帰ってきてしまった、この場所に。
ふたたび窯に火を入れて蒸気を吹き出し転生「汽」者えほん、再始動します。
久しぶりの更新、久しぶりの作品ゆえすこしづつ変わってるところはあるかもしれませんがお付き合いください。
それでは、出発進行!
「おばあちゃんと侮らない」というお話……
モチヅキはかなり歳をとった気動車だ。ディーゼルではなく蒸気で動き、車体は木でできている。だが働き者で経験豊富なので、トップハム・ハット卿やほかの機関車たちから非常に信頼されている。
ただし、ディーゼルは違った。
「ふん!こんなボロに乗るお客さんがかわいそうだ。俺のひく客車の方が乗り心地は最高だね。」
モチヅキと顔を合わせて早々に酷い悪口をぶつける。しかしモチヅキとしてはディーゼルのこの手の悪口なんて日常だ。
「お前が客車をひいたらお客さんが地獄を見るな。先にエドワードに客車の引き方を教示をいただいてもらってこい。」
「はっ!馬鹿にしやがって、客車なんか誰でもひけるね!」
そういうとゴロゴロと唸り声を上げ、やかましい音を立てて貨車を引っ張りながら駅から出て行った。
しかしディーゼルは心の中でどうやってモチヅキの鼻っ面を叩き折ろうかと言うことをずっと考えていた。
「今度こそあいつの鼻を明かしてやるぞ……今度こそ……」
そうは言うがまだ仕事の立て込んでいるディーゼルにはそんな余裕はない。港の貨車の整理も残っているのだ。すると港の駅に客車が停まっているのが見えた。牽くべき機関車は見当たらない。
「これを牽くのは誰なんだ?」
「ヘンリーなんだが、調子が悪くてひっぱれないんだ。代理の機関車が必要なんだが……」
駅員がそう答える。そのときディーゼルが悪だくみをひらめいた。
「そうだ、それ、俺が牽きましょう。」
「本当か?ならお願いしよう。」
ディーゼルは客車を連結すると景気よく汽笛を鳴らした。それが大問題の始まりの音とも知らず。
モチヅキが仕事を終えて港に顔を出すとそこは悲惨な状況だった。貨車がそこらじゅうに散らばり入れ替え作業をするはずのディーゼルは影も形もなく、サツキが右往左往しながらも必死に仕事をしていた。
あんまりな状況にモチヅキがサツキに質問する。
「これは……どうしたことだ?何があった?」
「ディーゼルがヘンリーの代わりに客車をひっぱって行ってしまったみたいで、私だけでなんとか頑張てたんです……ですけどもうヘトヘトで……」
彼女はいまにも倒れそうなほどに疲れ果てていた。それを見かねたモチヅキが助け舟を出す。
「俺が手伝うよ。サツキはしばらく休んでてくれ。」
「えっ!? それじゃあ姉さんの負担が……」
「いいの、いままで無理した分ゆっくりしてなさい。それとも__」
彼女がニヤリと笑う。
「俺がこの程度で音を上げると思ってないか?お前が来る前は一人で切り盛りしてたんだぞ?」
やがて日も暮れてディーゼルが帰ってきた。しかし顔は走り出した時と真反対にすっかりくたびれ果て気分も落ち込んでいた。
客車を牽くことに慣れていなかったディーゼルは貨車のように扱った結果、乗客は悲鳴を上げ客車たちから怒涛の勢いで怒られたのだ。
すっかりしおらしくなり意気消沈しているディーゼルは行き先に機関車が停まっていることに気づかなかった。
ガシャポン、とバッファー同士がぶつかって初めて顔を上げた彼の前には、腕を組み静かな笑顔を見せるモチヅキが夕日を背に立ちはだかっていた。
「やぁ、ディーゼル。ずいぶん遅いお帰りで、どこまで行ってたんだ?」
「えぇ、ええっとぉ……ちょっとお客を乗せて島をぐるっとね……ハハハ。」
「ふーん。それでお客様は満足していらっしゃったかい?」
「お、おう当たり前だ。わかったろ?お前よりも俺のほうが優秀なんだよ。」
「それはよかったな。ところでお前、何の仕事をしに港に来たんだ?」
あっとした顔をした時にはもう遅い。港一帯にモチヅキの怒声と説教が日がすっかり沈むまで続くのだった。
その後日、ディーゼルが嘘をついていたことがばれてさらに怒られたことを余談として置いておこう。
このお話の出演は
サツキ
ディーゼル
そしてモチヅキでした。
もうちょっと本編&オリジナル回が続く予定です。次のお話ができるその日まで少々お待ちください。
それでは、本日はご乗車ありがとうございました。