仮面ライダーソング   作:天地優介

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Song is Hope

  外で戦いが繰り広げられる一方、乙音の病室では、香織が時おり響いてくる爆発音も気にせず、乙音とキキカイ達の様子を見つめていた。

  様子に変わりはなく、用意された機器にも動きはない。この状態のままで、既に数時間か経過している。

 

「乙音ちゃん………」

 

  この機を逃せば、乙音は二度と目が覚めない。そう直感し、病院に残った香織。しかし乙音は目を覚まさず、戦闘による破壊音は徐々に病院へと迫っているように感じた。

  早く、早く戻ってきてほしい。せめて戦えなくてもいいから、乙音の目が覚めてくれれば。そう願い、思わず祈る香織。

  その願いが届いたのかどうなのか、彼女の目の前で動きがあった。ハートウェーブの輝きを放っていたキキカイ達だが、その輝きがひときわ大きくなると同時、機器に表示された大量の数字が、一斉に上昇を始めた。

 

「これは……!?」

 

  香織が慌ててこの状況に対応している中、乙音の心の中ではキキカイ、ドキ、バラクの三名が荒野の中を彷徨い歩いていた。

  そう、荒野だ。空は赤く染まり、地面も赤茶色に変色した荒野。

  心というものは様々なもので言い表される。例えば鉄、例えば海、例えば花、例えば空。

  だがーー草木はおろか、命の存在すらも感じない荒野など、およそ常人が内に秘めるべき心ではない。

  この凄惨な光景は、乙音の心が死にかかっているという証拠だった。

 

『……ゼブラが死んだことが、そこまでショックだったのか?』

『それもあるんでしょうけど、なにか変ね。というか、この状態はカナサキの時に似てるワケだから……』

『……天城音成はカナサキの肉体を取り込んで復活した。その天城音成の精神と力を継いだデューマンもカナサキと同じディソナンスだ。ならば、カナサキの能力を使えるのではないか?』

『……なるほど。もしかしたら、Dレコードライバーの力で更に強力になってるかも………たく、面倒なことね』

 

  3人は疲れた様子もなく、なんともなさそうにそんな事を話しながら荒野を歩く。だが、ここは心の中の領域。いかにディソナンスと言えど……いや、むしろハートウェーブを生命力とし、精神に寄った知的生命体であるディソナンスだからこそ、こんな心の中で下手に隙を晒せば、侵食を受けて絶望に染まってしまうだろう。

  だが、焦ってはいけない。焦りは心に伝播し、逆に自体の解決が遠のいてしまう。いくら時間がかかったとしても、今は歩くしかなかった。

 

  …………そうして、3人の体感で数十日が経過したころ、彼等の視界の中に、ようやく赤と茶色以外の色が入る。

 

  それは、緑だった。

  まだ種の状態ではあるが、植物が持つ天然の優しい緑。それが輝きを放ち、荒野の中に色彩を与えていた。

 

『あれが……』

『木村乙音………ソングの、心に残った希望』

 

  キキカイ達が近づいて観察するが、その種は小さく、更に周囲の赤色に侵食されてしまっていた。バラクが触ろうと手を伸ばすが、その瞬間にバラク自体にも赤色の侵食が迫り、慌てて手を引っ込める。

 

『……やるしかないか。覚悟は出来てるな?』

『当然よ』

『……よし、いくぞ』

 

  3人は顔を見合わせると、深呼吸の後にタイミングを合わせ、3人同時に種に手を伸ばす。

  すると、種の周囲の土から赤色のオーラが噴き出し、3人を侵食してきた! おそらく、取り込んで養分にでもするつもりだろう。デューマンが施した罠であった。

  しかし、それでも3人は手を伸ばすことをやめない。乙音を助けるために。

 

『私達が、これっ、ぐらいで……っ!』

『あん時、真司とボイスからもらった一撃の方が、キツイぜ……!』

『………おおおおおおおおお!!』

 

 

  赤色のオーラの侵食が顔にまで到達しても、3人は決して諦めないし、元からそのつもりもない。1人でも種に触れ、乙音の心を救い出す……!

