継ぐ者~提督物語   作:お気楽Y

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 あとは帰還をするだけですが・・・

主な登場艦娘
 五月雨 白露型駆逐艦6番艦 不思議な青色の長い髪、がんばり屋で少しドジな艦娘
 初霜  初春型駆逐艦4番艦 小柄で長い黒髪に桃色の瞳、紺のブレザーを着た艦娘
 名取  長良型軽巡洋艦3番艦 茶色のショートボブに白のカチューシャをつけ、
               目は髪と同じ茶色の艦娘
 満潮  朝潮型駆逐艦3番艦  セミショートの髪をお団子付きのツインテールにし、
               襟には大きな緑のリボンをつけている艦娘
  霞  朝潮型駆逐艦10番艦 銀髪を緑色のリボンでサイドテールに結った
                勝ち気な目つきの艦娘。
 涼風  白露型駆逐艦10番艦 濃い青髪のロングヘアーを、紫色のリボンで
               二つ結びにしている艦娘


脱出

 霧の中へ入るとすぐ背中から腰に衝撃を受け、そのまま五月雨は前方に突き飛ばされ近くで爆発が起きる。五月雨に命中した跳躍爆弾は五月雨に当たって爆発せず、五月雨を跳ね飛ばしてから爆発したようだ。

 

「あいたたた・・・」 海面にうつ伏せに倒れていた五月雨は爆発で上部装甲に損傷を受けている、手をついて体を支え上半身を起こし横座りになり体の後ろに手を当ててみる、どこか内部構造が折れているようだが、幸い浮力は失っていない。

 

「さみ姉~、さみ姉~返事して」 隊内通信から涼風の声が聞こえる。周りを見回すが周囲は霧に覆われて灰色の壁だ。

 

「涼ちゃん・・・」 体が痛くて大きな声が出せない。なんとか声を出して隊内通信で呼ぶが、どこか故障したのか発信できない。

 

 艦隊は輪陣形のまま霧に入ったので艦娘達はお互いの位置が把握できずいる、

 

「艦隊、速度を落としてください、艦隊微速、私が霧笛を鳴らします、各艦衝突に注意して集合してください」 

 

「五月雨の居た方で爆発音があったわ」 

 

「さみ姉が通信に出ない」

 

「五月雨さん、応答願います・・・五月雨さん」

     ・

     ・

     ・

「集合を中止します」

 

 名取がどうするか悩んでいると

 

「私が残って探す、名取たちは先に脱出して」 霞が提案する。

 

「あたいも残るよ」 すぐに涼風が言う。艦隊を分割したほうがいいのか悩む名取、

 

「時間が無いわよ、どうするのよ、名取」 

 

「仲間を置いてはいけないよ」 満潮が隊内通信に割り込む、

 

 その言葉に覚悟を決めた。

 

「全員で捜索します。各艦、自分の位置から衝突に注意して右回りに反転し東へ微速で進んでください、捜索時間は1時間とします、それから霧の外へ出ないように気をつけてください、探照灯使用許可します」

 

 各艦は慎重に反転し捜索を始める。

 

 隊内通信を受信していた五月雨は立ち上がりかけたが強い痛みを感じて座り込む、

 

「五月雨さん、もし聞こえていたら、霧笛か探照灯の点滅か空砲で位置を知らせてください」

 

 隊内通信で名取が話す。

 

 五月雨は霧笛を鳴らそうと、

 

「霧笛お願いします」

 

 しかし、妖精が指差したのは切れた紐で、吹き飛ばされたときに無くなったのか霧笛が無かった。

 

「探照灯用意してください」 肩に探照灯妖精が現われて霧に向けて照射する。

 

「空砲撃ちます」 12.7mm砲塔の上の妖精に指示し、

 

「砲撃」 空砲を撃つと衝撃で痛みが体を突き抜ける。

 

 北東から砲撃音が聞こえたので涼風は急いで向かう、すると霧の中で点滅する光を見つけた。

 

