仮面ライダーソング   作:天地優介

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新キャラ登場。グリスかっこいいですね。私好みだ。


コンダクター・コンタクト

「ビートライダーシステムの強化ーーですか?」

 

「ウム、現時点の戦力では、ディソナンスに襲撃されれば流石にまずいからのう。真司君に渡したディスクセッターのデータも取れたことじゃし、そろそろ取りかかろうかと思っての」

 

アメリカ、ワシントンD.C.ーーディスクセッターとの無茶な運用でレコードライバーが故障した乙音は、ここの地下研究所で、ビートライダーシステムの開発に関わっていた。

もっとも、関わっているといってもライダーとしての戦闘経験を活かしてのデータ収集が主であり、彼女自身がビートライダーシステムの理論的な部分に関わっているわけでもない。

つまりーー

「ーーということは、またビートに?いつからですか?」

 

「ウム、今日の1時からじゃ、予定は……」

 

「ないですよ、それじゃあ、ランニングに行ってきます」

 

ーーここ最近の乙音は、毎日のようにディスクセッターを使って、仮面ライダービートへと変身していた。

日課であるランニングは毎日欠かさず行っているが、それ以外ではあまり研究所の外に出る事もなく、日々を過ごしていた。

もっとも、乙音自身はそれを苦に思ってはいないのだがーー

 

「先輩達……大丈夫かな。ディスクセッターは渡したけど、それ以降音沙汰がないし…」

 

ーー乙音の心中は、日本にいる真司達の事いっぱいだった。真司とはつい先日再開したが、他の仲間達とは、ずっと会っていない。

 

「ビートライダーシステムの事、私のレコードライバーの事……ひと段落したら、会いに行きたいけどなぁ……」

 

そう乙音が思案していると、考え事をしながら走っていたせいだろうか、人とぶつかってしまう。

 

「わっ!?」

 

「うおっ」

 

急な衝撃に驚き、転ぶ乙音。すぐに人にぶつかったのだと理解すると、慌てて立ち上がり、ぶつかった相手に謝ろうとする。

 

「あ、す、すみませーー」

 

「いや、いいよ。それよりも…怪我はないかい?レディー?」

 

立ち上がろうとした乙音に手を伸ばしてきたのは、さっき乙音がぶつかった男性だった。見ればその服には汚れ一つついていない。どうやら、ぶつかって転んだのは乙音だけらしい。男は乙音の手を掴み立ち上がらせると、すっと乙音に顔を近づける。茶色い髪に、黒目。日本人か、あるいはハーフか日系人か、顔の整った、いわゆるイケメンである男は、優しい口調で、困惑する乙音に語りかける。

 

「いや、ええと…」

 

「ああ、ぶつかった事なら気にしなくていい。それよりもレディー、お茶でも一緒にどうだい?」

 

「え、あー……遠慮しておきます。この後用事があるので……すみません」

 

乙音が男の誘いを断ると、男は天を仰ぎ、大仰なリアクションで落胆する。しかしすぐに顔を上げる。男の動きに困惑する乙音に、男はにっこりと笑いかける。

 

「用事があるなら仕方ない。それでは美しいレディー、また会いましょう」

 

そう言うと、男はすぐにその場を立ち去ってしまう。終始困惑しっぱなしの乙音だったが、このままここにいても仕方ないと、すぐにランニングを再開した。

その後、研究所に戻った乙音は、ビートへの変身とシュミレーションによるデータ採取を行った、そして、そんな日が何日か続いた後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビートの強化アイテムが、完成したんですか!?」

 

「はい、乙音さんの協力と、アメリカ政府からの後押しもありまして、現在調整中です」

 

乙音がワシントンの研究所に来てから1週間と少し経った頃、いつも通りランニングから帰ってきた乙音は、待ち構えていたロイドから、ビートシステムの強化アイテムが完成した事を聞かされた。アイテムの名は……

 

「コンダクトドライバー……と、言います。今日の午後は、それの最終調整用のデータ採取になるかと」

 

「コンダクト……指揮者、ですか」

 

「ええ、現在志願者を募っているビート部隊……強化アイテムは、その指揮官が使う事を想定していますから」

 

その言葉を聞いて、乙音は少し焦る。もしかすれば、自分がそのビート部隊とやらの指揮官をすることになるのではないかと。

だが、その考えはあっさりロイドが否定する。

 

「……乙音さんのレコードライバーは今修理中です。天城音成が作ったもの故、まだ解析には時間がかかりそうですが…コンダクトドライバーは、他の人が使用する予定ですよ」

 

