注意:新人戦に比重を置きたいので、本戦の描写を大幅にカットしております。本戦まできっちり書くと、物語が進まなくなるので、ご了承ください。
「失礼します、八田黎です。」
「入れ」
次の日、黎は風間に呼び出されていた。
「来たか、まあ座れ」
「では、失礼します」
入室し、促されて席に着く。
「どうだ?調子は?」
「悪くはないですね」
「黎くんは確か、新人戦のモノリス・コードとバトルボードに出場するんでしたよね?」
「ええ、藤林さん。バトルボードは良いとして、モノリスの方は優勝は厳しそうですけどね」
「一条の次期当主に、カーディナルジョージ、加えて陸くんまで相手にしないといけないとなると・・・確かに一筋縄ではいかないでしょうね。でも"あれ"を使えば勝てるんじゃない?」
「あれは・・・まあいい勝負は出来そうですが、衆人環視の場で使うものではないですよ」
「それもそうね」
「術式飽和を使えばいいんじゃないのか?」
「術式飽和は、陸には通用しませんよ、山中さん。固まって戦えば他の選手に使えても、離れての一対一に持ち込まれれば使い物になりません」
「そうか」
「俺の競技の話は置いとくとして、今日俺を呼んだ用件は?」
「ああ、九校戦にちょっかいを掛けようとしてる賊の正体だが、おそらく無頭竜で確定だ。気をつけろよ、黎」
「なるほど、警戒しておきます」
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「兄さん!お久しぶりです!」
「ああ、久しぶり、朱莉」
九校戦初日、観客席にて、黎に引っ付く女子が1人。
「見に来たんだな」
「もちろん!兄さんの雄姿を、この目に焼き付けておきますからね!」
「あ、ああ。じゃあ、俺はもう行くよ」
「何を言ってるんですか?私も兄さんと観戦しますよ?」
「・・・え?」
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「と言うわけで、こいつは八谷 朱莉(はちや あかり)。沙織姉さんの実妹で、俺の妹分だ」
「よろしくお願いします。いつも兄がお世話になってます」
結局、達也や深雪たちと一緒に黎と朱莉は観戦することになった。
「朱莉、七草先輩の魔法、しっかり見とくんだぞ」
「はい、兄さん」
朱莉の魔法特性は、真由美のものに似ているため、真由美の試合を見学する事は、朱莉にとっても良い刺激だ。真由美は順当に勝ち進んでいく。
「さすがはエルフィン・スナイパー、と言ったところか。優勝は確実だろうな」
黎の言葉に異議を唱える者はいなかった。
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真由美はスピード・シューティング優勝、摩利もバトルボード予選を突破し、他の選手の戦果も上々、予定通りと言ったところだ。
「七草先輩、優勝おめでとうございます」
「ありがと、黎くん」
「渡辺先輩も、ひとまず予選突破おめでとうございます」
「ありがとう。とりあえずは予定通りだな」
「翌日以降も頑張ってくださいね」
「ああ」
「ええ」
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2日目も目立ったトラブルはなく、順調に九校戦は進んだ。真由美がクラウド・ボールでも優勝。花音もピラーズ・ブレイクの予選を突破し、概ね計算通りの結果となった。
「このままいけば、一校の三連覇も射程圏内ですね」
「ええ、でも油断せずいきましょう」
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3日目、女子バトルボード決勝。先頭に躍り出た摩利と七校選手。差がほとんどつかないまま、鋭角のカーブに差し掛かった時、
(あれは・・・?)
小さな異常に気を取られ、その瞬間を見逃してしまう。観客席から悲鳴が上がり、それを聞いて視線を戻した先で、七校選手がバランスを崩していた。
「オーバースピード!?」
そう叫んだのは誰だったであろうか、このままでは七校の選手が壁に激突してしまう。しかし、そこからの摩利の反応は、見事というほかなかった。ボードを反転させ、突っ込んでくる七校選手を受け止めるべく、新たに2つの魔法をマルチキャストする。このままいけば受け止められる。誰もがそう思ったその時、
(水面が!!)
