前回で国防軍と黎の繋がりが見えましたね。さて、どこで知り合ったのやら← あと3~4話くらいで入学編を終えたいという野望を抱いてますが、先行き不透明でございます。行き当たりばったりでやって行こうと思います。 では、第5話です。
翌日も、黎は風紀委員の巡回を手伝っていた。やはり昨日の大盤振る舞いが効いたのか、黎の巡回中に大きな問題はそう起こらなかった。少しの小競り合いはあったが、口で注意すれば収まる程度だった。
(……ん?)
ふと、遠くからの視線を感じた。
(……見つけた)
視線の出どころを探し当てると、そこに向かって走る。
(逃がすかよ………何!?)
逃げた生徒を追いかけようとした瞬間、死角から2本のレーザー状の魔法が迫る。
「クソ!」
避けられなくはない、しかし避ければ恐らく取り逃してしまう。
(しゃーねーか)
黎は回避を選んだ。1本目をサイドステップ、2本目を宙返りで躱した。案の定逃げられてしまったが、1つの手がかりを掴んで黎は生徒会室へ戻った。
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「それは本当か!?」
生徒会室にて、摩利が驚いた声をあげる。
「ええ、当たりはしませんでしたが、結構殺傷力もありましたし、足止め、あわよくば怪我を狙った明らかな攻撃でしたね。」
「…大丈夫なのか?」
「ええ、当たってはいませんから。ただ…」
黎の表情が固くなる。
「おそらく、ブランシュの下部組織、エガリテによる攻撃です。警戒しておいた方がいいでしょう。」
「な!?黎くん、なぜその名を!?」
真由美が驚いた声をあげる。
「情報の出どころを全て断つのは不可能です。いくら政府が隠しているとはいえ、知ってる人は少なくないかも知れませんよ。というより、この情報は隠すべきじゃない。」
「俺も同感です。この件に関する政府のやり方は、拙劣です」
黎と達也の言葉を聞き、真由美が俯き、表情を曇らせる。
「そうね、2人の言う通りだわ。魔法を敵視する集団があるのは事実なのに、正面から対策することを避け…いいえ、逃げてしまっているわ。」
政府を、というより、自分を責めるような口調だった。
「まあ、それは仕方ないんじゃないですか?」
「え?」
黎の言葉に、きょとんとしたような顔を浮かべる真由美。さらに黎が続ける。
「ここは国立の機関です。その運営に関わる生徒会、しかも会長なら、国の方針に従うのは仕方のないことです。俺が会長の立場でもそうせざるを得ないでしょう。」
口調が柔らかくなったのは、黎が意識してのものだった。
「慰めてくれているの?」
真由美が頬を染めた。
「そうですよ?」
「ほう、黎くんは凄腕のジゴロだな」
「そうですかね?達也には叶わないと思いますが」
摩利のからかいも軽く受け流した。が、
「お兄様…ジゴロというのは、どういうことでしょうか?」
深雪がとても可愛らしい笑顔で達也に尋ねる。深雪は受け流すことが出来なかったらしい。
「深雪、黎が七草先輩の気を引こうとしていたのを誤魔化すための冗談だから。」
達也がお返しとばかりに黎に話題を返す。
「な、ち、ちげーよ!」
黎が焦ったのを見て、真由美も反撃に転ずる。
「え?ちがうの?黎くんは、お姉さんがキライ?」
目を潤ませ、上目遣いで見つめられては強く言い返すことが出来ない。
「い、いや、嫌いとは言ってませんよ?」
「でも好かれたくないんでしょ?」
「だ、誰もそんなこと言ってないじゃないですか!」
「じゃあ、やっぱりお姉さんのこと好き?」
完全に真由美のペースだ。このまま弄ばれるのは黎にとってもおもしろくない。
「…ええ、好きです。最初に会った時から惚れていました。」
「え、な、え!?れ、黎くん!?」
今度は真由美が頬を染めて焦っている。黎の狙い通りだ。
「まあ、冗談ですが」
「え?も、もう!年上をからかうんじゃないの!」
「先にやられたのでお返しですよ。じゃあ、俺は巡回に戻りますね」
笑いながらそう言って、黎は巡回に戻った。
その後、真由美は摩利に散々からかわれることになるのだが、それはまた別の話。
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勧誘週間も無事終了、結局黎は初日の噂が広まった影響か、特に大きないざこざを仲裁する機会はなかった。そして翌週、黎は昼休みにある人物に呼び出されていた。
「それで、話とは?十文字先輩」
そう、黎を呼び出したのは、十師族に名を連ねる十文字家の当主代理、十文字家克人だった。
「ああ、単刀直入に言う。八田、お前は《あの》八田だな?」
「ええ、お察しの通りです」
「そうか、分かった。」
克人が静かに頷く。
「あの、それだけですか?」
克人の用件がこれだけとは思えない。もしそうならわざわざ呼び出す程のことではないだろう。
「いや、もう一つ、お前はどこでブランシュの名を知った?」
「七草先輩から聞いたんですか」
「ああ、十師族として、国が隠している情報が出回るのは望ましくない。''元''二十八家とはいえ、十師族以外がその情報を持っているなら、出どころを掴んでおきたい」
なるほど、もっともな理由かもしれない。しかし黎も、今ここで国防軍とのコネを簡単にばらしたくはなかった。
「ちょっとしたコネですよ、詳しくは残念ながらお話出来ません」
「しかし情報が情報だ。有耶無耶にしていいことではない。」
「では、俺がそれを教えるかわりに、十文字家の機密やコネの情報を要求すれば、教えてもらえますか?」
克人が顔をわずかにしかめる。
