幻想剣帝録   作:アルクロ

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第四十二話「護る為の歪な玉座」

~時間は剣帝が出て行って少し経った頃まで戻り:羽衣狐の屋敷~

 

八剣「た、大変なのじゃー!!」

 

羽衣狐「何じゃ八剣、騒々しい」

 

八剣「け、剣帝様が居らぬのじゃ!」

 

羽衣狐「それはまことかの?八剣」

 

八剣が騒ぎながらバタバタと屋敷の廊下を走り羽衣狐の部屋に駆け込んで騒いで居た理由を説明すると羽衣狐は驚いた様子で八剣の話が事実か確認して

 

八剣「まことなのじゃ!剣帝様が布団から姿を消し…変わりにこれが有ったのじゃ」

 

羽衣狐「むっ?これは……」

 

八剣が懐から取り出したのは一枚の手紙だった、それには羽衣狐様宛と書かれていた、それを見た羽衣狐は無言のままその手紙を開いた

 

羽衣狐「…………」

 

手紙『拝啓、羽衣狐様

短い間でしたが。余所者である私を家族と、息子と言い、優しくして下さった事、力を分け与えてくださった事、感謝します。

そして、勝手に出て行ってゴメンナサイ、でも、私が一緒に居たらきっと羽衣狐様に迷惑が掛かり、果てにはきっと羽衣狐様が傷付き死んでしまう事があるかと思うと私は悲しくなってしまいました。なので、私は出て行かせて頂きます。最後までワガママばかり言ってゴメンナサイ、そして、有り難う御座いました。母上

貴女を大切に思う息子:妖悪剣帝より』

 

羽衣狐は手紙を読み進めながら涙を流していた

 

羽衣狐「うぅっ……阿呆な息子め…わらわはお主に離れられる事の方が悲しいのじゃぞ」

 

八剣「な、何が書いてあったのじゃ!?」

 

羽衣狐「これは…八剣ようにではない…恐らくじゃが八剣の分も置いてあると…わらわは思う、ので剣帝の部屋を再度探すが良い」

 

八剣「わ、分かったのじゃ!」

 

八剣が羽衣狐宛の手紙を横から見ようとしたら羽衣狐は手紙の文章が書いてある面を自分の肌に当て、八剣を剣帝の部屋に向かわせた、そして、八剣が剣帝の部屋をガサゴソと探してみると、すると、八剣宛の手紙が見つかった、八剣は手紙を見つけると直ぐに読み始めた

 

八剣(何と書いてあるのじゃろうか)

 

手紙「拝啓、八剣ちゃんへ

最初に、いきなり消えてゴメンね?でも、これも君を守る為なんだ、君は将来きっとこの時代や未来の妖怪を引っ張れる娘になる、だからこそ、君は自分の命や自分という存在を大切にするべきだ、そして、その上で俺という無作法者は消えるべきだと判断した。

最初にも言ったけどゴメンね?それと、結婚の申し出嬉しかったよ、八剣ちゃんは未来的にはきっと綺麗な娘になるだろうしね、でもね、俺にはずっと昔から心に決めた娘が居るんだ…だから、ゴメンね?それと、今まで剣帝様って言って慕ってくれて有り難う、二度と会わないと思うけど元気でね

君を守れなかった男、剣帝より」

 

八剣は手紙を握り締めると窓に近づき上空に向かって叫び、天翔を呼んだ、すると、天翔が猛スピードで八剣の前に現れ

 

天翔「一体どうなされたので御座るか?八剣姫様、そんなに泣いた目で」

 

八剣「妾を背に乗せてここの周りを飛び回るのじゃ」

 

天翔「な、何故で御座」

 

八剣「いいから!早うせい!!」

 

天翔が状況を上手く飲み込めず八剣に命令の意味合いを聞こうとすると八剣に怒鳴られ、慌てて八剣を背に乗せ、屋敷から離れて飛び始めた

 

八剣「…………」

 

天翔(何やら込み入った理由がありそうで御座るが…余計に聞くと後が怖いで御座るし…止めておくが吉で御座るな)

 

天翔は八剣を背に乗せながら屋敷周りの森の上を通り抜け森の外をバサバサと飛び始めた

 

天翔「それでー…何故姫様は拙者の背に乗り屋敷の周りを見て回りたいと申されたので御座るか?」

 

八剣「剣帝様が……消えたのじゃ…」

 

天翔「ふむ…ならば拙者も探すのをお手伝い致します。あの方は拙者の使えるに値する御方で御座る故」

 

八剣「スマヌ……頼むのじゃ」

 

天翔「御意で御座る!」

 

天翔は八剣が慌てていた理由などを聞くと剣帝を探す事を手伝おうとし始め、耳を澄ませながら空を飛び回る

 

八剣「そういえば天翔よ」

 

天翔「何で御座るか?姫様」

 

八剣「この辺りで人型の生物や人が生活出来る場所はどこにあるかの?」

 

天翔「この辺となると…屋敷より南方数km先にある人里だけで御座…る」

 

八剣「剣帝様は二度、その里に行った事が有るそうなのじゃ、つまり」

 

天翔「…………振り落とされないよう捕まっていて欲しいで御座る、姫様」

 

天翔は八剣の話を聞くとその人里のある方向へと急速に飛行を始めようとし、八剣が天翔の忠告を聞き天翔の身体にしがみつくと同時に高速で人里に向かって飛び始めた

 

~人里付近:上空~

 

天翔「見えて来たで御座る……アレが……本当に人の里でござるか?」

 

八剣「妾の目には何処からどう見ても普通の里に見えるが、違うのかのぉ?」

 

天翔「あまり近付きたくないで御座るが……」

 