 

『『『うおおおおおおおおおっ!!!』』』

 

  そして、種に触れたのはーー3人同時。そして3人が種に触れたのと同時に、赤色のオーラが緑と()()オーラによって駆逐されていく。

 

『今の色……まさかカナサキの……?』

『おい! 見ろ!』

 

  ドキがすぐに霧散してしまった青色を追うように空へと視線を移すが、バラクに促されてすぐに種に視線を戻す。すると、種からは強烈な緑の光が発せられていた。

 

『………!』

『これは…………』

『……凄え…………暖かい…………』

 

  その光は、優しく3人を包み込んでいき………

 

 

 

 

 

 ギィン!

 

「がはっ…! ぐっ、く……」

「刀奈! があっ!?」

『余所見とは余裕だな?』

『どうだ?俺達の力は』

「強い……!」

「明らかに、前より強くなってやがる…!」

 

 真司達4人が駆けつけて来ても、状況はディソナンスに有利に動いていた。

 そもそもが大量のディソナンスを病院に近づかせないようにするだけでも大変だというのに、それに加えて7大愛のうち3体が連携をとって襲いかかってくるのだ。ボイスを助け、後方に下がらせることはできたが、それもゲイルとガインが彼女に執着していなかったからだ。

 

「はあっ! ぐっ……うおおっ!」

「攻撃が、通じねえ……っ! テメェら、なにを仕込んでやがる!」

 

 真司がファングの強烈なパンチ力でガインにラッシュを仕掛けるが、逆に彼自身の拳がひび割れそうなほどの衝撃が返ってきたというのに、ガインは全く動じていない。

 ゲイルも同様で、シキがビートチューンバスターをどれだけ撃ち込もうと、全く気にした様子もなく突っ込んでくる。

 

『ハッハァ! スゲェなぁ、こいつは! 俺の身体は無敵になった! テメェらに倒せるわけねえだろうがあっ!』

「ぐああああああああっ!!?」

「シキ! 大丈……がっ!!」

「うああああああああっ!?」

「きゃあああああああ!!」

『俺の攻撃能力も上昇している……貴様等に遅れはもうとらん』

 

 ゲイルの周囲には次元を隔絶するバリアが張られている。そのため、次元を撃ち抜くほどの攻撃でなければゲイルにダメージを与えることはできない。それの攻略に手間取ったシキの身体を、水と槍を操るゲイルの一撃が貫いた。

 ガインは逆に攻撃能力を高めた。防御能力に関しては単純な強化改造で補えるほど元から高かったため、エネルギーの吸収とその放出による攻撃に、更なる指向性と収束性をもたせたのだ。それによって放たれた光線は、シキの悲鳴に反応してしまった真司を焼き、その背後でチューナーと戦っていた刀奈と桜をも吹き飛ばす。

 

「がっ、は……はぁっ……はぁっ……」

『……まだ立ち上がるか』

『チッ! 面倒くせえやつらだ…………おい、チューナー。構わん、喰っちまえ』

『グウルルルルルアアア……』

 

 焼かれても貫かれても立ち上がり続けるライダー達。その姿に面倒になったのか、それとも飽きたのか。ゲイルはチューナーに捕食命令を出す。ハートウェーブだけではなく、その肉体を喰らえ、と。

 泥のようになっていたチューナーの巨体が変化し、人型をとる。しかし黒塗りの体躯であるのは変わらず、全身に無数の口と目が生えたことで、生理的嫌悪感はますます増大した。

 しかし、恐ろしい怪物となったチューナーの姿を見ても、ライダー達の闘志は衰えない。

 

「こんな事で、諦めるわけにはいかない!」

「そうよ……相手がどれだけ強くても、私達は戦ってきた!」

「今まで守ってきたモンを、テメェらみてえな外道にっ! 否定されてたまるかよ……っ!」

「……そうだな。その通りだ」

(……本当はわかっている。今の俺達では、普通のディソナンスの相手すら困難……)

(だが、この内に眠るハートウェーブが尽きない限り……諦めるわけにはいかない!)

