主な登場艦娘
五月雨 白露型駆逐艦6番艦 不思議な青色の長い髪、がんばり屋で少しドジな艦娘
初霜 初春型駆逐艦4番艦 小柄で長い黒髪に桃色の瞳、紺のブレザーを着た艦娘
初雪 吹雪型駆逐艦3番艦 切り揃えられた前髪、白いセーラー服の眠たげな艦娘
東京は朝から雨が降っていた、麹町の雨に煙る建物の一室、海軍省軍務局の軍務局長室で、格子状の窓から灰色の空を見上げながら軍務局長は思案していた。
深海凄艦との戦いは膠着状態が続いて、国の予算は海軍省につぎ込まれ、海軍省の政府での発言力は強くなり権勢をふるっていた。しかし、最近深海凄艦が侵攻方法を変え日本近海に侵入されることが増え海軍の現状に疑問を持つ者、深海凄艦に不安を増す国民世論、軍令部からの攻勢計画の意見等、周りがうるさくなってきた。
困るのは現状に疑問を持たれ、何かと調べられることになった場合だ。ここは軍令部からの攻勢計画に乗って目先を逸らすのがいいだろう。軍務局長は軍令部次長に会うために窓際を離れた。
☀ ☁ ☂
頬に当たる塩風が気持ちよい、ほとんど波の無い海面を3人で横陣を組んで進む。3式水中探信儀妖精が肩を叩いて前方の海面を指差す。五月雨がその場所にブイを投げ入れると初霜、初雪がブイに近づいてきて
「爆雷用意、て~」 爆雷をブイの周囲に落とす。
海面を見ていると、しばらくして何かが浮き上がってくる、
「いい感じ、でち」 海面に顔を出したのはゴーヤ(伊58)だ。
「妖精さん、お疲れ様です」 五月雨は声をかけた、この前の船団護衛任務で佐世保に滞在している間のこと、佐世保の明石さんから内緒で譲り受けたのが3式水中探信儀の明石スペシャル、明石さんが故障したり、壊れた装備を寄せ集めて作ったらしい。柱島鎮守府に水中探信儀が無いことを知り譲ってくれた。今日は呉にお願いして、呉まで来て水中探信儀の習熟訓練を行っている。
「午前中の訓練は終了しましょう、ゴーヤさんありがとうございました」
「どういたしまして、でち」
訓練の後、呉鎮守府の食堂で肉じゃが定食を食べ終え、お茶を飲んでいると
「申し訳ないけど午後からの訓練は参加できない、でち」 ゴーヤさんが来て言う、
「何かあったんですか」
「今後の出撃に備えて待機命令が出た、でち」 ゴーヤさんはまた今度ね と手を振って行ってしまった。
「ありがとうございました、お気をつけて」 皆が後姿に声をかける。
「また深海凄艦の侵攻でしょうか」
「どうかな・・・午後からどうしようか」
「...間宮でいい」
☀ ☁ ☂
柱島鎮守府の提督室では、司令官が五月雨たちが呉から持ち帰った鞄に造船許可書と木札が3枚あるのを見つけ喜んでいた。6人になれば1艦隊が組めるようになる。3隻づつにして任務と休息をローテーションすることになるだろう、今より一人一人の負荷が減らせられる。
「明日の朝ご飯は、おかずを1品増やしてアジを焼くよ」 今日の秘書官の初雪に声をかける。
「え~...」
翌朝、神社にお参りしおばちゃんからアジを買い、工廠に4人揃って入る。
「木札は3枚、資源はオール120です、どう振り分けますか、司令官」
「今回もオール30にして、残った分は備蓄して次に残そうと思うんだ、五月雨」
「それもいいですね」
工廠の妖精に木札を渡し、機械に資源数をセットし返す。しばらく待つと妖精が3人の名前の書いた巻物を持ってきた。すぐに建造可能か照合する、3人とも建造可能だ、そして妖精は戻っていった。靄の中から艦娘が現れ
「あたし文月ていうのよろしく~」 長い茶髪をポニーテールにした茶色の瞳の少女、続いて
「あなたが司令官ですね。三日月です。どうぞお手柔らかにお願いします」セミロングの黒髪にアホ毛、金色の瞳の少女、さらに
「名取といいます。ご迷惑をおかけしないように、が、頑張ります!」 茶色のショートボブに白のカチューシャをつけ、目は髪と同じ茶色の少女
「文月、三日月、名取、始めまして、僕が柱島鎮守府の司令官の榎本恵児です、よろしくお願いします」
「そして名取さん、あなたが柱島鎮守府最初の軽巡、これで水雷戦隊が組めます」
「柱島鎮守府へようこそ、私は、五月雨よろしくね」
「初霜です、よろしくお願いします」
「初雪...です」
早速3人を住居棟に案内する。