「家の情報を他の家に簡単に教えるわけにはいきません。それはどこも同じです。安心してください、ゆくゆくの八田家当主は俺です。得た情報を悪用はさせません。」
「……わかった」
完全に納得はしていないが、時間的に昼休みも終わりそうだったので二人は別れた。
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次の日、校内はざわついていた。
「二科生の地位向上に!」
「差別撤廃を!」
そんな声があちこちから聞こえ、同調する生徒も少なく無かった。
(…動きだしたのか)
恐らくブランシュ、そしてその下部組織が主導しているのだろうと推察する。
(面倒なことになりそうだな…)
他人事のように考えながら、黎は授業へと向かった。
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その日の放課後。
黎が知らせを聞いて駆けつけた時には、放送室の前に人だかりが出来ていた。
「渡辺先輩」
「おお、黎くん」
「何事ですか?」
「ああ、二科生の地位向上を謳う生徒たちが、放送室を占拠してしまってな…」
どうやらとうとう暴挙に出たらしい。
「内側から鍵をかけてたてこもっている。おそらくマスターキーを事前に盗んでの犯行だと思われる」
「完全に犯罪じゃないですか、早く事態を収集すべきなのでは?」
「いえ、下手に動くと彼らを刺激してしまうでしょう。慎重に対応すべきです。」
鈴音の意見も理解できる。どうすべきか、膠着状態が続いている中、達也が電話を取り出した。
「部活連と生徒会は、交渉に応じてもよいという考えですか?」
「ああ、元々根拠の無い言いがかりだ。後顧の憂いを絶つためにも、しっかり反論しておくべきだろう」
「生徒会も同意見です」
克人と鈴音の同意を得て、達也は電話を始めた。
「もしもし、壬生先輩ですか?司波です」
その後達也は、壬生の安全を保障することを約束し、放送室から出てくるよう話を付けた。
「壬生先輩って言うと、こないだ達也が言葉責めにしてたって……いや、なんでもない」
達也の冷ややかな視線にあてられ、黎は口をつぐんだ。
「それよりも、態勢を整えるべきだと思いますが」
達也が摩利たちに次の行動を促す。
「態勢?なんの?」
何を言っているのか分からない、という顔で摩利が聞き返す。
「そりゃ、中にいる連中を確保する態勢でしょう」
摩利の疑問に黎が答えた。
「いや、達也くんはさっき、自由を保障する旨の話をしていたと思うが…」
「俺が自由を保障したのは、壬生先輩1人だけです」
「ついでに、達也は生徒会や風紀委員を代表している、なんて一言も言ってないですよね?」
達也は無表情に、黎はニヤリとして告げた。
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「どういうことよ!これ!」
放送室から出てきた生徒達は、案の定すぐさま確保され、黎がCADを没収した。
「司波くん、私たちをだましたのね!」
「司波はお前をだましてなどいない」
紗耶香の達也への詰りに、克人が答えた。
「お前達の言い分は聞こう、交渉も応じる。しかし、そのこととその為にとった手段を認めることとは別問題だ。」
克人の正論に、紗耶香は反論できない。
「それはその通りなんだけど、彼らをはなしてあげてくれないかしら」
その言葉と共に、真由美が歩いてきた。
「七草?」
克人が訝しげな声を発し
「しかしな、真由美」
摩利が抗議の声をあげる。しかし真由美はそれを遮り、
「言いたいことは理解しているつもりよ、でも壬生さん1人では、交渉の段取りも打ち合わせもできないでしょう?生活主任の先生と話し合った結果、鍵の濫用と放送設備の無断使用への措置は、生徒会に委ねられました。」
遅れてきた理由と、紗耶香たちが現在置かれている立場についてのさりげない説明。
「じゃあ壬生さん、打ち合わせをしたいので、ついてきてもらえるかしら」
「…ええ、構いません」
「じゃあ、お先に失礼するわね。黎くん、達也くん、深雪さん、今日はもう帰ってもらっていいわ」
「では、失礼いたします」
そう言って、達也と深雪はその場を後にした。しかし黎はそうはせず、
「七草先輩、俺も立ち会ってもいいですか?」
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「黎くん、どうして打ち合わせに立ち会おうと思ったの?」
交渉の日時などの打ち合わせが済み、帰宅しようとしたところ、真由美に呼び止められた。
「彼らがブランシュやエガリテと繋がっているなら、交渉の時間に何かが起きてもおかしくない。だから詳しい内容を把握したかったんですよ」
「え?…いや、ただの交渉よ?話し合うだけなのよ?」
少し動揺しながら真由美が黎の懸念を否定する。
「交渉、それ自体に意味はありません。要は学校中の注目が1箇所に集まるタイミングを狙われる可能性があるってことですよ」
「……そう、確かに、その可能性を完全に捨てきることはできないわね」
「風紀委員とも連携をとって、警備にあたったほうがいいかも知れません」
「そうね、摩利にも伝えておくわ」
「助かります。それでは、俺はこれで」
「ええ、お疲れ様」
そして黎も帰路についた。
とりあえず今回はここまで。リハビリがてら書いてみましたが、思ったより量が少ないですね。次回からはもう少し増やそうと思います。
そして、次回からは戦闘シーンがたくさん書けそうなので、戦闘シーンが好きな皆さんは楽しみにしていてくださいね。それでは、また近いうちに。