ロイドの言葉を聞いて、乙音は胸を撫で下ろす。人を率いることに、あまり向いていないと自覚があったからだ。実際、乙音は性格的にも能力的にも切り込み役として運用した方がいい人物である。そもそも乙音達ソングライダーズの中でそういうリーダーの資質があるのは、真司くらいのものだろう。

しかし、ここで乙音の内にある疑問が生じた。それは、誰がコンダクトドライバーを扱うのかということと、午後のデータ採取に自分は参加するのかどうかという疑問も。

 

「あの、どんな人がコンダクトドライバーを?というか、私は午後のデータ採取に…」

 

「乙音さんには、一応何らかの問題が発生した時のために、データ採取の時はディスクセッターを用意した状態で待機しておいてもらいます。午後のデータ採取は、コンダクトドライバーの正式装着者にやってもらう予定ですよ。名前は……」

 

 

「四季・ブラウン。シキと呼んでくれ」

 

 

背後からの声に、驚き、振り返る乙音。目の前にいたのは、いつぞや出会ったあの男。ランニング中にぶつかってしまった、いきなり乙音を口説いてきた、あの男だった。

 

「あ、あなたは……!」

 

「また会いましたね、美しいレディー。あなたのような人と再会できたうえ、私のことを覚えていられるとは!この四季・ブラウン、光栄のーー」

 

「えーと、誰でしたっけ?」

 

乙音の発言に、すっ転びそうになるシキとロイド。当の乙音は、なぜ男2人がすっ転びそうになっているかも理解できず、ぽかんとした表情を浮かべている。具体的に言うと、「なんですっ転びそうになってるんだろう?そんな事より、お昼はどうしようかなーー」などと考えているような顔。

 

「ま、まあ。覚えてないなら覚えてないで、これからあなたに覚えてもらうよう、努力しましょう、美しいレディー。いえ、木村乙音さん」

 

「あ、乙音で良いですよ。こんな時だからこそ、気楽にいきましょう、気楽に」

 

乙音の様子に苦笑いを浮かべつつも、すぐに身を整え、乙音に話を振るシキと、そのシキの事を若干面白くなさそうに見据えるロイド。男2人の修羅場発生ーーとはならず、シキの方から、話題を変えてくる。

 

「そう言うなら、これからは乙音さんと呼ばせてもらいましょうーーしかし、先程は話を遮ってしまってすみませんでした。なにせ、私の話題をしている場面に遭遇したもので。そういうの、気になるタイプなのですよ」

 

「へー、そうなんですねー……って、ということは、もしかしてコンダクトドライバーの装着者って……」

 

「そう、私、四季・ブラウンなのです!いやはや、あの時道端でぶつかったあなたが、あの有名な仮面ライダーだったとは!これも、運命。どうです、今度一緒にお茶でもーー」

 

乙音にずずいと詰め寄りながらヒートアップするシキを、ロイドが乙音との間に入ることで止める。その表情は、若干呆れているような表情だった。

 

「はいはい、そこまでーー全く、変わらないな、君は」

 

「そういうお前こそ、堅物なのは変わらないなーーモテないぞ?」

 

「うるさいよ。乙音さん、こんなやつだけど、悪いやつではないんだ。これから一緒に戦う仲間だし……まあ、よろしくしてやってくれませんか?」

 

「そうです!これからも末永くよろしくお願いしたいものでーー」

 

「はい、予定が詰まってんだからそこまでにしようか。それでは乙音さん、また後で」

 

シキの不穏な発言を遮り、ロイドがシキの身体を引きずってでもその場を立ち去ろうとする。シキはそれでも乙音を口説こうとするが、ロイドに「廊下で寝たいなら、好きにしたらどうだい?」と言われ、流石に大人しくなり、彼にしぶしぶといった様子でついていった。

乙音はその様子をポカンと見ていたが、すぐに食堂へとその足と思考を向けるーー食欲は人間の三大欲求の一つ、ちょっとした出来事など、すぐにどうでもよくなるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レディー……乙音さん、また会いましたね。これから初変身!不安で胸が張り裂けそうですが、この四季・ブラウン、あなたのために張り切らせていただきます。しかし勇気が足りない。なので、まずは勇気のキスをーー「はい、そこまで。時間がないんだから、さっさと変身する」ーーロイド、だからお前はモテないんだ」

 

