……次はもっと短くしたいです。さすがにこのペースでこれは疲れる……最初は3,000字で十分だったのに………どうしてこうなった。
(……ぐぅ!う、うう……)
熱い……
(が、ああ……!)
熱い……
(あ、ああ……!)
熱い…!
(なんで、今更……!)
今、ボイスは悪夢を見ていた。熱で焼かれる夢、自分の全てが奪われたあの夜の日の夢、そして、炎の中に佇む……『仮面ライダー』の夢。
『……………』
(やめ、ろ……)
そのライダーの手が、夢の中の自分に迫る。
(やめろおおおおおおおっ!)
「…………っ!」
……ボイスの目が覚めた時、そこは何時もの場所だった。ガスマスクの男から与えられた基地、ボイスの居場所だ。ボイスは全身に汗をかき、荒く息を吐いていた。
「……………」
『……ようやく悪夢からお目覚めかい?』
そこに現れたのはガスマスクの男、いつも通りのらりくらりとした雰囲気だ。しかし、何時もと違い、その手にはアタッシュケースが握られている。そのアタッシュケースを部屋の中の机、その上に置いたガスマスクの男は、そこからあるものを取り出す。
『さて……君にも、覚悟を決めてもらおうか』
「…………!」
荒い息を吐くボイスに差し出されたそれはーー新しいライダーズディスクであった。
「おつかい……ですか?」
「そう、今は桜ちゃんのスケジュール調整なんかで忙しくてね。ちょっと買い出しに行ってもらいたいの」
特務対策局本部、そこには相変わらずの忙しさがあった。 ディソナンスが学校に現れた事に関しての対応、街中に現れ、目撃された事の情報規制や操作などを終えたところで、新たな上級ディソナンスである『キキカイ』の出現、さらに新たな仮面ライダーである仮面ライダーダンスの対策局への加入などが重なったためだ。
もっとも、ダンスに関してはあまり問題にはなっていない。猛の指示で、彼女がライダーとなる前から準備を進めているからだ。今は彼女のスケジュール調整でごたごたしているが、すぐに解決するだろう。
問題はキキカイの方であった。機械の特性を持つ彼女は、カナサキが学校に現れた日の状況や、今回の戦闘に関しての報告などから、ディソナンスを生み出す能力を持つ事が、ほぼ間違いないからだ。一応、中級クラスまでが彼女が生み出す事のできる限界のようだが、上級クラスを生み出せないという保証はないし、何より中級クラスといえど物量で来られては非常に危険だ。また、明らかに通常のディソナンスと異なる特性を持ったディソナンス、『ノイズ』も彼女が生み出したのではないかところでいう懸念もあった。
そのため、今は貴重なキキカイとの戦闘データなどから、彼女自身の戦闘力やその能力を解析する作業に忙しく、まさに猫の手も借りたい状況となっていた。
先の戦いでは大きな外傷は負っていないとはいえ、乙音の例などから、2度と同じ過ちを繰り返さないように、ハートウェーブの消費をできるだけ抑えられるようにするシステムの開発を進めているのも、忙しさの原因ではあったが。
正直に言って、特務対策局自体はあまり規模の大きくない組織である。そのため、今のような状況、特にライダー達も手が空かないような状況では、買い出しにすら行けなくなってしまう。
そのため、手持ち無沙汰にしていたゼブラに仕事を与えるという目的もあっての、おつかい命令であった。
「……というわけで、このメモに書いてあるものをお願いね、ちょっと量が多いけど、大丈夫?」
「大丈夫です!力には自信があるので!では、行ってきます!」
対策局を飛び出し、街へと向かうゼブラ。その後ろ姿があっという間に見えなくなる。人前では控えるように言っているが、一度ゼブラの本気の速度を計測した時にはマッハ4まで測定可能な特性装置が一瞬で壊れ、ソニックブームで測定場のあらゆるものが吹き飛んでしまったため、最高速度を出すことは禁止されている。正確にはわからないが、おそらく地上で彼女よりも速い物体は存在しないだろう。
