継ぐ者~提督物語   作:お気楽Y

10 / 23
 訓練も進んでいるようです
 
 主な登場艦娘
 五月雨 白露型駆逐艦6番艦 不思議な青色の長い髪、がんばり屋で少しドジな艦娘
 初霜  初春型駆逐艦4番艦 小柄で長い黒髪に桃色の瞳、紺のブレザーを着た少女
 初雪  吹雪型駆逐艦3番艦 切り揃えられた前髪、白いセーラー服の眠たげな少女

 この小説での解説
 バケツ  高速修復剤の俗称 艦娘の損傷状態が高速回復する
デリック 本体に動力のないクレーンみたいなもの

 加唐島 (かからしま)玄界灘にある島
 加部島 (かべしま) 同じく
 壱岐島 (いきのしま)同じく




船団護衛-1

 真ん中にデリックが立ち、喫水は海面ギリギリで今にも沈みそうに見えるその船は、石炭を満載した戦時標準貨物船で、他の船3隻とともにゆっくり関門海峡の入り口に近づいた。

 

「それじゃ、僕たちはここまでです、ご無事の航海を」

 そういうと佐世保の時雨は僚艦とともに離れていってしまった。

 

 関門海峡を抜けて周防灘に入ると、すぐに前方から別の艦娘が二人近づいてくる。

 

「こんにちわ~、柱島の五月雨です、ここからは私達が護衛します」

そう言うと両横に付く、船員は内海なのに護衛が付くので、積荷に重要なものがあったか思い出そうとした。

 

 ☀ ☁ ☂

 

 柱島鎮守府として初めての船団護衛、ただし正式ではない、本来は内海に入ると護衛は付かない、今回は練習も兼ねて神戸まで護衛する、五月雨達は初の船団護衛。

 

「お任せください」 司令官にそう言って張り切って出てきた。

 

 しかし、すぐに退屈になり初雪に変われば良かったと後悔する。船団の速度は遅いし、波も穏やかで居眠りしそうだ。

 

「そっちはなにかありますか」 反対側にいる初霜に隊内通信で話しかける。

 

「異常ありません」 初霜は またですか と思いながら答える。

 もう何回も同じことを聞いてくる、まるで何か起きて欲しいみたいだ。 五月雨たちはその後も何事も無く神戸まで護衛して柱島に帰投した。

 

 

 ☀ ☁ ☂

 

 数日後、ふたたび船団護衛の練習をするこになり、神戸から関門海峡まで今度は初霜と初雪のペアが護衛し旗艦は初霜が担当する、今回も何事も無く航海が進み。

 

「もうすぐ関門海峡ですね、無事守れて良かったです」 初霜はホッとしつつ隊内通信で話す。

 

「ん...そだね」 のんびりするのは海上より部屋のほうがいい と思う初雪。

 

 そろそろ別れようとしたとき先頭の貨物船から連絡が入った。

 

「そのまま佐世保まで護衛されたし」

 

「どういうこと」 初雪がつぶやく

 

 と同時に通信が司令官より入る。深海凄艦が再び同時侵攻を始めたので、佐世保からの護衛が来られない、ついては柱島で佐世保まで護衛することになったらしい。初霜たちはまだ対馬海峡に出たことは無かった。

 

「針路は私達に従ってください、玄界灘は庭みたいなもんです」 貨物船から通信が入る。

 

「別に...門司港に寄って...待てばいいじゃん」 初雪が提案する。

 

 初霜もその通りと思ったので司令官に意見具申した。司令官からの返信は、同じことを考え司令部に提案したが、積荷にはバケツがあり、それは佐世保はもちろん、そこからブルネイやリンガに輸送されるものなので激しい戦闘が今後予想される状況なので届けたい、ということらしい。司令官からは五月雨を応援に出すので2時間おきに現在地の報告を入れるように言われた。

 

「五月雨さんが来てくれるから」 初雪に知らせる。

 

 戦時標準貨物船は精一杯速度を出している、しかし9ノット(時速17K/mくらい)ほどだ。門司あたりから佐世保港までの海路は210kmほど、今の速度だと13時間はかかる、佐世保に着くのは夜中になり、五月雨が第一戦速以上で追ってきて、追いつくのは加唐島あたりになる。なんとか門司港による方法はないかと考えたが、燃料は佐世保に行って補給できるなら十分あるし思いつかない。

 

「嫌な...予感がする」 初雪がつぶやくので、

 

「変なフラグを立てるのは止めましょう」 泣きそうな声で初霜が答える。

 

 

 ☀ ☁ ☂

 

 関門海峡を抜けるのに少し速度を落とした、海峡を抜けると内海と違って波は少し立っていたが、天候は薄曇り、波高は1~2mで、風は北東からの追い風で気象条件は上々だ。貨物船は単縦陣で、その両横に3Kmほど離れて、右舷に初霜、左舷に初雪の隊列は順調に航海して玄界灘を進んでいる。この調子なら、予定通りお昼頃には大島の南側まで行けそうだ。

 

「天候は上々ですね」

 

「・・・もう帰りたい」

 

 初霜たちの装備は、12.7cm連装砲、93式水中聴音機、94式爆雷投射機を初霜が、12.7cm連装砲、61cm三連装魚雷x2、が初雪、対潜と対艦に役割が分かれている。

 

 

 ☁ ☂ ☀

 