 

 よろめく身体を支え合いながら、ライダー達は立ち、武器を構える。装甲はひび割れ、仮面が壊れて素顔が見えかけているが、それでも再び立ち上がる。

『グウ……ガアアアアアアッ!!』

「……っ、来い!」

 

 チューナーが咆哮を上げ、歪な人型の足で大地を揺らしながら迫ってくる。それに対しライダー達は各々の武器を構えーー

 

 バキュウウン!!

 

『ガァッ!?』

「銃声!?」

「ディスクセッターの……まさか!」

 

 銃声が響き、警戒していなかったチューナーの目に銃撃は命中。チューナーは怯み、後退する。チューナーの目を射抜いた銃撃の音は、ディスクセッターから発せられるものだった。

 ボイスはディスクセッターを装着しておらず、今は後方にいるはず。まさかと思い、銃声の鳴った方角へ一斉に振り向くライダー達。

 

「ああっ……!」

「そうか……ようやく………」

「帰って、きたか……!」

「乙音ちゃん!」

 

 

「はい……久しぶりですね、先輩達」

 

 

 手足は細くなっていた。当然だ、眠り続けていたのだから。

 服装も病院服のままだ。慌てて駆けつけたのだから仕方ないが。

 長い……長くなった髪にも白いものが混じり、とても健康体には見えない。

 しかしーーその目に宿る闘志こそが、彼女の復活を告げていた。

 

「……変身!」

 

『Change the Record!』

 

『My song My soul!』

 

 乙音は腰に巻かれたレコードライバーにライダーズディスクを装填し、変身する。

 変身するのは仮面ライダーソング・ベーシックスタイル。乙音のライダーとしての、始まりの姿。

 

「後輩! そんな姿では無茶だ!」

「いや…ゼブラがいないのだから、強化形態にはなれない…………新型レコードライバーはどうした!?」

 

 乙音がベーシックスタイルへ変身したことに驚く真司達。その疑問に答えたのは、乙音の後から来た香織だった。

 

「みんな! 新型レコードライバーの起動には、今の乙音ちゃんのハートウェーブだけでは足りないわ!」

「なんですって!?」

「ディスクセッター! そこから乙音ちゃんにハートウェーブを送り込んで! あなた達のハートウェーブも、乙音ちゃんに託すのよ!」

「先輩達……お願いします!」

 

 そう、新型レコードライバーの起動には、今のゼブラがいなくなってしった乙音1人ではハートウェーブの量が足りない。だからこそ、香織はそう分かると即座に起動のために必要なハートウェーブをまかなうための策を考えた。

 それが、真司達ライダー全員で、乙音にハートウェーブを送り込むという策だ。乙音が変身したのは、ハートウェーブ送り込まれる時の反動と衝撃、そして想定される敵の妨害に対応するために、いま変身できる唯一の姿であるベーシックスタイルとなったのだ。

『ハ……ハハハハハハハハ!! 笑わせやがる! ちっぽけな人間が、他の人間のハートウェーブを取り込むだって!? そんなもん、うまくいくわきゃねえだろ!』

『ゲイルの言う通りだな。貴様等がそこまで愚かだったとは……他者のハートウェーブを取り込む機能をもたせ、実際に取り込んだチューナーは進化を遂げた。だがその末路がこれだ』

 

 ガインとゲイルの言うとおり、心の力であるハートウェーブを吸収するということは、他者の純粋な思念の塊をぶつけられるということに等しい。それを複数人で行おうというのだ、正気の沙汰ではないように映るだろう。多くのハートウェーブを取り込んだが故に理性を失い、ディソナンスとすら呼べない単なる怪物と化したチューナーを知っている両者からすれば、乙音が今からやろうとしているのは盛大な自殺に等しかった。

 

『木村乙音.貴様がそこまで愚かだったとは……せめて俺の手で引導を渡してやろう』

「…………!」

『させるかっ!』

 

 ガインが、溜め込んだハートウェーブをビームとして一気に放出するために、チャージを開始する。それに対応するために構えた乙音の真横を、一発の銃撃が通り抜けた。

 

『うおっ!?』

 

 銃撃はチャージ中のガインに命中し、チャージを中断されたガインはよろめき転がる。銃撃を放ったのは、さっきまで後方にいたはずのボイスだった。肉体はとうに限界を超えているが、デスボイスに変身している。