ゼブラを見送り、自身の仕事に戻ろうとする職員。だが、ここであることを思い出す。
「……しまった、地図を渡してなかったわ……大丈夫、よね?」
今さら追おうにも速すぎて追うことはできないし、そんな余裕もない。ゼブラが道に迷わない事を願いながら彼女を見送った職員は、自身の業務に急いで戻るのだった……。
「………ここ、どこ?」
無論、まだ生まれてから一週間ほどしか経っていないというのに、道を覚えられるはずもなく。街には出る事が出来たものの、完全に道に迷ってしまっていた。人に道を聞こうにも、元来臆病なゼブラには、そんな余裕はなかった。
「うう……どうしよう」
一度本部に戻った方がいいだろうか?そう思い始めたゼブラ。一応自分が来た方向は分かっているので、戻る事は可能だろう。
「やっぱり、一度戻ろうかな……?」
しかし、思案しながら歩いていたためか、前から歩いて来た、白い髪の少女にぶつかってしまう。少しよろめくだけのゼブラとは違い、相手は派手に尻をついて倒れてしまい、手に持つアタッシュケースも取り落としてしまう。ディソナンスと人間の、フィジカルの差からくるもの……ではなく、単純に相手の筋力や体力が弱いためだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
倒れた相手に手を差し伸べるゼブラ。しかし、相手はゼブラの顔を見ると、驚いたように逃げ出してしまう。
「えっ!」
驚くゼブラだったが、少女がアタッシュケースを忘れていることに気がつくと、すぐさま少女にアタッシュケースを届けるために走り出す。街を熟知しているのか、ゼブラの追跡からしばらくは逃れる少女だったが、やはりゼブラの足の速さからは逃れられず、十分後には捕捉されていた。少女を見つけると、すぐさま肩を掴んで止めるゼブラ。その手を振り払おうとする少女に、ゼブラは慌てて話しかける。
「待って!待って!これ、忘れ物!」
そう言ってアタッシュケースを突き出すと、少女の動きがピタリと止まる。そのまま辺りを見渡し、顔を真っ赤にさせると、ゼブラの差し出したアタッシュケースを、奪うように受け取る。
「……………………」
(しゃ、喋らない……どうしよう)
アタッシュケースを抱えたまま喋らない少女に困惑するゼブラ。すると少女が何かを思い出したように紙とペンを取り出し、何かを書き始める。
少女は紙に何か書き終わると、それをゼブラに見せてくる。そこには「喋れないので、筆談ですみません。荷物ありがとうございます」と書かれていた。思わずえっと声を出してしまうゼブラだったが、周囲の人の注目を集めていることに気づき、少女と共に慌てて場所を移動。親子連れがちらほらと見える公園に移動し、ベンチへと座る。
「あ……いきなり手を引いちゃったけど、大丈夫だった?」
ゼブラの質問にこくん、と頷く少女にホッとするゼブラ。その後、ベンチで休憩するゼブラと少女だったが、今度は少女の方から話題をふって来た。もっとも、紙に書いてではあるが。「あなたは大丈夫だった?用事とかなかった?」との事だ。
「あ、うん……おつかいを頼まれてはいるけど、大丈夫だよ。……道もわからないから、まずは戻ろうかなって思ってる」
ゼブラの言葉に、「メモか何かない?」と返す少女。ゼブラは職員から渡されたメモを少女に手渡すと、少女はそのメモを見つつ、紙に地図を書いていく。ゼブラにメモを返すとともに、その紙も手渡す。紙にはわかりやすく地図が書かれていて、メモにあるものをどこで買えばいいかも書かれている。
「え、これ……いいの⁉︎」
