魔法科高校の異端児~それは呪いか祝福か~   作:のなめん

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のなめんです。春休みで暇なので、どんどん書いていきます。九校戦編も佳境を迎え、黎の活躍の場面も増やしていきたいと思ってます。それでは第9話、どうぞ。


第9話

新人戦バトルボード準決勝、黎の出番となった。予選での黎のレースの影響か、対戦相手の三校選手両方が黎を見て、いや、睨んでいる。

(ずいぶんと嫌われたもんだな・・・。ま、そんだけ警戒されてるってことか。)

静かに開始を待つ。観客席の同級生たちや朱莉、本部の真由美たちも同様だ。スタートの合図が鳴る。予選と同様、開幕フルスロットルで走り出そうとするが、突然目の前の水面が窪んだ。

(妨害か? いや、単純に邪魔されただけか)

隣の選手が、スタートせずに黎の妨害に努めていた。

「黎と心中する気か」

「なんですかそれ!汚いです!」

達也のつぶやきに、朱莉が反応する。同じような反応が、本部でも起こっていた。

「汚い!あれじゃレースどころではないぞ」

「三校はもう1人レースに参加している。片方を犠牲にしてもう片方を生かす作戦だろう。フェアとはいえんが、理にかなった戦術だ。」

摩利が叫び、克人が冷静に状況を分析する。

「黎くんは、初めから優勝してくれるものとして計算を立てていたけど、決勝にも出られないとなると厳しいわね・・・」

真由美が心配そうにつぶやく。実際、現在黎は最下位。先頭のもう1人の三校選手はかなり遠くまで行ってしまっている。進めてはいるが、このままでは取り返しのつかない差がついてしまう。

「先に喧嘩売ったのはそっちだ。反撃されても文句言えないよな?」

そう告げると、黎は魔法を発動した。すると、黎の前方の水面に向かうはずだった三校選手の魔法は、自信の真下に発動された。自身の魔法によってバランスを崩した三校選手の顔が驚愕にそまる。そこへ追い打ちでさらに魔法を打ち込むと、三校選手は転覆した。

「さあて、追っかけるぜ」

黎の追い上げが始まった。摩利の戦術と同様に、硬化魔法で自分とボードの相対位置を固定。さらに気流操作で追い風を吹かせる。加えて自分の後ろの水面を爆発させることで、さらに推進力を得る。さすがに準決勝まで残っている選手なので、一度ついた差はすぐには縮まらない。しかし黎はみるみる距離を詰め、3周ある内の2周目の半ばで追いついて見せた。妨害の魔法が飛んでくるが全て返り討ちにし、3周目に入るころにはトップに躍り出る。そのまま加速を続け、準決勝も1位でゴールした。

 

 

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「すごかったわ!黎くん!」

本部に戻ると、真由美が黎を称賛とともに迎える。

「ありがとうございます。さすがにヒヤッとしましたけどね」

「だが終わってみれば君の圧勝だ。素晴らしいレースだったよ。ところで、なぜ敵の妨害魔法がことごとく敵に跳ね返ったんだ?」

摩利の疑問はもっともなものだが、他人の魔法について深く詮索するのはマナー違反でもある。

「摩利、それは聞かない方がいいんじゃない?」

「構いませんよ。俺は、相手の魔法式に記述された座標を読み取って、それを書きかえたんです。」

「なんだって!?」

摩利が驚くのも無理はない。真由美や、克人までもが驚愕の表情を浮かべている。

「そんなことができるの!?」

「ええ、まあ」

そんなことが無制限にできるとしたら、黎に魔法は通用しないという事になる。

「もちろん、無制限に、とはいきません。細かい制限については伏せさせてください」

「あ、ああ」

「決勝も期待しているぞ、八田」

「はい、ご期待に添えるよう頑張ります」

 

 

