時間は進んで放課後。授業を終えた俺たちは完成したビルドストライクの実戦テストを行うため、模型店富良野に訪れた。
店内へと入ると真さんが一人、カウンターで何やらプラモを組み立てているのが見えた。どれも手際よく作られており、さすが模型店の店員だと俺は感心してしまった。そんな姿を見ていると、真さんも俺たちの姿に気づき作業を止めて俺たちのところに来た。
「おっ、坊主じゃないか。いらっしゃい。かわいい恋人を連れてどうしたんだ?」
そうにやにやしながら言う真さん。その言葉に愛が、
(恋人って……、早くそうなりたいけどまだ恥ずかしいよ……)
そううつむいてつぶやくのが聞こえてきた。どうやら照れているらしい。俺はとりあえず聞かなかったことにした。
「彼女は俺の幼馴染でプラモ作成の先生でもある萩原愛っていいます。きょうはBPSをやりに来ました」
俺がそう言うと、何とか復帰したらしい愛がいまだに少し照れながらよろしくお願いします、と言った。
「なるほど。彼女が昨日道具のリストを作ったやつか。そうだ。作ったプラモを見せてくれないか?」
「ええ、いいですよ」
そう言って俺はカバンからビルドストライクを取り出し真さんに手渡した。真さんは近くにあった机にビルドストライクを置くとじっくりと確認していった。その姿はさっきまで見せていた悪がきらしい笑みとは違い真剣な表情をしていた。
「接着と部分塗装。そしてトップコートにスミ入れで仕上げか。接着面も変に目立ってないし、トップコートのムラがほとんどない。なかなかに出来がいいな」
そう言って真さんはビルドストライクを返してくる。
「ありがとうございます。これも愛のおかげです。愛の説明がないとここまで作ることができませんでした」
「アキちゃん、そう言うと照れちゃうよ。アキちゃんも意外と筋がいいと思うよ。でないとここまでいいのは作れないよ」
そう愛が言うと、真さんも頷きながら同意して言った。
「俺もそう思うな。坊主、お前は思っていたよりも筋はあるようだ。っと、BPSだったな。ちょうどいい。今店内で5対5のチーム戦をやろうとしているんだけどメンバーが足りないんだ。坊主と嬢ちゃん。メンバーに入ってくれないか?」
「えっ、いいんですか?」
「ああ。大丈夫だ。チームはこの店なじみのメンバーだし、特に初心者だから組むことを断る奴らじゃないからな。それに実戦に勝るものは無いって言うだろ。どうだ、やってみるか?」
俺はその言葉に少し考えた。たしかに実戦に勝るものは無い。それにチーム戦は今までボッチだった俺には興味のある言葉だ。俺は愛にも聞いてみた。
「どうだ、愛。俺はやってみたいと思うが愛はどうだ?」
「私も大丈夫だよ。アキちゃんの好きにして」
愛はそう笑顔で答える。その言葉を聞いて俺は真さんの方を向いて答えた。
「ええ。やります」
「そうか。それじゃBPSルームに向かうか。ついてきてくれ」
そして俺たちは真さんに連れられてBPSが置かれている部屋へと向かった。部屋に入ると多くのBPSが置かれている部屋の中央で、長テーブルを囲んで何やら話し込んでいるひとたちの姿があった。
「おい、佐々木! 足りなかった人員を連れてきたぞ!」
そう真さんが言うと集まっていたメンバーの一人である女性が彼の前に歩いてきた。薄茶色のショートヘアの髪に同じ色の瞳。きれいよりもかわいいと思えるような顔つきは愛と同じだ。年は俺たちより2,3歳上かな。白のワンピースに集めのカーディガンを羽織ったその姿はどこかの令嬢を思わせるようで、この無機質な空間は似合わない雰囲気だ。そんな彼女が俺たちの前にやってきた。
「初めまして、佐々木美穂って言います。チームモンクフィッシュのリーダーをしています。美穂って読んでね」
「広瀬明人といいます。よろしくお願いします」
「私は萩原愛です。今日はよろしくお願いします。それでどういったバトルをする予定でしたか?」
「今日はチームモンクフィッシュと模型道チームの定例会を行う予定だったんだけど、チームメンバーが2人、体調不良でダウンしてね。チームが足りなくて困ってたんだ。それで今日は一人が前線メンバー。もう一人がオペレーターで参加してもらいたいんだけど良いかな?」
佐々木さんの言葉に俺たちは頷いて答えた。
「ならオペレーターは私がやります。アキちゃんは前線メンバーお願いね」
「ああ、大丈夫だ」
そう話していると準備を終えたのか真さんがこちらへとやってきた。
「どうやら話はまとまったようだな。こっちも準備は終えたから5分後に試合開始だ。それまでに準備だ。坊主の機体はスキャンし直すからな。用意してくれ」
「わかりました」
真さんの言葉を聞いて俺はビルドストライクを取り出す。すると佐々木さんがビルドストライクを見ながら言った。
「これが広瀬君のプラモか。ねぇ、ちょっと見せてくれない?」
「ええ、どうぞ」
そう言って俺はビルドストライクを佐々木さんに手渡した。