少女はこくりと頷く。どうやらゼブラに失礼な事をしてしまったお詫びと、アタッシュケースを届けてくれた事に対してのお礼も兼ねているようだ。すぐに地図に書かれた場所へ向かおうとするゼブラだったが、少女の体の事を思い出し、心配する。
「……ありがとう。あ、……一人で大丈夫?誰かと待ち合わせしているとかなら、僕も一緒に……」
ゼブラのその言葉に、少女は首を振る。どうやら、一人でも大丈夫なようだ。
少し躊躇するゼブラだったが、少女に促された事もあり、少女と別れて先を急ぐ事にしたようだ。ベンチから立ち上がって、公園を出ようとしたその時。
「……!これ!」
その時、黒いもやのようなものが公園に集まっていた。そのもやに何か悪いものを感じて、少女を庇えるような位置につくゼブラ。
もやは公園の中心点に集まると、一つの形をとっていく。ゼブラはその姿に見覚えがあった。
「ノイズ……⁉︎」
それはかつてバラクに重傷を負わされ、それ以来姿を消していた謎のディソナンス……ノイズであった。以前よりもさらに禍々しさを増したその外見は、並の精神力の持ち主では、恐ろしさに動けなくなってしまうだろう。現に、同じディソナンスであるゼブラですら、ノイズが纏うあまりに不吉な雰囲気に、震えを感じていた。
『………………』
ノイズはゆっくりと周囲を見渡すと、ゼブラの方へと歩いてくる。すぐさま動こうとするゼブラだったが、怯えて足が動かない。
「………っ!」
動けないゼブラの目の前まで近づいて来たノイズだったが、そのままゼブラの横を通ると、少女の方へと歩いて行く。少女の目の前で立ち止まると、ノイズはゆっくりと腕を振り上げーー
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ーーその腕が振り下ろされる前に、ゼブラのタックルによって止められる。
「逃げてっ!」
そう叫ぶと、ノイズを抑えようと必死になるゼブラ。しかし、足が速くとも力は下級程度のゼブラに更に進化したノイズを押さえつけられるはずもなく、ノイズの体から伸びてきた棘に左肩を刺され、怯んだ隙を突かれて吹き飛ばされてしまう。公園内の人々は、当初何が起こったのか理解できずに動けていなかったが、その光景を見て誰かが悲鳴をあげると同時に逃げ出してゆく。
『……邪魔するなよ。せっかく、凄いハートウェーブを食えるのに……』
ゼブラを吹き飛ばしたノイズは少女のハートウェーブを食らうべく迫る。逃げようとする少女だったが、足を絡めて転んでしまう。転んだ勢いで吹き飛んだアタッシュケースを拾おうとする少女だったが、ノイズの伸ばした棘に目の前を塞がれてしまう。
『………フフフフ、これで僕は、もっと強く……』
そのまま棘て少女を拘束し、持ち上げるノイズ。ノイズの顔がぐらりと歪んだかと思うと、そこから無数の触手が湧き出て、少女の体に巻きついてゆく。
「……………!!!」
足掻き、逃げ出そうとする少女だったが、ノイズの剛力に敵うはずもなく、なすすべなく食われてしまうかと思われたが……
「このおおおおっ!」
『何⁉︎』
超スピードで駆けてきたゼブラ渾身のタックルによって、その拘束は解かれた。少女は地面に着地すると、すぐさまアタッシュケースを掴む。
「僕もそうは持たない!だから早く!」
ゼブラが叫ぶ。しかし少女はその場でアタッシュケースを開け始めた。
「何を……っ!?」
『このっ!邪魔するなよ!』
その行動に気を取られたゼブラは、ノイズの一撃を食らってしまう。左腕を折られ、少女の足元まで飛ばされるゼブラ。
「ぐ……に、げ……⁉︎」
それでも少女に逃走を促すゼブラは、アタッシュケースの中に信じられないものを見る。それは、レコードライバーと……ライダーズディスクだ。
(なんで、これが……!?)
