さて、現在3歳の私は幼稚園に通わず家で過ごしています
幼稚園に通う通わないの問答は大変でした
両親は何とか幼稚園に通わせようと私を説得していましたが、私はそりゃあもう拒否しました
泣きわめき、暴れて手が付けられなかったと、我がことながら思います
「伊織ー、お昼にしましょう!」
「はーい」
母親に呼ばれ、元気よく返事をし駆けて行く
「今日はテレビでお父さんのお友達が出るから、ご飯食べながら見ましょう」
香織は、その綺麗な表情で甘く微笑むとテレビの前の机に料理を並べていく
「友達?樹くんの?」
「こーら、パパ、でしょ?」
「…う…。お、お友達って誰?」
訂正する様子のない私を見て、溜め息を吐きながらも答えてくれる
「伊織はまだ見たことないかもしれないけれど、世界的にも有名な人なのよ」
そう言いテレビの電源を入れる
番組はどうやらニュースの様だ
ニュースではアナウンサーがどこかへ取材に来ているようだった
「<はーいみなさーん!今、私はどこにいるとおもいますかー?>」
アナウンサーは明るい声でそう問いかける
「彼は世界的大スター、東洋の魔術師とも言われる…」
「<私は今、あの、天才マジシャン!>」
やがて二人の声が被っていく
「「<黒羽盗一!>」」
「<その人の舞台裏に来てまーす!>」
その名前を聞いた私は、血の気が引く様な感覚に苛まれる
「え、く、黒羽…盗一…?」
「えぇ、あれ?伊織見たことあったかしら?」
「う、うん!私黒羽盗一のマジックだーい好き!!」
そんな家族の
「(ここ、名探偵コナンの世界なんだ…!)」
香織はそんな伊織の様子に気づくことなくキッチンにある飲み物を取りに行く
「(今が原作の何年前なのかは分からないけど…)」
思考を巡らせる伊織はグルグルと廻る考えの中で、いくつかの
それはマンションだったり、観覧車だったりと様々だが、共通しているのはその全てで死者が出ていると言う事である
「(今なら…今なら助けられる…)」
ジーッとテレビで微笑む男性から目を逸らさず、伊織はひたすら考える
「(でも、そんなことしてもいいのだろうか…)」
原作とは、作者が考えに考え抜いて作り上げたもの、殺すキャラクターだって、嫌いだからそうしたわけではないだろう
それなのに、その意思を無視してそんな勝手なことをしてもいいものだろうか
しかし、今ここに生きているのは私だ、原作を引き合いに出すのは、それこそここに生きている者達を見ていない証左ではないだろうか
悶々と悩むその伊織に訝しんだ様子で香織は声を掛ける
「伊織?どうしたのそんなに眉を寄せて」
可愛らしい顔が台無しよ?だなんて言いながら眉間をぐりぐりと突かれる
「香織、さん…」
「もう、お母さん、でしょう?」
仕方がない子ねぇ、とでも言いたげな表情で香織は伊織を抱き上げる
香織に抱かれ、伊織はその熱を確かめる様に身を寄せる
「ねぇ、香織さん」
「なぁに?」
「私…生きてる…?」
「?えぇ、生きてるわよ」
唐突な質問にも疑問気な様子は見えるもののしっかり返事を返してくれる
「香織さんも生きてる…」
頷くように、心に刻むように呟く言葉に、香織は首を傾げるもしっかりと伊織を抱える
「どうしたの?伊織」
「ううん」
香織の瞳を見て、その中にある慈しむ色に気づいた伊織は、初めて実感を得た
自分が今ここに生きていること、2人の子供であること、そして自分を、鈴凪伊織を愛する人がいることを
「大好きだよ、
「…伊織?」
娘のおかしな様子に気付きながらも、初めて読んでもらえた呼称に喜びを感じるのも事実で、今はただこの気持ちに浸っていようと、微笑みながら娘を抱きしめる
「私も愛しているわよ、伊織」
そして伊織は母親の胸に抱かれながら、決意する
「(誰に望まれなくてもいい、私の
だから
「(私は彼らを助ける、助けてやるんだから!)」