突如水面が不自然に陥没し、摩利が体勢を崩す。そのまま摩利と七校の選手は衝突し、もつれあいながらフェンスへ飛ばされる。大きな悲鳴があがった。あの体勢で摩利が受け身をとれたようには思えない。
「先輩!!」
黎はすぐさま観客席を飛び出し、摩利のもとへ急ぐ。
「行ってくる、お前たちは待て」
その後、達也が友人たちを制止し、黎の後に続く。
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どれくらいの時間がたっただろうか。
「ここは・・・?」
「あ、先輩、気が付きましたか?」
「摩利っ、私がだれかわかる?」
「何を言っている、そんなことは聞くまでも・・・っつ」
後から襲ってくる鈍痛で、自分の状況に気づく。
「まだ起きちゃダメ」
真由美が起きようとする摩利を制し、ベッドに押し戻す。
「・・・完治までどれくらいかかる?」
「全治1週間ってとこですね」
「おい!じゃあ!!」
「・・・ミラージ・バットは棄権せざるを得ませんね」
「そうか・・・。レースの方はどうなった?」
「続行中よ。七校の選手は危険走行で失格、決勝は三校と九校よ。」
「幸い、七校側のけがはそれほど大きくないようです。渡辺先輩のおかげですね」
「自分が大怪我をしていては世話はない」
「それでも、渡辺先輩は1人の魔法師生命を救いました」
「黎くんの言う通りよ」
「棄権の分の穴はみんなで取り返しますから、先輩は回復に努めて下さい」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「・・・それで、摩利、あの時、第三者から妨害を受けた可能性はない?」
「・・・確かに、足元に不自然な揺らぎを感じたが、それが魔法によるものかはわからない」
「・・・俺は精霊魔法だとみてます」
「精霊魔法?」
「ええ、これについては、達也たちと解析してみます。それでは、俺はこれで失礼します」
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「それで、なにかわかったか?達也」
一校ブース内、黎と達也がモニターを見ながら話しこんでいる。
「一通り検証したが、やはりお前の言う通り、精霊魔法の線が一番濃厚だろう」
「やはりか、こっちでも色々調べておくよ。何かわかったら教えてくれ」
一旦切り上げ、黎はある場所へ向かった。
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「姉さん、ちょっと聞きたいんだけど」
黎がむかったのは沙織の所。事前に用件を伝えていたため、すぐに本題に入る。
「うん、やっぱりあれは第三者の妨害と考えるのが妥当だと思う」
「俺は精霊魔法が使われたとみてるんだが」
「その可能性が高いと思うわ。これで終わりじゃないかもしれないから、気を付けてね」
「ああ、姉さんもな。CADの管理、さらに厳重にした方がいいかもな」
「うん、じゃあね。明日のバトルボード、頑張ってね」
「ああ」
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四日目、ついに新人戦の開幕だ。昨日の事故(事件)の詳細はまだわかっていないが、何よりも自分の試合で確実に結果を残し、一校の優勝に貢献することを優先することにした。
「黎さん、がんばってくださいね!」
「ありがとう、ほのか。ほのかも今日試合だろ?お互い頑張ろうな」
「はい!」
「黎くん、頼むわね」
「ええ、あんなこと言った以上、予選落ちなんてしようものなら渡辺先輩に顔向けできませんから」
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スタート直前、ボードの上に立つ黎は、あたりを見回し、観客席にいる沙織や朱莉、一校の友人たちを見つけられるほどには落ち着いていた。静かにスタートの合図を待つ。
そして、ついにスタート。
「行くぜ・・・!」
スタートの合図とほぼ同時に、黎はフルスロットルで走り出した。そのままトップへ躍り出るが、ほかの選手も負けてはいない。なんとか黎について行っている。
(やるな、なかなか、でも、1位を譲る気はないぜ)
最初のコーナーを曲がり切ったあたりで、黎は自分の真後ろの水を爆発させた。それによって得た推進力を利用してスピードを上げるとともに、後続の選手の妨害を行う。これでほとんどの選手は大きく引き離したが、直撃を避けた二校の選手が、黎と同様に爆発を利用してスピードを上げ、黎に肉薄する。
(へえ・・・やるじゃん)
