「え?私が……日本に?」
「ああ、レコードライバーの修理も完了した。未だ状況が掴めない日本に行くなら、ゼブラもいることだし、お前の方が適任と判断してのことだ」
真司が乙音にレコードライバーを手渡す。先日7大愛との戦いを乗り越え、真司も成長したものの、未だ傷は完全には癒えていない。兵は拙速を尊ぶというが、拙速に動けるのが乙音のみというのあり、数日後には日本に渡れるよう準備をしておくようにと、真司の口から乙音に伝えられた。
「そうですか……少し寂しいですね。やっとこちらの人達と打ち解けたというか……仲良くなれてきたので」
「まあ、何も問題なければゼブラと共にこちらに舞い戻ってくることになるだろうな。確か、お前の強化形態は……」
「はい、理論上可能ってことらしいんですけど、まだ感覚も掴めなくて」
以前乙音は7大愛の1体であるゲイルとの戦闘で、他のライダーに先んじて強化フォームへと変身していた。しかし、その際の反動でレコードライバーが壊れてしまっていたのだが、壊れてから修理されるまでの解析、そして強化フォームの戦闘データの蓄積もあり、どうやらゼブラと非融合状態で変身を行なったのがまずかったという結論が生まれた。要は、以前乙音がD.Sスタイルに変身した時と似たような現象が起きたのである。
そのため、現在の乙音では危険すぎて強化形態に試しにでも変身することはできない。今通信のとれない日本にゼブラがいるのなら、乙音を送ればついでに戦力強化も見込めるという目論見もあった。
「ともかく、後の事はあった渡ってから考えるといい。なに、心配するな。衛星からの映像ではあちらは平和そのものだ。休暇だとでも思えばいい」
「はい!それでは、荷物を纏めて……その後、皆さんの挨拶回りに行ってきます!」
数日後の日本への渡航、それを知った乙音の行動は早く、その日のうちに荷物を(もともと少なかったが)纏め、研究所のお世話になった人々への挨拶回りを行なった。
ショット博士は
「……ふむ、レコードライバーの調整も完璧じゃ、ディスクセッターももう一つ持っていくといい。なに、気にする事ではないぞい、彼方でもビートの運用データを集めてくれれば助かるからのう」
と言って乙音に二つディスクセッターを渡し
ロイドは
「……そうですか、日本へ……いえ、大丈夫ですよ。寂しくなりますけど、いつか戻ってきてくれると信じてますから。餞別に渡せるものもありませんが、あなたの無事を、祈っています…………いえほんとに大丈夫ですから、だから下から覗き込まないでください見上げないでください無防備にならないでください反応しますから!」
と何故か泣きそうな、でもほんのりと赤い顔で言い
シキは
「おおおおおおおおおおおおレディー……!まだ私の思いも伝えきれていないというのに!運命は2人を引き裂く……でも心配しないでくださいレディー。あなたの危機にはすぐに駆けつけます!そう、まるで姫を守る騎士のように!この四季・ブラウンあなたに忠誠を(ry」
……話が長過ぎて、途中からスルーされていた。
「さて、久しぶりに帰ってきたけど……なにも変わってない……かな?」
通常の移動手段は日本の状況がわからないこともあって使えなかったので、アメリカ国家が用意してくれた専用の飛行機に乗って空港に降り立った乙音はまず、ゼブラ達に電話をかける事にした。電波妨害のせいで、衛星からの映像以外はほぼアメリカに日本の情報は入って来てはいなかったので、早く彼女達の無事を確かめたかったからだ。
「えーと……もしもしゼブラ?今どこ?」
『えっ、お姉ちゃん!?あー……今日本にいるの!?』
「うんそうだけど?そっちは何かあっ……『良かったあ〜!全然連絡がつかないから、どうしちゃったのかと!』ちょ、ゼブラ、落ち着いて……」
