主な登場艦娘
五月雨 白露型駆逐艦6番艦 不思議な青色の長い髪、がんばり屋で少しドジな艦娘
初霜 初春型駆逐艦4番艦 小柄で長い黒髪に桃色の瞳、紺のブレザーを着た艦娘
名取 長良型軽巡洋艦3番艦 茶色のショートボブに白のカチューシャをつけ、
目は髪と同じ茶色の艦娘
満潮 朝潮型駆逐艦3番艦 セミショートの髪をお団子付きのツインテールにし、
襟には大きな緑のリボンをつけている艦娘
霞 朝潮型駆逐艦10番艦 銀髪を緑色のリボンでサイドテールに結った
勝ち気な目つきの艦娘。
涼風 白露型駆逐艦10番艦 濃い青髪のロングヘアーを、紫色のリボンで
二つ結びにしている艦娘
濃い霧に覆われた空、さらに波頭には時々白波が見える状況の中で、名取は射出カタパルトを風上に向ける、偵察員妖精は体をシートに押し付け衝撃に備える。
「何でこんな天候なのに出撃ですかね、飛曹長」
「時間が無いからだろ、ぐたぐた言っても仕方ない、任務は重く、わが身は軽い だ」
ボン 火薬が炸裂して98式水上偵察機が名取から打ち出される。打ち出された水偵はすぐに霧の中に消えて見えなくなる。飛曹長妖精はゆっくりと上昇して行き霧の上に出る、
「よし、星があるな、天測開始、機位を測定しろ」
「機位測定しました、北緯52度4分西経169度10分、ダッチハーバーまで250㎞です」
「名取に報告しろ、行くぞ」
98式水上偵察機は艦隊の上空を離れ北へ飛行する。
深海凄艦の哨戒線を抜けた名取たち柱島第一艦隊は1日半ほどで、ダッチハーバーの南西へ進出し水偵を発進させた。98式水偵の夜間飛行能力と航続距離を活かしてダッチハーバーを偵察する。偵察が成功すれば艦隊は反転し帰投し、水偵は偵察を終えたあと1200㎞ほど西へ飛行してアッツ島の近くの島で乗員が潜水艦に回収される。もし偵察が上手くいかなかった場合、水偵は艦隊に戻り名取が回収し再度発進させる計画だが、敵地に長居すれば発見される可能性が高くなる。
98式水上偵察機
飛行艇型の艦載夜間偵察機、
最高速度: 217km/h、巡航速度: 130km/h (高度1000m)、航続距離: 1,945km / 15h
水偵発進後に南へ転進した名取たちは水偵からの報告を待つ。
☀ ☁ ☂
40分ほど飛行すると前方に雲海に浮かぶブセビドフ山(標高2149m)の山頂が見えてきた。まるで海に浮かぶ島のように見える。
「ウムナック島です」 偵察員妖精が報告しチャートに記入する。水偵は北東に針路を変える。
1時間ほど雲海の上を飛行する。
「そろそろです、地上見えませんね、飛曹長」 偵察員妖精はそういうとカメラの確認を行う。
「うちの司令官は運が良いのが取り柄だ、大丈夫だよ」
「まったく気楽なんだから飛曹長は」
「それより、見張り、しっかりしろよ、地上に気を取られて怠るな」
水偵がダッチハーバーの上空に差し掛かるが眼下は雲海で何も見えない、ダッチハーバー上空を横切り水偵は左旋回してダッチハーバーの淵に沿って飛ぶ、
「どうします、長居すると気づかれますよ」
飛曹長妖精が判断に迫られたとき、左舷の雲海に少し切れ間を発見した、すぐに旋回して切れ間の上を飛行する。通り過ぎて反転するとすでに一面の雲海に戻っていた。
「撮ったか」
「撮りました、直視でも確認しました、バッチリです、飛曹長」
「名取にテ連送だ」 水偵が南西に針路を変えたとき、後方の雲海から深海凄艦の艦載機が飛び出してきた。
「敵、六時方向」 後ろで偵察員妖精が叫ぶ、水偵は高度を下げ、深海凄艦の艦載機が機銃を撃つ前に雲海に突入した。
☀ ☁ ☂
「成功です、脱出します」 名取はテ連送を受信すると艦隊の針路を西に取った。
「何で西なの、南へ行けばいいじゃねえか」 涼風が言う、
「はぁ~あんた、ばかなの、霧が無かったら艦載機にボコられるだけよ」 霞が答える、
「おおぉ~そっか~」
「水偵が見つかったようです、皆さん周囲の警戒お願いします」 名取が注意を促す。
「名取さん、水偵さんは大丈夫でしょうか」
「簡単に落とされるような子では無い筈です、初霜さん・・・多分」
☀ ☁ ☂
霧の中に逃げ込んだが、機位を見失わないように方位は変えず再び1時間ほど西南へ飛行する。。
「そろそろウムナック島です、飛曹長」
「よし、上昇する」 飛曹長妖精が操縦かんを引き水偵は雲海の上へ出るため上昇する。
