魔法科高校の異端児~それは呪いか祝福か~   作:のなめん

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お世話になっております。のなめんです。九校戦編って案外長いんですね。原作があれだけ分厚いのもうなずけます。早いとこ終わらせたいですね。


第13話

黎たちが部屋に戻った頃、別の場所で焦りに焦っている集団もいた。

「第一高校の優勝はもはや確定的・・・」

「馬鹿な!あきらめるというのか?それは座して死を待つのと同義だぞ!」

「このまま一高が優勝した場合、我々の損失は一億ドルを超えるぞ・・・」

「これだけの損失、楽には死ねんぞ。よくて生殺しのジェネレーターか、もしくはブースターか」

「こうなってはもはや手段を選んでいる場合ではないと思うが、どうだろう?」

「協力者に使いを出そう。明日のミラージバットでは一高選手全員に棄権してもらおう。」

「運が良ければ死ぬことはない。さもなくば、運が悪かったというだけだ」

狂気を含んだ笑いが、乾いた室内に響いた。

 

 

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ミラージバット本戦の日は、ミラージバットにとっては都合のいい曇天だった。

「どうも波乱の前触れに見えるな」

「言いたいことはわかるが、こちらからできることはないからな。警戒だけは怠らないようにしねえとだが」

達也のつぶやきに黎が返す。昨夜の一件もあり、少し気まずくなった関係を修復するため、黎は努めて達也の近くにいるようにしていた。

「まだ何か起こるのでしょうか・・・?」

「狙いがわからないからな、だがまあ、深雪が心配することは何もないよ。何があろうとも、お前だけは俺が守ってやるから」

「・・・お熱いことで」

黎など初めからいなかったかのように2人だけの世界に入り込む達也と深雪。黎はもう慣れっことばかりにスルーを決め込んだ。

「深雪、そろそろ準備をしておいで」

達也が深雪をこの場から離す。深雪が本部へ向かった後、黎から口を開く。

「無頭竜を潰す算段はできたのか?」

「いや、まだだ。奴らの居場所がつかめていない。」

「わかったら教えてくれよ」

「ああ」

 

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深雪の試合は第二試合となった。第一試合に出場するのは三年の小早川だ。深雪曰く、ずいぶんと気合が入っているらしい。深雪の試合は一高のみんなと応援するので、第一試合は朱莉と沙織と観戦することにした。

「改めて、優勝おめでとうございます、兄さん」

「おめでと、黎」

「ありがと、2人とも」

「これでうちの優勝はほぼなくなったかなー」

「まあ確かに安全圏と言えなくもないが、妨害がないとも言い切れないからな。その辺の警戒だけはしとかないと」

試合は小早川有利に運び、第一ピリオドが終了した時点で小早川が1位。このままいけば第一試合は小早川がとるだろう。

(このまま何も起きないといいんだが・・・)

黎の思いとは裏腹に、第二ピリオドが始まってすぐにそれは起こった。

空中から元の足場に戻ろうと魔法を発動しようとした小早川の顔が驚愕と恐怖に染まり、彼女の体が重力に従って垂直に落下していく。大会委員が小早川の体を魔法で減速し、安全に着地させる。

「・・・魔法が使われたな」

「まさか、妨害!?」

「その線が濃厚だな。ちょっと一高のみんなのところに行ってくるよ」

「ええ、そうしたほうがいいわね」

2人を残し、黎は一高の本部へ向かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「会長、さっきのは魔法による妨害です」

本部についてすぐ、真由美に自分が視たことを伝える。

「黎くん、でも、そうだとしてもどうやって妨害したというの?」

競技中は、妨害に備えて大会委員が対抗魔法を準備しており、外側から介入するのはほぼ不可能だ。

「CADに細工をされたのでしょう、大会委員に工作員が紛れ込んでいると考えて間違いなさそうです」

「達也くんに知らせないと」

「不要でしょう」

真由美の言葉を黎が否定する。

「達也が深雪のCADに細工をされて見逃すはずがありません。どっちかというと工作員をその場で始末しないかのほうが心配です」

「確かにそうね」

黎の冗談交じりの言葉に、真由美も同意を示した。

「会長!!大会本部から、当校の生徒が暴れているとの連絡が!!」

「「・・・・・・」」

真由美と黎は顔を見合わせ、苦笑を漏らした。

「俺が行ってきます。会長は本部で待機していてください」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「達也、見つけたのか?」

