仮面ライダーソング   作:天地優介

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今回このまま投稿するか非常に悩みましたが、このままいきます。今回はボイスちゃん回!彼女が新たな力を手にします、とても強くなるぞ!


デス・ボイス

「……………………」

 

 

『……何が狙いだ!?』

 

『まあまあ、落ち着きなよ。とりあえず、こいつを受け取ってくれないかな?』

 

『テメェ……!オレがそんなものを求めると、本気で……!』

 

『思うさ、これは君に必要な力だ』

 

『…………っ!?』

 

『信じるも信じないも君しだ〜い♪チャオ♪』

 

『あっ!……消えた……』

 

 

天城音成がボイスの病室を尋ね、彼女に『Dレコードライバー』を渡してから数日、ボイスは、病室で一人悩んでいた。

 

(……弄ってみてわかった。こいつは黒いレコードライバーで、たぶんオレがいま使えるライダーズディスクじゃ、起動できないって事も)

 

この数日、ボイスは暇さえあればDレコードライバーを弄っていた。しかし、わかったのは今の自分では使用不可能という事実だけ、仲間に相談してもよかったはずなのに、何故かそれもできなかった。

 

(……刀奈、真司、桜、ゼブラ、乙音……みんないいやつだ、そらは間違いねぇ…でも、だったらなんで……)

 

そう思考する間に、瞬く間に時間は過ぎ、いつも通りのリハビリの時間になってしまう。その顔にも色濃く悩みを浮かべながら、しかし本人はそれに気づかず、いつものようにリハビリへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なにか、悩みでもあるの?」

 

「え……」

 

今日のリハビリを終え、いつものように病室へと戻ろうとしたボイスだったが、不意に、自分のリハビリを担当する女医に止められる。何事かと思うボイスだったが、女医の一言に、その心は激しく揺らいでいた。

(なんでだ?バレた?でも、どうして……)

 

ボイスが自身の言葉に混乱していることを悟った女医は、ボイスの肩に手を置き、優しく語りかける。

 

「大丈夫、私達はあなたの味方よ。だから、まずは何があったのか、ゆっくりと話して?」

 

「あ、お、オレは……」

 

「大丈夫だから……ね?」

 

それから数分の間、顔をうつむかせて沈黙し、逡巡するボイスだったが、それでも自身の手を取り離さず、辛抱強く待ち続ける女医の姿に折れたのか、先日、天城音成が自身の元に現れたことについて、ポツリポツリと話し始める。

 

「それで、オレ、これを渡されて……」

 

「そう……でも安心して。それは特務対策局に渡して、きっちり調査してもらうから。病院も移しましょう、いいところを紹介してあげるわ」

 

ボイスはただ、女医の言葉に頷くだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やはり、アレが必要かな」

 

『どちらへ?未だエンヴィーも直っておりませぬが』

 

「ああ……いやなに、少し仕込みさ。それよりもガイン、君はピューレと共にアメリカへと向かってくれないかな?仮面ライダーのひとり、的場真司があちらへ渡ったようだからね」

 

『わかりました。デューマンはどうしますか?』

 

「そんなもの、君らが旧ディソナンスと呼ぶ奴等に任せればいいだろう。今はバラクは行方不明、ドキはアメリカにいること以外にわからないが、あの湊美希とかいう人間をダシに使えば済む話だ。キキカイひとりでも、十分デューマンの調整はできるさ。もちろん、ゲイルあたりにでも見張らせておくんだよ?」

 

『わかりました、では気をつけて行ってらっしゃいませ…………音成様』

 

「ああうん、留守はよろしくね……さて、ボイスちゃんにプレゼントを渡してあげなきゃ。そのためには…………」

 

 

「よし……アイツにしよう…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お父さん……お母さん……?』

 

『どこ……熱い、熱いよ……』

 

『助けて……助けて……』

 

「ああ……う、うわあああああああああああああああああああ!?」

 

女医にDレコードライバーのことを相談した翌日から、ボイスは酷い悪夢に悩まされていた。

それは、かつて克服したはずの悪夢。自身が一度声を失い、家族を永遠に失う原因となった、忌まわしき惨劇の記憶。

 

(まただ……他の病院に移るのは明日……そうなれば、いやそれでも……いや、治ると信じるんだ……もう悪夢は見ないと……)

 

