最近アスナちゃんがおかしい。   作:大塚ガキ男

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お久し・・・振りです・・・!
どうも、大塚ガキ男です。そして、突然の投稿です。



第2話

 

 

 

 

『光也、君に見せたい物があるんだ。すぐに私の家に来てくれないか。玄関の鍵は開けてある』

 

 

 始まりは確か、晶彦ちゃんのその一言からだった。

 オレにはよく分からないが、晶彦ちゃんは凄い才能を持っている人らしく。何か新しい持論や物事に関する構想を思い付いては、オレに意見を聞くような奴だった。

 だから、今回の呼び出しも然程(さほど)疑問には思わなかった。

 ぶっちゃけ、晶彦ちゃんの口から出る単語は素人には理解出来ないモノばかりなのだが、『一見馬鹿らしい——無垢な子供のような君の意見が、私は好きなのだ』と真っ直ぐな瞳で言われては断れず。

 馬鹿らしくて悪かったな。

 ・・・兎に角。

 招集の連絡があったのが昼頃。11時に朝飯兼昼飯を食べ終えていたオレは、特に用事と言えるような用事も無かったので、チャリのペダルを漕いでシャカシャカと、自宅からそう遠くない晶彦ちゃんの家へと向かうのだった。

 んで、玄関前。インターホンを押そうとした所でドアの鍵が開いている事を思い出し、指を引っ込めてドアを開く。いつもなら、インターホンを押せば慌ただしく階段を駆け下りる音がして、晶彦ちゃんが「やぁ、上がってくれ」とドアを開いて顔を出すのに、今回に限ってそれが無い。何故、今回はオレにドアを開けさせたのか。割りかしどうでも良い事の筈なのに、どうしてだかオレは不思議に思い、首を傾げた。

 靴を脱ぐ際に家に上がるという旨の声を掛けたのだが、応答無し。

 晶彦ちゃんからの呼び出しがあった時は十中八九、2階の晶彦ちゃんの部屋で話をする。返事が無いなら良いかと階段を上り、突き当たりの部屋に。

 ったく、出迎えるくらいしろよなァ。

 文句を言いながらドアを開く。

 

「・・・あら?」

 

 誰もいない。まさか、晶彦ちゃんに限って『どこかに隠れてオレを驚かす』だとか、そんな子供染みた事をしている訳がない。

 そう考えつつも、ついついベッドの下とかを探してしまう。

 いない。

 電話でコールしたら、晶彦ちゃんのスマホの着信音で家のどこにいるのか分かるだろうか。ジーンズのポケットに突っ込んでいた自分のスマホを取り出した瞬間、バイブレーションと共にメールを受信。

 

『ベッドの上にギアがある。ベッドに寝転び、それを被ってくれ』

 

 ・・・ぎあ?

 ギアとは何ぞや。

 ベッドに視線を移す。オレの知らない間に、枕の呼び名がギアに変わっていなければ、枕元に置かれているあのヘルメットみたいな機材が、恐らくギアと呼ばれる物なのだろう。

 手に取り、動かして色んな角度からギアを見る。・・・一体、晶彦ちゃんはオレにこれを被らせてどうしたいんだ。

 戸惑っていると、また受信。

 

『出来れば早くしてくれ。時間が無い』

 

 理由は分からんが、どうやら晶彦ちゃんは(あせ)っているらしい。親友を困らせる趣味も無ければ、男相手に焦らしプレイをする趣味も無かったオレは、取り敢えず言われた通りギアを被る。被った感じは完全にヘルメットなのだが、微かに機械の駆動音がする。大丈夫だよな?いきなり爆発とかしねェよな?

 あたふたしていると、ベッドの角に足の小指を打った。痛みに悶えながら、自分が立ちっぱなしでヘルメットを被っていたのを思い出す。

 ギアと呼ばれるこれが何かは分からないが、晶彦ちゃんの指示では寝転びながら被る物らしい。オレもそれに(なら)い、自分以外の匂いのするベッドに寝転ぶ。すると、眼前——バイザーのような部分に文字が浮かび上がった。

 

『唐澤光也:さんですね?』

 

 そうだけど。え、何。被っただけで名前とか分かっちゃうの?怖くない?

