仮面ライダーソング   作:天地優介

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ちょっと書き方を変えました。遅くなって申し訳ない。
夏休みにやっと入ったので、バリバリいきたいですね!(希望)


希望 VS 絶望

  あの後、乙音達はてんやわんやだった。

  強大な力を持つディソナンスだと、一般にも知られていた7大愛。そのうちの三体のうち、二体を撃退し、一体は完全に消滅させたのだ。それも、余裕を残した状態で。

  建物から歓声とともに、わっと押し寄せてきた人々をなんとかなだめながら、乙音達はそのまま病院の中へと戻った。……今度は、真司達の怪我の治療である。

  真司達は変身維持分のハートウェーブまでもを乙音に渡したこと、そしてディソナンス相手に粘っていたこともあって疲弊しきっていた。怪我はホープソングの力によって治ったものの、ハートウェーブまでは回復していない。十二分な休息が必要だ。

 

「すまないな後輩、任せてしまって大丈夫か?」

「任せてください! 私こそ、寝てた分を取り戻さないと!」

「ありがとね、乙音ちゃん……」

「いえ。みなさんこそ、ゆっくり休んでてください」

「ああっ……乙音さんにそんなこと言われたら、全力で休むしかねえな……!」

「………おい、誰かオレとこいつを別の部屋にしてくれ」

「まあまあ、仕方ないわよ…ディソナンスのせいで部屋数も足りないらしいし」

「あはは……それじゃあ、私はこれで。またお見舞いに来ますね」

「ああ、すまんな」

 

  真司達のいる病室から見舞いを済ませ、出てくる乙音。いまの彼女は唯一戦えるライダーなので、この後はすぐにワシントンの研究所に戻り、ディソナンスとの戦いに備えるために待機する予定だ。

  ーーと、そんな彼女に通信が入る。相手は………。

 

「……ゼブラ、ちゃん…?」

 

  彼女の携帯に電話をかけてきた相手ーーそれは、死んだはずのゼブラだった。

  乙音は思わず周囲を確認し、人のいる病院内ではこの電話に出るのはマズイと直感。この病院の屋上は開放されていたことを思い出し、そこまで急ぐ。その間、携帯にはずっとゼブラから連続して電話がかかってきていた。

  屋上には真っ白なシーツがいくつも干されていたが、人の姿は見当たらなかった。今は昼だから、おそらく食事で人がいないのだろうと乙音はあたりをつける。彼女自身は既に簡単に食事を済ませていた。

 

「………もしもし」

 

  出てきた声は、乙音自身ですら驚くほどに冷静で、平坦な声だった。その声にどこか人ごとのように感じながら、乙音は相手の発言を待つ。

 

「………………ゼブラちゃん?」

『………確か、こうだったかな? んん……乙音、お姉ちゃん?』

「…………!」

 

  ミシッ、と乙音の携帯が軋む。今彼女の周囲に誰もいないのは幸運だろう。乙女としても人としても、他人には見せられないような表情を浮かべているのだから。

 

「……………なんのつもりだ」

『…もっと取り乱すかと思ったのだが………流石、仮面ライダーソング、とでも言っておこうか』

「…………」

 

  デューマンの挑発に、乙音はなんの反応も返さない。口を開いてしまえば、怨念が湧きだすとわかっているからだ。

 

『……ふ、まあ手短に要件だけ話そう。なんのことはない。攻撃宣言だ』

「………!」

『次は、私自ら襲来しよう。クク………この前のようにいくとは思わないことだ』

 

  そう言うと、デューマンは一方的に通話を切る。彼にはわかっていたのだ。乙音にハートウェーブを託した真司達が、今は行動不能になっているということを。

  ハートウェーブを発見し、ライダーシステムを作り上げた音成の全てを受け継いだデューマンだからこそ、今の乙音達の状況が苦しいものであることは、誰よりも理解していた。

 

「…………ゼブラちゃん」

 

  屋上のフェンスに寄りかかって、乙音は空を見上げる。見上げた空は、どこまでも青く澄んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  後日、ワシントンの研究所で、乙音は久々にロイドやショット博士、こちらに来ていた勝など、懐かしい顔ぶれと再会していた。

  各人の反応はさまざまで、勝やショット博士などは静かに乙音の帰還を喜んでいたが、ロイドは涙を流してしまい、珍しく乙音が慌てるという一幕もあった。

  そしていま、乙音は部屋で一人佇んでいた。……いや、正確には一人ではないが。

 

『……なーにしけたツラしてんだよ』

「バラク……ごめんね。私の中にいるあなた達には、苦労をかけてしまって……」

『気にするな。俺達の望んだことだ』

『そうよお〜』

 