「ああ、こいつが深雪のCADに細工をしたやつだ」

「やっぱレギュレーションチェックのときにやられてたのか」

達也は怒り狂った目で工作員を組み伏せ、今にも振り下ろさんと手刀を構えている。そこへ、意外な人物が現れた。

「何事かね」

「九島閣下」

九島の登場により、達也の殺気は収まり、九島のほうへ向き直った。

「お見苦しいところをお見せし、申し訳ありません」

黎が達也に代わって謝辞を述べる。

「第一高校の司波君と八田君だな。昨日の試合は見事だった。それで、いったい何事かね」

「はい、当校選手が使用するCADに不正工作が行われましたので、その犯人を取り押さえ、背後関係を尋問しようとしていました。」

「おそらく、先ほどのミラージバット第一試合において当校の選手が事故にあったのも、同様の細工がなされたことが原因だと思われます」

達也の説明に黎が付け加える。

「不正工作が行われたのはこのCADかね?」

「はい」

かつて『最高にして最巧』と呼ばれた老魔法師は、深雪のCADを手に取って見つめた。

「・・・確かに異物が紛れ込んでおるな。これは見覚えがある。私が現役だった頃、東シナ海諸島部戦域で広東軍の魔法師が使っておった電子金蚕だ。電子機器に侵入し、動作を狂わせる遅延発動術式。知っているかね?」

「名前だけなら聞いたことはありましたが、どのようなものかは存じ上げませんでした」

「自分は電子金蚕という言葉は初めてうかがいましたが、自分がくみ上げたシステム領域に、ウイルスに似た何かが侵入したのはすぐにわかりました」

「そうか」

二人の返答に、九島は満足げに頷いた。

「さて、司波君に八田君、もう戻ったほうがいいだろう。CADは予備のものを使うといい。二人には、いずれじっくり話を聞かせてもらいたい」

「はい、機会がございましたら是非」

黎が二人を代表して応えた。これが達也と黎がはじめて九島と直接接触した機会だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

第二試合、第二ピリオド終了時点で、深雪はトップに立っていた。しかしその差は決して大きくなく、いくら深雪とはいえ、やはり一筋縄ではいかないようだ。

「さすがに手ごわいな」

「深雪さんを相手にここまで・・・」

レオと美月がそれぞれ意外そうに呟く。

「ま、達也のことだ。なんか用意してるんだろうぜ」

黎がその場の不安げな空気を払拭するように言い放った。

 

 

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第三ピリオド開始から、会場は凍り付いたように静かになった。深雪が宙に浮いたまま、連続でポイントを奪取していく。7つを数えたところで、凍り付いていた会場で誰かが呟く。

「飛行魔法・・・?」

それは徐々に広がっていく

「トーラス・シルバーの??」

「馬鹿な!先月発表されたばかりだぞ!!」

「でも・・・飛んでる・・・」

結局、予選第二試合は深雪が大差をつけて1位で通過した。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「第二試合のターゲットが予選を通過した」

「もはや手段を選んでいる場合ではないと思うが」

「しかしどうするのだ?」

「大会そのものを中止させる。ジェネレーターを使って無差別に100人ほど殺させれば十分だろう」

「客が騒がないか?兵器ブローカーどもは厄介だぞ」

「客に対する言い訳はどうにでもなる。今我々が懸念すべきは何よりも組織の制裁だ」

「実行は17号だけで大丈夫か?」

「念のため、18号も使っておこう」

「よし、ではリミッターを解除する」

 

 

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会場の興奮も収まり、観客が席を立ち始める中、男もゆっくりと立ち上がる。すぐに自己加速術式を発動。目の前の男に襲い掛かった。そして、この事件はスタンドの外へと舞台を移す。

 

 

 

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その男、18号が気づいた時には、自分の体は地面へと落下していた。すぐさま自身に減速魔法をかけ、安全に着地する。