少女はレコードライバーを装着すると、ライダーズディスクをドライバーにセット。そのまま、変身シーケンスを終える。
(僕が知ってるライダー…?真司さん達以外に……まさか⁉︎)
少女の目の前に光の輪が出現する。それは少女へと向かっていたノイズを吹き飛ばし、少女の体を通過して行く。
そして、光の輪が通過した後にはーー
『……変……身』
仮面ライダーボイス……彼女が立っていた。
ゼブラと同程度であった身長は乙音と同程度まで伸び、その手にはメガホン型の銃が握られている。
『テメェ、ノイズったか?……ぶっ倒す』
その銃をノイズに向けると、苛烈な銃撃を加える。体制を整えてなかったノイズはその銃撃をまともに喰らってしまう。
「ボイス、さん……あなたは……!」
『……事情は後だ、お前はそこで寝そべってな!』
そのままノイズへと突撃するボイス。銃撃を放ちながら接近し、ノイズに厄介な棘を出させないようにする。しかし、ノイズの右腕が変形していき、まるで銃のような形状へと変化する。そして、その腕からまるでガトリングよようにエネルギー弾を連射するノイズ。まともには喰らわなかったものの、防戦一方となるボイス。
『ちっ!なんもかも御構い無しかよ!』
『あははっ!ほらほら逃げてると……』
いまだ公園内に残っていた母娘に腕の照準を合わせるノイズ。子供が震えて動けなくなってしまっていたようだ。思わず娘をかばう母親。
『くそがっ!』
親子の前に出てかばうボイス。躊躇なく発射されたエネルギー弾が、その体躯を撃ち抜く。
『あはははははははははははははは!』
『ぎ………』
ボイスの後ろにいる親子は逃げ出そうとするが、ノイズの体躯から伸びる棘に阻まれ、その場を動くことができない。
『くそっ……奴らは、まだかよ!』
真司達の到着を待って耐えるボイスだったが、ここでノイズから絶望的な情報が送られる。
『無駄だよ〜なにせ、カナサキが足止めに向かってるからさぁ……僕に好きにやっていいって、そう言ったんだよ!』
『何……⁉︎』
あははと笑い、ボイスの背後に棘の檻を作るノイズ。その檻はゆっくりとボイス、そしてその背後の親子に迫り来る。
『何をするつもりだ!テメェ!』
『何って、楽しいことだよ!棘の檻をどんどん縮めて行って、お前の体と棘の檻で、その親子をぐちゃあって潰してやるんだ!お前は動けないし、倒れちゃったらそのまま蜂の巣!あははははは!楽しいねぇ〜!』
『てめえええええええっ!』
ゆっくりと、しかし確実に狭まってくる棘の檻、それをなんとかしようと、駆け出そうとするゼブラだったが、背後から伸びてきた手に止められる。
「っ!誰だ!」
『フフフ……誰だろうね?』
振り向いたゼブラの目の前にあったのは、ガスマスクだった。ぎょっとするゼブラだったが、その隙を突かれて完全に捕まえられる。
「なんで……!」
『フフフ、まずは自己紹介からか。僕は謎の博士。まあボイスの協力者って所かな』
唐突な自己紹介に一瞬呆けるゼブラだったが、またすぐに拘束から逃れようとする。しかし見た目以上に力強く、ディソナンスの力でも振りほどけない。
『まあ焦らない方がいいよ。彼女には秘策を渡してある……後は彼女次第だ。あと君には何もできないよ』
ガスマスクの男の言葉に黙り込んでしまうゼブラ。先ほども自分ではなんとかすることなどできないと、そう自覚していたのに体が勝手に動いてしまっていたのだ。
(僕にも、力があれば……)
目の前で起こりかけている惨劇を止められない事実に歯噛みするゼブラ。ガスマスクの男はそんなゼブラに怪しい視線を向けている。
ガスマスクの男がゼブラを止めている一方で、ボイスはエネルギー弾を受け止めつつも、その手にあるものを握っていた。新型のディスクだ。
