿についてぐらいで話せないことはハブくから」

 

「「分かりました」」

 

 ユウスケは2人に自分の力、仮面ライダークウガについて話し出す。

 ユウスケはかつて超古代の戦士の力を継承したことによりクウガの力を秘めた【アークル】をその身に宿すことになり、アークルの力を解放することによりクウガへと変身し強力な怪人達と仲間達と協力しながら倒してきたと言う。

 そして、いろいろあってユウスケは別の仮面ライダーの変身者とその仲間と旅をすることになり、それからもいろいろあって、今は仲間達と離れてカルデアにやって来たのだ。

 

「一応海東の奴も仲間って言ったら仲間なんだよな…まあ、その話はまたの機会だな)

 

「なるほど、ユウスケさんはいろいろあったんですね……ん?もしかしてユウスケさんにマスター適性があるのはそのアークルの影響なんですか?」

 

 立香の問いにユウスケは首を縦に振る。どうやらアークルが及ぼすユウスケへの身体の変化の一つとしてユウスケの魔力回路生成があったらしい。

 

「まあ、魔力回路はあるけど魔術なんてからっきしだけどな!だけど、俺もマスター名乗ってるし少なくともマスターとしてはちゃんとするつもりだ」

 

 ユウスケは仮面ライダーでもあるが、同時にマスターとして戦う覚悟もある。

 2人よりも年上だからこそ見本になる大人でありたいという思いもあるのだが。

 

「これで現状は把握出来たって感じだなマシュ」

 

「はい、ですがこの土地については分からない事が多すぎるので気を引き締めていきましょう先輩」

 

「ああ!俺も気合い入れないとな!」

 

 立香は両頬をパンッと叩き、気を引き締めて急に走り出す。

 

「行くぞ二人とも!もしかしたら俺達のようにレイシフトしてきた人がいるかもしれないんだから!」

 

「分かった分かった!だから急に走るなって!」

 

「そうですね先輩!生存者保護は大切です!」

 

 2人も立香を追うように走り出す。

 

 

 

 立香達、そして貴利矢達はお互いが同じ方向へと進んでることなど気が付いてるわけがなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアアアア!!??」

 

 燃える冬木の街にオルガマリーの悲鳴が響き渡る。

 

「おい待てって言ってんだろ!?オレがこんな面だからってそんなに叫ばなくていいだろうがぁ!」

 

 二本角の赤い鬼のような怪人がオルガマリーを追いかけながら叫ぶ。

 

「違うわよ!アンタみたいなアホ面は怖くなんかないに決まってるじゃない!アンタの後ろから来てる奴等の事よぉぉぉぉ!」

 

「はぁ~?後ろがどうしたって…オワアァァ!?」

 

 怪人は後ろを向くと数え切れない数の骸骨がこちらへと走ってる光景を目にしてしまった。

 怪人は走る速度を上げて、オルガマリーに並ぶように走る。

 

「何だよ何だぁアレ!?あんな気色悪いバケモンいんのかよぉ!」

 

「アンタが言うな!もう!何なのよぉぉぉぉぉ…ってキャア!?」

 

 オルガマリーは足元の瓦礫に躓き転倒し、怪人もオルガマリーを放っておけないのか足を止める。

 

「何ドジ踏んでんだ!…ったく、こうなりゃやるしかねえようだな!」

 

 このまま走ってもオルガマリーの足なら追いつかれることを察した怪人は自分の身体と同じ赤の大剣を手に持ち骸骨達へと突っ込む

 

「オラオラァ!ここはもうクライマックスのようだが!この【モモタロス】の!オレのクライマックスはここからだぜぇぇぇ!」

 

 怪人…モモタロスは荒々しく剣を振り次々と骸骨を斬っていく。

 

「アイツ、なんで私なんかのためにここまでやるのよ…!」

 

 立ち上がったオルガマリーは、見ず知らずの自分のために戦うモモタロスを複雑な心境で見つめた。

 そんな彼女の元に新たな戦力が駆けつける。

 

「所長!オルガマリー所長!大丈夫ですか!?」

 

 立香達だ。オルガマリーの悲鳴を聞きつけてこの場所まで戦闘態勢で駆けつけたのだ。

 

「貴方は藤丸!?それにマシュも!…ってその仮面の戦士は誰よ!?」

 

「説明は後でするから所長!」

 

