仮面ライダーソング   作:天地優介

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すいませんでしたあああああああああああっ!!まさかここまで忙しくなるとは……明日から実家に帰って春休みに入るので、投稿頻度は一月前のものに戻ると思います。永遠想もあるからわかんないけど。
ともかく、今後も仮面ライダーソングをお願いします。コラボ回とか大歓迎なんですよ?


GOD SPEED

「コンダクトドライバー?なんだそりゃ」

 

「前にも話した、ビートライダーシステム……その強化案の事ですよ。確か今日、最終調整があった筈です」

 

都内某所の病院ーーその一角に存在する、個人用の病室。そこにはボイスとゼブラがいた。

7大愛との戦闘で深手を負ったボイスは、すぐにでも戦線に復帰しようとしたものの、ドクターストップがかかり、現在は怪我の治療のため、この病院に入院していた。

当初は心配するものも多く、ディソナンスの話題は避けられていたが、怪我が予想外に浅く、早期に治りそうだとわかるとすぐに刀奈などがボイスがいない間のディソナンスとの戦いのことを話したりしていた。

 

「乙音はどうしてんだ?あと、桜は……」

 

「桜さんは問題ないみたいですよ。いつのまにか怪我が完治していて、お医者さんも不思議がっていました」

 

当然、刀奈やゼブラは先日、桜のライブをディソナンスが襲撃した事も伝えている。あの時、桜と真司は大怪我を負ったが、真司は持ち前の生命力と精神力で医者の想定よりも、数倍早く完治。桜は病院に運ばれる頃には、既に傷が完治していた。ここのように特務対策局の息がかかった病院は複数存在するが、そこに勤める医師の誰も、桜の身に起こった事を説明できないでいた。ゼブラ達は、桜があの日手に入れた新しい力の能力なのだろうとあたりをつけてはいるが。

 

「ふーん、そっか……あ、そろそろリハビリの時間だな」

 

「あ、そうですね。それじゃあまた来ます」

 

「おう、ま、次来るときには退院してるかもしれないけどな!」

 

ゼブラが病室から退室し、ボイスは一人残される。看護師が来るまでの間、彼女は一人だ。

 

 

「…………くそ」

 

 

いま、彼女の胸の内を支配しているのは、焦りだった。人類にとって天城音成はまさに天敵、どこいるかも定かでない存在だったが、ボイスは日に日に音成の気配が強まっていくのを感じていた。

それが幻想であるか、事実であるかは彼女にも定かではない。しかし、彼女の両親が黒く燃え尽きたあの日から、彼女の内には拭えぬモノがあった。

絶望ーー戦っても、戦っても、戦っても、それでもなお、戦いが終わらない事への恐怖心。勇気の対極にあるもの。

他のライダー達はまだ戦えている。あの7大愛とかいう、あらゆる意味でふざけたディソナンス達相手にも対抗できる力をつけている。なのに自分はなんだ、初戦で敗北を喫し、重傷を負い、今はこうして人知れず、孤独感と強迫観念じみた悪い予感に怯える日々。

 

 

「………………やっぱ、駄目かなぁ、()()()

 

今、少女の心は確かに、そして静かに限界を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っ…はぁ……」

 

「……今日はここまで、経過は順調よ、ええと……ボイスちゃん?」

 

病院内のリハビリステーション。ここでボイスは毎日リハビリを受けていた。怪我が怪我であったため、最初はリハビリもろくにできなかったが、今では以前の感覚も多少は戻ってきていた。

 

「……病室に、戻らせてもらいます」

 

「わかったわ、そこまで送るわね」

 

仮面ライダーである、つまりは貴重な戦力であるボイスには、専属の医師がつけられていた。実績も十分にあり、様々な患者を経験してきた彼女だったが、ボイスには手を焼いていた。

何も、ボイスの素行が悪いという訳では無い。普通すぎるのだ。ふつう、怪我をすればある程度は落ち込んだり、逆に躍起になって早く治そうとするものだが、ボイスは表面上は、何処までもいつも通りに見えた。それこそ、怪我をしていない時のように。

 

「これは……少し、苦労するかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ボイスが病院でリハビリを受ける中、刀奈たちも何もしていなかった訳では無い。あの7大愛というディソナンスの幹部がいつ襲来してきてもいいように、警戒と訓練を続けていた。が、少々面倒な事態に巻き込まれていた。

 

「『衝撃!仮面ライダーはアイドルだった!』……で、桜…」

 