 

『茅場晶彦:様により、必要な設定は既に完了しております』

 

『準備が整い次第、今から唐澤光也さんをSAOの世界にご案内する事が出来ます』

 

 成る程ね、晶彦ちゃんがオレの個人情報を事前にこのギアにぶっ込んでおいたから、このギアがオレの事を認識出来たらしい。

 合点したのも束の間、すぐさま知らないワードが出てくる。何だよSAOって。下ネタか何か?

 振動。傍らに置いていたスマホを開くと、またもや晶彦ちゃんからのメール。『リンクスタート。と言ってくれ』だそうだ。もう何がしたいのか分からんが、恐らく凡人には理解出来ないような何かを企てているんだろう。

 仕方無い。親友からの指示(頼み)を無碍にし、ギアを外してスタコラ帰宅する訳にもいかないし、黙って従うのが吉だろう。

 

「リンク、スタート」

 

 これで晶彦ちゃんは満足するのだろうか。そろそろオレの前に姿を現してくれるのだろうか。

 そうである事を願いながら、言ってみる。

 何やら視界に、色とりどりの線が前方からこちらに迫っては後方に消えていく。自分が光速で動き、世界を置き去りにしているような不思議な感覚。

 あ、何か嫌な予感——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 360度に広がる青い光。その中に、オレはいつの間にか立っていた。

 何じゃこりゃと、自分の現状を訝しみながら、これも晶彦ちゃんが何かやったのだろうと早々に結論付ける。こう言った不思議な事柄は、大体晶彦ちゃんのせいにすれば説明が付く。

 多分。

 このままボケっと突っ立っている訳にもいかないので、取り敢えず前進してみる。すると、徐々に前方に青以外の色が見えてきた。その光を見たオレは何だか安心して、光に向かって動かす足を早めた。

 それはどんどんと近付いて、オレは光の中に飛び込んだ。

 

「——ッ、お、うおぉ?」

 

 人、人、人。

 巷で流行しているファッションとはかけ離れた、コスプレのような格好をした人々が、そこにはいた。前に前にと進んだ末に到着した場所は、何やら広場のような所らしく。兎に角、人がごった返していた。

 キョロキョロ。辺りを見渡す。

 腰に鞘付きの剣(下ネタじゃないよ)をぶら下げた、コスプレイヤー達。しかしその半数くらいは剣を肩掛けの鞘にしまっていて、いや、よく見たら刀とか斧を所持している奴もいる——ちゅーか、腰だろうが肩掛けだろうが剣だろうが何だろうが、オレが感じた印象は一つ。何だコイツ等。

 石の煉瓦(レンガ)で出来た、中世風の建物の数々。

 シャレオツな石畳。

 どこまでも続く空。

 味のしない空気。

 オレが知らない間に可笑しな洗脳を施されていなければ、ここは間違いなく外だ。決して晶彦ちゃんの部屋などではない。

 ・・・オレってもしかして夢遊病なの?

 晶彦ちゃんのベッドで眠ってしまい、意識の無い間に知らない場所まで出歩いた可能性を考えてみるが、棄却。晶彦ちゃんの家の徒歩圏内に、こんな場所は存在しないからだ。

 仕方無いので、すぐ近くにいた赤髪のバンダナの男と、その隣のイケメン風の男に話し掛けてみる。

 

「なぁなぁ、ここってどこなん?」

「はぁ?お前さん、酔っ払ってんのか?」

 

 赤髪のバンダナ男にそう返される。失礼な。

 

「オレはまだ高校生だぞ。酔ってる訳ねェだろ」

「馬鹿、リアルの話題はタブーだろ」

 

 次に、オレの言葉に返してきたのは、イケメン風の男。よく分からないが、オレは怒られた様子。

 