  あの戦いの時、乙音を助けるために彼女の心の中へと入ったキキカイ、バラク、ドキの3人のディソナンスは、今も彼女の心の中にいた。

  というのも、彼女の中のハートウェーブはまだだいぶ不安定であり、それを制御するためには彼等の力を借りる必要があるからだ。

  当然、デューマンと乙音の通話も彼等は聞いていたが、あの時は怒りで乱れた乙音の心を鎮めていたため、彼女に声をかけることはできなかった。

 

『それで、どうするつもりだ? あのデューマンって野郎、さっそく攻めてきやがるぜ』

「……大丈夫」

『ふむ?』

「あいつは……私達には勝てないよ」

 

  いくら心の中にいるとはいえ、キキカイ達も乙音の心中を把握しているわけではない。というよりも、プライバシーもあるので、わざと深いところまでは把握していないのだ。

  だから、3人は乙音がなぜデューマンが自分達に勝てないと断言したのかはわからなかった。しかし、それについてはこの3人がとやかく言うことでもない。

 

「……今は休もう。戦いに備えて」

『そうね。そうしましょう』

 

  いま乙音達に出来るのは、戦いに備えて休む事だけだった。

 

 

 

 

 

 

「……乙音さん!」

「ん? むう〜……ロイドさん? ……まさか!」

「はい! デューマンが出現しました!」

 

  あれから少しの間眠っていた乙音だが、ロイドの声に目を覚ます。寝ぼけた頭を頬を叩いて目覚めさせた乙音は、すぐさまデューマン迎撃のために走り出す。

 

「バイク、準備できています!」

「乙音さん、レコードライバーは?」

「もう着けてる。……行ってきます」

 

  デューマンからの宣戦布告は当然、乙音経由で関係者総員に伝わっていた。そのため、今回の出動も準備は既に行われており、乙音がすぐさま万全の状態で出動可能な体勢が整えられていた。

 

『乙音くん、デューマンの出現場所は復興途中のCブロックだ。すぐに向かってくれ!』

「了解……!」

 

  ショット博士をはじめとするサポート陣からの誘導を受けて、乙音は街の中へと向かう。バイクで走ってくる乙音の前方には逃げ惑う群衆の姿があるが、群衆は乙音の姿を認めた瞬間、彼女に道を開く。

 

「ら、ライダーだ!」

「あっちよ! あっちで暴れてる!」

「俺達を助けてくれー!」

「………! ありがとうございます!」

 

  群衆の中を掻き分け、駆ける乙音。そして、ついに彼女の眼前に敵が現れた。

  だが、その敵の正体はデューマンではない。かつて戦闘記録で見たことのある7大愛のひとり、『五指の弾丸(ファイブシューター)』フィンだった。

 

「……!? デューマンじゃない!」

『木村乙音か……! ボイスの前に、貴様を嬲り殺しにしてくれるわ!』

 

  あいも変わらずの残忍さだが、以前デスボイスにやられた時のことが、デューマンによって修復を受けた今でも尾を引いているのか、その声色に以前のような落ち着きはない。

  必死さを声に滲ませながらその指から光弾を放ってくるフィン。乙音はその光弾をかわしつつ、変身を行う。

 

「行くよ……!」

【オーバー ザ ライド!!】

【オーバー ザ フューチャー!!】

【Yes! ……ソング イズ ホォォォォォプッ!!!】

 

  バイクに乗ったまま変身した乙音は、その上に立って後方へ宙返り。その瞬間、バイクを蹴ってフィンへと飛ばす。量産型だからいいだろうという発想である。

 

『ナメるな!』

 

  もちろん、7大愛であり、しかも射撃型のフィンにこの攻撃は通じない。彼の光弾を受け、爆発するバイク。その爆炎に紛れて、ホープソングへと変身した乙音の高速キックかフィンに放たれる。

 

『ぐおっ!?』

「7大愛の1人、フィン。……お前の戦闘記録はボイスちゃんと電車で戦った時のを見たけど、今の私なら、1人でも倒せる!」

『くっ………やってみるがいい!』

 

  フィンがその両手の指から、容赦なしに光弾を連続して放つ。ガトリングのように発射されるそれは、明らかに以前、ボイスと戦闘した時よりも強力なものになっているが、乙音は慌てることはないとばかりに悠然と構えると、ホープソングの腰のマントを操り、それでフィンの光弾をガード。隙を見て、右肩のアーマーからハートウェーブの光線を放ち、光弾を打ち消してフィンにダメージを与える。

 

【レコード チェンジ!】

「はあっ!」

『かっ! ぐおっ!?ぐああっ!!』

【ツルギ アクト!】

 

  乙音はツルギの持つ刀を呼び出すと、高速移動で一気に近づき、連続でフィンの身体を切り刻む。

  たまらず吹き飛ばされて転がるフィンに対し、乙音は一切の容赦を見せず、追撃の一撃を放つ。

 

【ツルギ! ライダー ギガスラッシュ!】

「くらえええっ!」

 

