東方翠魔録   作:アホジン

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第8話 異変 ~vsブロリー~

「そういえば幽香さんは頼まれただけって言ってましたけど、ブロリーさんの目的とかって聞いてないんですか?」

 

「聞いてるわよ。まあ凄く複雑な事情ね」

 

私だって話を聞かされた時は信じられなかったもの───

 

 

───時は少し遡り異変の前日。夕食を終えて食器を洗っている最中にブロリーがとんでもないことを口にした。

 

「幽香、俺は異変を起こす」

 

隣で食器を拭いていた私は危うく持っていた皿を落としそうになった。なんとか数秒で復帰した私は当然理由を訪ねた。

 

「色々考えた結果、異変を起こす必要があるという結論に至った。それで、幽香にはそれを手伝ってほしい」

 

「手伝うねぇ。それはその結論に至るまでの経緯と私を巻き込む理由を聞いてからじゃないと無理よ」

 

「そうだろうな。まあ、そう言うと思って紫を説明役として呼んでおいた」

 

ブロリーがそう言うと、リビングの方から声がかかった。

 

「はぁい、幽香」

 

振り向くと、そこには空中に開いたスキマに腰掛けた八雲紫がいた。手招きをされたから皿を置いて渋々紫の方へ行った。ブロリーはいつの間にか紫の横に移動していた。

 

「紫が出てくるなんて相当面倒くさそうなんだけど、ちゃんと全部話してくれるんでしょうね?」

 

「ええ、もちろん。少し長くなるから幽香も座りなさい」

 

紫から聞かされた話はとても衝撃的なものだった。ブロリーが死にそうになったところを紫に助けられたというのは聞いていた。けど、それ以外の話は正直信じられないようなものばかりだった

まずはブロリーが死にかけた原因。彼が父親に操られて幾つもの星々を滅ぼし、ついには銀河を一つ滅ぼした。そして、破壊を止めるために挑んできたやつらに二度負けたということ。

次に、幻想郷に外から干渉してくる存在がいるということ。目的は分からないけど、結界を破壊しようとしていることからおそらくは侵略者のような連中らしい。

最後に、その侵略者達に対抗するために彼を助けて幻想郷に招き入れたこと。侵略者よりもヤバイのを入れてるじゃないと思ったけど、紫とブロリーの利害が一致していたらしい。

 

「大方理解出来たわ。まったく…やっぱり面倒事を持ってきてるじゃない」

 

「てへ☆」

 

「喧嘩売ってるのかしら?…ていうか今の話と異変への協力は何も関係ないじゃない」

 

「そこからは俺の話だ。まあ簡単な話、戦力の調査と俺の力の誇示がしたい。だが、俺が異変を起こそうとするとどこか一帯を吹き飛ばすとかしか出来ないんだ」

 

「つまりは物騒なことをしないで異変を起こしたいということね。……いいわ、協力してあげる」

 

「ありがとう。じゃあ紫、その時は解決に来るやつらのことは頼むぞ」

 

「大丈夫よ、しっから永遠亭まで送ってあげるわ!」

 

「自分が負けるとは思ってないのね」

 

「当然だ。俺より強いやつがいるなら俺を連れてくる必要はないだろう?」

 

「それもそうね」

 

 

───改めて思い出すととんでもないわね。

 

「簡単に言うと霊夢達の戦力調査と自分の力の誇示だそうよ」

 

「そうですか。実は私もブロリーさんの力を知りたかったんです!せっかくのチャンスですししっかり記憶と記録に残しますよ〜!」

 

 

 

 

「霊夢さん、まずは私と妖夢さんが様子見ということでいいですかね?」

 

「ええ、おねがい。少し休んだら私達も参戦するわ。」

 

「でも、別に倒してしまっても構いませんよね?」

 

「妖夢、それはフラグだぜ…」

 

「そんなもの斬ってやります。いざ!!」

 

最初に動いたのは妖夢だ。一瞬でブロリーの懐に入り込み三度剣を振るう。しかし、その三回の斬撃を腕を組んだまま全て避けられた。

 