『こいつの力さえありゃあ、なんとかできるかも……だが、オレにできるのか?それを……』
ボイスが思い出すのはガスマスクの男から伝えられた、新型ディスクの起動条件だった。
(死をも超える覚悟を決めた時、起動できるーー)
ちらり、と後ろの親子を見る。迫り来る棘の檻に怯える親子だったが、しかしお互いがお互いを守ろうとしている。自らの死に怯えつつも、他者のために覚悟を決める。人間の美しさがそこにあった。
「あ、あの!」
親子の、母親の方がボイスに語りかけてくる。
「わ、私は助からないと、そう思います……でも、せめてこの子は……この子だけは……」
怯えきり、涙を流す母親。しかし、ボイスに対してのその願いの声は、しっかりと届いていた。ノイズにまでも。
『何言ってんの?そんなの許すわけないじゃん……』
イラついたように喋ると、棘の檻の速度を速めるノイズ。娘は母親を守ろうとするが、そんなものは無意味だろう。
『ここで死ぬんだよ!あんたらはさ〜!でもこのまま潰すってのも芸がないし、抉るか焼くかしてやろっかなぁ』
何の気なしに話すノイズだったが、その発言がボイスの逆鱗に触れた。
『おい、てめぇ……今何つった?』
『え?何?君も焼き殺されたいの?』
『焼き、殺す……だと?』
お父さん!お母さん!
『そう、ジュージューに焼いてあげるよ?』
熱い!熱いよぉ!
『やってみろよ……』
『え?』
ぜひ、ぜひ……おかあ、さん……おとう、さん……
『オレの前で親子を焼き殺そうだと……!』
ぜひ、ぜひ、ぜ、ひ……
『やってみろよぉ!』
ノイズのエネルギー弾すら意に介さず新型ディスクをドライバーに挿入すると、『変身!』と叫ぶボイス。圧倒的なエネルギーが、棘の檻を、ノイズを吹き飛ばす。しかし、親子は無事だ。
『その瞬間、お前の体をぶち抜いてやる……!』
ボイス、その新たな変身。その姿はまるで荒々しい鬼のような角を持ち、ソングの意匠に通じるものがある。
「あの姿は……!」
『あれが秘策さ……どうやらうまくいったようだ』
驚くゼブラと予想通りといったようなガスマスクの男を尻目に、ノイズに向かって駆け出すボイス。ノイズは棘と触手を伸ばして迎撃しようとするが、全てボイスに撃ち落とされる。
『てめぇだけは!許さねぇ!』
ボイスの歌が、流れ出す。『Heart Voice』、その歌は、ボイスの心を表した歌だ。
《 百発百中、オレの弾は、敵を撃ち抜く…… 》
『オラオラオラ!』
『ぎぎっ……!な、なんてパワー!』
《 だけど必ず誰かを守れるってワケじゃない… 》
ボイスはノイズに向かって弾を撃ち込み続ける。ボイスのあらゆる感情が詰まったその弾はノイズの体をたやすく撃ち砕く。
《 鋼の鎧に身を包んだって、心まで鋼に包めるワケじゃないって?そんなのわかってる…… 》
『グギィ……なら!』
ノイズは一瞬の隙を突いて、逃げ出していた親子の、娘の方を人質にとる。
《 仮面の裏で涙を、流すことさえ許されない 》
「響っ!」
母親が娘の名前を悲痛な表情で叫ぶ。
『どうだ!これで攻撃できないでしょ!』
「お姉ちゃん!わたしはいいから!」
《 そんな理不尽に身を置くってんなら……》
響と呼ばれた娘が叫ぶ。自身ごと、ノイズを攻撃しろと。その怯えた表情を見て、ボイスは覚悟を決める。ノイズに向けて銃を構える。
『動くなよ』
《 新しい力があるんなら使わなきゃ…… 》
『ま、まさか撃つの?』
「お姉ちゃん!」
《 もったいねえ! 》
ギュンと放たれた弾は見当違いの方向に飛ぶ。それを見てあざ笑おうとしたノイズは、直後に背後から穿たれた自身の腹を見て絶叫する。ボイスの弾丸操作能力によるものだ。