その後、空港まで迎えに来たゼブラ達と久々の再会を果たした乙音は、ボイスが姿を消してしまったこと、日本から海外の情報が入手できなくなっており、現在はほぼ海外への渡航も禁止されてしまっていること、刀奈や桜の2人が「仮面ライダー」であり「アイドル」である事を活かして抑えてはいるが、人々の不安や不満が溜まってきてしまっている事などを彼女達から聞いた。どれもが問題視すべき情報だったが、その中でも特に乙音か驚いたのは、ボイスが行方不明であるという事実だった。
「ボイスちゃん、そんな……」
「……ボイス…………どこへ行ってしまったんだ…」
「……あんたが気に病むことじゃないわよ、刀奈。それよりも、乙音の歓迎会でも開きましょう!こういう時はパーっとやってガーッとやって、そしたら大丈夫よ!」
「……そうですね、せっかく乙音お姉ちゃんが帰ってきたんだし、何かパーティーでも……」
そうゼブラが発言した瞬間、彼女達の乗る車、その後方で爆発音が響く。すぐさま後方を確認すると、彼女達が先程までいた空港、そこから大きな黒煙が上がっていた。
「「「「…………!?」」」」
すぐさま四人は車を反転させ、再び空港へと向かう。今は一般には開放されていないとはいえ、あそこには多くの人々がいる。仮面ライダーである彼女達が、見捨てる道理などなかった。
「「「「変身!」」」」
四人は一斉に変身すると、車が止まると同時に飛び出し、爆発によって半壊した空港内部へと突入していく。
「私が嵐で瓦礫を巻き上げる!刀奈は生存者の救助を最優先して!二人は……!」
「僕らは周囲の警戒と、生存者の救助を!」
「ゼブラちゃん……!気をつけてみんな!来るよ!」
桜が支持を出し、中心となって生存者の救助に当たるライダー達。生存者はみな気を失ってはいるものの、命に別状のあるものは今のところおらず、ほっとするライダー達。しかし、当然の権利のように、救助活動を邪魔するものが現れた。
「!?……そんな、あいつは!」
「乙音ちゃん、あいつのこと知ってんの!?」
「はい!でもあいつはアメリカで先輩が倒したはず……!」
『初めましてだね、ライダー諸君』
「貴様、何者だ!?」
『僕かい?僕の名はピューマ。最も美しきディソナンスにして、君達に滅びを運ぶものだ……!』
乙音達の前に現れたディソナンス……それは、つい先日、アメリカで真司が倒したはずの7大愛が一体、ピューマそのものだった。
「あなたが、なぜ……!」
『うん?ああ、アメリカでやられた『僕』の話か。なに、不思議なことじゃあないだろう?エンヴィーだって6体いたんだ……』
ピューマが翼を広げ、指笛を吹く。すると、どこに隠れていたのだろうか?ピューマと全く同じ容姿をしたディソナンスの軍勢が、周辺に現れ始めた。その数は優に百を超えており、その姿はまるで世界の終わりの日、黙字録の日に現れると言われている、地上を焼き尽くす天使達のようにも見えた。
「なんて数………!?」
「これは、少々骨が折れそうだな……!」
「ゼブラちゃん!合体!」
「うん!しなきゃヤバい……!」
『『『さて、オリジナルよりは性能も落ちるが……この数相手に、どこまで持ちこたえられるかな?』』』
乙音達に向かって矢を放とうとするピューマに対し、乙音達は強化形態へと変身する事で対抗する。ライダー達を更なる次元へと押し上げるオーバーライドシステム。その力は強大だが、それを扱うにはそれ相応の覚悟ときっかけが必要だ。
「いくぞ!」
「「「はい!(ええ!)」」」
仮面ライダーツルギ、ゴッドスタイルにフォームチェンジした刀奈は、その速度を生かし、残像を残しながら敵の弾幕の雨を防ぎつつ、既に発見されていた生存者の救助を最優先に行動。続いて仮面ライダーダンス、フェニックススタイルへとフォームチェンジした桜は、その攻撃範囲の広さと高い空戦能力を生かし、ピューマの軍勢を次々と叩き落としていた。