「しょ、しょうがないでしょーー!あそこで私が変身してなかったら、みんな死んでたっつーの!」

 

「ふ、2人とも落ち着いて……あうう、こんな時、真司さんがいてくれたら」

 

面倒な事態とは、あのドームでの戦いで桜がライダーとバレてしまったことだ。今までは猛をはじめ、特務対策局の者の努力によって情報は漏れていなかったのだが、ある記者が独断で記事を公表、それに続けたばかりに一斉に各新聞社などがこの特ダネにかじりついていた。

 

「まあ、取り敢えず芸能活動は自粛。ライダーとしての仕事も、あくまで人目につかない場所でする事になったわ」

 

「妥当なところだな。このままライダーとして戦えば、民間人を巻き込むリスクも大きくなってしまうだろう」

 

「そうですね……確か、局長が対策案を考えてるみたいですけど」

 

「局長が?……なーんか、ヤな予感がするわねぇ」

 

「…………ああ、何故だか……な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はっ?いま、なんと?」

 

「ふふふ、ではもう一度言うよ?香織くん。そう!刀奈の正体も世間に公表するのさ!これでいい!」

 

特務対策局局長室、そこで猛と香織は今後の方針について相談を重ねていた。

香織としては、このまま沈静化を待つつもりだった。そもそもライダー達が何か民間人に被害を及ぼした事もなく、特務対策局自体クリーンな組織ではある。局員の勤務時間は現在平均30時間だが、ディソナンスとの戦闘をビートライダー量産体制が整いかけている現在まで、ほぼ一手に引き受けていた組織である。本来なら現在特務対策局に所属している人材の倍以上あってもまだ足りないのだ。それを1日と6時間程度の勤務時間で世界平和を守っているのだから、彼等の働きぶりは世の人々の賞賛を受けてもいいレベルと言えるだろう。

だからこそ、香織は世の中が落ち着くのを待った。そもそもディソナンスとの戦いだけでも全身湿布でなんとか動けているのに、これ以上マスコミなどへの対応もできないというのが現状である。

だというのに、この男……特務対策局局長、つまりは世界平和の最前線にいる男は、さらに厄介ごとを抱え込もうというのである。香織が呆けた声を出すのも無理はないだろう。

 

「えっ……正気ですか?」

 

「君も大概失礼だね!?まあ考えなしという訳ではないよ。刀奈くんほどの世界的知名度があれば、『仮面ライダー』の名も受け入れやすいだろうと思ってね」

 

猛の提案に、香織は思わず納得しかけてしまう。事実、桜も最近は日本を代表するアイドルの一人という扱いにはなっているが、所詮アイドル。されどアイドルといえど、世界的知名度には程遠い。だが刀奈は最近でも海外ツアーをこの世界で敢行可能な程に、アーティストとしての知名度を得ている。さらに、彼女と桜がプライベートでも仲が良いというのは、いまや公然の事実だ。刀奈もライダーであると知れれば、一部の人間が唱える『仮面ライダー不要論』も鳴りを潜めるだろう。

「刀奈に、もう話してるなんて事はーー」

 

「いや、それはまだしてないから」

 

「……それでは、私から話します。確かに、この状況では有効な策かもしれませんしね」

 

そう言うと、香織は一礼をしてささっと局長室から出て行く。おそらく早速刀奈の元へと向かったのだろう。その足取りは、いやに重かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………それで、何故こんな事になっているのですか?」

 

「局長のせいよ……私はなにも悪くないわ……」

 

三日後ーー都内某所。多くの観衆が刀奈の特別ライブを楽しみに集まるなか、刀奈と香織は頭を抱えていた。

香織から、自身の正体を公表すると刀奈が聞き、それを承認してから数時間後、トレーニング中の刀奈に、ある知らせが届いた。

 

 

 

「ごっめ〜ん☆実は香織君にも黙ってさ、刀奈君の正体を公表するための準備、イベントの計画をもう進めちゃってたんだよネ!いやーらまさかあんなミスしてたなんてなーー。かーっ!つれーわ!後始末が大変だなぁ〜刀奈君が万が一心変わりとかしちゃえばまずいなぁ〜!」

 

 