 

「……ボイスちゃん」

『遅えんだよ、乙音。………オレのハートウェーブも、受け取ってくれ』

「うん……!」

 

 乙音はボイスに自分のディスクセッターを渡し、ボイスもそれを装着する。そして乙音もボイスのレコードライバーをベースに、そのフレーム段階から改造と改修を加えた新型レコードライバーを装着する。

 

『貴様等……正気かっ!?』

「……行きます!」

「全員、一斉にハートウェーブを照射しろ!」

 

 乙音の合図に合わせ、ボイス、真司、刀奈、桜、シキがディスクセッターからハートウェーブを照射する。

 ハートウェーブの光が合わさり、虹色に輝く。その光景は美しいものだが、中心にいる乙音は変身状態であるにもかかわらず胸を押さえ、苦しみ出していた。

 

「ぐっ!? あっ、ぐっ……うううううっ!!」

「乙音ちゃん!」

「止めるな! ……後輩を、信じるんだ!」

『乙音ぇ! 踏ん張れえ!』

「ぐっ……ううううああああああああああっ!!!」

 

 5人から放出されるハートウェーブ。その奔流を乙音は耐えていたが、問題は5人の方にもあった。

 

「くっ……!」

「刀奈さん!?」

「大丈夫だ! ……耐えてくれ、乙音くん!」

(……くそ、やっぱ足りねえか! オレも、限界が近い……)

 

 そう、5人は既に戦闘によって消耗しており、放出可能なハートウェーブの量も少なくなっていた。このままでは、新型を起動させるには少し足りない。

 

『それでも……!』

「あぐうううああああああああああ!!!」

「俺達のハートウェーブ…全てを託す!」

 

 ライダー達が乙音にハートウェーブを送る光景を、ディソナンス達は冷めた目で見ていた。

 偶然で誕生した旧ディソナンスと異なり、ガイン達新ディソナンスは音成の手によって意図的に作られた存在。奇跡を信じる『心』など、持つはずもない。そんな彼等にとって、今の乙音達はつまらない茶番劇を演じているようにしか思えない。

 ゲイルはしびれを切らし、静かに自身の周囲に乙音達を貫くための水流を集め始めた。

 

『……チッ、つまらねえな………やっぱ仕留めるか?』

『そうだな……そう…………いや、待て』

『あ? ………おいおい、こりゃどうしたんだ?』

 

 しかし、ゲイルのその行為は中断される。それはガインが止めたからではない。純粋に、自分が今見ているものに驚いたからだ。

 

「ライダー! 頑張れーっ!!」

「俺達を、守ってきてくれただろー!?」

「ディソナンスなんて、ぶっ飛ばしちまえ!」

「負けるなー!」

「やっちまえぇぇ!!」

 

  いつのまに集まったのだろうか。大量のディソナンスがいるにもかかわらず、多くの人がライダー達に向けて声援を送っていた。

  建物の中から声を送っている人がほとんどであるため、逃げ遅れてしまった人達なのだろう。しかし、黙っていれば少なくとも生存の可能性は僅かにでも上がったはずだ。

  それでも、彼等が声援を送っている理由。それを理解できず、ディソナンス達、特にゲイルとガインは戸惑う。

 

『なんだあいつら……!? ソング達になにを期待しているってんだよ!!』

『なんだ……なんだ、この状況は!』

 

「これは……!」

「みんなが、応援してくれてる…!」

「後輩! 聞こえるかっ!? 俺達の背中を押す声が! お前を支える声がっ!!」

「乙音さん……! 俺達のハートウェーブを、全て!」

『もっていきやがれぇぇぇっ!!』

 

 

「う、ぐ、う………ああああああああああああああああっ!!」

 

 

『なんだっ!?』

 

  その時、乙音の身体に向けて放たれているハートウェーブの光が量を増す。そのハートウェーブの出所は、なんと周囲の人々からのもの。

  彼らのライダー達を応援する声が、思いが、光となって乙音へ集まっていく。

 

「これならっ……! 変身維持分のハートウェーブも回せ!」

「うおおおおおおっ!!」

 

  これに真司達も奮起し、自身の中のハートウェーブを搾り尽くす勢いで放出する。変身維持分までも回しているため、徐々に手足の装甲が解除されていく。最初にダウンしたのは刀奈、その次に桜の変身が解け、シキ、真司、そして最後にボイスの変身が解除される。

 

「どうだ……?」

「うっ、うう……うう、うおおおおおおおおおお!!」

 

  乙音が咆哮を上げる。それは苦しみ故のものではない。みなぎる力を抑え、自分のものとするための叫び!