《 絶望の先に、至る未来に、道がないのなら 》
「お姉ちゃん!お母さん!」
《 力づくでも作り出すさその先に! 》
「響!響ぃ!」
《 たとえ、灼熱。それが待とうとも、決してそう…もう、恐れられない 》
解放された少女が、母親へと駆け寄る。今度こそ逃げる事ができた親子を背に、ノイズを滅すべく、ボイスは駆ける。
『うおおおおおりゃあああああ!』
《 Ah…今は、オレの心を弾と変えたなら 》
《 最期の時まで放ち続けろ…… 》
『ぐううううっ!』
すぐさまゼブラ達の方へ触手を伸ばすノイズだったが、それを全てボイスが掴むと、引きちぎる。歌は二番へ、戦いはさらに加熱したステージへと移行していく。
《 あいつのソングでオレの心が揺らめく…… 》
《 そんな躊躇を抱いてる場合じゃないのに…… 》
ノイズの触手を引きちぎると、密着状態で弾を撃ち込み続けるボイス。しかしノイズは全身から棘を出してボイスを引き剥がすと、その身にバリアを纏い始める。
『何……!』
《 ひりつくような痛みを感じている……心が迷えば、未来はないと、わかってる…… 》
『ぼ、僕は進化するディソナンスなんだ……!バリアぐらい!展開してみせる!』
ノイズが展開したバリアに苦戦するボイス。至近距離の弾丸ならば貫けるかと思い、接近するが、冷静さを取り戻したノイズの反撃に、近づく事ができない。
《 仮面の裏で流す涙、それを全部歌に、変える事ができるんなら…… 》
『ほらほらほら!さっきまでの威勢はどうしたぁ!?』
《 たとえそれが血涙だとしても……もう止まれない! 》
『ぐう、がぁ……!』
獣のような咆哮をあげてボイスに迫り来るノイズ、その体はバキバキと音を立てて、禍々しき怪物のように変化していた。
《 絶望の先に、至る未来に、希望がないというのなら 》
『キシャアアアアッ!』
《 力づくでも作り出してその先に! 》
『負けるかよっ!』
《 何もない、荒野、それが待つのなら 》
《 いくらでも、そう……この身焦がして…… 》
歌が間奏に入るとともにその身体を大きく変化させるノイズ。辛うじて人型の体裁を保っていたこれまでとは異なり、明らかに人を殺すことに特化した怪物、四肢で立つ、どす黒い獣の姿へと変化した。
『お前の悲しみ……感じるぞ、それが俺を一段階上へと押し上げた!』
一人称まで変化し、圧倒的戦闘能力を得た相手に、しかしボイスは怯まない。
『こいよ犬っころ!どちらが上か、躾けてやるぜ』
飛びかかるノイズと、それに応戦するボイス。その戦いを見るガスマスクの男とゼブラ。ガスマスクの男は、ボイスの戦いを見守るゼブラに対して、話しかける。
『ゼブラくん、なぜ彼女が喋れないか知ってるかい?』
「……いえ………」
『彼女はね、焼かれたんだよ、その体を。まだ幼い時期にね。だから乙音くんと同い年なのに身長も君と同程度だし、耐久力も常人より弱い。喉は補助装置付きでなきゃ声を出せず、補助装置付きでも、痛みを感じるだろう。そこまでして彼女が戦う理由がわかるかい?』
「……わからないです」
『復讐だよ、彼女の声と、両親……全てを奪った相手に対しての。そして僕もそれを望んでいる。だから彼女を戦えるまでに治し、鍛えたのさ。この僕がね』
「あなたが……?」
『そうさ、乙音くん、今大変なんだろう?僕はあの子の治し方を知っているんだが、聞くかい?条件つきだが』
「………………!」
男がゼブラに交渉を仕掛けたところで、ボイスの歌が再開する。バリアと身のこなしに翻弄されながらも、ボイスは突破口を見出していた。
《 戻らない、時に瞳を濡らして、心、傷ついた日を…… 》
(……やるしかねぇ!至近距離でアレを!)