「・・・オレの名前は光也。お二人共、名前は?」

 

 初対面の人とすべきは、やはり自己紹介。ニコリと家で練習した笑顔で微笑むと、二人も少しは警戒を解いてくれたのか(つーか、警戒されてたのかよ)、順に自己紹介を始めてくれた。

 

「オレはクライン。んで、こっちはキリト。ベーターっぽかったコイツにさっきまで戦いのレクチャーをしてもらってたんだ」

「キリトだ。よろしく、ミツヤ」

 

 ベーターって何さ。

 いや、それよりもオレは聞かなければならない事が。聞き逃してはいけない単語があった。

 

「お、おう。ところで、戦いって?空手とかそんな感じ?」

「お前、ここに何しに来たんだよ。SAOなんだから、剣に決まってるじゃねえか」

 

 決まっているらしい。

 SAO?・・・あ、そう言えばギアの音声ガイドもそんな事を言っていたような。

 

「日本でそんなの振り回してたら捕まるからやめとけ。いくらコスプレ好きでも、犯罪は駄目だ」

「はぁ?ゲームの中で何言ってんだ」

  「ま、待てクライン。何か、俺達とミツヤの間に認識の齟齬があるような気がする」

 

 何かもう、どちらが話を振っても頭に疑問符を浮かべてしまうような展開。そんな二人の間に入ったのは、キリトと名乗った男。何だか、銃刀法違反臭い赤髪を宥めてくれそうな雰囲気を醸し出しているが、忘れてはならない。コイツも剣を所持しているのだ。

 

「なぁ、ミツヤ」

「何だよ、キリトちゃん」

「き、・・・キリトちゃん?」

「駄目か?」

「いや、良いけどさ」

 

 何やらちゃん付けで戸惑っているイケメン風改めキリトちゃん。最終的には了承をもらえたので、今日この瞬間からキリトちゃんをキリトちゃんと呼ぶ事に決める。

 

「ちなみに、アンタはクラインちゃんな」

「おりゃ、ちゃん付けで呼ばれるのは性分じゃねぇんだけどな」

 

 頬を掻きながら照れ笑っているので、「駄目か?」と問うてみたら、了承をもらえたので(以下略)。

 

「んで、キリトさんよぉ。認識の齟齬ってのは一体何なんだ?」

 

 気を取り直して。クラインちゃんが顎をさすりながらキリトちゃんに問うた。

 

「あぁ。まず、一つミツヤに聞きたい事がある」

「何でも質問して」

()()()()()()?」

「決まってる。日本のどこかだ」

 

 仮に、オレが重度の夢遊病患者だったとしても、流石に国外に出ている事は考えられない。第一、オレパスポート持ってねェし。

 オレの知る限り、日本にこんな場所は無かったような気がするのだが、恐らくは某映画村みたいな感じのソレなのだろう。

 オレの回答に、クラインちゃんが「だから、SAOだっての」と噛み付いてくる。

 

「そもそも、SAOって何さ」

 

 SAOを下ネタ程度にしか認識していなかったオレが二人にそう尋ねると、二人は揃って驚いた顔をした。その表情を見て何だか無性に腹が立ってきたので、(すね)でも蹴ってやろうと企んだ瞬間。広場の空が紅く染まった。

 

 

 そして。

 この日から、オレは親友である茅場晶彦を心の底から憎むようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの事件から、一月(ひとつき)経った。

 ラスボスの正体が、今まで攻略組の最前線で戦ってきた茅場晶彦(ヒースクリフ)だと判明してから。

 同じく、攻略組の最前線で着々とした成果を挙げていたミツヤのレベルが、1に戻されてから。

 一月、経った。

 ラスボスが、その気になれば状態異常を操れる事。そして、プレイヤーのレベルを自由に設定出来る事は瞬く間にSAO内に知れ渡り、今まで奮闘を続けてきた攻略組は、所属するギルド関係無しに、一時停滞となった。