 

『馬鹿な! 人間にあれだけのハートウェーブを制御できるわけがねぇっ!』

『むうっ!!』

 

  ここに至って、ようやく乙音が大量のハートウェーブを制御しつつあることに気づいたゲイルは驚愕し、ガインは即座に乙音に向けて光線を放つ。それを食い止めることができる者は、真司達の変身が解けたいまおらず、光輝いている乙音の身体が、ドォォォォォン! という強烈な爆発音と共に爆炎に包まれる。

 

「……っ、後輩!」

 

「乙音くん!」

 

「乙音ちゃん!」

 

「乙音さん!」

 

『乙音っ!!』

 

『これで終わりだな……木村……乙音!』

 

  炎に包まれた乙音を見て、愕然とする真司達。しかしその時、何処からか声が響いた。

 

「いいや……まだ、終わってない!」

 

『……なんだと?』

 

「……フ、前にも、こんなことがあったな」

「ああ……あれは、バラクと戦った時だったか」

 

  爆炎が晴れていくと共に、その炎に焼かれたはずの乙音の姿もあらわになる。

  彼女は五体満足でそこに立っていた。変身は解除されているが傷ひとつ彼女にはなく、代わりにあるのは、その目に宿る闘志!

  乙音は新型レコードライバー…… S(ソング)レコードライバーの彼女から向かって右側のレバーを弾き、ドライバーを開く。

  そこにセットするライダーズディスクは、既存のものではない。彼女の身体から虹色のハートウェーブが放出されると、それがひとつの形をとり、新たなライダーズディスクへと変化する。

 

『なんだ、そのディスクは!?』

 

「これが……私達の希望だ!!」

 

【ディスクセェェェット!!】

 

【ドライバー イン ホーープ!!!】

 

  ライダーズディスクがドライバーに装入され、待機音が鳴り響く。そして……乙音は叫ぶ。

 

「…………変身!」

 

 

【オーバー ザ ライド!!】

 

【オーバー ザ フューチャー!!】

 

 

【Yes! ……ソング イズ ホォォォォォプッ!!!】

 

 

  Sレコードライバーから放たれる声と共に、ソングへと変身した乙音の身体より、コォォォン……という音と合わせてハートウェーブの輪が放たれる。

 

『ぐあっ!?』

『おおっ!?』

『グギャアッ!』

「これは……傷が、癒されていく」

『……っ、この、感覚……まさか、オレ……?」

 

  虹色の輪はディソナンス達を吹き飛ばし、ライダー達に癒しを与える。特にボイスは完全にディソナンスとなってしまっていた身体が、人間のものに戻っていくことを感じていた。それも、痛みもなく。

 

「凄え……」

「まだまだ、ここからです」

 

  今の乙音の姿は、白と黒が入り混じった装甲に、足首まである長い腰マントには付箋に乗った音符が描かれている。上半身はそこまで素のソングから変化していないが、肩のアーマーには右肩のものにメガホンの、左肩のものには桜の意匠が盛り込まれており、頭部の形状は通常のソングから大きく変化。丸く大きな両目があり、黒い右目からは牙のようにギザギザとした触覚が、白い左目からは刀のように鋭く反った触覚が伸びている。

  そして額には白黒にではなく虹色に輝く宝石があり、それが日の光を浴びて、神々しい光を放っていた。

 

「仮面ライダー……ホープソング。それが、今の私」

「ホープ、ソング……」

「まさに希望か……!」

 

  Sレコードライバーから、歌が流れ出す。確かに力強い乙音の歌声で、優しさをも感じさせるような歌が。

 

「さあ……希望の歌、響かせる!」

 

 《名も知らぬ誰かが、私の背を強く押す》

 