「ゼブラちゃん!私達も!」
『わかった!乙音お姉ちゃん!』
ゼブラと融合した乙音も、仮面ライダーソングO.D.Sスタイルとなって、刀奈でもカバーしきれない攻撃を防ぎ、その突破力の高さで、生存者のために道を切り開いていた。
一見して完璧な連携に、流石のピューマ達も焦り気味となってくる。しかし、その時は突然やってきた。
「…………っ!?変身が……!」
『融合状態が、維持、できない……!?』
戦い始めてからしばらく経った頃、不意にソングが苦しみだしたかと思うと、次の瞬間には非融合状態に戻っており、さらに乙音とゼブラの変身まで解除されてしまった。
「レコードライバーには異常がないのに……!」
「やっぱり、無理なんだ……!」
無論、そんな隙を見逃す相手ではない。ピューマは2人を焼き尽くそうと矢を構える。が、しかし、この場にいるのは最速のライダーと、最大のライダーの2人なのだ。
『rider god blade!!!』
『rider over typhoon!!!』
「「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」
桜が竜巻を起こしてピューマ達の動きを阻害し、刀奈がその竜巻に乗って次々にピューマ達を切り裂いてゆく。さらに桜はファイヤーストームブレイカーまで繰り出し、それを足場として刀奈は空中を華麗に駆け回る。
『ぐ、クソおおおおおおおおおおおっ!!』
「これで……」
「終わりよっ!!」
遂に最後の一体を刀奈の剣が捉え、その身体を切り裂く。生存者達の無事を確認した桜と刀奈は、乙音とゼブラの元に駆け寄る。
「大丈夫か、2人とも!?」
「何があったの?」
「私達も強化形態に変身しようとしたんですけど……何故か、変身できなくて。そのまま変身が解除されました」
「……僕のせいだ」
「え?」
「……以前、強化形態に変身しようとした時も……変身できなかった。だから、多分僕のせいなんだ」
何があったのか問う2人に対し、冷静に説明する乙音に対し、ゼブラは俯いたまま呟いた。その顔は暗く、自分の無力さに絶望しているかのようだった。
「……あー、とにかく!この場はどうにかなったんだから、そう落ち込まないの!」
「う、うむ。桜の言う通りだ。今は本部に戻って、何が原因か探った方がいい」
「そうだよ、ゼブラちゃん……行こう?」
「うん……」
いつも通りの敬語ではなく、まるで子供のようにか細い声で返答するゼブラの姿に、これは一筋縄ではいかないと思う桜と刀奈、そして乙音だった。
『……差し向けたピューマがやられたか、予想以上だな』
『どうする?次は俺が行ってもいいが』
『いや、ここは私が行こう……なに、アメリカのついでだ』
『はいはい、そんじゃー行ってらっしゃい………………たく、仮面ライダー達も運が無いなあ』
『よりにもよって、ガインのヤロウをキレさせるとは……しかもありゃあ、相当キてるな』
特務対策局本部に久々に戻った乙音を待ち受けていたのは、歓迎会……ではなく、精密検査に次ぐ精密検査だった。
ゼブラと融合時の強化形態への変身失敗もそうだが、アメリカでの激闘の爪痕が残っていないかなど、アメリカと連絡がつかないあいだ、確認できなかったことを検査していた。
結果的には、身体に異常はなし。強化形態への変身失敗も、ハートウェーブの問題というわけでもなく、以前乙音が一人でO.D.Sに変身した時はレコードライバーが破損してしまったという事実もあって、なにが原因なのか、さっぱりわからない状態が続いていた。
「やっぱり、僕のせいなんじゃ……」