 既にクウガへと変身していたユウスケはモモタロスの元へと走る。

 

「彼は小野寺さんです、じゃあ私も」

 

 マシュも盾を構えて骸骨へと突っ込む。

 

「いったい何が何なのよ…」

 

 オルガマリーは呆然とした表情で3人の戦士を見た。

 

 

 

 

「久しぶりだなモモタロス!」

 

「その声は確かユウスケだったか!?よっしゃあ!とっとと終わらせるぜ!」

 

 クウガは回し蹴りで一気に10体以上の骸骨を粉砕し、モモタロスも同じ様に回転するように横に剣を振るいクウガと同じくらいの骸骨を切断していく。

 

「小野寺さん!それとモモタロス…さん!私がいるのも忘れないでください!」

 

 マシュも2人に負けじと盾を振るい骸骨を粉々にしていく。

 

「ヘッ!やるじゃねえか盾女!」

 

「はい!私も素人ですが遅れを取りたくないので」

 

 マシュはモモタロスに並んで周りの骸骨へ対応していく。

 

 

 

 

「皆凄いな…それで所長、あの赤鬼さんは所長のサーヴァントか何かで…?」

 

「そんなわけないじゃない!この辺り歩いてたら偶然遭遇したのよ!」

 

 オルガマリーとモモタロスが遭遇したのは本当に偶然のことであり、出逢った時はオルガマリーはその姿に恐怖をしたが、モモタロスの口調を耳にしてる内に呆れた感情の方が強くなっていき、この後どうすれかで口論してたところオルガマリーがこちらへ迫り来る骸骨達に気が付いて今にいたる。

 

「そちらもいろいろあったんですね…」

 

「そっちも似たような感じだったのかもね…」

 

 2人は疲れた顔で溜め息を漏らした。

 

 

 

 

「オラオラどうしたぁ!数だけでまるで歯ごたえがねえぞ!」

 

 モモタロスが煽るように叫んだその時だった。

 

「ッ!…お二人とも!今すぐ後退してください!」

 

「「ッ!!」」

 

 マシュの言葉を聞いた2人はすぐさまマシュと共に後退する。

 すると、地面が突如として揺れ出す。

 

「今度は何!?」

 

 オルガマリーはハプニングの連続に落ち着きを保てないでいた。

 

「どうか落ち着いてください所長!何かきます!」

 

 藤丸はマシュが向いてる方向にある地面を見つめる。

 すると、その地面に大きく罅が入る。

 

「きます!」

 

 マシュは盾を構えて防御体勢に入る。

 

 

 

「■■■■■■■■■■ーーーッッ!!!」

 

 地面は大きく割け、周囲の骸骨が次々と割け目に呑まれる中、割け目の下からは巨大な象に乗った大男…貴利矢が戦ったあのライダーが現れた。

 

「なんじゃありゃあ!?象と巨人ってメチャクチャだろ!」

 

 モモタロスは驚きの表情でライダーを見る。巨大な敵との戦闘経験はあるが、あんなにハッキリと大きい人間なんて見たことがないからだ。

 

 

 

 

「あれはサーヴァント…!動物に乗ってるってことはライダーなんだろうけど様子がおかしいわね…マトモに喋らないなんてまるでバーサーカーじゃない…」

 

 オルガマリーは状況の理解が追いつかず、頭を抱えて座り込む。

 

「そうか…あれがサーヴァント…英霊か!」

 

 藤丸は英霊を目にした嬉しさよりも、英霊だからこそ勝てるか分からない不安の感情を持ちつつ、マシュ達が無事でいるように願う。

 

 

 

 

 

「マシュ!あれが敵なら容赦はするな!」

 

「はい!」

 

「■■■■■■■!」

 

 ライダーは2人の会話などお構いなしに武器を構えてマシュ目掛けて象を走らせる。

 

「くるぞマシュ!モモタロス」

 

「「はい(おう)!」」

 

 3人も構えてライダーへと向かう。

 

 

 

 マシュが経験する最初のサーヴァントとの戦いが今始まろうとしていた。




次回予告

マシュ、クウガ、モモタロスはライダーと戦い、モモタロスは戦いの中で仮面ライダーへと変身を遂げる。
そして現れる5人目の仮面ライダー、彼はこの冬木の地に現れたイレギュラーの敵の存在を立香達に教えるのであった。

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