模型戦機プラモファイターズ   作:事務員

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第四話パートA

 『バーチャル・プラモ・シミュレーター』

 

 その施設は都会から離れた田舎町、その山奥に建てられていた。まるでそれを隠すかのように周囲が人里離れた森の中、鉄筋コンクリートの外壁に囲まれた巨大な施設はアンバランスな雰囲気を出している。

 その入り口には石のプレートにこう彫られていた。

 

 『古江人工知能総合研究所』

 

 なぜこんなところにこのような施設が建てられたのか? それは中にあるものが関係していた。

 施設の奥深く、地下に造られたここには地上の建物のてっぺんまで突き抜けて存在している巨大な装置が中央に鎮座している。そしてそこの周辺には白衣を着た研究員らしき人たちが辺りでいろんな作業をしていた。

 そんな中、一人の女性が装置を見上げている。スーツの上に白衣を着たその女性は人形のように整った顔立ち、そして白に近い銀色の髪に赤い瞳をしており、その目はまるでおもちゃで遊んでいる子供の様にらんらんとしていた。

 さて、その女性に一人の研究員が図番を片手に歩いてきた。かれは彼女の横に立つと図番を見せるようにして話し始めた。

 

 「報告します。今日集められたデータを編集、『ADAM』に転送しました。これが詳細なデータとなります」

 

 そう言って研究員は図番を女性に手渡した。それを受け取ると女性は書かれている書類をじっくりと見ていく。そしてそれを研究員に戻すと女性は柔らかい笑みを浮かべ答えた。

 

 「ありがとう。どうやら順調のようね」

 

 「そうですね。それにBPSで集められたデータが一番成長効率が良いです。ところでプランBはどうしますか。『ADAM』の機能を今より2倍ほど行使する事にになりますが……」

 

 「そうね。現在、プランAが順調な以上、『ADAM』の機能を確認する意味でもやぶさかではないわ。ですけど」

 

 そう先ほどとは違い無表情だが言葉強く言う女性に研究員は大丈夫です、と言い、

 

 「わかっています。必要最低限のデータ以外は『ADAM』にデータを入れたりしません」

 

 その言葉を聞くと女性は安心したように柔らかく微笑むとこういった。

 

 「ええ、そうよ。この子に余計な知識を植え付ける必要はないわ。そうでしょう?」

 

 「ええ。それが発展の礎となるのなら……」

 

 そうして彼らはそれを見つめた。『ADAM』そう呼ばれた機械は今も無機質に稼働を続けていた。

 

 

 

 

 

 試合を終え辺りがすっかり夕焼けに染まった帰り道、俺たちは今日のことについて話をしていた。

 

 「テストプレイヤーを兼ねた大会か。まさかこんなことになるなんてな」

 

 俺の言葉に愛も頷いて答える。

 

 「そうだね。私もまさか大会に出られるなんて思わなかったよ」

 

 そう愛と話しながら俺はあの試合の後を思い返した。

 

 

 『大会は2週間後、幕張メッセで開催。そして大会はA・Hコンピューター株式会社が主催で行われるの』

 

 そう佐々木さんはその大会のパンフレットを見せながら言った。

 

 『A・Hコンピューター株式会社ってBPSが使っている内蔵機器やスキャナーを作っている会社じゃないですか』

 

 『A・Hコンピューター株式会社』 主にCPUなどの半導体を中心に生産。その技術力は新興企業でありながら海外CPUメーカーに匹敵するほどであり、彼らよりも先に次世代CPUの本格的な生産を行った会社としても有名だ。BPSの内蔵機器はここで生産されたものを使用されており、この会社の力なくしてはBPSは誕生しなかったともいわれている。

 

 『そこの会社からBPSに登録しているチームからランダムに参加依頼が出されたわけ。それで今回私たちのチームとkuromorimineが見事に選ばれたんだ』

 

 そういう佐々木さんの言葉に藤原さんが続く。

 

 『だが佐々木のチームに空きがあってな。人は多い方がいいだろう』

 

 『なるほどです。しかし、いいんですか? 自分たちが参加しても?』

 

 俺がそう問うと弘さんは、

 

 『ああ。1チーム最大15名まで参加のルールと使用プラモ以外が限定されている以外は自由だからね。人数的にもまだ余裕があるから、ぜひとも君たちにも参加してほしいんだ』

 

 『……わかりました。参加しましょう。それで使用できるプラモはなんでしょうか』

 

 「ありがとう。それじゃ、使用するプラモなんだけど……』

 

 その後に続く言葉に俺は驚くこととなってしまった。

 

 

 

 