 対馬海流に乗って、提督たちにアルバコアと呼ばれ恐れられる深海凄艦の潜水カ級eliteは壱岐島沖の南側まで来た。九州から壱岐や対馬、大陸への航路があるこの場所は絶好の狩場だ。アルバコアは獲物が来るのを待つために壱岐水道の底へ着底した。

 

 

 突然アルバコアは閉じていた目を開けた、何時間も待ってやっと獲物の音を聞き取った、いくつもの推進音が加唐島の北側から近づいてくる、南側から来ると思っていたが、まあいい アルバコアは凶悪な笑みをしながら静かに浮き上がっていく。

 

 

 ☂ ☁ ☀

 

 夕日が初霜の顔を照らす、そろそろ加唐島が見えるはずだ、ここまでの本当の護衛任務に、訓練とは全然違う緊張感で、さすがに疲労が隠せない。

 これから夜になる、初霜は不安で一杯な気持ちを出さないように心の底に押し込める、しっかり守ろう、五月雨さんがそろそろ合流する頃だ。

 初霜は加唐島の南側を通るコースを止め北側を通ることにした、南側は加唐島と加部島との間は3Kmもないので、もしものときに艦隊運動ができない。北側の加唐島と壱岐島の間は20Kmほどある。このあたりは深海凄艦の潜水艦が出没する場所だ、そろそろ 之の字運動 を始めよう、

 

「初雪さん、之の字運動 を開始します」 隊内通信で連絡してから貨物船に連絡する。

 

 貨物船からはそこまでする必要があるのか と文句があったが、私達の訓練だからと協力を頼んだ。

 

「対潜運動を開始します、一斉回頭、面舵用意、回頭~」

 

 しかし、回頭する貨物船はいない、

 

「転針してくださ~い」

 

 初霜がやきもきしていると、しばらくしてバラバラに回頭しだした。  初霜がホッとすると、

 

 突然初雪の叫びが聞こえた。

 

「左舷、雷跡~回避~」 

 

 ☂ ☁ ☀

 

 初雪は海面を見ることに見飽きてやる気がなかったが、初雪の頭の上の妖精は周囲を双眼鏡でちゃんと警戒していた。

 初霜からの 之の字運動 の号令を え~やるの と思いつつ準備に入る。初雪の頭の上で監視する妖精は。夕日に照らされた左舷前方の海面に光るものを発見した、目を凝らしてみる、4本の筋が向かってくるのが見える。魚雷だ。初雪の頭を叩いて指を指して知らせる。初雪は指差す先を見て船団に叫ぶ、そして状況を判断する。

 距離は初雪から6000mほどか、残された自分の時間は4~5分、船団へはさらに2分ほど,艦隊はちょうど 之の字運動 で面舵で転針しようとしていため、2本は艦隊の前を通り過ぎそうだ。初雪は残りの2本のうち自分に近い1本と貨物船の間に割り込む針路を取りスピードを上げた。

 

「砲撃戦用意」

 

 

 ☂ ☁ ☀

 

 初霜は初雪の警告を聞いて、右舷側を警戒し何もないことを確認してから、艦隊の後ろを抜けて左舷側へ向かい始めた。そのとき、大きな水柱が上がるのが見えた。慌てて後ろを抜けて貨物船の左舷側へ出て貨物船を確認する、1,2,3、4隻いる。次に左の海面を見るが初雪が見えない。

 

「初雪~」 叫びながら初雪の居たはずの所へ急ぐ。

 

 

 ☂ ☁ ☀ 

 

 魚雷が貨物船へ進む針路に初雪は割り込み魚雷に正対した、そのとき右手の12.7mm連装砲の砲塔上で妖精が親指を上げた。

 

「少し手前を狙って、砲撃はじめ、て~」 12.7cm連装砲(発射速度10発/分)が砲弾を撃ちだす。

 

 しかし、当たらない、あっという間に近づいてくる。

 

魚雷と初雪の距離はもう500mもない、しかし、初雪は逃げようともせず砲撃を続ける。

 

「当たれ」

 

 

 ズドォーン 爆発音と水柱

 

 

 水柱から少し離れた横をもう1本の魚雷が転進中の貨物船に向かって通り抜ける、貨物船は必死に針路を変えようとしているが、魚雷は貨物船の左舷に・・・船員は爆発に身構えたが何も起こらなかった。

 海面を見ると、貨物船の反対側を魚雷が遠ざかっていく。帰り便で軽い荷しか載って無かったのが良かったのか船底を通り抜けたようだ。

 

 

 ☂ ☁ ☀

 

 初霜が水柱の上がった当たりまで来ると、暗くなりつつある海面にぐったり横たわる初雪を見つけた。

 

「初雪~」 慌てて側まで行く、浮力はあるようだが意識が無い、艤装がボロボロで直撃は免れたが至近だったため大きな被害を受けたようだ。初雪をこのままにしてはおけない。しかし、護衛すべき貨物船と、たぶん潜水艦の深海凄艦がいる。

 船団に初雪を背負って付き添うか、しかし初雪を背負ったままでは潜水艦に対応できない、潜水艦を攻撃すれば船団と初雪が無防備になる。初霜は、初雪を助けるか、船団を護衛するか、深海凄艦を攻撃するか、決断を迫られた。

 

 

 

 




 なんだか緊迫した展開です。

 ご批判、ご感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。