強化形態に変身できない理由が不明ということもあって、ゼブラはますます自分が原因なのではないかと落ち込んでしまう。そんなゼブラを、乙音たちはなんとか励ましていた。
「だからそんなことないって言ってるでしょ!もう、気晴らしに外にでも出かけましょう?最近はディソナンスの出現報告も目撃情報もないし、ボイスだって行方がわからないままだし、息抜きが必要よ」
「ああ、そう根を詰めてばかりでもしょうがない。今は身体を休める時だ」
「そうだよ、ゼブラちゃん。一緒にお出かけしよう?」
「……そうです、ね。くよくよしても、しょうがないですもんね……わかりました!今日は思い切り遊びましょう!」
そう言って顔を上げたゼブラに対し、待ってましたと言わんばかりの表情でテーマパークのチケットを取り出したのは桜だった。
「そういうと思って、割と近場のテーマパークのチケット、取っといたわよ。ちゃんと四人分あるわ」
「おお、用意がいいですね!さっそく行きましょう!」
その後、テーマパークに移動した乙音達は、思い切り遊んだ。ボイスの問題、日本の問題、ディソナンス達の襲撃、その全てを忘れたように、振り切るように、思い切り。
それは、つかの間の……本当に一瞬だけの、平和な時間だった。
「ディソナンス発生!?場所は!」
『そこから北西の地点です!ビートライダーを向かわせます、それを使ってください!』
「了解した!」
後日、乙音とゼブラが未だ変身への糸口を掴めていないうちに、新たなディソナンス発生の報が入る。
外に出かけていた刀奈と乙音はすぐさま人目につかない場所で変身、遠隔操作でやってきたビートライダーに飛び乗り、そのままゼブラ達と合流する。
「見たこともないディソナンスらしい、気をつけてかかるぞ……!」
「なに、任せておきなさいって、乙音、ゼブラ、あんたらも変に気負わないようにね」
「はい!わかってます」
「………………はい!」
現在はゼブラも調子を取り戻しているが、乙音には不安と疑念があった。自分達の考えでは、結局ハートウェーブの量が足りないから強化形態の変身状態を保てないのではないかという結論が出たが、理論上は計測されたハートウェーブの量に問題はないはずだった。事実、乙音自身は単体で変身が可能だったのだ。では、ゼブラが原因なのだろうか?これも違うだろう。ゼブラは乙音の分身ともいえる存在であり、彼女に問題がないことは、乙音も、そしてゼブラ本人も理解はしていることだった。ならば、強化形態に変身できないのは……
「もうすぐ到着よ……気を引き締めていくわよ!」
桜の声に、乙音ははっとなって思考を中断する。そうだ、今は自身のことについて考えている暇はない。これから相対する相手の事を考えなければ。乙音は一旦自身の考えを頭の隅に追いやり、ビートライダーを走らせる。
「!……居たぞ!」
そして走ること数分。オペレーターが伝えた出現場所から殆ど離れていない地点に、一体のディソナンスが立って……いや、聳えていた。
まるで城壁のように巨大なその体躯は、銀色に輝き、その頑健さと威圧感をこれでとかと強調してきている。
腕と思わしきパーツも巨大な盾のようなものがついており、その威容は、見るものに恐怖を与えるには十分なほどの迫力を伴い、そこに佇んでいた。
『……来たか』
「刀奈……」
「わかっている、速攻を仕掛けるぞ!」
そのディソナンスの姿を確認したふたりは、すぐさま強化形態へと変身。桜が派手な嵐を起こし、それに紛れて刀奈がディソナンスにせまる。
(この、ディソナンス……硬そうね、なら!)
(ああ!装甲の隙間から狙い斬る!)
ふたりの作戦は至極単純。桜が陽動を仕掛けている間に、刀奈が速攻で仕留めるというものだった。だが、単純故に効果は絶大、新たなディソナンスは名乗りをあげる間も無く消滅する、はずだったが……
ガキィン!