「名取さんには悪いが暫く駆逐艦の娘と一緒にお願いします」 空いている3人部屋の前で話す。
「私は構いません」 そう言って文月と三日月を見る。
「あたし達も大丈夫です」 文月が答える。
「これから艦娘が増えることを考えると増築しないと・・・」
「そうですね司令官、ちゃんとした司令官の住居も必要です」
「ここはまだ小さな鎮守府なんだ、今後も訓練、遠征、秘書艦、食事、どれもローテーションで回すのでお願いします」
管理棟に戻り話し合い、最初は二人をペアにしてローテーションすることにし、その後3人づつに分けることにする、まずは五月雨と名取、初霜と文月、初雪と三日月のペアにして行うことにした。
☀ ☁ ☂
名取たちが加わって2週間が過ぎ、少しづつ慣れてきた頃、呉の提督から連絡があった。詳細は洩らせないが、軍令部の作戦案が実行されることになり、横須賀、呉、佐世保の鎮守府が主力となり、他の鎮守府も補助する大掛かかりなものになる とだけ教えてくれた。そして、増築の件はすぐに許可されるだろうとも言われた。
さらに1週間が過ぎた頃、突然、司令部より、明後日、小笠原諸島近海まで進出し、深海凄艦、潜水艦、艦載機を発見したらただちに撤退せよ という命令があった。小笠原諸島は東京から南南東に約1,000Km離れた場所で、今は深海凄艦の勢力範囲だ。まだ日の浅い柱島鎮守府には荷が重い気がしたが仕方ない、ただちに全員を呼集する。
「なにそれ、発見したら攻撃せずに逃げろ てこと」 五月雨が不満そうに言う、
「あの、私達だけですか、航空支援もなしに」 名取がおどおどしながらも聞いてくる、
「宿毛から祥鳳さんと速水を含んだ艦隊が四国から400Kmほど南下して支援します、それから宿毛からも同じように水雷戦隊が進出します、宿毛のほうは父島の北東50Km、柱島は父島から南西50Kmを目標とする、ただし到達する必要なし てことです」
「探りを入れるんですね」
「そんな感じだね初霜、なので無理せず深海凄艦を発見したら撤収、特に航空機に発見されたら直に反転してください」
五月雨を旗艦として明日の朝4:00に出撃して明後日の15:00に目標地点到達を目指すこととし、途中で祥鳳さんの艦隊と会合して補給を受ける計画だ。その後、航路や詳細は五月雨達に任せ。司令官は皆を残して管理棟を出る。
「明日は柱島鎮守府の初出撃、たくさん食べて、今晩は早めに寝てください」 司令官は戻ってくるとそう言って全員を住居棟の食堂へ誘う。テーブルの上には食事が並び、ラムネまで置いてある。
「なんですか、司令官~」
「文月は初めてかな、ラムネだよ、さぁ、全員が無事帰還することを願って乾杯するよ、五月雨お願い」
「ハイ、必ず全員で無事柱島に帰ってきましょう」
夜、戸締りを確認するため部屋を出た司令官に、廊下の先にある玄関の方から話し声が聞こえてくる。
「初めての出撃、緊張します」 玄関前の上がり階段に座って港の灯りを見ながら三日月が話す、
「あたしも、みんなの足を引張らないか心配です」 並んで座っている文月、
「行って帰ってくるだけです、大丈夫・・・なはずです」 二人の前に立つ名取が安心させようとする。
司令官が扉の取っ手を掴もうと手を伸ばしたとき、いつの間に来ていたのか、先に取っ手を掴んで五月雨を先頭に初霜、初雪が表へ、そして初雪が扉を閉めながら頷いて合図する。恵児は後を任せ静かに部屋へ戻った。
☀ ☁ ☂
見上げるとまだ星の残る薄暗い空の下、港に司令官と艦娘は居た、全員が整列して司令官を向く、
「天候は曇、明日は雨が予想されています、風は北北東で風速4から5、ゆっくりですが南から低気圧が近づいています、会合地点は北緯30度東経136度40分付近」
「付近て」 五月雨が聞き返す、
「近くに行けば相手が見つけてくれるそうです」
五月雨は、やれやれという顔をしてから真剣な顔になり、
「柱島鎮守府、第一艦隊出撃します」 五月雨の言葉で全員が敬礼してから海に飛び込んでいく。
柱島唯一の艦隊、6人の艦娘が東の水平線から明るくなり始めた海を南に出撃していく、司令官は無言で答礼して見送る。
「必ず全員無事に戻れ~」 小さくなる後姿に思わず恵児は叫んでいた。
今回も実際にオール30で3回、回してみましたw