「さみ姉~」 涼風が光に近寄ると海面に漂う五月雨を見つけた、

 

「涼ちゃん」 

 

「名取さん、見つけた」 

 

 涼風は霧笛を鳴らして居場所を知らせてから五月雨に手を貸して立ち上がらせると、全員が五月雨と涼風の周りに集まった。

 

「五月雨さん、動けますか」

 

「どうも内部構造が、どこか折れたようです」

 

「あたいが、付き添うよ」

 

「涼風さんお願いします、まずは敵の水上艦艇が来る前に少しでもここを離れましょう」

 

「すいません」

 

 五月雨に涼風が肩を貸し、五月雨の速度に合わせて名取、五月雨、涼風、満潮、霞、初霜の順で南西に移動する。深海凄艦の哨戒線から出るには西へ残り350㎞、第4戦速なら7時間だが、今の速度だと丸一日かかるだろう、

 

「司令官に状況を連絡しないとだね」

 

「でも無線は使いたくないですね」

 

「誰かが先行するしかないわ」

 

「初霜さん、お願いできますか、深海凄艦の哨戒線を抜けたら司令官へ状況を報告お願いします」

 

「了解しました」 初霜は最後尾から離れ、皆を追い越して霧の中へ消えていった。

 

 

 ☀ ☁ ☂ 

 

 アダック島から西へ650㎞にあるニア諸島アッツ島の東南の湾に98式水偵は着水し回収を待っていた。

 

「遅いな~、深海凄艦に見つかったらどうすんだよ~」

 

「この霧の中でこんな小さな水偵を見つけられるはずがない、ここは深海凄艦の哨戒線の外で、奴らは滅多に現われないよ」

 

「世の中には想定外、て事が多いんですよ、飛曹長」

 

「それより、持っていく物の準備はいいか」

 

「準備万端整ってますよ」

 

 返事して偵察員妖精が右舷を見ると海面に泡が現われ、潜望鏡が突き出てきた。

 

「飛曹長、右舷~」 偵察員妖精が海面を指差しながら叫ぶ、

 

 潜望鏡のあと艦娘が海面に顔を出す、

 

「まるゆ だよ~」

 

 

 ☀ ☁ ☂ 

 

 名取たちはアムトチカ島の南50㎞の位置を西に進んでいた、幸い周囲は霧に包まれている、哨戒線を抜けるのに、残りはおよそ西へ150㎞、時間にすると今の速度だと10時間ほどかかる。

 

「ここからは深海凄艦の艦隊が遊弋している可能性が高い海域です、もし遭遇したら涼風さんは五月雨さんを敵艦と反対側へ誘導してください、満潮さんと霞さんは私と敵を惹きつけます」

 

「わかったわ」

 

「任して」

 

「艦隊がバラバラになり連絡がとれないときは、出発前に打ち合わせた熱田地点を再集合地点とします」

 

「了解」

 

「涼風、心配しないで、私達がバッチリ惹きつけるから」

 

「ありがてーお願いするぜ、満潮」

 

 

 それから数時間たち、霧はところどころで濃淡が出始め、前後の艦娘が見えたり時々遠くまで見通すことが出来るようなこともあった、名取のカチューシャに腰掛けて双眼鏡を覗いていた妖精が右舷に船影を発見し名取に知らせる。影への距離およそ5,000mで同方向に進んでいるように見えたがすぐに見えなくなった。

 

「右舷、敵発見、距離5,000 合戦準備、第1戦速へ」

 

 涼風は打ち合わせした通り取り舵を取り、五月雨を連れて艦隊から離れる、名取たちと敵艦隊は同じ方向に進んでいるので同航戦の形になるが相手のほうが速度が速いのでこのままだと前を押さえられる形になりそうだ、じわじわ影が近づき見えるようになってきた。先頭は軽巡へ級flagshipで軽巡3隻、駆逐艦3隻の艦隊、戦力的には2倍以上だ。

