一校の予選最終試合、二校との試合は、市街地フィールドとなった。建物などが入り組んでいるので、幹比古の古式魔法によって相手に気づかれずにコードを打ち込めそうだ。達也と幹比古がオフェンス、黎がディフェンスとなった。
「来たか」
開始から5分ほど経ったころ、相手のオフェンスが攻め入ってきた。
敵を捕捉できても、建物内も物で入り組んでいるため、簡単に仕留めることはできない。遮蔽物を利用して、少しづつ敵が近づいてくる。
(めんどくせえな・・・やるか)
しびれを切らした黎が、遮蔽物ごと魔法で吹き飛ばす。
「あ、やりすぎた」
相手が建物の外へ吹っ飛ぶ。規定違反にはならないが、少々オーバーアタックだった。
「ま、いいか」
大怪我をすることはなさそうなので気にしないことにした。
それから二分ほど経つと試合終了のサイレンが鳴り、一校の勝利が決定した。
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決勝トーナメントは、準決勝第一試合が三校対八校、第二試合が一校対九校となった。
黎たちは現在、控室にて三校の試合を観戦している。ステージは岩場、平原に次いで遮蔽物の無い平坦なステージである。試合は、決勝リーグとは思えないほど一方的な展開となっていた。将暉と陸が文字通り進軍している。岩陰に隠れたりすることなく、姿をさらしてゆっくりと歩みを進める。八校選手も黙って見ているわけではなく、3人がかりで攻撃しているが、2人には届かない。
「干渉装甲・・・か」
「ああ。陸が使えるのは知ってたが、一条もか」
「・・・魔法演算領域だけによるものじゃないな。よほど使い方がうまいんだろう」
周辺の岩石、サイオン弾、身体に直接かける加重系魔法や移動魔法、そのすべてが2人には効いていない。八校の3人は攻撃の手を止め、三校陣地へと走り出す。2人を倒せないなら、一早くモノリスを開けてしまおうと思ったのだろう。だが、戦場で敵に背中をさらすのは愚行でしかない。将暉が爆風で3人を吹き飛ばし、陸が岩石を空中の3人にぶつけて撃ち落とす。そのまま3人は戦闘不能となり、三校の勝利となった。
「・・・挑発だなこりゃ」
「ああ、俺たちを正面からの撃ち合いに誘ってるんだろう」
「そして、それに乗るしかないと」
「ああ、そうだな。黎には八島選手を頼めるか?」
「OK 任せな」
「そ、その前に準決勝だよ、2人とも」
「そうだな、そろそろ行くか」
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準決勝は、幹比古の独壇場となった。ステージは渓谷。水の多いこのステージで、幹比古の精霊魔法が猛威を振るう。霧で視界が極端に制限され、九校選手は満足にモノリスに近づくことができない。まったく気づかれることなく達也がモノリスを開き、幹比古がコードを打ち込む。結局一戦も交えることなく、一校の勝利となった。
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三位決定戦の最中、黎たちは別れて行動していた。黎は1人でカフェに来ていた。
「黎、ここにいたの」
「姉さん。どうかした?」
そこへ沙織が朱莉を連れて現れた。
「次決勝でしょ?激励しに来てあげたのよ」
「決勝は三校とだってご存知で?
皮肉っぽく告げた黎に、沙織がにこやかに答える。
「私はそっちの調整は担当してないし、かわいい弟に頑張ってもらいたいじゃない!」
「そうですよ!兄さんのかっこいいとこ、私たちに見せて下さい!」
「相変わらず仲がいいんだな」
そこへ、にやにやしながら陸があらわれる。
「陸さん。お久しぶりです」
「ああ久しぶり、朱莉」
「りっくんじゃん、調整はいいいの?」
「ええ、もう終わりました。あとは本番を待つだけです」
「それで、敵情視察に来たのか?」
「ああ。でも来てみたら敵のエースが姉妹に囲まれていちゃついてんだから、びっくりだよ」
陸がからかうように笑う。
「今更慌ててもどうこうなる話じゃないしな。それと、別にいちゃついてはない」
「はいはい。・・・お前と戦うの、久しぶりだな」
「・・・ああ。"あのとき"以来か」
2人の言葉に、沙織と朱莉の表情が暗くなる。
「黎・・・」
「気にしないでくれ、姉さん。俺たちはもう引きずっちゃいない」
「そうですよ、もう昔のことです」
「2人は、俺らの勝負を楽しみにしててくれ。そもそもあのことに2人の責任は全くないんだから」
「・・・うん、頑張ってね」
「2人とも頑張ってください!・・・でも勝つのは兄さんですけど!」
「っはは、手厳しいな」
「ま、頑張ってくるさ」
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ついに決勝の開幕。フィールドは平原となった。遮蔽物の少ないフィールド故、正面からの真っ向勝負になりそうだ。観客席で深雪や沙織たちが、本部で真由美たちが固唾をのんで見守る。
「・・・とうとうここまで来たね」
「そうだな、これに勝てば優勝だ」
「サクッと勝って、勝利の美酒といこうぜ」
「黎、未成年飲酒は禁止されているぞ」
「・・・言葉の綾だって」
達也の冷静な突っ込みに苦笑を返す。決勝前だが、3人は落ち着いているようだ。
三校サイドはというと
「・・・乗ってくるかな、誘いに」
「彼らは間違いなく乗ってくるよ、将暉」
「ああ、それが一番向こうにとっても確率が高いからな」
「うん。・・・そろそろだね」