その後、猛は仕事の量が三倍に増えたが、もともと優秀な男である。苦もなくこの日までには片付け、ちゃっかりとライブ会場の席を確保していた。

ちなみに、今回のライブは現場の混乱を抑える目的もあり、緊急特別ライブという事にして、会場に来る人数を制限している。これは、先日のディソナンスの襲撃もあっての対策で、警備員に扮した特務対策局戦闘班が会場のあちこちに待機している。また、先日真司がビートシステム開発を進めるためアメリカに渡った時、桜に預けたディスクセッターとは別のものを、既に手配済みである。ディソナンスの襲撃など、有事には咄嗟に動けるゼブラがこれを使用する手筈となっている。

 

「まあ、あなたなら大丈夫よ。……たぶん、きっと、メイビー」

 

「妙に不安になってきますね……ですが、仕事はきっちりとこなしてきます。私が完璧なパフォーマンスを魅せれば、仮面ライダーに対しての、世の人達の反応も良くなるでしょう」

 

現在の仮面ライダーに対しての世間の認識は、『人の世界を守るヒーロー』というものだった。しかし、仮面ライダーの行くところディソナンスあり。数ある人々の中には、ライダーがディソナンスを招き寄せている、現在の状況は一種のマッチポンプだと主張するものもいた。

故に、今回の特別ライブには、世間のライダーに対しての評価を改めるという目的もある。というよりも、そちらの方がどちらかといえばメインである。さすがに、いつまでも正体を隠したままではだんだんと心象も悪くなるというもの。その点、世界的な知名度を誇り、公私共に世間で評判のいい刀奈が、このタイミングで正体を明かすのは、桜の件を抜きにしても確かに効果的である。だからこそ、猛もテレビ局関係者へのコネを最大限駆使して、今日のライブの特別中継をも実現してみせたのだ。

 

 

「……それでは、行ってきます」

 

「ええ、頼んだわよ」

 

いつもステージに上がる時のような、まるで剣のようにスッとした表情となり、大勢の観客の前に飛び出す刀奈。観客達の歓声が爆音となって轟くなか、刀奈は声を張り、背筋を伸ばして雄々しく立つ。

 

 

「皆!今日はいきなりの特別ライブだというのに、これだけの数が来てくれた事、わたしは誇りに思う!いまここに集まる皆も!何処かの地でこの瞬間を見る皆も!全てが等しく私の誇りだっ!!」

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッーー!!!」」」

 

観客達が歓声を上げる。その熱が収まらないうちに、刀奈は次々と畳み掛ける。

 

 

「今日のライブの最後には重大発表もある!だが案ずるな!私が君たちの期待を裏切る事は一切無いだろう!!今日のライブ、全力で楽しんでいってくれ!」

 

「では行くぞ!一曲目ーー」

 

 

刀奈の歌が流れるに合わせて、会場全体が揺れ、震え、弾ける。その圧倒的なパフォーマンスに、観客達も、関係者達も、全てが等しく魅了される。これが世界的アーティストたる刀奈の力であり、その力強さは、見守るものに等しく成功を予感させるものだった。

 

「凄い……凄いライブですね」

 

「そうね……さすが私の目標、といったとこかしらね」

 

「……ボイスさん、これなくて残念でしたね」

 

「多分、中継で観れるわよ……少しでも元気になってくれれば、いいんだけど」

 

桜やゼブラも見守るなか、ライブはつつがなく進行して行く。そして、ライブの最終盤、ついにその時がやってきた。刀奈が観客達の目の前で変身し、変身した姿のまま歌い、踊る。突拍子もない作戦ではあるが、仮面ライダーに対しての認識を改めさせるという意味では、効果的といえる。

 

「皆……ここまで付き合ってくれてありがとう。さて、ライブ冒頭で言ったことを覚えているだろうか?今日は、重大発表があるとーー」

 

観客には向かって語りかける刀奈の腰には、既にレコードライバーがある。その存在に気づいていたファンも、気づいていなかったファンも、皆等しく騒めき出す。まさか、そんな訳がない、いや、もしかしたら……と。

 

 

「見ててくれ、私のーー」

 

 

ーーしかし、ここまでつつがなく進んできたライブにも、ここでトラブルが起こった。最大級のトラブル、それはーー

 

 

『ーー私の剣技を、見てもらうとしよう』

 

 

ーー会場の照明が一瞬落ちる。観客が騒然となるなか、再び点灯したスポットライトに照らされたのはーー

 

『フフ……初めまして、というべきかな?私はディソナンスが幹部、七大愛(セブンスラブ)が一人……我が名は『六閃剣(シックスソード)!』エンヴィー!愚かな人間達よ、我が姿を、その目に!その記憶に!焼き付ける前に死んで行くがいい!』

 

