新人戦モノリス・コード予選第一試合、一校対六校の試合は、平原フィールドにて行われていた。
「作戦通り、僕がアタックだ。八田はディフェンスに専念しろ」
「はいはい、りょーかい」
森崎が黎を睨みつけながら言った言葉に、けだるそうに応答する。
「見てろ、ブルームの力を見せてやる・・・!」
開始の合図が鳴る。遮蔽物の無い平原フィールドでは、相手に悟られずにモノリスを開き、コードを端末に打ち込むのは難しい。したがって、最も手っ取り早いのは相手を全員無力化する事である。森崎が一気に駆け出す。
(無鉄砲と言うか、無謀と言うか)
作戦があっての突撃だとは思えない。相手チームからは2人飛び出してくる。
「森崎!俺も行ったほうがいいんじゃないか!?」
「うるさい!僕に任せておけばいいんだ!」
もう1人のチームメイト、西村が森崎を心配しての言葉に食い気味に拒絶を返し、さらにスピードを上げる。
「まあほっとけよ。どうせすぐ出番は来る」
そう言うと黎は座り込み、周りの草をむしり始めた。
「何やってるんだ、八田!」
「そう怒るなよ。どうせまだ仕事はないんだ」
「でも二対一だぞ!」
「だから言ってんだろ?どうせすぐに出番は来る」
森崎家は、クイックドロウ、つまり早撃ちが得意な家である。実力も決して弱いわけではないが、二対一では分が悪い。しばらく粘ったが、森崎は倒されてしまった。
「はあ、まあ粘った方じゃないか?じゃあそろそろ出るか」
森崎を倒し、数で有利になった六校が得意げに進んでくる。
「八田!」
「まあ任せろ」
そう言うと、むしっていた草を宙に放り投げる。それらすべてに硬化魔法をかけ、銃弾のように飛ばす。それらは走ってきている相手2人に命中し、動きを止める。
「うわあ!」
「なんだ!?」
その隙を突いて黎は一気に2人に肉薄し、ゼロ距離で圧縮した空気弾をみぞおちに放つ。
2人は声を出す暇もなく宙を舞い、落ちたのち気絶した。
「あと1人。行くぜ」
もう1人も問題なく片付け、第一試合は一校の勝利となった。
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「森崎、あの動きはなんだ?」
試合後、本部にて森崎は摩利に絞られていた。
「・・・申し訳ありません」
「まったく・・・チーム戦なのだから、もう少し連携を取れ。黎くんがいたから何とかなったが、早々に1人落とされ数の不利を作るのがどれだけ危険かわかるだろう」
「・・・はい」
「まあまあ摩利、勝ったのだし、次に生かしてもらえばいいじゃない。森崎くん、次は頼むわね?」
「は、はい!」
そこへ、鈴音が次の試合の情報を持ってくる。
「次の試合は四校と、ステージは市街地です」
「市街地か・・・」
「建物を上手に使うことが求められますね」
「黎くん、がんばってね!」
「ええ。じゃあ森崎、西村、行こう。次の作戦をたてる」
「あ、ああ」
「・・・」
西村は慌て気味に、森崎は無言でふてぶてしくついてきた。
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予選第二戦、市街地エリアのとある建物にて
「敵の位置が分からんことには始まらない。とりあえず索敵だな。西村、ディフェンスは任せた」
「おう」
そう言って、黎と森崎が索敵を始めようとしたその時
(魔法・・・?)
黎たちのいる建物に魔法が放たれた。
(まさか・・・破城槌!?まずい、崩れる!)
