一応この小説で出てくる言葉を解説しておきます。(独自解釈あり)
回頭 船が方向転換すること。
取り舵 船が左へ回るように舵を切ります
砲雷戦 大砲と魚雷で戦うことです
CI カットインの略、艦娘の特殊攻撃。
宿毛 すくも と読みます。
甲島 かぶとじま と読みます。
波は穏やかで天候は晴れ、風は南西から吹いている。
「いい風吹いてきてる、さあ行こう」 と松風
「まだ、待つクマ、相手が岬を回って、甲島を過ぎたら仕掛けるクマ」
島の向こう側の岬を眺めながら球磨が話す。
彼女は球磨型軽巡洋艦の一番艦 球磨、髪の毛は栗色で頭の先からはバネのようなアホ毛が出ている。言葉の最後にクマと言うのが特徴。
「はい、落ち着いて待ちましょう」 と春風
「飛び出したら、相手が島の右を来たら右、左を来たら左、で砲雷戦を仕掛けるけど、距離がないので魚雷は事前に右で準備するクマ」
「私に任せなさい、第5駆逐隊の力見せるわよ」 と朝風
突然、先頭で両手をかざし、岬を見ていた球磨が右手を上げたので3人は黙った。岬を見ると
軽巡1、駆逐3の艦隊が岬を過ぎたところで回頭している。そして、甲島の右横を通り抜ける。
「突撃だ、クマ」 そういうと球磨を先頭に4人は島影から飛び出した。
飛び出すと、直ぐに球磨を先頭に単縦陣を組む、もともと距離がないので、あっという間に敵に迫る。
「右舷、魚雷発射クマ、そのまま右砲撃開始クマー」
球磨達は一斉に魚雷を発射し砲撃を始める。相手も飛び出した球磨達に撃ち返そうとするが、反航戦で事前に準備していなかったので、砲塔が追い付かない。相手の砲弾は球磨達の後ろに水しぶきを上げる。しかし、こちらの砲弾も至近弾ばかりで命中しない。二つの艦隊はあっという間にすれ違った。
「回頭準備、右回頭クマ」
そのとき、相手の艦隊で赤い旗が2本上がった。
湯気の向こうに海が見える、球磨は頭の上にタオルを乗せ湯船の中でうっとり目を閉じている。そこへ、体を洗い終えた長良が声をかける。
彼女は、長良型の軽巡洋艦1番艦 長良、髪を後ろで一つにしている。
「今日の演習お見事でした、でも、あの近距離で、どうして魚雷を準備できたんですか?」
球磨が目を開けて横を見ると、6つに割れた見事な腹筋を見せて長良が湯船に入ってくる。
「フッフッフッー、どうせ間に合わないから、右か左かどっちかに賭けたクマ」
「そういうことですか、まだまだトレーニングしなきゃ」
「そういうことじゃない気がするクマ」
教室では鹿鈴、航一、恵児の3人が演習について話していた。
「航一は単従陣で強いよね~」鹿鈴が言った。
「今日は、球磨の判断が良かっただけで陣形は関係ない気がするが、どう思う恵児」
「今日は関係ないかも、でも単縦陣で強いのは確か」
「じゃ~以外に優秀なクマちゃんの本領発揮ね」
恵児は入学する前は一人でいることがほとんどだった。しかし、ここへ来てからは3人でいることがほとんどで鹿鈴と航一の会話を聞き、自分も話そうとしたことで失語症がかなり回復していた。艦娘科は3人が1期生で学校も教え方は手探りで、基本的な軍事知識と、海軍の礼法は教えた、しかし、提督が出撃した艦娘に指示できるのは進退と陣形だけなので、艦娘の運用は演習中心になり、呉鎮守府から艦娘を貸してもらうことで演習を行っていた。今日は球磨の艦隊の提督を航一が、長良の艦隊の提督をを鹿鈴が担当して演習した。
「それじゃ、遠征に行った艦隊が戻るので埠頭に行ってくる」 そう言って鹿鈴は教室を出て行った。
演習、遠征は艦娘を借りて行ったが、出撃と工廠関係の事は提督にならないと行えなかった。埠頭から岬の方を見ていた鹿鈴の目に艦隊が現れたのが見えた。先頭には短めの黒髪と左目に眼帯をした艦娘。
「鹿鈴、帰ったぜ」
「無事、帰投ごくろうさま、お帰りなさ~い」
「今回も大成功だぜ」
「本当、すご~い」
「レディーとして当然の結果よ」
「私たちもがんばったのです」
「私にもっと任せればいいのよ」
「ハラショー」
天竜と第六駆逐隊を遠征に出していたのだ。そこへ、航一と恵児も見に来た。
「お~また大成功かよ、鹿鈴は遠征の大成功多いな~」
「航一と違って日頃の行いがいいからよ、そう思うでしょう恵児」
「う~ん、どっちもどっちなような・・・」
「なに、それ」
宿毛の工廠施設の前では、大淀と明石が立ち話しをしていた。
「呉の長良の話だと、坪井という男の子には単縦陣のときに艦娘のCIが多く発動するらしいんです、勝という女の子は遠征の時に大成功が多いらしいそうです」
「恵児には、まだ何も特別な事は起きていないの?」
「そういう話は聞いていないそうです」
「あ~私が行ってメンテしてきてあげようかしら」
横須賀鎮守府の提督室の電話が鳴った。秘書艦の長門が受話器を取った。
「少々、お待ちください、提督、江田島の事務長からお電話です」
「ん、こちらで取ろう、そうだ、すまないが長門、そろそろ工廠に新造艦ができるころだ、見てきてくれないか」
長門がドアを閉めて足音が遠ざかるのを確認して、
「どうだ、特別な能力とやらは・・・そうか二人にはありそうか、それで、宿毛の老いぼれ お気に入りはどうだ・・・まだ特別なことはないか、そうか、ありがとう、また連絡してくれ」
提督はすぐに電話を掛け直した。
「軍務局長を頼む・・・例の小僧ですが、特別な能力はなさそうです、このまま、卒業まで何も無ければ小僧も、宿毛の老いぼれ 両方とも海軍から追い出せそうです」
この国の海軍は生い立ちから今に至るまで、上層部は一つの派閥で固められていた、それ以外は、よほどの戦功がないと将官にはなれなかった、しかし、深海凄艦の出現と、長引く戦況に閉鎖的な体制に対する批判も多くなり、それを無視できなくなっていた。
「もしもの時のために何か手を打っておくか・・・」
そういうと再び受話器を取った。
さあ、これで大体の設定ができましたが、まだ、艦娘を一人にするか、鎮守府に一人にするか悩んでいます。どうすればいいんでしょうw