「いきなり穏やかじゃないことやってくれるじゃねえか」

遅れて着地したのは陸。先ほどジェネレーターの攻撃をいなし、会場の外へ飛ばしたのは陸だ。

「しっかし、黎からある程度情報は聞いていたが、まさか強化人間まで使ってくるとは。あちらさんもずいぶん必死なんだな」

苦笑しながら独り言のように呟く。ジェネレーターは姿勢を低くし、高速で陸に突進する。陸はそれをかわし、ジェネレーターに向かって魔法を放った。直後、ジェネレーターの全身を炎が覆う。陸はジェネレーターが高速で突進してくる際の空気との摩擦で発生した熱を増幅し、炎を発生させたのだ。炎によるダメージを確実に受けながらも、感情を持たぬジェネレーターは攻撃をやめない。陸は攻撃を確実にかわしながら、さらに炎を大きくしていく。ここでジェネレーターは大きく跳躍した。陸に勝てないと踏み、せめて会場内の人間を何人かでも殺そうという判断なのだろう。陸もとっさに追いかけようとしたが、別の魔法の兆候を察知して動くのをやめた。直後、空中にいるジェネレーターを電撃が襲い、地面に墜落してくる。電撃を放った人物は追い打ちとばかりに地面に伏しているジェネレーターに空気弾を放った。結局これが決定打となり、ジェネレーターは完全に動きを止めた。

「おいしいとこもってきやがって、黎」

「加勢しに来てやったんだからその言い方はねえんじゃねえか?陸」

「俺がこいつを打ち漏らすと思われてんだったら心外だぜ」

「万が一ってのがあるだろ?」

二人は笑って会話していたが、顔を険しくして話を仕切りなおす。

「こいつだけか?黎」

暴れようとしたジェネレーターは目の前のものだけかという陸の問いに答えたのは、黎ではなかった。

「もう一体いたわ。そっちのほうは柳大尉と真田大尉が相手をしてるから、心配はいらないわよ」

「藤林さん」

「こっちのほうを止めてくれたのは二人だったのね、ありがとう」

「いえ、通りかかっただけですから」

藤林の感謝を、謙遜とともに陸が受け取る。

「俺は用事があるので、これで失礼します」

「ええ、ありがとうね」

陸が去ったあと、黎が口を開く。

「本当になりふり構ってませんね、無頭竜は」

「そうね、ジェネレーターまで使ってくるなんて」

「敵の所在はわかってるんですか?」

「いいえ、まだよ」

「わかったら教えてもらえますか?」

「ええ、情報が入ったら連絡するわね」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

決勝戦は、午前中と打って変わって晴天の夜空となった。

「飛行魔法!?他校もですか!?」

ほのかが驚いた声を上げる。驚くのも無理はない。飛行魔法は一朝一夕で身につくものではない。ぶっつけ本番でやるには無理があるだろう。それ以前に、一高以外は飛行魔法の術式を持っていないはずだ。

「予選の後、各校から不正の疑いをかけられたらしい。その問い合わせに対する答えとして、大会委員が術式を公開したらしいな。でもまあ、あの魔法は必要なサイオン量が多い。深雪よりちゃんと使いこなせる選手はあの中にはいないんじゃないかな」

黎の言葉通り、深雪以外の選手は途中で息切れを起こし、深雪は順調に得点を伸ばしていく。結局決勝も深雪はほかの選手と大差をつけて優勝した。これで一高の総合優勝も決まったため、一高本部では大きな歓声であふれていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一高優勝が決まったが、パーティーはまたしても延期となった。しかし、真由美をはじめとしたなじみのメンバーが中心となって、小さな祝賀会が催された。だが、その会に達也の姿はなかった。深雪曰く、さすがに疲れたと自室で休んでいるらしい。祝賀会の最中、黎は藤林からの連絡を受け、指定された場所に向かった。

「黎?」

「達也か、お前も行くのか?」

「それはこっちのセリフだ」

「ま、俺は直接ケガさせられてるし、ジェネレーターと一戦交えてるしな。色々鬱憤もたまってんだよ」

「黎くん、早く乗って。行くわよ」

「藤林さんが付き添ってくれるんですか」

「ええ、こんな時間だし、私もバイト代をもらおうかしら」

「それがいいと思いますよ。それで、奴らの潜伏先は?」

「横浜の中華街よ。出発するわね」

2人の化け物を乗せた車は、東に向けて走り出した。

 




今回はここまでにします。次回もなるべく早く投稿できるよう頑張ります。最後になりますが、お気に入りが100件超えてました。自分でもびっくりです。ありがとうございます。それでは次回まで、さよならです。
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