八剣「うっ……何じゃこれは…人から剣が生えておる…まるで剣帝様…の」

 

八剣は何かに気付いたように血眼になって人里の中を見回した、すると、里の中に明らかなまでにおかしな物があった、それは剣で作られた大きな玉座で、その玉座には剣帝が肘を付けて眠りながら座っていた

 

八剣「剣帝様じゃ!剣帝様が居たのじゃ、早う降りる準備をするのじゃ!天翔」

 

天翔「うぇっ?りょ、了解したで御座る」

 

天翔は八剣に命じられて慌てて人里に向かって降下し、天翔が下降し終わり、地面が近くなると八剣は天翔の背から飛び降り、剣帝の近くに走って行った

 

八剣「剣帝様!」

 

剣帝「んん…誰だい?君は…」

 

八剣「剣帝様…妾の事を憶えて居らぬのか?」

 

剣帝「スマナイがさっぱりだ、誰だ?君は」

 

剣帝は冷たい心の無い目で八剣を見つめ八剣の首に剣を這わせていた、すると、八剣は剣帝の行動に泣き始め

 

八剣「う……嘘じゃ!嘘じゃ嘘じゃ嘘じゃあぁぁぁぁ!!!だって…剣帝様は妾を護る為に出て行ったんじゃ…じゃから決して妾を傷つけたりしない筈じゃ!!」

 

剣帝「五月蝿い子供だ……ん?何だ…これ…は…うっ!!」

 

剣帝が八剣の首に剣を振り下ろそうとしていると八剣が屈んだ際に八剣の懐から落ちた手紙を見て過去の記憶がフラッシュバックした

 

剣帝「何で…こんな…記憶…知らない!」

 

無銘「そりゃあそうだ、その記憶はお前が自分の家族を護る為にと言って否定する時には屋敷に置いてきた手紙の片割れなんだからな」

 

剣帝「かぞ…く?知らない!俺には居ない!!」

 

無銘「オイオイ、逃げようとすんなよなぁ、ここを滅ぼした理由も自分の住む場所と自分に言い聞かせてたが、本質は羽衣狐や八剣への敵対者、攻撃者を減らすのとあの娘を守る為の生贄が目的だろうが」

 

剣帝が頭を抱えて座りこんでいると無名が現れて、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら剣帝を見下ろしていた

 

無銘「認めろよ、お前にゃもう人の心は無いかもしれんが、家族は居るんだ」

 

剣帝「か…ぞく…護るべき物…」

 

無銘「やっぱ其処だけは覚えてやがったか、まぁ良いや、取り敢えず八剣ちゃんよ」

 

八剣「な、何じゃ?黒き者よ」

 

無銘は剣帝に言い聞かせた後に八剣の方に振り返り、八剣からの呼ばれ方でコケかけたが、持ち直し

 

無銘「黒き者って…俺には名前が無い、だから、無銘と呼べ」

 

八剣「で、では、何じゃ?無銘とやら」

 

無銘「取り敢えず言っておいてやるが、コイツは屋敷にゃ戻らねぇぞ、こいつには定期的は馬鹿みたいな強さのやつと戦うことになってたりするからな、それに巻き込みたくないって心情が剣帝にはあるから現状、剣帝は屋敷にゃ帰らねぇと思うぜ」

 

八剣「な、ならば…妾も剣帝様と共に居よう!」

 

八剣からの驚きの返答に無名は驚愕を隠せない表情になってしまい

 

無銘「はぁ!?話聞いてたか?」

 

八剣「うむ、聴いて居った、そして、思ったのじゃ、愛する剣帝様がそんな風に危ない目に遭うのならば、妻として妾も共に戦おうと!」

 

無銘「お前、剣帝にフラレたじゃん」

 

八剣「それは今の話じゃ、何時かは剣帝様を振り向かせてみせる!」

 

八剣はまっすぐとキラキラとした綺麗な目で無名を見つめていた

 

無銘「…………ハァ、剣帝がなんて言うかは俺は知らねぇが…居たきゃ居やがれ、俺はもう知らん」

 

八剣「ふむ…ならば天翔よ!急ぎ母上に伝えよ!妾は剣帝様と共にこれからは居続けると」

 

天翔「八剣姫様……その一緒に居るものに一人忘れて居るで御座る」

 

八剣「誰の事じゃ?」

 

天翔「拙者は元より剣帝様に仕えるつもりでござった、だから、拙者も一緒に居るつもりに御座る」

 

ての発言に八剣は驚いた様子だった

 

八剣「じゃ、じゃが、天翔よ、お主はなりたがっておった天魔にようやくなれたのじゃぞ?その位はどうするつもりじゃ?」

 

天翔「殿の為ならば捨てる所存に御座る!」

 

八剣(……あぁ、殿と言っておる時点で決意は硬そうじゃな)

 

八剣「ならば天翔よ、その内容も付け加え急ぎ母上に伝えに行くが良い!」

 

天翔「了解で御座る!!」

 

天翔は八剣に命令されると音速で屋敷に向かって飛び去っていき、十数分後、天翔が戻って来ると八剣が玉座に座っている剣帝の膝に寄り添って眠っていたそうだ




はい、毎度お馴染みの俺です。
今回も最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
それにしても…剣帝はアホですね。
自分が消えれば周りが平和になると信じ、自分の記憶を自己暗示で消してまで家族の元を離れましたよ
まぁ、ある意味それが彼の特色なんですがね。
さて、今回はあの様にシリアス的な展開となりましたが次回はどうなるでしょうかね?
次回をお楽しみに
それでは、また次なる砂の舞う幻想でお会いしましょう
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