 

「雷撃します、雷撃準備」 この近距離なら当たる可能性が高い。

 

「先制するなら早く」

 

「待ってください」

 

 名取は涼風達が艦隊から十分離れるまで仕掛けるのを我慢する、距離が4,000mを切ったとき相手から砲撃が始まった。

 

「艦隊第4戦速、司令部に通信、ワレコウセンス」 名取の周りに水柱が上がる。

 

「右砲雷戦開始」 名取が14cm砲を構え砲撃して、片舷魚雷2基4門を発射、続けて満潮、霞も2基8門づつを発射、20本の魚雷が深海凄艦艦隊の前方へ航跡を伸ばしていく。

 

「取り舵」 魚雷を発射すると敵艦隊から離れるように回避運動を始める。

 

 ズゥドゥオーン 

 

 先頭の軽巡へ級flagshipから水柱が上がり、続けて2番目の軽巡ホ級eliteからも水柱が上がる、残りの艦は名取たちを追うように取り舵を切って転針する。残りは3番目の艦が軽巡ホ級eliteで、駆逐艦のロ級elite、イ級elite2隻が続いている。転針したので二つの艦隊はほぼ平行に並び南へ進みながら砲撃戦になるが、時々霧が濃くなりお互いに見えなくなる、そして有効弾はないまま進む、しかし、どちらかに何れ命中弾が出るのは時間の問題だ。

 

「艦隊減速、第一戦速へ、左180度一斉回頭用意」 名取は速度が落ちるのを確認して

 

「回頭~」 名取、満潮、霞がシンクロしてUターンする。

 

「雷跡~」 霞が警告する、魚雷は名取たちが進んでいたであろう場所へ進んでいった。このまま速度を上げれば振り切れそうだが、名取は速度を上げず敵が回頭して追ってくるのを待つ、

 

「追ってきないよ」 満潮が12.7mm砲で盛んに砲撃し続ける、

 

 そして深海凄艦艦隊が方向転換し追ってくるのを見て名取達は速度を上げ北西へ逃げる。30分ほど追撃されつつ砲撃を受け最後尾の名取は被害を受けていた、しかし次第に距離は離れつつある。

 

「そろそろ、いいんじゃない」 霞の言葉に名取は頷き、

 

「煙幕、展張します」 名取の足首に掴まった妖精が丸い缶を海水につけてから空へ向けると缶から白い煙が湧き上がり、後ろから追ってくる深海凄艦から名取たちの姿を隠した。

 

 

 ☀ ☁ ☂

 

 砲撃音が次第に北へ遠ざかると涼風と五月雨は針路を南西から西に変え進む、体を涼風に支えられた五月雨は苦しそうだ。

 

「二人だけになっちゃったね、さみ姉、大丈夫」

 

「大丈夫・・・涼ちゃん、もし深海凄艦が現ても私は私で何とかするから自分のことを考えてね」

 

「そんなこと・・・あたいに任せて」 返事する涼風は前方の霧を睨んでいた。

 

 

 ☀ ☁ ☂

 

 幌筵の提督室で恵児は思案していた。

 

「どうする恵児君」

 

 まるゆ から98式水偵妖精の回収成功の報告があったので作戦自体は成功だと考えられるが、撤収中に通信で交戦を伝えてきたということは状況が良くないということだ。次報が無いのは、する間もないほど切羽詰っているか、切り抜けて隠密性が必要なのか、しかし、かなり哨戒線の近くまで来ているはずだ。

 

「長距離偵察ができれば」 恵児が呟く

 

「この霧では無駄になるだけね」 

 

「第2艦隊を合流地点から動かすくらいしか手が無いけど、闇雲に動かしても・・・」

 

 恵児と鹿鈴は次の連絡を待つしかなかった。

 

 

 

 




 読んでくださってありがとうございます。
 
 年末で慌しく、次号は間が空くかもしれませんがよろしくお願いします。
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