ーー派手に登場したディソナンスが、会場がパニックに陥るその前に、高速をもって動き出す。まずは手始めに、そこで呆けているだろう歌手だ。エンヴィーは、そう狙いを定めるーーが。

 

 

「速度と剣技には自信があるか、それは私も同じだ……!」

 

 

その剣は、仮面ライダーツルギとなった刀奈の剣によって、止められていた。自身の速度に、追いつくほどの反応速度ーー好敵手を見つけたエンヴィーがニヤリとほくそ笑むと同時に、会場内でやっとパニックが起こり始める。しかし、特務対策局のものは冷静だった。我先にと逃げる観客たちを制御し、ある程度の整然さをもって逃す。その間に、ゼブラと桜もひっそりと変身、エンヴィーの対処にあたる。

 

「おっと、私達も忘れてもらっちゃ困るわね」

 

「ディスクセッターの力、見せてやる!」

 

ゼブラがディスクセッターにライダーズディスクを装填し、そのトリガーを引く。ゼブラの眼前に現れた光の輪が、ゼブラの身体を通ろうとするがーー

 

「ぐあっ!?」

 

「ゼブラちゃん!?」

 

光の輪に、ゼブラの身体が弾き飛ばされる。ゼブラでは、ディスクセッターを用いた強化形態には、変身できないーー!

 

「そん、な……」

 

「……っ、ええい!こうなれば私が!」

 

ゼブラの変身失敗を受け、桜がディスクセッターを使い、強化形態へと変身する。溢れんばかりの力、それを解き放つように、エンヴィーを炎の嵐で攻撃する。炎に包まれ、焼け落ちていくエンヴィー。

 

「……なんだ、あの化け物みたいに強いかと思えば、大したことなかったわね」

 

「……いや、桜っ!!」

 

刀奈の叫びに桜が振り向いた瞬間、その身を、剣が貫く。

 

「…………あ?」

 

ゆっくりと、崩れ落ちる桜。その身を支えようと刀奈とゼブラが動く前に、彼女達は信じられない光景を目にする。

 

「な、なんだっ……!?」

 

「エンヴィーが……二体!?」

 

彼女達の目の前に立っていたもの、桜の身を貫いたのは、紛れもなく、先ほど焼け死んだ筈のエンヴィーだった。いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ならば、ここに立つエンヴィーは何者だ?そう二人が思考する前に、さらに信じられない自体が起こる。

 

『いやいや、案外四つ子かもしれぬぞ?』

 

『ハハハ!そこの焼死体も合わせて5体目!いや、既にそれは死しているのだから……』

 

『遅くなったな!これで6体目よ!ハハハハハハハハハハハハハハハ!これが、我が名の由来!これが、我が能力!』

 

『『『我等は常に6体……これぞ我が!我等が六閃剣と呼ばれる所以よ!フーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』』』

 

刀奈達を囲み、高笑いをする6体のエンヴィー。神経を逆撫でするような声に激昂し、エンヴィーに斬りかかった刀奈の剣は、6体のうちの一体を切り裂く。ーーが、またすぐに『6体目』が現れ、逆に刀奈に斬りかかる。

 

「がっ……!?ぐっ、貴様……」

 

『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!我等は常に6体と言ったろう!ほれーー我が剣速に、ついてこれるか!?』

 

6体のエンヴィーが、一斉に動き出す。一体一体のスピードは刀奈よりも僅かに速い程度だが、それが6体。はっきり言って、勝負にならない戦力差である。それはゼブラがいても同様であり、桜も変身解除はされてないとはいえ、強化形態となることで治癒能力と生命力が大幅に増していなければ、明らかに致命傷となる傷である。意識は微かにあるが、心の臓の近くを抉られたのだ、立てもしなければ、声を上げることもできない。

 

『そぉらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらっ!!!』

 

「ぐっ……こっちか!?……がっ……」

 

「っく!いったい、どうすればっ……!」

 

エンヴィーの猛攻に、打開策を見出せない二人。辛うじて刀奈はまだ対応できていたが、スピードで劣るゼブラは防戦一方、ついに、その左腕に装着していたディスクセッターを弾き飛ばされてしまう。

 

「あっ……!」

 

「……!ゼブラ、頼む!」

 

弾かれたディスクセッターを見て、刀奈が走り出す。刀奈の意図を瞬時に理解したゼブラは、必殺技を発動、エンヴィー達の足止めを行う!