 「まさかMS禁止とはな……」

 

 そう、今回の試合はMSが禁止となっているのだ。多少なりとも扱いに慣れているMSとは全く違う機体を選ばなければならないという事だった。それは今までとは違う戦い方を知らなければならない。はたしてどうすればいいのか。

 

 「こうなるとMSとは別の機体を用意しないと……。けれどいったい何があるんだ……」

 

 俺がそう悩んでいると、何か愛が思いついたようだ。

 

 「そうだ! あれがあった!」

 

 

 あれから帰宅後、俺は愛の部屋を訪れた。あの後、愛がおすすめのプラモがあるといったからだ。はたしてそれはなんだろう。

 俺が部屋に入ると彼女はすでに準備を整えていたのか、俺が初めてプラモを作った時のようにして待っていてくれた。

 

 「またせたな。それで、一体どんなプラモなんだ」

 

 そう俺が言うと愛はそばにあった箱を取り出した。

 

 「これだよ。フレームアームズ『三二式一型 轟雷』」

 

 フレームアームズ。それはコトブキヤと言うメーカーが出しているオリジナルロボットシリーズである。ほかのプラモとは違い、内部に共通規格の素体を採用。それに外装を付けていくことでオリジナルのロボットを作り出すことが出来る。

 今回作る轟雷は陸戦に特化した機体であり、脚部のキャタピラで陸上を高速で移動することが可能。背部に装着された120mm低反動砲がこの機体本来の装備だが、別で売っている武器パーツなどを付けることもできる。

 

 「と。これが大体の機体概要かな。基本的にはガンプラと同じ感覚で作れるけど、一部は接着が必須な所もあるし、何より色が少ないから塗装したほうがよりかっこよくなるよ」

 

 「なるほど。確かにこれなら試合にも出られるな」 

 

 「あとこれが今回使う武装。武装としては申し分ないと思うよ」

 

 そう言って愛はまた別の箱からビニールで梱包されたプラモを取り出した。

 

 「『MW-29 ハンドガトリングガン』これがちょうどいいかな。携行式のガトリングガン。これで近接戦闘も問題ないよ。後背部にもう一つ『MW-23 大型ミサイルランチャー』これを装備すれば遠距離からの支援も問題なし。今回はこれで行ってみようか」

 

 「ありがとな、愛。ところで愛はまたアグニで出るのか?」

 

 「うん。……正確にはちょっとしたものを乗せるつもりだけどね」

 

 そう言った愛は何やら不敵な笑みを浮かべている。それは俺が初めて愛とバトルしたときと同じものだった。……いったい何を考えているんだ。

 そう思いながら俺はいつも通り組み立ての作業に入るのだった。

 

 

 

 作業を開始して約3日後、ようやく接着や合わせ目消しを終わらせることが出来た。

 

 「ふう。やっとここまで来たか」

 

 「うん。だいぶ慣れたね。それじゃ、今回は塗装にチャレンジしてみようか」

 

 そう言うと愛は置いていたパーツを箱に入れた。

 

 「どうするんだ。パーツを箱に入れて」

 

 「これからパーツを洗うんだ。塗装の準備だね」

 

 「パーツを洗う? どうしてだ?」

 

 俺が不思議に思いながらそう聞いた。

 

 「製造時につく剥離剤を取る為に中性洗剤で洗う必要があるんだ。剥離剤をそのままにしておくと塗料を弾いたりして食いつきを悪くするんだ。あと洗浄には削りかすを落とす意味もあるからとても重要だよ」

 

 「へぇ、いろいろあるんだな、プラモには」

 

 「そうだよ。それじゃ行こうか」

 

 そうして俺と愛は一階にある風呂場に行くと、風呂桶を用意してお湯を注いでなかに中性洗剤を注ぎいれた。

 

 「中性洗剤を使うと剥離剤が取れるんだ。大体これに5分ぐらい付けてからしっかりと水気を切って置くんだ。そうすることで剥離剤をしっかり取って塗料の食いつきを良くするんだ」

 

 「なるほど。本当に重要な作業なんだな」

 

 「そうだね。けれど最近のプラモ、特にガンプラは剥離剤もあまり塗ってなくて、パーツを削ったりしているうちに落ちてくるから、その場合は中性洗剤を使わずにお湯だけで洗って削りかすを取るだけで大丈夫だよ」

 

 そうして俺たちはパーツを洗い乾燥をさせると、部屋へと戻ってきた。

 

 「さて、これで塗装の準備も終わったし、さっそく塗装に入ろうか。まずはパーツを塗る色別に分けよう」

 