「へえ、ビルドストライクなんだ。となると戦術に少し変更が必要かな。少しチームメンバーと話すから先にスキャンしてて。それじゃまたバトルでね」
そう言って佐々木さんはここから少し離れたテーブルにいる人たちに向かっていった。彼らがチームのメンバーらしい。
「よし、坊主。装置にプラモを入れてくれ。モーションデータはそのままで大丈夫だろ。少し待っててくれ」
「それじゃ私は先に筐体に入っているね」
愛はそう言って筐体へと向かっていく。そして真さんは俺からビルドストライクを受け取ると、ビルドストライクのモーションを設定したように機械を操作してデータを作っていく。そして完成したデータをメモリに入れると俺に手渡してた。
「完了だな。坊主、頑張ってこいよ」
「ええ。行ってきます」
そうして俺は空いている一台のBPS筐体に意気揚揚と乗り込むのだった。
『データ確認しました。チームモンクフィッシュ対チームkuromorimine。試合形式リアル。リアルサイズモデルセッティング。バトルフィールド・大洗。これより戦闘エリアに移動します』
筐体に入った俺はすぐにBPSを起動させる。すると筐体に映る風景が変わった。そこは海辺に広がる大きな町であり、ランドマークと思われる大きなタワー。そしてアウトレットモール。少し離れた先には昭和の景色が色濃く残る町並みが並んでいる。
そして俺はそのエリアから少し離れている水族館前の駐車場に立っていた。
「ここが今回の戦場か。佐々木さんや愛はいったいどこに……」
そう思っていると突然通信が入りモニターが開かれた。そこには操縦席に座る佐々木さんの姿があった。
「どうやら終わったみたいだね。それじゃ今場所を教えるからマップを見ながら来てね」
そう言って通信が切られる。そしてすぐにマップに佐々木さんとその仲間たちがいるであろう青い光点が4つ光っているのが確認できた。
「了解です。これより向かいます」
そして俺はビルドストライクのバーニアを吹かし、地面を這うように移動しながらその場所へと向かっていく。移動する途中でいくつかの操作を試してみたが、以前のビルドストライクよりも性能は上がっているのが実感できた。それと同時に挙動の違いに戸惑ったりもしたが、目的地に着くまでにはしっかりと操縦することが出来るようになった。
さて、目的地へとたどり着いたが、そこにはいろいろな意味でとんでもない光景が広がっていた。
それは一言でいえば戦車だった。だが、装備がおかしい。俺はスキャン機能でかれらのデータを参照した。一つは1/35 陸上自衛隊10式戦車だ。それになぜか上部に縦に細長いミサイルランチャーらしきものが2つ、横にはビームライフルが取り付けてあった。
もう一台は戦車ではなかった。一言でいえば巨大な壁だ。最初の2台とは段違いの大きさを誇り、その下部は巨大な船を思わせる形をしていた。その上に人型のロボットがのっており、背中には下部に劣らないほど大きな砲が搭載されていた。名前を調べてみると雷電と表示された。
次に佐々木さんの機体。それは1/35 4号戦車D型改だ。これは先の三機とは違い、特別な改造を施しているようには思えない。いたって普通の戦車であった。
最後に愛だが、機体は不知火弐型ではなかった。全長は10m程度か。ガンダムよりリアルな造形をしており、細長い胴体にまるでポップアップトースターのような形の肩。足には大きなシールド。肩にはアサルトライフルとショットガンらしき武装が取り付けられており、両手には巨大なライフルと円月型のブレードが握られていた。データを見るとUCR-10/L AGNI(アグニ)と表示された。
さて、俺が彼らとに合流すると、それぞれモニターにメンバーの顔が映し出された。
『まだ初心者なんだって? なら今日はいろいろ教えてあげるよ。よろしくね』
明るい笑顔で女性が話してくる。彼女が10式の操縦手だ。
『不安なら俺を盾にしろ。金属で補強したこの雷電の装甲は、そう簡単にやられはしない』
このメンバーで最年長らしいどっしりとした顔つきの男が話す。彼が雷電の操縦手だ。
『さて、今日は定例会です。ですので皆さん、肩の力を抜いて頑張っていきましょう。広瀬さんと萩原さんも頑張ってね」
最後にリーダーらしく佐々木さんが締める。彼女が4号を操作している。
「今日はよろしくお願いします」
『私も改めまして、よろしくお願いします』
そうして俺と愛は頭を下げる。そんな感じでお互いの紹介を終えると、
『さて、ここで待っていても不利になるだけです。ですので市街地戦に入りましょう。4号、10式は直接商店街へ。雷電とビルドストライクは敵の偵察、およびおとりを引き受けてください。アグニはこの場に待機。オペレーションユニットを送るので、オペレーションシステムを起動してください。それでは作戦開始です』
「了解しました」
『了解』
そう俺と雷電の操縦手は答える。そして俺たちはなるべく目立つように大洗をブースターで吹かしたりしながら市街地周辺へと移動するのだった。