一度克服しはずの悪夢、他の病院に移ればすぐに見なくなるだろうとボイスは思っていた。しかし、ボイスが見る悪夢には、今までとは異なる点があった。それは、ボイスが夢の最後には、死んでしまうということ、そしてもう一つは……

 

「……とりあえず、トイレにでも……(死にたくない……)っ!?誰だ!?」

もう一つは、夢の中で、自身と家族の他にも、大量の死者がいるということ。そして、その悪夢を見るようになってから、ボイスはたびたび『死にたくない』『助けてくれ』という声を聞くようになった。これが幻聴であると確信できれば、ボイスにとっては楽だった。だが、その声はあまりにもリアルすぎたのだ。ボイスは日に日にやつれていき、今では何もないところでも、支えがなければ転び、倒れてしまうようになっていた。

そして、それは身体だけでなく心もそうだった。

 

(今日は、確かゼブラが来るって言ってたな……アイツに、相談すれば……)

 

そんな事を考えながらトイレを済ませ、病室へと戻るボイス。しかし、その道中あることに気づく。病院が()()()()()のだ。

多くの病人や怪我人が入院する病院であるのだから、確かに普段から静かではある。しかし、それでも廊下には人気が朝方とはいえあるはずだ。四六時中看護師や医師が病院内にいるし、ボイス以外の患者もいるはずだ。自分と同じように、トイレに行くものもいるはずである。

そこまで考えて、ボイスはある事に気がついた。それは、血の匂い。数多の戦場に出たボイスだからこそわかる、誰かが血を流している時の匂いだ。

 

「なにが……!?」

 

血の匂いが濃い方へと、ボイスは歩く。ボイスは気づいていなかったが、病院の窓から見える景色は、とても朝方とは思えないほどに暗かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「局長!病院の様子は……!?」

 

「変わらないよ。今朝方、あの暗いオーラに包まれてから、なんの音沙汰もない。それよりも、新たなディソナンス発生の情報だ、誰かひとり、現場へと向かってくれ」

 

「……私が行くわ。あんたら2人は、病院の方に注意を向けときなさい」

 

「桜!?……行ってしまったか。くそっ、いったいあの中で何が起きているんだ……!?」

 

「ボイスさん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだよこれ」

 

病院内の、5階。ボイスの病室がある階だが、そこには多くの人、患者や看護師、見舞いの人などがひしめく交流所があった。ボイスはあまり利用しなかったが、それでも他の患者は、たまに顔を出すボイスを見つけては、可愛がってくれていた。

 

その交流所が、血の海に沈んでいた。初めは原型も残っていない肉片に、それとは気づかなかったが、色濃く残る死臭に、やっと()()が、人の身体を構成するパーツ、その残骸であると認識した瞬間、ボイスは吐いた。

 

「うっ……ゲエッ!ゲフッ……ゲエッ……ゲッ…………ハッ……ハッ……なに、が…………」

 

胃の中のものをすべて吐き出したボイスは、それでもまだ冷静さを完全には失わず、自体の把握に努めようとする。そこでようやく、外の様子がおかしい事にボイスは気づくが、それと同時に、ボイスはある事にも気づいた。それは、足音だ。カツン……カツン……と廊下に足跡が響く。

 

「…………!?」

 

思わず戦闘態勢をとり、音の方を向くボイス。廊下の角からゆっくりと現れたのは、ボイスのリハビリを担当していた女医の顔だった。

 

「……!あんた、なに、が…………」

 

女医の顔を見て、思わずそちらに駆け寄りそうになるボイス。しかし、その後の光景を見て、絶句し、その足は恐怖で縫いとめられた。何故なら、女医の身体は、頭以外存在しなかったからだ。いや、それでは語弊がある。正確にいえば、彼女の頭部と、そこから伸びる、奇妙にぶらんぶらんと垂れ下がっている脊髄以外のパーツは、最早残されていなかった。

 

「あ、あ……」

 

女医の顔も、よく見れば穴だらけで、まるで()()()()()()()()()()()()()()()傷ばかりだ。それでもその表情は判別可能で、その顔は、今のボイスと同じく、恐怖と絶望に歪んでいた。

 

(あ…………死にたくない……嫌……いや……イヤ……)

 

「っ!また、あの幻聴……いや、これはあの人の声……そんな……でも……」

 