 そう言うと愛は何やら蜂の巣状に穴の開いた段ボールを素材にしたものを取り出した。そしてこれまた細長い洗濯バサミのような形状をしたものが先端に付いた棒を取り出す。

 

 「棒は塗装の持ち手って言う道具でこれにパーツを固定して塗りやすくするんだ。そしてこの台は猫の爪とぎを使った奴で、これの穴に刺して固定するんだ」

 

 愛はそう言うと、パーツを一つとり、持ち手でパーツを挟み固定し台へと刺した。

 

 「ちなみに塗るときのことを考えて、塗らない部分や目立たない部分を使って固定していくんだ」

 

 「なるほど。それじゃ固定していくか」

 

 そう言って俺はパーツの固定作業に入る。もともとパーツ数が少ないのもあって数分で終わらせることができた。

 

 「良し、これでいいな。次はどうするんだ?」

 

 「次はいよいよ塗装だよ。まだ時間もあるし、今日はまずこれを塗っていこう」

 

 そう言うと愛は缶スプレーを取り出した。

 

 「これはサーフェイサーって言って、プラモの塗るための下地を作る塗料なんだ。ちなみに種類はMr.サーフェーサースプレー 1000 (徳用)グレータイプだよ。それじゃ外に出ようか」

 

 そう言って愛は部屋の窓からベランダへと向かった。俺もそれについていく。まだ夕方の空はまだ赤々としており、風も穏やかであった。愛はすでに準備をしていたのか、塗装をしても汚れないようにブルーシートを一面に覆っていた。そしてその中心には木で作った台が置かれており、そこに固定したパーツが置かれていた。

 

 「へへ、普段からプラモを作るから汚れないようにブルーシートで覆っているんだ。もちろん、布団を干したりするときは片付けるよ。それじゃ始めるよ」

 

 そう言って愛はサーフェイサーを手に持つと、30㎝ほど離すとそれを塗り始めた。塗られたところは少しずつグレーに染まっていく。

 

 「注意するのはトップコートをしたときと同じ。厚く塗らずに数回に分けて塗る。距離を開ける。これが大事だよ。それじゃアキちゃんもやっていこうか」

 

 「ああ。やってやるさ」

 

 そうして俺の初めての塗装が始まった。初めての塗装は結構大変で、厚く塗りすぎたりするところができてしまう。さすがにトップコートと同じとはいかないようだ。そして何とか全部のパーツにサーフェイサーで塗装することができた。パーツはまさにグレー一色となっていた。

 

 「ふう、やっと終わったか」

 

 「お疲れ様。それじゃこれを完全に乾かすために1日乾燥させよう。だから次は明日ね」

 

 「了解だ」

 

 そして次の日の放課後……

 

 「良し、これで塗装も最終段階だね。今日はこれを使うよ」

 

 そう言うと愛はまた缶スプレーを取り出した。

 

 「今日使うのはMr.カラースプレー オリーブドラブ(1)とつや消しブラック。それとガンシップグレイ。この3色だね。本当はこのプラモデルに書いてある色の塗料を使えばいいんだけど、これだけでもいい感じになるんだ。これも塗り方は一緒。本体にはオリーブドラブ、キャタピラ部分とコックピットハッチなんかの細かいパーツはつや消しブラック。武装はガンシップグレイで塗っていってね」

 

 「わかった、やってみるか」

 

 そうして俺はパーツを塗っていく。これもまた塗っていくとどんどんグレー一色だったものに色がついていった。苦心しながらも俺はパーツを染め上げていく。そして……。

 

 「やっと塗り終った……」

 

 「うん。いい感じだよ。ムラもできていないし言う事ないよ。それじゃこれを乾かしていこうか。それが終わったら組み上げに入るからね」

 

  そして内装パーツに塗装した外装パーツをはめていく。そして最後にスミ入れとトップコートを噴いた。

 

 「ようやく完成だ」

 

 そこには重厚感あふれるMSとは全く違う形のロボットがあった。これが轟雷か。

 

 「うん。いい感じ。これならBPSでもうまく戦えるよ。それじゃ明日、富良野でさっそく訓練してみよう」

 

 「ああ。そうだな」

 

 そう俺たちは轟雷を見ながら語り合った。

 

 




 主人公が作るプラモは90式でした。ちなみに実際に自衛隊が使っている車両をよく見ると、意外とムラがあったりするものです。これはエアスプレーを使って塗装する関係上、起きることなので仕方ないです。うまい人がやるときれいにぬれたりするんですけどね。
 ですので皆さんもプラモを塗装する際は完璧を求めないで楽しく塗るのが一番です。
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