 

 

『voltage Max!!!』

 

「刀奈さん!」

 

『rider maximum shoot!!!』

 

『ぬうっ!?』

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっーー!!!」

 

刀奈が走り、必死に手を伸ばす。今、彼女の脳裏によぎるのは、かつての日々。

かつて、真司とともにライダーとなった日のこと、かつて、バラクに敗れ、涙を流した日のこと、かつて、アイドルとして、アーティストとして栄光を掴んだ日のこと、かつて、乙音と出会った日のこと、かつて、かつて…………

まるで走馬灯のように駆け巡るそれを、刀奈は振り切る。彼女が求めるのは過去ではない、彼女の仲間と、誇り達、それと共に歩む未来こそ、彼女が真に求めるものなのだ!

 

「とっ……たぁーー!」

 

中を飛ぶディスクセッターを掴み、すぐさま左手に装着する。目前には、ゼブラを叩き伏せ、こちらに迫るエンヴィーの姿。しかし、刀奈は焦らず、動じず、静かにその言葉を紡ぐ。

 

「変身……!」

 

ディスクセッターより出現した光の輪が、迫るエンヴィーの身体を弾き飛ばす。そして、その光は刀奈の身体を優しく包みーー

 

 

「音速もーー光速もーー神速すらも、通過点にする!」

 

『な、なんだその姿はーー』

 

「刀奈さん……!」

 

 

「これが、私のーー覚悟と、誇りだっ!!」

 

 

戦場に、歌が鳴り響く。少女の決意と、覚悟を示すようにーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《追いてかれる感覚、追いついていく感覚》

 

『舐めるなぁっ!!』

 

「はあっ!!!」

 

《どれも生きるうちに……慣れてくもの》

 

 

刀奈が剣を構えた瞬間、エンヴィーが疾走する。エンヴィーの数は全6体。それも、6体全てを同時に倒さなければ、エンヴィーを打倒した事にはならないというおまけ付きだ。だからこそ、彼は油断した。最高速でなくてもいいだろうと、刀奈に反応させる余裕を与えてしまったのだ。だからこそーー彼は、なぜ刀奈が目の前から消えたのか、理解できなかった。

 

《重力すらも振り切って》

 

「ゼブラ、桜を頼む。ここから動くなよ」

 

「は、はい!」

 

《その思いも振り切って》

 

エンヴィーが、刀奈が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という行為を行ったのに気づいたのは、既に刀奈による剣戟が迫り来る中だった。

 

《ただひたすらに強さを、求めたdays……》

 

『がっ!?馬鹿な……!』

 

「まだ終わりではないぞ!」

 

刀奈が左手を剣から外し、背後から刀奈を斬りつけようとしていたエンヴィーに向けて振るう。すると、刀奈の左手に2本目の剣が出現し、逆に不意をつかれたエンヴィーの身体を切り裂く。

 

《だけど、そう……仲間たち……》

 

『ぐっ、だが6体同時に倒せるわけがっ!!』

 

「確かに、厄介な能力だ……!」

 

《そして、増え続けている……誇りが》

 

しかし、エンヴィーも七大愛が一体。6体いるというアドバンテージを生かして、複数体で刀奈の動きを抑え、残りの一、二体で桜やゼブラを狙う。それを防ぐ刀奈だったが、傍目には、エンヴィーに徐々に追い詰められているようにも見える。

 

《私へと……教えてくれた》

 

「刀奈さん……!」

 

「心配はいらない、ゼブラくん!」

 

《思いの強さを……》

 

刀奈が二振りの剣を振るい、エンヴィーの妨害を突破する。観客席を背に立つその姿は、ファンのことを自らの誇りと呼ぶアーティスト、心刀奈でもあり、平和と自由のため、仲間と共に戦い続ける仮面ライダー、ツルギの姿でもあった。

 

 

「今の私になら……できる!」

 

《それを背負い戦う事を!!》

 

『ほざけええええええええっ!!』

 

 

刀奈の姿が消える。それと同時に、エンヴィーは信じられないものを見た。何故ならば、刀奈が()()()()()6()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

《音速よりも早く!この歌を伝えよう》

 

『ば、馬鹿な!私と同じ能力を………!?!?』

 

「そう思うならば、貴様の目は節穴だな!」

 

《光超える思いは……心へのdirect song!》

 