不意の幻聴に、顔をしかめるボイス。しかし、その幻聴は、彼女にとって聞き覚えのある声。今まさに、頭だけになって死んでいるはずの、女医の声だった。

 

「死者の……声……それじゃあ、まさか、この病院の人達は……!」

 

(ああ……熱い……熱いよ……)

 

(おかあさん、ぼくいたいよ)

 

(ああ……お腹だけはやめて!お願いお腹だけは……)

 

(ハヒフヘロヒフレヒハラヒハフヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ)

 

(やめろ!やめてくれ!ああ!頭掴まないで!あ……)

 

()()をボイスが自覚した瞬間、押し寄せてきたのは苦しみと怨嗟と、絶望にまみれた声。死者達のボイスだった。

『…………ほう、あの病室の人間は最後に残せと言われたが……お前だったか、音成様も粋な事をしてくださる』

 

「あ、おまえ、は……」

 

廊下の角から、その姿をボイスの目の前に表した存在。それは、かつてボイスと戦ったディソナンスである、7大愛の一体、フィンであった。

 

「あ、あ…………」

 

『ん?こいつか……そういえば、お前の名を叫んでたいたか、必死だったぞ?助けてくれとな。ほら、頭だけだが、返してやろう』

 

ごろん、と無造作に投げられた女医の頭は地面を転がり、ボイスの足元に辿り着く。その絶望にまみれた瞳は、ボイスを睨みつけているかのような暗さを持っていた。

 

「あ、う、うあああああああああああああああああ!!」

 

恐怖に耐えきれなくなったボイスは、その場を這いずりながら逃げていく。その情けない姿に、しかしフィンは笑おうともしなかった。かつてボイスにやられた恨みはこんなものではない、あの女を捕え、嬲り、犯し、その身に自分との差を徹底的に叩き込んでから潰すように殺さなければいけないと、そうフィンは思考していた。そして、そのための方法を、フィンは音成から教えられていた。

 

『火、か……クク、よくもまあ、幼い頃のトラウマをここまで引きずれるものだな、その情けなさは、評価しておいてやろう……!』

 

フィンがその手を広げ、指先から光弾を放つ。すると、人の血と油で塗れた病院内に、あっという間に火の手が回り始めた。

 

『フハハ……!燃えろ!ええい、人間どもの死骸は鬱陶しい。だが、よく燃えるものだ……!フハハハハハハハハハハハハ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(痛い……痛い!)

 

「……うるさい」

 

(熱い……熱い……!)

 

「…………うるさい」

 

(助けてよ!助けて!)

 

「………………うるさい!」

 

自分でもなにがなんだかわからないほどに無我夢中で病院内を駆けずり回るボイスは、度重なる幻聴に、怒号で答える。今はナースセンターに隠れているが、先程から火の手があちこちに回っている。もはやここも無事では済まないだろう。そう思考したところで、カツン、カツンと足音が響く。その音を聞いた瞬間、ボイスはさらに身を縮こませ、その音から逃れるように耳を塞ぐ。最早、この病院内で動く存在は、自分とフィンだけだと、ボイスは悟っていた。ここまでくるのに、まるで前衛芸術かのように惨たらしい殺され方をした人々を見たからだ。中には、お腹のなかの赤ん坊を引きずり出され、母体は失血死、赤ん坊の方はまだ息はあったが、あの様子ではもはや数十分と経たず死亡するだろう。そして、今のボイスにはそれを見ることしかできない。いや、見ることすらできないのだ。

 

(Dレコードライバー……あれさえあれば……)

 

ふと、ボイスは既に特務対策局の手に渡っているだろう、あのDレコードライバーのことを思い出した。あれさえあれば、もしかすれば戦えたかもしれない。だが、そもそも自身のライダーズディスクでは、あれでは変身できないという事実と、今の自身の状態を見て、その考えはすぐになくなった。

 

 

カツン…………カツン…………

 

 

ボイスが思考する間にも、足音は響く。徐々に近づいてくるその音に、ボイスは怯える。

 

 

カツン……カツン……

 

 

徐々に近づいてくる。ボイスは息を潜め、声を潜め、ただ暴威が過ぎ去るのを待つ。

 

 

カツン……カツン

 

 

……止まった。近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……見つけた』

 

 

「……っ!!!」

 

その声を聞いた瞬間、ボイスは弾けるように駆け出した。火事場の馬鹿力、というやつだろうか。そのスピードは、むしろ健常ないつもよりも早かった。

 