「ソングーー!」

「頑張れー! いけーっ!」

 

 《だから強く立ち上がれる……前を向いて》

 

『いけっ! テメェら!』

 

  ゲイルの命令に応え、空から陸から無数のディソナンスが乙音に襲いかかる。真司達が数を減らしたとはいえ、その数はやはり多い。

 

 《誰かを失う恐怖。それに……震えても》

 

「後輩! 気をつけろ!」

「乙音ちゃん、必殺技よ!」

「乙音くん、ここは突っ込め!」

 

 《支えてくれる人達がいるから……もう大丈夫》

 

「はあっ!」

 

  乙音が気合を入れて一歩を踏み出すと、変身時と同じく虹色の輪が放出され、それが無数のディソナンスを押し返していく。

 

『なんだと……!』

 

 《最高のソングを、世界に歌ったら》

 

【レコード チェンジ!!】

【ボイス アクト!】

 

「オレの武器!?」

「あれはボイスのライダーズディスク!? 生み出せるのか!」

 

 《心の荒野に、希望の種が……芽生えて》

 

  乙音がSレコードライバーにボイスが使用していたライダーズディスクを装入すると、その手にボイスの武器だったメガホン銃が現れる。

  ライダー達のハートウェーブを受け誕生したホープソングは彼らの使うライダーズディスクを生み出し、それをSレコードライバーに装入する事でライダー達の武器を扱えるのだ。

 

 《闘いのその先に!》

 

【ボイス! ライダー シュート!】

「はあっ!」

 

 《希望がないのなら》

 

  乙音が彼女から向かって左にあるSレコードライバーのレバーを弾き、必殺技を発動。メガホン銃から放たれた巨大な弾丸はディソナンス達だけを傷つけ、爆散させていく。

 

 《自分が希望となって!》

 

 《その先へ進め!》

 

『……ちいっ! 調子に乗るなよ!』

「……!」

 

  ゲイルが乙音に向けて槍を突き出し、乙音はそれを避け、カウンターで蹴りを当てる。しかしゲイルの次元バリアに阻まれ、ダメージを与えられない。

 

「だったら!」

 

【レコード チェンジ!!】

 

 《牙とは研ぎ澄ますもの!》

 

【ファング アクト!】

【ファング! ライダー パンチ!!】

 

『う、うおおおおおお!?』

 

 《信念だってそうなのさ》

 

  乙音がファングの力を使い、ゲイルに拳を叩き込む。手に生えた牙がゲイルの身体に喰らい付き、ハートウェーブを叩き込んで彼の身体を吹き飛ばす。

 

 《さあ最後のその時まで!》

 

『ぐ……あ、くそっ…くそがっ!』

「はあっ!」

『無駄……があっ!!』

 

  吹き飛ばされたゲイルはまたすぐに乙音に向けて駆け、猛スピードで槍を突き出す。しかし乙音はさきほどの攻撃で次元バリアを無効化した。今度は蹴りがクリーンヒットし、建物の壁に激突する。

 

「今だ!」

 

 《声を張り上げ……》

 

【ボイス アクト!】

 

「炎の翼! 私が最近習得した技も…!」

「いけっ! 乙音ぇぇぇぇっ!!」

 

【ボイス! ライダー ツインシュート!】

「うおおおおおおおお!!!」

 

 《Song for you!!》

 

  ダンスが使う炎の翼を広げ、両手にボイスの二丁拳銃『リベリオン』を持ちながら、空へと舞い上がった乙音は、必殺技によって空のディソナンス達を撃ち抜いていく。

  必殺技が終わるころには、空も地上も、7大愛の三体以外のディソナンスは全滅していた。

 

『グギャアガアアッ!!』

 

 《喜怒哀楽の感情が、自分の心作ってく》

 

「キキカイ、バラク、ドキ! あなた達の力も!」

『預けるわぁ! 乙音ちゃん!』

『存分に使え』

『破壊の力で、守ってみやがれ!』

『ガァッ!?』

 

 《たとえそう不協和音(ディソナンス)としても……必要さ》

 

  突進してきたチューナーに対し、乙音はSレコードライバー中央にあるボタンを押す。するとキキカイ、ドキ、バラクの声が響き、3人の力を合わせた波動がチューナーの動きを止める。