「逃げろ!2人とも!!」
そう叫ぶが、2人は意味が分からないといった顔で黎を見るだけ。直後、建物が崩れ落ちた。
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「森崎たちの容態は?」
「重症よ・・・。でも命に別状はないわ。黎くんのおかげでね」
「・・・そうですか」
現在、黎は松葉杖をついている。建物が崩れた後、落ちてくる瓦礫を魔法で受け止め、森崎たちの離脱する時間を稼いでいた黎だったが、死角から飛んできた瓦礫が太ももに刺さり、ダメージを負ったことで魔法は中断。その後黎は痛みに耐えながら自分の身を守るのに精一杯で、森崎たちを助ける余裕がなかった。直撃は避けたが、2人とも瓦礫の下敷きになった。
「では、モノリスは・・・」
「十文字くんが交渉中よ。場合によっては棄権することになるかもしれない」
「・・・試合には、1人でも出られますか?」
黎の質問に、真由美が慌てて答える。
「な、なにを言ってるの黎くん!?君もけがを負ったのよ!?」
「2人よりは軽いですし、大丈夫です」
「危険だわ!一校のリーダーとして、そんなことを許すわけにはいかない」
そこへ、交渉を終えたであろう克人が帰ってきた。
「残りの試合は明日へ延期。四校は失格となった」
「それで、メンバーの件は?十文字くん」
「ああ、このような非常事態だ。代役を立てられるよう、許可をもらってきた」
「・・・必要ありません」
「黎くん!」
「おそらく四校の破城槌は、四校だけの責任ではありません。狙われてるんですよ、新人戦モノリス・コードは。ほかの無関係な人を巻き込むわけにはいかない」
「では、お前が一人で出ると?」
「そのつもりです」
次の瞬間、克人の表情が、佇まいが変わった。
「・・・あまり調子に乗るな、八田。お前が出たいというなら好きにすればいい。だが1人で敵全てを相手にするなどと言う無謀なことをぬかすな。それは自惚れと言うだけではない。他校の選手を、そして当校の選手を愚弄する発言だ」
「そのような意図があったわけではありません」
「だとしてもだ。俺も七草も、お前が1人で出ることなど認めない。何があってもだ」
「そうよ、黎くん。いったん落ち着いて、ね?」
「・・・申し訳ありません」
一度頭を下げ、本部を後にする。
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「兄さん!足は、足は大丈夫ですか!?」
朱莉を始め、深雪や達也たちが駆け寄ってくる。
「ああ、一日休めば問題ない。試合は明日に延期されたしな」
「え、黎さん、出るつもりなの?」
雫が驚いて尋ねる。ほかの面々も、驚きを隠せなかった。
「ああ、体は動くんだ。出ない理由がない」
「無茶です!兄さん!」
「大げさだな、今すぐ出るわけじゃないんだ。大丈夫だって」
「でも!」
「俺の雄姿を見に来たんだろ?かわいい妹の期待には、応えないとな」
そして、達也がいつも深雪にしているように朱莉の頭を撫でてやる。
「・・・仕方ありません。こうなった兄さんは何を言っても聞きませんから」
朱莉が頬を赤らめて言う。
「よくわかってるじゃないか」
「では約束です。必ず優勝してくださいね」
「ああ」
少し場の空気が和んだところで
「八田、ちょっとこい」
黎は克人に呼ばれた。
「はい。じゃあ、ちょっと行ってくる」
「黎、肩をかそう」
「お、助かるわ達也。よろしく頼む」
そのまま達也の肩を借りながら、克人の後に続いた。
「良かったの?朱莉ちゃん。黎さんが出ることを認めて」
黎が去った後、ほのかが心配そうに尋ねる。
「ああなった兄さんに何言っても無駄です。覚悟を決めた目をしてましたから。私は兄さんを信じます」
「そっか・・・。そうよね」
「黎さんなら大丈夫」
「そうね、なにかやってくれそう」
「あのままで終わるやつじゃないだろうしな」
「そうですね、八田君を信じましょう」
朱莉の言葉に、ほのか、雫、エリカ、レオが同調し、最後の深雪の言葉に全員がうなずいた。
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再び本部へ戻ってきた。そこには真由美をはじめ、摩利、鈴音、服部など、一校の中心的人物がそろっていた。
「それで、八田。お前は明日の試合に出るつもりか?」
「ええ、もちろん」
克人の問いに、しっかりと目を見て答える。
「そうか、わかった。メンバー補充はだれにするんだ?」
この期に及んで、補充を拒否したりはしない。
「俺が決めていいんですか?」
「ああ、好きに選べ」
「・・・誰でもいいんですか?」
「ああ、構わん」
「・・・では、まず1人目は司波達也を」
少しニヤリとして答える。
「お、おい、黎」
「わかった。七草、お前はどう思う?」
「賛成よ、適任だと思うわ」
「そう言う事だ、司波。モノリス・コードのチームに加わってもらう」
「ちょっと待ってください!自分は選手ではありませんし、代役を立てるなら、1競技にしか出場していない選手が多数いるはずです。一科生としてのプライドはこの際無視するとしても、代えの『選手』がいるのに『スタッフ』から代役を選ぶのは、後々精神的なしこりを残すことになると思いますが」
達也の正論に、真由美たちは反論できない。そこへ