 現在、プレイヤーのレベル上げや素材採取が許されているのは七十五層までとなっており、七十六層の街の外に出る事は原則禁止というプレイヤー間のルールが設けられた。それでも、街の外に出てしまう者は少なくない。あの戦いを実際に見なかった者(ラスボスの件を噂に過ぎないと結論付けた者)達だ。

 しかしそれによって、以前までは互いに火花を散らしていた攻略組ギルドも、今は協力の姿勢を見せている。争いの原因である迷宮区に入れないのなら、自然と争いも少なくなってくるからだ。

 現在、SAO内では一時の平和と、これから先の方針への不安が一緒くたになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミツヤ君ね、あの階層では私から離れられないの。可愛いよね。一回でも攻撃されちゃったらゲームオーバーだから、私に守ってもらう事しか出来なくて・・・本っ当、可愛いなぁ」

 

 とある階層内の喫茶店。その窓際の席。そこには、うっとりと頬を染めて上機嫌な様子のアスナと、引いた目で。そして引いた姿勢で話を聞くキリトの姿があった。

 今朝チャットで呼び出されたキリトは、また惚気話かと予想して、オーダーではブラックコーヒー(もどき)を頼んだのだが、アスナから語られるミツヤとのエピソードは糖分(シュガー)ではなく何やら聞く人にとって有害な物質(ブラック)だったらしく、キリトは頬杖を付きながらげんなりとしていた。

 

「それでね、それでね?ミツヤ君ったらまだレベルも10かそこらなのに、私を庇ってモンスターから麻痺属性のダメージを受けちゃって・・・。すごく、すっっっっっごく格好良くて、レベル差も考えずに行動しちゃうミツヤ君がたまらなく可愛いかったの。レッドゾーンギリギリまで減った自分のHPバーを見て涙目になって・・・!もう!もう!本当に可愛いの!!」

「・・・それで、その可愛いミツヤ君は一緒じゃないのか」

「うん。ミツヤ君ったら、レベリングしていた迷宮区から帰る途中に、他の女の子見てニヤニヤしてたの。だから、夜に色々と・・・ね」

「後半は聞きたくなかった」

「キリト君、倫理コードの解除の仕方って知ってる?」

「聞きたくない!ミツヤは無事なのか!?」

「うんっ。夜が明けてきた頃は小刻みに痙攣しながら気絶して寝ちゃってたけど」

「う、うわあああああああ!」

 

 実を言うと、キリトは目の前の美少女——アスナの目に余る異常さは以前から気付いていた。少し正確に言えば、初めて出会った二週間後くらいから。

 そう、彼女・・・ミツヤに惚れているのである。

 しかし、運が良いのか悪いのか、ミツヤはアスナの異常さに気付いていないのだ。

 だから、アスナの前でも平気で女性プレイヤーに目移りするし、何なら声だって掛けちゃう。

 その現場に居合わせる度に痛むはずのない胃を痛めるのが、キリトの役割だった。

 これも茅場晶彦の所為なのか・・・。

 キリトが勝手にゲームマスターに怒りをぶつけていると、アスナが突然鬼気迫る表情で立ち上がった。何事かとキリトがアスナを見上げれば、アスナはワナワナと唇を震わせながらこう言った。

 

「ミツヤ君成分が枯渇しちゃった」

「燃費悪っ」

「ちょっと行ってくるね」

「あ、あぁ。行ってこい」

 

 バビュンと。閃光の二つ名に相応しい速度と共に、アスナがキリトの視界から消えた。知らぬ間にキリトの財布に支払い余るくらいのコルが送られていたので、多分もうアスナは帰ってこないのだろう。

 窓の外の景色を見ながら、ブラックコーヒーを一口。それから呟いた。

 

「逝ってこい。ミツヤ」

 

 

 

 

 

 




大塚サンタからのクリスマスプレゼントです。
尚、次話はいつ投稿するかは不明です。良い感じのお話が思い付いたら投稿致します。
その時はまたよろしくお願いしますm(_ _)m
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