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「すごかったです!兄さん!」

「さすがだな、黎」

観客席についた黎を、嬉しそうな朱莉と、感心した様子の達也が迎える。

「最初は面食らっちまったが、まあなんとかなったよ」

「兄さんが負けるわけありません!決勝も頑張ってくださいね!」

「ああ、ありがと」

「ところで黎、あの魔法について聞いてもいいか?」

「ああ、俺は相手の魔法式に記述された座標を書きかえたんだよ。魔法の名称は特に決めてないんだが、さしずめ再定義、リディフィニションと言ったところかな」

「な、黎、そんなことができるのかい!?」

幹比古が全員を代表して驚きを述べる。

「ま、まあな。細かな制限があるから、いつでもどこでもってわけにはいかんが」

「それでもすごいことですよ!」

「うん、誰にでもできる事じゃない」

「そうです!兄さんはすごいんです!!」

「なんで朱莉が偉そうなんだよ」

「兄さまは私の自慢の兄さんですから!!」

「答えになってない気もするが・・・まあいいか。俺は決勝の準備があるから、もう行くよ」

「頑張ってください、兄さん!」

「ああ、じゃあ行ってくる。」

 

 

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新人戦男子バトルボード決勝は、黎と、七校の選手の試合となった。

先ほどのレースを見ていた観客が、黎に大きな声援を送る。その中に少なからず黄色い声援が混じっていたのを聞き、朱莉と沙織(沙織はCADの調整があるため、観客席にはいない)が頬を膨らませる。そんなことに気づくことのない黎は、淡々と開始の合図を待つ。

3、2、1、ついに決勝の火蓋が切って落とされた。お互いにスタートは好調、どちらも譲らないデッドヒートとなっている。

(追い風も爆発も接戦じゃ効果は薄い。単純なスピード勝負だと、海の七校に大差をつけるのは難しいか)

コース後半、予選で差をつけたジャンプに差し掛かっても、2人の差はそれほど広がっていない。

(やむを得んな・・・)

着水後、黎は水面に術式飽和を発動。相手の加速魔法は着水後に使用できず、黎はそのまま加速する。両者の実力が拮抗している場合、一度大きな差がつくと、取り返すことは困難である。黎はリードを保ったまま、決勝戦も1位でゴールした。

 

 

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黎は、本部に嬉々として迎え入れられた。

「おめでとう、黎くん。そしてありがとう。期待通りに結果を残してくれて」

「いえ、たまたまですよ」

真由美の言葉に、謙遜を示す。が、摩利にはお気に召さなかったらしい。

「謙遜も度が過ぎると嫌味だぞ。」

「いえ、そんなつもりは。まあ、渡辺先輩の穴を埋めると豪語しましたので、負けてるわけにはいきませんからね」

「ほう、頼もしい。では、モノリスコードも期待していいのかな?」

「優勝を確約はできませんが、できることはやります」

「ああ、期待している」

 

 

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その後、黎は雫に連れられ、控室にほのかの応援に来ていた。

「黎さんも優勝されましたし、私も頑張ります!」

「ああ、でも無理に気負う必要はないよ。今までやってきたことを出せれば間違いなく勝てる。作戦も確認してるし、大丈夫。頑張ってきな」

「は、は、はい!が、がが、頑張ります!!」

「ほのか緊張しすぎ。黎さんの言う通り、今までの成果を出せれば大丈夫」

「う、うん」

「さあ、もう時間だ。思う存分やってこい」

「はい!」

 

 

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大方の予想通り、ほのかはバトルボードに優勝した。黎は雫とレースを脇で見ていた。