「な……!馬鹿な!」
「刀奈の斬撃が……止められた!?」
『確かに早い……だが、この俺の防御を突破できるほどではないぞ!』
ディソナンスが咆哮を上げ、自身に剣を突き立てようとしていた刀奈を弾き飛ばす。強化形態のライダーを容易く吹き飛ばすそのパワーにもそうだが、刀奈は隙間すら存在しないその防御力に戦慄した。
「こうなれば、必殺の技で!」
「それしかないみたいね!」
『rider god braid!!!』
『rider Phoenix strike!!!』
桜と刀奈はその防御を突破するために、全霊を込めた必殺技を発動する。刀奈の剣は光となって振り下ろされ、桜はその身に炎の嵐を纏って突撃する。
「「でいやあああああああああああああああああああっ!!」」
7大愛級のディソナンスでもひとたまりもないであろう攻撃が、巨大なディソナンスに降り注ぐ。この時、刀奈と桜はこれで倒せると確信していた。乙音達が強化形態に変身できないいま、自分達が出せる最大の火力を叩き込んだからだ。
だが…………
「う……嘘っ!?」
「無傷だと!」
『この俺の防御を……正面から貫けると思わぬことだ!』
2人の必殺技を喰らった筈のディソナンスは、無傷でそこに立っていた。その銀色の体躯にはかすり傷一つついておらず、その威容は絶望感すら刀奈達に与えていた。
『それ……返すぞっ!』
「……!これはっ!?」
「なに……きゃあっ!」
「桜さん、刀奈さん!」
「先輩達っ!」
ディソナンスがその体躯を一瞬だけ縮めたかと思った瞬間、刀奈と桜に向けて凄まじいまでのエネルギーが放出される。そのエネルギーの奔流に吹き飛ばされた刀奈達を受け止める乙音とゼブラだったが、受け止めた彼女ですらその勢いを止めきれず、共に地面に転がってしまう。直撃を受けた刀奈達に至っては、変身まで解除してしまっていた。
「まさか、さっきの必殺技のエネルギーを吸収して!?」
『そうだ……防御と、吸収。単純にして最硬の能力こそが俺の真価!』
「きさ、まは……」
『俺の名はガイン!7大愛が一体
ガイン、そう名乗ったディソナンスは、乙音達に向けて、一歩、また一歩と歩みを進めてくる。その様子に、思わずたじろぐ刀奈と桜。
今まで戦ったディソナンス達も、確かに強敵だった。しかし、このディソナンスは自分達の必殺技すらも真正面から跳ね返してみせた。
圧倒的な、種族そのものとしての差、格の違い。それを認識させられたようで、2人の心には若干の怯えが芽生えていた。
しかしーー
「先輩達、下がっていてください」
「あいつは、僕とお姉ちゃんで倒します……!」
2人は、違った。
強化形態にも変身できない現状で、勝てるわけがない。だが、2人の目には迷いも恐れもなかった。
あるのはただ、大事な人たちを傷つけられたことと、これから傷つけようとすることに対しての、怒りだけだった。
「乙音くん!ゼブラくん!無茶だ!」
「そうよ、一旦、引きましょう!」
「すみません、それをしてしまえば……大きな被害が出る」
「それに、敵は逃がすつもりはないみたいです……!」
ゼブラがそう言葉を発した瞬間、ガインが巨体に似合わぬ速度で走り迫ってくる。
まさに、城壁がそのまま迫ってくるかのような威圧感。それを乙音とゼブラはディスクセッターによる射撃で迎撃するが、その銃弾は分厚い鎧に阻まれるだけ。
『その程度なら、俺の相手ではない!』
『『rider double strike!!!』』
ぐおっ、と迫り来る巨体を、2人は必殺技で阻もうとする。同時に同じ地点に蹴りを叩き込む、見事な必殺のコンビネーション。しかし、そのエネルギーすらも、ガインは吸収してしまう。
『このまま貴様らの力を吸収し尽くしてくれるわ!』
「2人とも、離れろ!奴に力を与えるだけだ!」
「いいえ……いつかはパンクするはず、なら!」
「2人分のハートウェーブでええええええええっ!!」
刀奈の忠告にも耳を貸さず、ますますそのハートウェーブを高める2人。その2人の様子に、刀奈と桜は目を見張り、ガインは予想外の事態に驚く。
『ぐぅ!これは……まさか!俺が、ハートウェーブを吸収しきれていないだと!』
ガインのハートウェーブ吸収能力は、そもそもが土地と、そこに住む人を枯れ尽くすためのものだ。だから、例え100人分のハートウェーブを一度に叩き込まれようとも、吸収しきれないなんてことはない。それは、常人の数倍、いや数十倍のハートウェーブを持つ今のライダー達相手でも言えることだった。
ーーガインはライダー相手にほぼ無敵である。そもそも音成に絶対の服従を彼が誓っているのも、その能力の危険性ゆえ、音成から他のディソナンスよりも強く自身に服従するようプログラミングされているからだ。
ーー俺が、たった2人のハートウェーブに……!