一校サイドより幾分か空気は引き締まっているが、こちらも落ち着いているようだ。
3,2,1,開始の合図が響く。直後、黎と陸が一気に飛び出す。
達也と将暉はその場を動かず、600m離れた両陣営へ砲撃を交わす。
2人の疾走と2人の撃ち合いに、観客席から大きな歓声が上がる。そして達也と将暉は魔法を撃ち合いながら少しずつ前進し始めた。2人の攻撃はどちらにも届いていない。否、届いてはいるが、互いが防御して防いでいる。一見すると互角に見えるが、達也は押されている。単純な魔法力勝負では、達也は将暉に敵わない。達也の手数が減ってきたころ、黎と陸も勝負を始めていた。黎が予選でもたびたび使用した圧縮空気弾を続けざまに放つ。陸はそれらの一部を回避、一部を相殺してすべて防ぎ、反撃に出る。ドライブリザード。空気中の二酸化炭素をドライアイスにし、黎に向けて飛ばす。黎は周囲の空気中の酸素と水素を集めて反応させることで爆発を起こし、それらを防御する。爆風に乗って陸に肉薄する。至近距離から空気弾を放つが、陸も空気弾で応戦する。押し切れないと見た黎は、陸の立つ地面を陥没させる魔法を使用。足元から崩すことを試みるが、地盤が崩れる前に気流操作で空中へ逃げられる。ならばと次は黎がドライブリザードで空中の陸を狙うと、陸は火球で応戦。着地時を狙ってさらに地盤沈下の魔法を放つが、これも避けられてしまう。どちらも決定打に欠ける戦いが続く。
(・・・埒が明かねえな)
黎が次の魔法を発動。黎の背後に小さな無数の魔法陣が出現し、それらすべてから空気弾、火球、氷柱が飛びだし、陸へ襲い掛かる。陸は自分の前の地面を大きく隆起させ、それを盾にして攻撃を防ぐ。
(さすがは陸。こんなんじゃ崩せないか)
黎は一度達也と幹比古の方を見た。達也は将暉の魔法を、術式解体(グラム・デモリッション)で無効化しながら戦っており、幹比古も古式魔法を駆使し、吉祥寺と互角に渡り合っていた。
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観客席は、興奮の渦に包まれていた。達也が将暉と、黎が陸と一歩も譲らぬ戦いを繰りひろげ、吉祥寺対幹比古の戦いも始まっている。
「すごい・・・」
ほのかが感嘆の声を漏らし、雫がさらに続ける。
「黎さんも達也さんもすごいとは思ってたけど、ここまでやるなんて」
「息つく暇もないわね」
2人の言葉に、エリカも同意を示した。と言うより、異議を唱える者はいない。
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一瞬だった。将暉が吉祥寺の援護をするため、達也から視線をそむけたわずかな時間で、達也は将暉との距離を一気に詰める。驚いた将暉は、とっさに規定違反の威力の魔法を、一度に16発も放ってしまう。
(おいおい、あれじゃただのけがじゃ済まねえぞ・・・!)
横目で見ていた黎にもわかる。
実際達也の術式解体は間に合わず、2発の直撃を受ける。
(達也・・・!)
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本部から、
「達也君!!」
観客席から、
「達也さん!!」
「達也!!」
達也の身を案じる悲鳴にも似た叫びが響く。しかし深雪は、達也の方を険しい目つきで見つめるだけで、声を上げていない。
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何が起きたのか、一瞬黎にも分からなかった。
将暉の魔法の直撃を受け大怪我を負ったはずの達也が、何もなかったかのように立ち上がり、将暉を倒したのだ。
(達也・・・まさか・・・?)
黎の頭に一瞬ある考えがよぎったが、すぐに振り払い意識を試合へ向けなおす。自己加速で間合いを詰め、自分の手足を障壁で覆い、体術を繰り出す。モノリス・コードでは直接の物理攻撃は禁じられているが、直接触れなければ問題ない。常人なら視認するのがやっとの速さで繰り出される体術を、陸は必要最小限の動きでかわす。連続攻撃を止めないまま、黎はさらに背後に魔法陣を出現させ、ドライブリザードを放つ。しかし、少し深追いしすぎた。自分の真下の地面に魔法が使われたのに気付くのが一歩遅れてしまった。地面が大きく隆起し、黎は空中へ投げ出される。会場の誰もが、陸までもが自身の勝ちを確信し、さらに追い打ちをかけようとしたその時、空中の黎の身体が突如輝かしく光った。一瞬視界を奪われた陸が再び前を向くと、黎が体勢を崩して着地に失敗している。これを好機と見た陸が加重系魔法を発動。黎をその場に留めようとする。が、それが黎の罠だった。再定義で加重系魔法を陸に跳ね返し、今度は陸が身動きできなくなる。自身にかけられた魔法の無効化に気を取られている陸は、頭上の魔法陣に気づかない。次の瞬間、雷が陸の身体を襲い、陸は意識を手放した。
「はあ・・・はあ・・・。終わったか・・・」
見ると、吉祥寺もすでに倒れていた。そして試合終了。一校の優勝が決まり、観客席に割れるような歓声が響いた。
書くのに夢中になってたらもう朝の5時前ですやん・・・。とりあえず今回はここまで。幹比古の戦闘描写はカットさせていただきました。幹比古ファンの皆様、申し訳ございません。また、一度手違いで執筆途中のものをアップしてしまいました。詳細は活動報告に記載してあります。お騒がせ致しました。さて、今作始まって初めての大掛かりな戦闘シーンでしたが、お楽しみいただけていればうれしいです。