 

 《心の中にノイズが……走るなら》

 

「キキカイ!? それにバラクにドキも!」

「良かった……乙音ちゃんの中にいるの!?」

『うふふ、あの後消えるかと思ってたけど……』

『こいつが俺たちを受け入れてくれたおかげでな、今は融合して力を貸してる!』

『私達のハートウェーブも乗せて…行け! ソング!』

「うん!」

【フォースメロディー!】

【ユニゾンシュート!】

 

 《確かな愛をもってさあそれを……砕こう》

 

  乙音がSレコードライバー中央のボタンを押し、それならレバーを弾いて必殺技を発動。乙音の手に出現した槍を宙に放り投げ、オーバーヘッドキックでチューナーへ向けて蹴り飛ばす。

 

 《誰だって心に、絶望抱えてるけど》

 

『ガアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 《それを超える、希望の花が……咲くのさ》

 

  チューナーに槍は命中。その巨体が浮き、建物の壁に縫い止まられる。それを見たガインは、光線を放ちながら乙音に向かい突撃する。その背には新たに追加されたブースターがあり、猛スピードでガインの巨体が突進してくる。

 

 《闘いのその先に!》

 

『ぬああああああ!!』

「………ふうっ!」

 

  《虚無しかないのなら》

 

  ガインの大質量による突進は純粋に脅威である。ボイスや真司でも受け止めるには苦労するであろうその一撃を、乙音は少し息を吐くと、片手で受け止める。

 

『なにっ! なんだと!?』

 

 《自分という歴史を!》

 

 《未来へ重ねて!》

 

【ツルギ アクト!】

 

  乙音は片手で止めていたガインを弾くと、刀奈ーー仮面ライダーツルギの使う刀をその手に召喚する。

 

 《剣とは研ぎ澄ますもの!》

 

【ツルギ! ライダー スラッシュ!!】

「はああああああああああっ!!」

 

 《青空のように澄み渡り》

 

『なっ! うおおおおおお!!』

 

  乙音はツルギの持つ力である高速移動能力を用いて分身し、四方から重ねた剣撃を飛ばしてガインを打ち上げる。

 

 《さあ最後のその時まで!》

 

【ダンス アクト!】

【ダンス! ライダー ハリケーン!!】

「てあやああああっ!」

 

 《踊り続けよう……》

 

『ぐおおおおおお!!』

 

  乙音がダンスの武器を召喚し、必殺技を発動。ストームブレイカーに加え、二基のファイヤーストームブレイカーが3つの竜巻を起こし、それがガインの巨体を呑み込み、傷つける。

 

 《Song go Fight!》

 

『ぐがっ…ぬううう』

「決着をつける……!」

 

  傷だらけになり、地面へ転がるガイン。その姿を見て、ついに最大の必殺技を発動しようとする乙音だが、その時彼女の身体に黒い触手が絡みつく。地面から生えたそれは、建物に突き刺さっていたはずのチューナーから伸びていた。

 

『フシュル……グウルルルルルアア……』

「くっ! これは……!」

「乙音!」

『よくやったぞ、チューナー! …ゲイル!』

『こいつはここで殺してやる……!』

 

  チューナーも槍を抜き、自由になった身でゲイル、ガインと並ぶ。拘束にはゲイルの操る水も加わり、容易には解けそうにない。

  そして捕らえられた乙音に向かって、7大愛三体による一斉攻撃が放たれる。

 

『死ね!』

『ぬおおおおお!!』

『ガァァッアッアァァァアァァ!!』

 

「うわあーっ!」

「乙音さん!」

「後輩ーっ!!」

 

  3つの光線が乙音に着弾し、大爆発が起こる。その衝撃に思わず防御姿勢をとってしまう真司達。そして、爆炎を見てガイン達は勝利を確信する。

 

『ハハ……! なんてこと、ねえじゃねえか』

『これでわかっただろう。貴様達の未来には、絶望しかないと!』

 

 

 《最強のビートで、世界を繋いだら》

 

【ビート アクト!】

【ライダー ビート ブレイク!】

 

 《想 い 巡 る》

 

『!?』

『なっ!』

『!!!!』

 

 《心の音を、響かせ……》

 

  しかし、爆炎の中から再び歌が流れ出すとともに、乙音の召喚したビートチューンバスターから放たれた一撃が、三体のディソナンスを弾き飛ばす。

  響く音は、声は、歌は、途切れることはない。何故なら、この歌は希望という願いを乗せて歌われているもの。この程度で止まりはしない……!