認めるわけにはいかなかった。天城音成の第一の配下として、7大愛のリーダー役として、たった2人に押されるなどあってはならないことだった。しかし現実は非情にも、ガインの鉄壁の守護を、その無慈悲な鉄槌で打ち砕いた。
「「いけええええええええっ!!」」
『ぐぅおおおっ!!』
乙音とゼブラによる、渾身の一撃。それが遂に、ガインのその巨躯を弾き飛ばす。2人の攻撃を受け止めていたガインの腕部分には、真っ黒な焦げ跡が付いていた。
「馬鹿な……!本当に!」
「やってみせるなんて……さすがね!」
「ゼブラちゃん、今の感覚……」
「うん、これなら……いけるかもしれない!」
刀奈と桜が喜ぶのもつかの間、ガインはすぐさま立ち上がる。その視線は乙音達を射殺さんばかりのものであり、激しい憎悪がそこには宿っていた。
そして、その視線を受け止める乙音達は不可解な行動をとる。強化形態に変身できないいま、ガインの特性上二人掛かりでかかった方が得策だというのに、一つに融合したのだ。しかめその両腕には、ディスクセッターが装着されていた。
『貴様ら……貴様らは俺の手で殺す!』
「ゼブラ……いくよ!」
「うん……!」
ガインか乙音達を押しつぶさんと迫る中、乙音とゼブラ……ソングは両腕に装着したディスクセッターのレバーを、腕をクロスして、その手で押し上げる。本来は片手で引くような構造なのだが、両腕に装着したディスクセッターを同時に稼働させるには、こうしてレバーを押すしかない。
すると、ソングの両側に光の輪が出現する。その現象に驚く刀奈と桜だったが、彼女達にはもう、乙音とゼブラが何をしようとしているのか、そして、2人が強化形態に変身できなかった理由もわかっていた。
2人が強化形態に変身できなかった訳ーーそれは、2人のハートウェーブの量が多すぎるために、一つのディスクセッターではその力を制御しきれず、結果的に、ドライバーの破損などが起こってしまっていたのだ。
だが、今のソングにはディスクセッターが二つ装着されている、これが意味するものはーー
「変、身……!」
ーーその言葉とともに、辺りが極光に包まれる。まばゆいまでの光に、誰もがその目を閉じる。
そして、目を開けた時、そこに響くのは歌。繋がるのは魂と肉体、そして心。そこに立っているのは、いま生まれたのものはーー
『仮面ライダー……ソングッ!!』
高らかにソングの声が響く。そう、いま立っているのは乙音でもゼブラでもない、2人が融合し昇華した、全く新しい仮面ライダー!
その名を……ソングという!