2人の距離はしばらくあまり変わらなかったが、コースの後半、大ジャンプにてその均衡が崩れる。黎は自信に加重魔法をかけ、落下速度を大幅にアップさせ着水後も、その勢いのままスピードに乗り、一気に引き離した。そしてその距離を保ったまま、黎は無事に1位でゴールインした。
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「黎くん、予選突破おめでとう」
「ありがとうございます、七草先輩」
レース終了後、黎は本部にてねぎらいを受けていた。
「スピード・シューティングでは女子が3人とも予選突破したし、順調ね」
「二校の選手と競り合っていた時はひやひやしたぞ」
「正直俺も少し驚きました。まあ、策はあれだけではなかったので、焦るほどの事ではありませんでしたが」
摩利の指摘に、苦笑しながら答える。
「まあ君なら大丈夫だろうが、決勝も頼むぞ」
「はい、お任せを」
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「雫、スピード・シューティング優勝、おめでとう」
「ありがとう、黎さんも予選突破だね」
「ああ、ほのかも予選突破だな」
「はい、黎さんの考えてくれた作戦のおかげです!」
黎とほのかが同じ競技に出場するということもあり、ほのかの作戦を考えるのを手伝っていた。
「いや、ほのかがちゃんとやるべきことをやったからだよ」
「本戦も頑張りましょうね!」
「ああ、だが俺の場合、問題はモノリスの方だ」
「三校がかなりの強敵だね」
「ああ、あの3人を同時に相手にするのは厳しい。総合優勝を取るには、負けられないんだがな・・・」
「黎さんなら大丈夫。応援してるから」
「ま、やるだけやってみるさ。それでほのか、次の作戦なんだが・・・」
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新人戦男子ピラーズ・ブレイク予選にて、陸が見る者に衝撃を与えていた。
「これは・・・ラグナロクか・・・?」
広範囲焼却魔法であり、限られた魔法師にしか、使用はおろか術式の公開もされていない魔法。
「陸、使えたのか」
「私も使えるとは聞いてたけど、実際に見るのは初めてよ」
黎の驚きに、沙織が同調する。
「兄さんにも使えないんですか?」
「分からない。使えなくはないだろうが、あれだけ緻密に威力と範囲を調整して使える自信はないな」
そう、陸はただ使えるだけでなく、それを完璧に操ってみせた。相手陣の氷柱は瞬く間に融解、爆散し、自陣の氷柱は多少溶けているだけの、完膚なきまでの圧勝だった。この日、陸はラグナロクのみで予選を通過して見せた。
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「お疲れ、やってくれたな」
試合を終えた陸のもとへ赴き、ねぎらいの声をかける。
「黎、ちょっと本気だしてみたぜ」
「お前のそれが、モノリスで使えないのが救いだな」
「そりゃこっちのセリフだ。お前の"あれ"も使えないんだから」
互いにニヤリと笑い、軽口をたたき合う。
「この調子なら、優勝は確実だろうな。お前が取りこぼすとは思えんし」
「お前もな。おそらく新人戦の優勝は、モノリスの結果がかなり大きく影響してくるだろうな」
「ああ、同感だ。・・・それと」
「ん?どうした?」
「ウチの渡辺先輩のように、妨害を受けることがないとも言い切れん。気をつけとけよ」
「ああ、わかってる」
気を引き締めた表情を最後に交わし、2人は別れた。
バトルボードに出すんじゃなかった・・・。描写が難しくてうまく書けませんでした。陸のラグナロクですが、リーナのムスペルヘイムに似た物です。(原作を読み返すまで、ムスペルヘイムをリーナが使えるのを忘れてまして、陸に使わせようとさせていました。)
今回ですが、シーン切り替えを多用&シーン一つが短い文章となってしまい、読みにくかったかもしれません。申し訳ないです。下書きなどをしないで、思うがままに書いているので、今後もこの様な文章になる事があるかも入れませんが、よろしければお付き合いください。また、今回、シーンの切り替え時に行間を開けてみました。おそらく多少読みやすくなったと思います。今後はこの形式で行こうと思います。前回までのもいずれ編集いたします。最後になりますが、UA6000突破、ありがとうございます!お気に入りや、しおり登録をしてくれる方も増えて、うれしい限りです。今後ともよろしくお願いいたします。さて、かなり長いあとがきとなってしまいました。この辺で失礼しようと思います。