 

「《闘いのその先に》」

 

「《絶望しかないなんて》」

 

「へっ、心配させんじゃねえよ」

「お決まりのパターンだ。最後には希望が勝つ」

「いきなさい! 乙音ちゃん!」

 

「《そんなこと有り得ない》」

 

『グ…グウルルルルルアアアアアアアア!!!!』

『ぬうがあああっ!!』

 

「私達は……」

 《僕等は……》

 

「《必ず!》」

 

  乙音の身体からハートウェーブが放たれ、彼女が虹色の光に包まれる。そのエネルギーは全て右脚に収束していく。そして乙音はドライバーに自身のライダーズディスクを装入し、ついに必殺の一撃を放つ。

 

 《希望のその先に!》

 

【レコード チェンジ!】

 

 《明るい未来が待っている!》

 

【ホープソング アクト! 】

 

 《だからもう恐れない!》

 《みんなと共に!!》

 

【オーバー ソング!!】

 

  乙音の背に虹色の翼が生え、その身体がゆっくりと宙に浮いていく。それに攻撃を重ねて阻止しようとする三体のディソナンスだが、全て乙音の展開するフィールドの前にかき消されている。

 

 《希望とは心より!》

 

「はあああああああ………!」

 

 《願いを込めて歌うこと》

 

『ば、馬鹿な……』

『有り得ない…こんなもの、認めんぞ俺はぁぁっ!!』

『グウアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 《さあその最後を超えて!!》

 

 《歌い続けよう………!》

 

【ソング! ライダー キィィィック!!】

「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 

 《Song is hope!》

 

 

 

  乙音の放つ一撃が、三体のディソナンスを捉える。ガインとゲイルは咄嗟にチューナーを盾にして防ぐが、チューナーはあっさりと無へと分解され、ガインとゲイルも空の彼方へと吹き飛ばされた。消滅してはいないが、しばらくは行動不能になるだろう。

 

「……終わった」

 

「す………「スッゲェェェェッ!! さっすが乙音さん! なー見たか!? 今の見た!?」……うるせえ! このナンパ男!」

「あんだと!? ……あっ、ボイスさん! すみません! でもすごかったすね!」

「……まあな!」

「そうだな……最初の時は、頼りなかったものだが」

「ああ……強く、なったものだ………」

「乙音ちゃん、お帰りなさい」

 

「はい……ただいま!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ホープソング、だと?』

『……は、も、申し訳ありません……このような状態で、おめおめと……』

『いや、いい……次は、私自らが出なければならんか』

 





次は久々に設定資料と、オメガの方をそろそろ更新したいと思います。最強フォームも出たしね。
ちなホープソングの簡易なスペック

仮面ライダーホープソング
パンチ力・120トン〜無限
キック力・135トン〜無限
走力・100メートルを0.8秒〜無限
ジャンプ力・ひととび300メートル〜無限
ホープソングはどんな状況下においても『希望』あり続ける能力を持つ。そのため、相手に対抗できない場合、対抗可能になる能力が新たにホープソングに生まれる。ただし、それで絶望を打ち倒せるかは変身者である木村乙音次第。
例:ハイパームテキが敵だ!→ムテキに攻撃を通せるようになる。
RXが無数に!?→こっちは無限のホープソングだ!
が可能。
要は理不尽なチート能力に対して、相手を直接倒さない範囲で理不尽なメタ能力を生やすというものなので、ビリオンやノベルXなどは最悪特殊能力を全て封じられたりする。そしてそもそもホープソングには干渉系能力は効かない設定なので、ノベルXみたいなのは実質勝利不可能ではある。
なお、素のスペック自体はデスボイスより低い。デスボイスというかDレコードライバー系の武器と能力も使えなかったりする。
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