《 振り切り、先に進むために……奪い、返す……あの日々、あの声を……! 》
『voltage climax!!!』
必殺技発動の準備をすると、ノイズに向かって駆け出すボイス。ノイズは全身から棘を出して迎撃する。
『うおおおおおおおおおおっ!』
《 希望の先に、至る未来に、オレがいなくても 》
『馬鹿め!わざわざ突っ込んでくるとは!』
《 立ち止まる事なんて、裏切りはそうさできないから! 》
(もっとだ!もっと引きつけろ!)
《 どこまでも、広がる、絶望の夜を 》
『これで終わりだ!』
《 声を荒げ、そう……撃ち抜いてゆく 》
ノイズの棘に仮面を砕かれるボイス。しかしボイスはギリギリで棘をそらし、その背部へと、銃口に溜まったエネルギーを叩きつける。
《 Ah……今は、オレの心を弾に変えたなら 》
『終わるのはテメェだああああっ!』
《 最期の時まで、放ち続ける 》
『 rider ultimate cannon!!!』
《 嵐の中でも、叫び続ける 》
『うわあああああああああ!ガアアアアアアアア!』
《 たとえこの声が、枯れたとしても…… 》
至近距離で放たれたエネルギーの奔流はノイズの身体を貫き、四散させる。
『グギィ、ィィィ……』
しかし完全に滅することはできず、霧となって逃げてしまう。
『……アレでダメか。ま、よしと、する、か……』
死闘の末、勝利を収めたボイスだったが、その呟きを最後に倒れてしまう。駆け寄り、その身体を支えるゼブラ。ガスマスクの男はガスマスクの下でニヤリと笑うと、ゼブラに語りかける。
『協力感謝するよ、ゼブラくん。さすがに今の状態で変身を解かせる訳にはいかないからね。君には乙音くんの治療法を教える代わりに、ボイスを基地まで運んでもらおう』
そう言うと、『ついてきて』と促して歩き出すガスマスクの男。ゼブラはその後について行く。
(乙音お姉ちゃん……待ってて!)
そして、ゼブラも決断を迫られることになる。守るための決断を……
『くそくそくそくそくそくくそ!なんで、なんで、この、俺が……』
『どうやら、悲しみの感情を覚えたうえ、怒りまで覚えかけているな。だが、それはまだ早い』
『!あ、あんたは……』
『私はカナサキ。ノイズ、君には喜びの感情を与えてあげよう……その悲しみを完璧なものとした後に』
Q.ボイスって今の身体状況はどうなってんの?
A.補助装置なしで日常生活を送れる程度には回復していますが、全身に火傷とその治療痕が残っており、喉は完全に焼き尽くされていたため、補助装置ありでも叫ぶと激痛が走ります。ライダー状態でもかなり痛いみたいですが、本人は完全に慣れたのか気にしてません。
Q.ファングとツルギの強化いつ?活躍マダー?
A.乙音復活前にやりたいけど、次の次の話で纏めてになりそう……多分。予定は未定よー。
展開は最初決めてある部分以外は割と適当です。あとD.Sスタイル関連に関しては、隠し玉があります。あ、今回出たボイスの新フォームの名前は『ブラスタースタイル』となっております。ファイズの歩くクリムゾンスマッシュが元ネタです。ボイスのイメージカラーも赤なのでね。
ちなみに他ライダーのイメージカラーはソング…白、ファング…茶、ツルギ…青、ダンス…ピンクとなっております。ファングが黄色なら、ものすごく戦隊ヒーローっぽい色の組み合わせ……色的にデカレンかな?