「やはりタダではやられてくれませんか…」

 

「フフフ…なかなかのスピードだったぞ。だがあれが本気ではないだろう?」

 

「当然です。今のはほんの挨拶程度です」

 

「そうこなくちゃ面白くない」

 

妖夢は一度目よりも速く、鋭く剣を振るう。腕、脚、胴体など約十箇所を狙うがやはり全て避けられ、もう一度距離をとる。そこで違和感を感じた。

 

(なんだろう、この違和感は…。何かがおかしい)

 

違和感の正体を掴むためにもう一度攻撃にでる。今度はフェイントを掛けて正面以外から斬りかかる。ブロリーの姿勢を変えることは出来たが、腕に着けている金色の篭手のような物で弾かれた。そしてようやく正体の違和感を掴み、他の4人がいる所まで退る。

 

「何故…。何故あなたは反撃してこないのですか」

 

「そりゃあ、お前がしっかりあいつの間合いから離れてたからじゃないのか?」

 

「そうじゃありません魔理沙さん。剣を弾かれた後は避けられた後よりも少し隙を見せてしまいました。それでもあの人は攻撃してこなかったんです」

 

「な、なるほど」

 

ブロリーから視線は外さずに、魔理沙からの質問に答え、説明を終えてもう一度何故と問う。そして返ってきた言葉は5人の神経を逆撫でするものだった。

 

「わざわざ反撃するまでもない」

 

「!!……完全にナメてますね!」

 

「妖夢さん、次は私が援護します。今のはちょっとイラッときました…!」

 

「待ちなさい早苗。私達も今のを聞いて黙っていられるほど温厚じゃないわ」

 

「霊夢、私達もでましょう」

 

「私達ナメたらどうなるか、その身に教えてやるぜ」

 

「フハハハ!そうだ、かかってくるがいい!」

 

妖夢が飛び出し、その後に咲夜が続く。妖夢がブロリーを間合いに入れる寸前に時を止め、ナイフによる弾幕を三重に展開し逃げ道をなくした。そして、時間停止の解除と共に全方向から無数のナイフがブロリーに迫る。

 

「ナイフだと!?ちっ、こんなもの…」

 

「私を忘れてもらっては困ります!」

 

「ぐぬぅ…!」

 

咲夜の放ったナイフにブロリーが意識を取られた瞬間に妖夢が背後に回り込んでいた。

無数のナイフと妖夢の斬撃を凌ぐブロリーだったが、ナイフの軌道が咲夜の時間停止により突然変わり集中を乱される。妖夢はそれを見逃さず剣を使わずに突進しすぐにその場から離脱。意表をつかれたブロリーは少しよろけ体勢を崩した。それと同時に霊夢、魔理沙、早苗による弾幕の一斉放火。

咲夜と妖夢が霊夢達のもとに戻りブロリーのいた場所を見る。盛大に砂煙が舞い、ブロリーを視認することは出来なかった。しかし、無防備なところへの攻撃だったためたとえ倒せなくともかなりのダメージを与えたと思っていた。

 

「ありがとう、昨夜に妖夢。特に妖夢、最後のは私達も予想してなかったわ」

 

「そ、そうですか?ありがとうございます」

 

「ああ!おかげでいい隙ができたぜ!」

 

「あとは幽香さんにヒマワリをどうにかしてもらえば異変解決ですね!」

 

「そうね。でも、お嬢様が警戒するほど強くなかったわね」

 

早苗と咲夜の言葉に他の3人が同意し、幽香のところへ向かうために飛ぼうとした時その時、思いもよらないところから声が聞こえた。

 

「よく頑張ったがとうとう終わりの時がきたようだな…」

 

「え?」

 

誰かが気の抜けた声を出し全員が声のした方向、空を見上げるとそこにいた。別に油断していたわけではない。5人ともブロリーがいると思われていた場所を常に警戒していた。だが、逆に言えば()()()()警戒していなかった。故に誰も気づかなかった…いや、気づけなかった。

 

「は!?な、なんで!?」

 

「む、無傷なんてありえな…」

 