「そんなことどうでもいいんだよ」
唐突に黎が口を開いた。
「黎?」
「各校の威信と名誉をかけて争う九校戦、さらに今年は史上初の3連覇がかかってる。そのために必要な人材をその競技に出ている選手が吟味し、ほかのだれでもないお前を選んだ。それにチームリーダーが同意し、ほかの補佐役も異を唱えない。もう腹くくるしかねえんだよ、達也」
「八田の言う通りだ。我々以外に、異議を唱えることは許されない。お前は1年生200人の中から選ばれた代表チームの一員だ。選手であるとかないとか、そんなことは関係ない。チームの一員である以上、その勤めを果たせ」
若干理不尽にも聞こえるその言葉は、裏を返せば、責任は全て自分たちがとる、と言っているに等しかった。ここまで言われて、達也も逃げるつもりはない。
「わかりました。義務を果たします」
場の雰囲気が若干弛緩した。
「それで黎、もう1人はどうするんだ?」
「ああ、達也に任すわ」
「は?」
「達也が合わせやすいやつを選んでくれってことだ。実力さえあれば、俺は誰でも構わない」
「わかった。・・・会頭、メンバーは誰でもいいんですか?チームメンバー以外からでも?」
「達也くん、ちょっとそれは・・・」
「構わん。この件には例外に例外を重ねている。あと1つ2つ増えても今更だ」
真由美がやんわり否定しようとしたが、克人は顔色一つ変えずに了承する。
「では、1-Eの吉田幹比古を」
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「達也、黎、冗談だよね?」
「会頭を巻き込んで嘘なんかつかんよ」
「・・・わかった。どうせ拒否はできないだろうしね」
「わかってるじゃねえか」
「話が早くて助かる。じゃあ作戦を立てよう」
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新人戦モノリス・コード、三校対五校の試合は、圧倒的だった。
ほぼ一条の独壇場。一度三校陣地まで迫った選手がいたが、その選手は陸が瞬殺。まったく相手を寄せ付けなかった。
「さすがだね」
「ああ、一条もそうだが、あの八島と言う選手も要注意だ」
「吉祥寺の手の内が全く見えなかったのもつらいな。おそらく狙って隠してたんだろ」
「吉祥寺選手は、おそらくインビジブルブリッドだろう」
「ま、カーディナルジョージだし、妥当なとこか」
「黎さん、勝てそう?」
一緒に観戦していた雫が尋ねる。
「・・・確信をもって断言はできない。勝つイメージもあるし、負けるイメージもある」
「兄さん!負けたらだめですからね!」
「わかってるって。にしても朱莉、お前三校に進学するんだろ?三校の応援してもいいんだぜ?姉さんもいるし」
「まだ三校は関係ありません!今年は兄さんの応援に来たんです!」
「そ、そうか」
「だからぜったい勝って下さいよ!」
「はいはい、まあ頑張るよ」
「黎、幹比古、そろそろ行こう」
「わかったよ」
「りょーかい」
みんなに送り出され、3人は試合へと向かう。
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一校対八校の試合は、偶然か、それとも作為的か、八校有利な森林ステージで行われた。
「じゃあ、手はず通り。幹比古、頼むぜ」
「うん」
「では、俺と黎は先に行く」
八校の布陣はオフェンス2ディフェンス1。ディフェンスが手薄なので、幹比古に視覚同調を使ってもらい、早めにコードを打ち込む作戦だ。
「俺はこっち、達也はむこうから頼む」
「ああ」
森林ステージは少々入り組んでいる。しかし、黎と達也は木の枝から枝へ、すいすいと進んでいく。
(おっと、敵か)
いち早く敵を捕捉し、死角に移動する。後ろから高速で近づき、背後から圧縮空気弾を放つ。瞬く間に1人を無力化し、すぐさま敵陣へ向かって進もうとするが、黎に向かって魔法が飛んでくる。
「っと、もう1人もこっちにいたのか」
いち早く気づき、余裕をもって躱すと、反撃に打って出る。自己加速術式で彼我の距離を一気に詰め、他校の選手に新たな情報を与えない為、先ほども使った圧縮空気弾で無力化する。その後、敵陣のモノリスへ向かった。
「あれ、もう開いてんじゃん」
黎がモノリスにたどり着いた時、すでにモノリスは開いていた。
(じゃあもうすぐ勝負はつくな)
黎がそう思ったのとほぼ同時に試合終了のブザーが鳴り、一校の勝利となった。
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「どう見る?ジョージ」
「やはり一番警戒すべきは八田だろうね」
「そうか、司波はどうだ?」
「彼は、相当戦いなれていると思う。魔法力よりも、戦闘技術に警戒すべきだと思うよ」
「なるほど。八島、八田を任せていいか?」
「ああ、一条は司波を、吉祥寺は吉田を相手にする方針でいいと思う。地力ではこっちが勝ってるから、正面からの打ち合いに持ち込むのが得策だろう」
「ああ、そうだな」
キリがあまりよろしくないですが、今回はここまで。次回は三校と戦えるかもしれませんね、勝ち進めば←
森崎たちには申し訳ないですが、あのメンバーで勝ち進むビジョンが見えませんでしたので、原作通りにさせてもらいました。
次回も早めに投稿いたします。