「やっぱ大丈夫だったな」

「うん、ほのかは緊張しすぎ。普通にやれば勝てる実力は持ってるのに」

「まあそういってやるな。はじめての九校戦だ。緊張するなっていう方が難しい話だ」

「まあそうだけど」

「雫もこれから決勝だろ?深雪との戦いは難しいだろうが、頑張れよ」

「うん、深雪と戦える機会なんてめったにないから、頑張ってくる」

「ああ」

雫は、ほのかの帰りを待たずに、自身の準備のため控室へ向かった。

「黎さん!」

雫が去った後、ほのかが涙目になって駆け寄ってくる。

「黎さん!勝てました!私やりました!!」

「ああ、見てたよ。おめでとう。よくやったな」

「はい!ありがとうございます!」

「言っただろ?練習通りやれば負けないって。もっと自信をもっていいんだよ」

「はい!」

「今度は雫の試合だ。行こうぜ」

「はい。あ、あの・・・」

ほのかの表情が真剣になる。

「ん?」

「・・・黎さんは、雫は勝てると思いますか?」

「・・・」

いくばくかの逡巡の後、自分の考え、と言うより、客観的事実を述べる。

「・・・正直、厳しいと思う。雫の能力はとても高いものだけど、やはり深雪の魔法力は新人戦のレベルから数段とびぬけてる」

「そう、ですか・・・」

ほのかが少し悲しそうな表情を浮かべる。

「でも、完敗するとは思えない。さあ、観戦にいこうぜ」

 

 

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観戦へ向かう途中、陸と遭遇した

「おつかれ、黎。派手にやってくれたな」

「派手さで言えばお前の方が上だ、陸。決勝、楽しみにしてるぜ」

「ああ、まあ馬鹿の一つ覚えだけどな。そちらは光井さん、だよな。バトルボード優勝、おめでとう」

「あ、ありがとうございます」

「じゃあな、黎。準備もあるし、もう行くよ」

「ああ、じゃあな」

 

 

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女子ピラーズ・ブレイク決勝は、結果だけ見れば圧倒的だった。はじめは拮抗しているように見えたが、試合中盤、雫がフォノン・メーザーを使用したことにひるまず、ニブルヘイムを発動したことによって、形勢は一気に深雪有利となり、そのまま一気に勝負はついた。

 

 

 

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控室、1人でいる雫のもとに、黎とほのかが向かう。

「雫、お疲れ様」

「ほのか、黎さん」

「ひとまず、準優勝おめでとう。そして、お疲れ」

「うん・・・」

普段無表情の雫だが、今は明らかに落ち込んで見える。

「・・・最初から・・・勝てるとは思ってなかった」

「ああ」

「でも、手も足も出なかった・・・」

雫の声がだんだん嗚咽を混じらせる。黎はそっと雫に近づく。雫は黎の袖をぎゅっと握り、ぽつぽつと泣き始めた。

「・・・悔しいよ・・・」

「・・・残念だったな」

よくやった、とか、惜しかった、などと言う慰めは無意味だ。それがわかっているから、黎もほのかも何も言わない。一度だけ黎は雫の頭に手をのせた。そして、いくばくかの時が過ぎた。

「・・・ありがとう、もう大丈夫」

そういって、袖から手を放す。その目に、もう涙の跡は残っていなかった。

「・・・ね、お茶行かない?少しおなかがすいちゃったの」

「・・・うん」

努めて明るく振る舞うほのかに、雫は少しはにかんだ目でうなずいた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

会場備え付けのカフェにて、3人は大会中継のモニターを見ている。ちょうど陸のピラーズ・ブレイク決勝が始まるところだった。

「八島君は、黎さんのお友達なんですよね?」

「ああ、腐れ縁だけどな」

「モノリス・コードにも出場するんだよね」

「ああ、今年の三校のモノリスチームは、反則級に強い。ほら、モニター見てみな」

ちょうど、陸のラグナロクが発動されるところだった。相手の防御を無意味に蹂躙し、氷柱を溶かし、倒し、爆発させる。相手は成すすべもなく、そのまま陸の優勝となった。

「はあ、あんなの反則だろ」

「す、すごい・・・」

「圧倒的だね・・・」

3人が3人とも、それぞれ率直なコメントを述べる。

「あの人と戦うんだね・・・」

「まあ、勝ち進めばそうなるな」

「・・・頑張ってね」

「ああ、ベストを尽くすさ」

 

明日はいよいよ、新人戦モノリス・コードの開幕だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです。次回はついにモノリスに入ります。バトルボードよりは描写がしやすいと思います。頑張って書きたいと思います。
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