「スペルカードを宣言しよう。翠星『ギガンティックミーティア』」

 

「しまった!」

 

動揺し、動きを止めてしまった5人にブロリーがスペカを放った。ブロリーの左手に収束していた緑色の光を放つと、手に収まる大きさだった光弾が何倍、何十倍にも膨れ上がりながら5人に向かい飛んでくる。

 

「さあ、打ち破ってみせろ!」

 

そう言って愉快そうに笑うブロリーに対して霊夢は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「もう回避は間に合わない…。魔理沙!迎え撃つわよ!」

 

「了解だぜ!魔砲『ファイナルスパーク』!!」

 

「霊符『夢想封印』!!」

 

2人のスペカとブロリーのスペカがぶつかり、せめぎ合う。そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…んぅ…」

 

──白い天井…。ここはどこだろう。私は確か魔理沙たちと異変解決に向かって……

 

「やばい、気を失ってた!あ、あいつやみんなは…!」

 

「あ、霊夢さん!やっと目が覚めましたか!」

 

「…え?鈴仙がいるってことは…ここ永遠亭?」

 

「そうですよ」

 

──みんなもここにいる、ということはつまり…

 

「私達の負け、か」

 

「負け、ですか?」

 

「そうよ。私達は異変解決に行って負けたの。5人揃ってたった1人に」

 

「何言ってるんですか霊夢さん?もしかして頭でも打って記憶が曖昧に…師匠呼んできます!」

 

「ちょーっと待ちなさい兎さん?あんたは私の頭がボケてるって言いたいのかしらぁ?」

 

「ヒィッ!だ、だって皆さんが勝ったって新聞に書いてあったのに霊夢さんが『負けた』なんて言うからぁ!」

 

「…鈴仙、私どんくらい寝てた?」

 

「だ、大体一日くらいです」

 

「!」

 

──つまり私が寝ている間に文が新聞を配ったってことよね。文はあそこにいたから結末を知っているし勝敗を間違えるはずがない。。でも私は、私と魔理沙じゃ防げなくてあの光の球に呑み込まれて、そこからは記憶にない。ようするに負けたはず。でも鈴仙は私達が勝ったって言ってるし。

 

「…どうゆうこと?」

 

 

 

霊夢が目を覚ました日の夜、幽香の家の食卓の様子は普段と違うものだった。

 

「いやー、今日はお招きいただきありがとうございます!幽香さんはもう大丈夫なんですか?」

 

「ええ、もうすっかり回復したわ。それよりもブロリー、終わったらヒマワリを戻すのは聞いてたけど、どうして負けにしたの?」

 

「あ、私もそれ聞きたいです!言われた通り霊夢さん達の勝ちと新聞に載せましたけど、私から見れば勝ったのはブロリーさんとしか思えないんですよ」

 

「そうだな…。確かに実際の戦いだったら勝者は俺だと思うが今回のは"ごっこ"、つまりはルールに則った"遊び"だからだな」

 

「「?」」

 

実はブロリーがスペカを放ち攻撃した際に、霊夢達がくらうよりも先にブロリーが攻撃をくらっていた。そのため、撃ったものをどうにかすることは出来なかったために5人にダメージを与えてしまったが勝敗自体は自分の負けとしたのだった。

 

「なぁ、文。あの時にいた緑髪の娘の名前はなんだ?」

 

「え?あ、東風谷早苗ですけど…それがどうかしました?」

 

「いや、何でもない。……早苗か、覚えたぞ」

 

「そうですか?…おっ、そろそろ具が煮えてきましたね。早く食べましょう!」

 

ブロリーが最後に何を言ったのかは聞き取れなかったらしく怪訝な顔をしていた文だが、すぐに興味の対象を切り替えて客人でありながら場を仕切る様にブロリーと幽香はそれぞれ苦笑いを浮かべていた。




はい、今回で異変は終了です
思ったんですけども、ブロリーもう二敗もしてますね〜。びっくりです

感想やお気に入り、誤字報告などありがとうございます
何かあったらじゃんじゃん送ってください!

ではまた次回〜

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