《言葉じゃ……どうにもならない、事ばかり》
『うおおおおおおっ!』
《涙と……一緒にこの世に、溢れてる》
ソングが駆ける、走る、跳ぶ。ガインの巨体を飛び越え、その背後をとる。
《それでも……人は繋がると、信じてる》
『くっ……!させるか!』
だがガインも流石で、ソングの速攻にも対応し、その拳を腕の盾で受け止める。止まるソングの攻撃。しかし次の瞬間、爆発的なセカンドインパクトがガインの身体を襲い、その身体を吹き飛ばす。
《それは……私も一緒さ》
「すごい……」
「あれが、ソングの力……強化形態、オーバーライドシステムの真価……!」
ソングの手に、二つの槍が握られる。不揃いのその槍は、しかしそうあるのが当たり前のようにセットとなって、ソングに振るわれる。
『はあああああああっ!!』
《繋がる…………》
『馬鹿な、この力……!』
二つの槍が、ガインの装甲を削り、剥ぎ取ってゆく。その様はまるで、鎌で草を刈り取るかのようだった。
《song is hope そうさ僕らは》
『でいやあああああっ!!』
《誰もがみんなおんなじ命で》
ソングの蹴りが、ガインの身体を宙に押し上げる。ガインは必死で抵抗するが、ハートウェーブの爆発になすすべもなく打ち上げられる。
《song is hope そうさ私達》
『グウウウウウウウウああああああ』
《誰もがホントは通じ合えるから》
ソングの連続パンチによって、どんどんと空中へと押し上げられていくガイン。そして雲の上まで到達した時、ソングは必殺技を発動する。
《手と手を合わせ》
『Over the Over!!!』
《目と目で通じて》
『うおおおおおおおおおおおおああああああああああああああっ!!!!』
《心と心、触れ合い伝わる》
『Rider Heart Wave!!!!!』
ハートウェーブそのものと言える程の一撃、それがガインの身体に叩き込まれる。
《song is hope そうさ歌おう》
『があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
《想いよ》
《響けと……!》
ソングの一撃、それを受けたガインが、ソングとともに地面に落ちてくる。
華麗に着地したソングとは対照的に、ボロボロの状態で地面に這い蹲るガイン。その姿を見たソングは、変身を解除する。すると、その姿は元の乙音とゼブラに戻った。
「戻った……」
「やったね!お姉ちゃん!」
「すごいじゃない、ホントすごいじゃない!」
「ああ、よくぞあそこまでライダーとして強くなったものだ……」
『クック……呑気なものだ』
倒れ伏すガインを前にはしゃぐ乙音達を見て、突然ガインが笑い出す。嘲りを込めたその笑いに、ムッと反応する乙音達。しかし、次のガインの言葉を聞いて、その顔には焦りと驚きが浮かぶ。
『アメリカは、もう既に我らの手に落ちたというのに……!』
「何!?」
「えっ……!」
「そんな!?」
「…………先輩達!」
アメリカーーニューヨーク上空、巨大浮遊要塞
「さて、アメリカはほぼほぼ制圧……残党の抵抗は激しいが、残る拠点はワシントンD.C.のみ……と」
「ボイスは目覚め、ソングは覚醒した……さあ、次は君の番だ」
「最強のディソナンス、デューマン……!」
第2部・仮面の奥で
完
第3部へと続く……
第3部……次回予告
制圧されたアメリカ合衆国
「巨大な空中要塞だ」
「ビート部隊、通信途絶!」
「あんな化け物、どうやって戦えってんだよ!」
奪還に向け動き出すライダー達
「私が行きます」
「俺は逃げるわけにはいかない!」
「ここでカッコつけなきゃ、男に生まれた意味がないんでね……!」
ボイスを襲う不穏な影
「君はどちらを選択する?」
「涙は……もう流させない」
「心を……全てを壊す!」
そして、絶望……
「馬鹿な!」
「ライダーの反応、途絶しました……っ!」
「最強のディソナンスだ!」
「ゼブラちゃんっーー!!」
「大丈夫だよ、乙音お姉ちゃん……」
仮面ライダーソングdisc3・絶対なる望いの中で 近日執筆開始予定