「周囲に敵は居ません、あきらめたようです」 偵察員妖精は周囲を警戒したあと山頂を探す、予定では右側に山頂が見えるはずだ。
「山が見えません」 偵察員妖精が右舷を見ながら報告する、
「前だ~!」
飛曹長妖精が叫び、操縦かんを右に倒し水偵をロールさせ操縦かんを引き衝突を回避する、
「ぅおお~」
水偵は右の翼を下げ、フロートが山肌に沿うように飛ぶ、間一髪で衝突を回避し、ブセビドフ山から離れると水平飛行に戻た。
「やれやれ、周囲警戒、機位測定」
水偵はアダック島の北東にあるグレートスキン火山(標高1740m)を目指して転針した。雲海の上ギリギリを4時間ほど飛ぶと前方にグレートスキン火山が見えてきた。
「目視したところではダッチハーバーの戦力は事前情報とあまり変わっていませんでしたよ、飛曹長」 目標が見えて安心したのか偵察員妖精が話しかける。
「そうか」
「こんなに準備して偵察したのに以前と変わり無しじゃ、名取がっかりしますね」
「・・・」
「帰り道ついでだ、アダックの上を通過するぞ、念のためカメラの用意をしろよ」
「え~、何にもありませんよ、真っ直ぐ帰りましょうよ」
ぶつぶつ言う偵察員妖精を無視して飛曹長妖精は水偵をアダックに向ける。グレートスキン火山の北を通り過ぎ南西に向かう。
アダックまで30㎞のところで前方上方に黒い粒が見えた。
「11時、深海凄艦艦載機」
「降下する」 水偵は発見されるより早く高度を下げ雲海の中へ沈んだ。
「艦載機が居るということは母艦がどこかに居るということだ」 水偵はアダック上空に到達したと思われるが霧で周囲は何も見えない。
「?」
「何か聞こえなかったか?」
・・・ゼロ オイテケ
「はい、ゼロ オイテケ と聞こえました、飛曹長」
水偵は霧の中を低空でアダック上空を通過した。
☀ ☁ ☂
98式水偵がアダックを通過してから数時間後、名取達はアダック島の南100㎞ほどを西へ向けて進んでいた。
「なんか前方が明るくない、霞?」 満潮がをかける。
「まずいわね」
艦隊の進行方向が明るくなって、前後の艦が見えるようになり、艦隊は霧の晴れ間に出てしまった。名取が周囲を見回すと西の雲までは50㎞、北の雲までは20kmほどか、
「出来るだけ早く霧の中に入りましょ」 五月雨が隊内通信で名取に提案する、
「そうですね、艦隊、増速します」
「艦隊第4戦速、輪陣形に移行、対空警戒お願いします」 名取の足元の波が盛り上がり風に前髪がなびく、先頭は初霜で右舷に満潮と霞、左舷に名取と涼風、最後尾に五月雨で六角形を作る。
「あと20分くらいで霧へ入れそうですね」 前方を見ながら初霜が話す、
突然、北側の雲から深海凄艦の丸い艦載機1機が飛び出してきて、あっという間に前方の上空を横切り南側の雲の中に消えていく、
「見つかったわ」 霞が叫ぶ、
最後尾の五月雨の頭の上で警戒していた見張り妖精が後方、東の雲から出てきた深海凄艦艦載機を見つけ五月雨に警告する、通過してから回り込んできたようだ。五月雨は振り返りながら機銃を構えるが、深海凄艦艦載機はすでに直上だ。丸い艦載機から機銃で射撃されるのと同時に五月雨が発砲する。深海凄艦艦載機へは左舷側と右舷側からも射線が伸び十字砲火を浴びせる。慌てて深海凄艦艦載機は銃撃をやめて回避する。
「さみ姉~大丈夫」 左舷側から涼風が声をかける。
「大丈夫」 五月雨は銃弾が掠った片腕を押さえ答える。
「急いで、5時に新手よ」
霞の声で5時方向を見ると丸い塊がいくつも見える。初霜、満潮、名取はもうすぐ霧の中に入りそうだ、少し離れて霞、涼風、五月雨が続く、
「最大戦速~」 名取が大声で叫ぶ、
もうすぐ五月雨たちも霧の中へ入れる、深海凄艦艦載機は五月雨たちに迫ると高度を下げる、霞、涼風、五月雨が先頭に対空射撃を集中すると、先頭の機体は高度が落ち海面に突っ込んだ、
「おとといきやがれ」 涼風が手を突き出す。
霞と涼風が霧の中に入る頃、2番目、3番目の機体から五月雨に向けて爆弾が放たれる、
「魚雷?」
爆弾は海中に沈まず、海面で跳躍して五月雨に真っ直ぐ迫ってくる。五月雨の体が霧の中に吸い込まれると、それを追うように跳躍爆弾も霧に吸い込まれる。
跳躍爆弾
航空機から投下され水面を跳ねるように進む爆弾
読んでいただいてありがとうございます
秋イベ始まりましたね、資材が沢山必要そうで早くも前途多難です。