いつものように乙音が実験室に到着すると、いつものようにシキが口説いてくる。そして、ロイドがいつものようにシキの暴走を止める。この日出会ったばかりのシキと乙音だったが、既に乙音の中では、シキが口説いてくるのはいつもの事のように処理されていた。つまり、シキは全く乙音に相手にされていないのである。乙音自身は無自覚だが、これを意図的にやっているとしたら、今頃シキは盛大に凹み、コンダクトドライバーの実験どころではないだろう。

その後も乙音にちょくちょく話しかけていたシキだったが、コンダクトドライバーの準備ができた頃には、既に戦士の顔となって待機していた。さすがにおお、と反応する乙音だったが、シキは単純に乙音にカッコつけたいからこうしているのである。

 

「さて、それじゃ……」

 

しかし、カッコよくコンダクトドライバーを装着しようとした矢先、研究所の警報が鳴る。

一瞬騒つくが、すぐに侵入者が現れたのか、それとも研究所のすぐ近くーー例えば、真上などにディソナンスが現れたのか、それを確認するべく研究員達が動く。

 

「ーー研究所の、すぐ近くに三体のディソナンス反応あり!どうやら、ここを探しているようです」

 

「ううむ……地下鉄で遭遇した、あのディソナンス…生きておったか、それとも何か仕込みでもあったか……ともかく、ワシントンに研究所があるとあたりをつけて、攻め込んできおったか!」

 

「父さん、ここは……」

 

「うむ、いきなりの実践じゃが……行ってくれるな?シキ君」

 

コンダクトドライバーを持ったままのシキに、ショット博士が問いかける。今すぐに戦えるか、その力でと。

 

「待ってください、シキさんはーー」

 

シキが言葉を発する前に、乙音が立つ。今乙音はビートにしか変身できないが、ぶっつけ本番で三体のディソナンスをいきなり相手にするのは厳しい、ならば、自分が時間を稼いでーーそう、思ったのだろう。

しかし、乙音が基本止まらない女性であるように、シキも似たようなタチである。

 

「いえ、レディー……乙音さん、私が行きましょう。なに、すぐに片付けてきますよ」

 

そう言うシキを、乙音は厳しい表情で見据える。乙音の視線に、シキは何も言わない。ただ、油断も驕りもなく、視線を返すだけだ。

 

「……わかりました、私も無茶はまだできませんし……ですが、危なくなったらすぐに飛び出しますからね」

 

「肝に命じておきましょう、乙音さん。貴女が傷つかないように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本当に、ここに奴等の研究所があるのか……?』

 

『さあな。だが、これで尻尾を掴めれば、音成様により強く改造を施してもらえる』

 

『そうなれば、オレ達もより上に…7大愛にまで……』

 

『……待て、どうやら客人のようだ』

 

ディソナンス達が、軽い会話を交わしながら人々を蹂躙する。そんな場面に、単身現れる男が1人ーーもちろん、シキである。

 

「……おー、好き勝手やってくれちゃって、まあ」

 

『不満か?人間。弱き種族が……』

 

『そうだ、音成様のように人を超えたならばともかくとして、お前達のように弱い奴等が、オレ達に逆らっていいと……』

 

二体のディソナンスーー百足型と蝶型が驕る。しかしそれも当然の事、ライダー相手ならばともかく、ただの人間に、ディソナンスが遅れをとるはずがない。いかに強くとも、いかに鍛えていようとも、人間である限り、その身のみでは限界があるーーそして、ディソナンスとはこの世界の法則(ルール)を無視した不協和音、世界の法則を気取る人間にとって、ディソナンスとは天敵に等しい存在である。

だがーー

 

『……!油断するな、2人とも。奴はーー』

 

「ほう、そこのクモ型……目敏い奴がいるじゃねえか」

 

ーーここに立ち、三体のディソナンスに相対するシキ、彼もまた、ディソナンスの天敵である「仮面ライダー」なのだ。

 

「変身……!」

 

コートを翻し、隠し持っていたディスクセッターを左腕に装着。コンダクトドライバーのスイッチを自身から見て右から順に押す。そして、ディスクセッターのレバーを引き、左腕をディソナンス達に向けて、静かに叫ぶ、変身、と。

 

 

ーー三体のディソナンスが身構えると同時、シキは光の輪に包まれながら、突き出した左手をクイ、と曲げて、挑発する。

 

「ーーこいよ、虫ども」

 

『行くぞ、虫けらっ!!』

 