 

だが、フィン相手には、無意味だった。

 

 

ズガン!という破裂音がボイスの耳に届くと同時、その身体が倒れる。なにが起きたかわからないボイスだったが、簡単なことだ。()()()()()()()()()()()()無論、下手人はフィンである。

 

「あ、ぐ、ううううううううう……!!」

 

遅れてきた痛みに、悶えるボイス。彼女の瞳に映るものは、自身の腹から滲み出る血の赤と、自身の身体を再び燃やし尽くそうとする炎の赤。二つの赤に、彼女の思考は絶望と暗黒の海に沈んで行く。

 

『フハハ……そこで焼け死ぬがいい』

 

フィンの弾丸が、さらに火の勢いを加速させる。無慈悲な言葉に、ボイスは足掻くこともできない。

 

(……ここで死ぬのか、オレ……)

 

ボイスの脳裏によぎるのは、かつての日々。仲間達と共に駆け抜けた戦場、幼くして両親を亡くした自分の親代わりに、自分を育ててくれた人の姿、微かにしか残っていない、両親の笑顔と、まだ『わたし』であった頃の自分………

 

 

(オレ……わたし…………みんな、ごめん、ごめんね……)

 

 

そして、その思考を最後に、ボイスの身体は完全に炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ここは?)

 

(なんだろう……聞こえる……)

 

(誰かの声……ああ、これはあいつに殺された……いや、それだけじゃない…)

 

(みんな、怒ったり苦しんだり……でも、みんな泣いてる)

 

(誰だ?誰が泣かせた?こんなにも多くの人を……)

 

(わたしは……許せるのか?)

 

(いや……許せない、そうじゃないだろう)

 

 

ーー身体が熱い

 

 

(そうだ、今背負えるのはわたしだけなんだ)

 

 

ーー絶望と死が装甲となり、力となり、仮面となる

 

 

(ーー戦うしか、ないんだ!)

 

 

ーーその、名は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言えば、フィンは完全に油断していた、だからこそだろう、彼がそのことに気づいたのは、既に全てが終わった後だった。

 

『馬鹿な……!』

 

火に飲まれた筈のボイスの身体が、立ち上がる。その手には、見たこともないドライバーが握られていた。

 

【Dレコードライバー!】

 

ボイスの腰に装着されたドライバー…Dレコードライバーが叫ぶ。

 

【レディー、オゥケイ!?】

 

ドライバーが問う、それは、ボイスになのかフィンになのか、それはわからなかったが、フィンは咄嗟に指先をーー銃口をボイスに向ける。だが、遅かった。

 

 

「…………変身』

 

【仮面ライダーァ…………デス!ボォォォイス!!!】

 

 

ボイスが()()を呟いた瞬間、ボイスの顔が苦悶に歪む。そして、ボイスの()()()()、光の輪が飛び出し、彼女の身体を黒く覆っていく。咄嗟にフィンは銃撃をするが、ボイスには効かなかった。

 

『なに!?』

 

ボイスの身体を装甲が覆い、その顔を仮面が覆う。変身は完了したーーボイスの手に、禍々しい拳銃が握られる。その拳銃の名は『デスブレイカー』、あらゆるものを壊し、あらゆるものを殺すための武器。

 

 

『……おい』

 

 

ボイスが呟く、とても小さな筈のその声は、しかし確かにフィンの耳朶と、その身を震わしていた。

 

 

 

『……お前の心、壊してやる』

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、フィンは逃げ出した。早くここから逃げなければ!そうしなければ本当に殺されーー『おい』

 

 

 

 

『壊すって……言っただろ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後に病院を覆う闇が晴れ、特務対策局と仮面ライダーが中に押し入った時、既に惨劇は終わった後だった。

残されたのは、凄惨な死体と、それが燃えた悪臭。そして、唯一生き残っていた赤子と、()()()()()したと思わしき、一部の破壊跡だった。

ボイスーー仮面ライダーであった少女は、その日を境に行方不明となる。




仮面ライダーデスボイス
パンチ力・130トン
キック力・135トン
あらゆる特殊能力を無効化する。一定以上の相手は、一部しか特殊能力を無効化できない。例えばハイパームテキならば無敵能力と強化能力だけ、バイオライダーならゲル化能力だけが無効化される。
デスブレイカー
デスボイスの武器。対象を消滅させる。
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