そう、刀奈が今行っているのは、なんて事はない、()()()()()()()()()()()()()()()。エンヴィーもスピードには自信があるが、しかし今刀奈が行なっている()()ができないからこその、6体同時という能力なのだ。だからこそ、エンヴィーは信じられない。だからこそ、今エンヴィーに、勝機はなかった。隙を晒したエンヴィーの身体を刀奈が次々と切り裂き、徐々に追い詰めていく。いつの間にか、エンヴィー達は一箇所にまとめられていた。

 

《神速すらも通過点、思いを叫ぶままに!》

 

「勝負を……決める!!!」

 

『over the song!!!』

 

『『『馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な』』』

 

《これが私のーー》

 

刀奈が持つ二振りの剣に、エネルギーが集中していく。それと同時に、刀奈がエンヴィー達の周囲を高速で移動し、竜巻を生み出す。その竜巻のうちに飲み込まれたエンヴィー達に、もはやなすすべはなかった。

 

 

『rider God blade!!!』

 

《誇りと覚悟、示す歌ーー!》

 

「おおおおおおおおおおおお……はぁっーー!!!」

 

『『ぐう……ぶるああああああああああああああああああああああああああああああっ!?!?!?』』

 

 

刀奈が振るう光の剣が、竜巻と共にエンヴィー達を切り裂いてゆく。竜巻の中のエンヴィー達は爆散していき、ステージを、会場を揺らす。

エンヴィー達の爆散を見届けた刀奈は、変身を解除する。それと同時に刀奈の身体を凄まじい倦怠感が襲うが、地面に倒れる瞬間、その身体をやっと復活した桜と、ゼブラが支える。

 

 

「刀奈さん……見事でした!」

 

「やったわね……刀奈」

 

「ああ……仕留めきれたかは怪しいが、かなりの深手は負わせた、当分は、襲来してくる事もないだろう……はあ、とても疲れた。今日明日はゆっくり寝ていたい……」

 

「……多分、記者会見とかインタビューで休めないと思うわよ」

 

「そんなー……しょぼーん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーー特報です。噂の仮面ライダーの正体が、またも判明しました。以前より話題になっていた剣を振るう青い仮面ライダーですが、その正体はなんと人気アイドルの心刀奈さんでーー』

 

 

ーー都内某所の病院、そこでは、新たな仮面ライダーの正体のことが話題になっていた。

いや、話題になっているのは世間全体ではあるがーーこの病院は、特務対策局の息がかかっているという事もあり、入院患者の中には仮面ライダーにその命を救われた人も多い。その仮面ライダーの正体が世界的アーティストである心刀奈であったのだから、話題にならない方がおかしいだろう。

病院内が喧騒に包まれる中ーーボイスが入院する個室、そこは、不気味なほどに、静かだった。

 

「………………………………」

 

(我が名はフィン……)

 

(君の運命は私の手の中にある……)

 

(このまま窒息させてやろうか……?)

 

「…………くそっ」

 

ボイスの心の中にあるのはーー焦りと恐怖。あの日の傷は、とっくに治っている。それはボイスにもわかっていた。だが、あの時植えつけられた恐怖がーー刀奈が間に合わなければ死んでいたという事実がーー彼女の心を蝕んでいく。

 

「オレは……っ!」

 

 

 

 

「力が、ほしいかい?」

 

 

 

 

一人呟くボイスの耳に、悪魔の囁きが、聞こえる。慌てて声の方を向けば、そこに立っていたのは、信じられない人物だった。

 

「あ……あ……お前は……!」

 

「いやぁ……あまり苦労しなかったよ!ここに潜入するのは……ふふ、特務対策局もまだまだ甘い」

 

ボイスの目の前に立っていた男、それは、全ての元凶であり、ライダー達、そしてディソナンス達の生みの親とも言える存在ーーその名はーー

 

 

「天城……音成……っ!?」

 

 

「やあ、ボイスくん。君にこれを届けにきた」

 

 

音成が手に持つもの、それは黒いレコードライバーだった。音成が差し出してきたそれに、思わず視線が吸い寄せられるボイス。音成は微笑み、ボイスへと語りかける。それは、まるで悪魔が人を貶めるように、天使が、人を地獄へ導くように。

 

 

 

 

 

「Dレコードライバー……君が求める力が、ここにある」

 

 

 

 

 

 

 




Q.あの、Dレコードライバーって……

A.ガタガタゴットンズッタンタン!ヤベェェーイ!!!

私はね、ソングとは関係ないけどハザードトリガーとかプトティラとかデッドヒートとか大好きなんだ、関係ないけど。
あと、関係ないけど、関係ないけど、アマゾンズ映画楽しみですね。ソングとは関係ないけど!

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