ーー変身が完了する。その瞬間、三体のディソナンスがすぐさま攻撃を仕掛ける。

百足型は自身の耐久力の高さを活かして、他のディソナンスを守るように、蝶型は分身、その分身のそれぞれが、空中からシキに襲いかかる。そしてクモ型は、6本の腕に刃を形成、6刀の刀でシキを切り裂かんとする。

 

「……まずは!」

 

シキはまず、蝶型とその分身に対して、ディスクセッターからエネルギー弾を連射する。蝶型は特殊なバリヤーのようなものでそれを防ぐが、それを見たシキは、エルブレイシューターを投擲、斧と銃が一体となったこの武器は、見事に蝶型の本体に突き刺さる。

 

『な、なぜ私がーー』

 

「バーカ、本体必死になって守り過ぎたんだよ、お前は」

 

バリヤーの展開速度、及びその強度で早々に蝶型の本体を発見したシキは、動きの遅い百足型を踏み台に空中に飛び上がり、蝶型に突き刺さったエルブレイシューターを強引に引き抜き、蝶型を地面に叩き落とす。そして、エルブレイシューターをコンダクトドライバーに接続し、ドライバーのボタンを押して、空中で必殺技を発動する。

 

「まずは一匹……!」

 

『over beat Axe!!』

 

地に叩き落とされた蝶型に、着地と同時に必殺技を叩き込む。その威力に蝶型は断末魔もあげれず、爆散する。

 

『シャアアアアアアアアアアアッ!』

 

『ぬぅ……!』

 

「仲間」をやられたディソナンス二体が怒る。百足型は更に執拗になり、蜘蛛型の攻撃は加速する。ーーしかし、やられた「仲間」、同胞の数ならばーー確かに人間の方が勝っているのだ。そして、死んでいく者の思いを受け取る覚悟も、精神も、そこはディソナンスが人間に唯一敵わないところでありーー

 

「怒っているのか?ーー俺もだよ、この外道どもが」

 

ーー人間が、最も頼みとするところでもある。

 

『over beat Disk!!』

 

ディスクセッターより放たれた光の輪が、蜘蛛型ディソナンスを縛り付ける。強固な精神の元に放たれたそれは、7大愛でもない、ただのディソナンスに破れるものではないだろう。

そして、動きの速い蜘蛛型を縫い止めたという事はーー

 

『ガアアアアアッ!?』

 

「遅いよお前、必殺技を悠長に使えるぐらいにはっ!」

 

『over beat Punch!!!』

 

百足型の身体が、必殺技によるパンチ、それによるクロスカウンターを受けて爆散する。それと同時に、蜘蛛型も拘束を解き、一心不乱にシキを切り裂こうとする。

 

『貴様ーー!!』

 

だが、シキはそれも()()()()だーー既に蜘蛛型を仕留める為の道筋は立っている。

 

「ーー決める」

 

『オオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

蜘蛛型の、6刀による斬撃を間一髪で避ける、そしてその時、シキの手からエルブレイシューターが溢れ落ちる。ーー強大なエネルギーによって、バチバチと音をたてている足の前に。

 

『over beat kick!!!』

 

「喰らいやがれ!!!」

 

『ぬぅオオオオオオオオオオッ!!!』

 

必殺技の蹴りによって加速したエルブレイシューターが、蜘蛛型に迫る。蜘蛛型はそれに、必死に反応しようとしてーー

 

『ーーガ』

 

「……あばよ、お前は中々、早かったぜ」

 

ーーその腕ごと、その刀ごと、自身の身体を抉られ、爆散した。

エルブレイシューターは、蜘蛛型の身体に大きな風穴を開けて、地面に突き刺さっている。

シキはディソナンスの全滅を確認すると、フッと息を吐いて、通信で一言。

 

 

「ーー乙音さん、惚れ直しました?この後お茶でもーー」

 

『ーー君はほんっ…とーにブレないね、ホントに』

 

 

後日、研究所近くのカフェ。そこでは山盛りのケーキを頼む日本人の少女と、自身の財布の中身をしきりに確認する、残念なイケメンの姿があったという……。




やはりもう少し戦闘描写を長くしたいきもち。まあ挿入歌演出を入れれば、すぐに一万字近くいくんだけどな!今回は6,000字ぐらい。

新キャラに対する皆さんの反応が怖い。このキャラは女性全てを愛してるとか、そういうやつなので、刀奈やボイスちゃん、桜を見ても乙音に対してと同じように接するでしょう。いい奴ではありますよ?ただ股が緩……いや、カタいだけで。

愛されるキャラのなる事を願っています。……次の投稿は、下手したら来月かもしれません。
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