  巨大化したツルギの刀を振り下ろす乙音。フィンは咄嗟に防御体勢をとるが、その時、フィンと刀の間に何者かが滑り込む。

 

「フンッ!」

「………っ!?」

「ほう……これがホープソングの力か」

「その姿………!!」

「やあ、この姿で会うのは初めてだね……木村乙音」

 

  滑り込んできたのは、ゼブラの身体をしたデューマンだった。デューマンはフィンの手をとり立たせると、乙音に向かって拍手を送る。

 

 パチパチパチパチ

 

「いや、まさかここまでとは思わなかったよ……。この私でも、弾くのに苦労するとはね」

「……戯言を」

『デューマン様………』

「………変身」

【パーフェクトチューン!】

【デス エンド ソング!!】

【ディスパー!!!】

【オォォォォバァァァァァラァァァァァァイド!!】

 

  仮面ライダー・ディスパーへと変身したデューマンがフィンに向け手をかざすと、彼の肉体がみるみるうちに修復されていく。

  その力に警戒を強める乙音。その彼女を見つめるデューマンの姿が一瞬陽炎のように揺らめいたかと思うと、次の瞬間には乙音の背後へと回っていた。

  デューマンの能力の一つである、テレポートだ。短距離を連続して一瞬で移動可能なそれは、人間大のモノどうしの戦いにおいては、かなりの脅威となる。

 

『まずは、一発』

「……っ!?」

 

  ツルギの能力である高速移動をもってしても反応できず、乙音はデューマンのキックをマトモに頭部にくらい、軽々と吹き飛ばされる。ビルを貫通しながら吹き飛ぶ乙音の頭上に今度は転移し、再びキックをくらって、乙音は地上に叩き落とされた。

 

『……もう終わりか? ホープソングといっても、期待ハズレだったかな?』

「……ぐ」

 

  うめき声を上げ、立ち上がろうとする乙音。その光景を見たデューマンは肩をすくめ、その直後、彼女の背後に右足を高く振り上げた状態で出現する。

 

【カーテンコール!】

『……死ね』

【ライダー エンド ソング!!】

 

  断頭台のギロチンの如き鋭さと勢いをもって、乙音の頭部に向けて振り下ろされる必殺の一撃。確実に彼女の命を奪うことだけを目的とした、殺意の塊のような攻撃を前に、乙音はーー

 

「ナメ………るなあああっ!!!」

【フォースメロディー!】

【ユニゾンシュート!!】

 

  乙音は即座に自身の中に眠るディソナンス達の力を集め、混ぜ合わせると、それをそのままデューマンの放つ一撃に向けて叩き付ける。

  乙音の拳とデューマンの蹴りが衝突する。弾かれたのはーー

 

『……馬鹿な!』

「ううおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

  乙音の拳がデューマンの足を弾き、そのまま彼の胴体部に直撃。乙音の叫びとともに発せられた力によってデューマンの肉体は浮き上がり、今度は彼がビルを貫通しながら吹き飛んでいく。

 

『があっ!!』

『デューマン様!』

『な、何故だ……何故、こんな力が、あんなモノに!!』

 

  必殺技を弾かれ、動揺するデューマンにフィンが駆け寄るが。彼を起こそうと伸ばされた手を払うと、そのまま立ち上がる。一見ダメージはなさそうに見えるが、その精神的動揺は大きいようだ。

 

『馬鹿な………『僕』のディスパーは最強のはず……そもそも、あのソングは特殊能力を使えないはずだ!』

「まだ……わかってないみたいだな」

『!!!』

 

  穴の開いたビルの中から、瓦礫を一歩歩くごとに避けさせながら、乙音が現れる。彼女の表情は仮面に包まれて伺いしれないが、デューマンにはわかった。彼女の視線に宿る強さが、微塵も揺らいでいないということが。

 

「お前のそのレコードライバーの能力……特殊な能力を封じるみたいだけど、残念ながら私には効かない」

『馬鹿な……何故だ!』

『ふふん、それはね〜』

『俺達がいるからだよ!』

『その声………貴様ら、裏切り者どもか!』

 

  乙音の身体の中から響くキキカイ達の声。デューマンは一瞬、なぜ人間の心の中にディソナンスがいるのか理解できずフリーズするが、すぐに思考を切り替える。そして、なぜ自分のDレコードライバーの能力が相手に効かないのか、理解した。

 

『……ディソナンスの力か!』

『そうだ。……私達3人と……カナサキの力。これによって、お前のDレコードライバーの能力によるSレコードライバーへの干渉を防いでいる』

『ならば、貴様等をその小娘の身体から叩き出せば……』

『おっと、意味ないぜ? そもそも、お前のDレコードライバーがほかの特殊能力を封じれるのは、レコードライバーもディソナンスも、音成が作ったものだからだ』

 

  そう、Dレコードライバーが他のライダーやディソナンスの能力を封じることが可能なのは、そもそもが他のレコードライバーやディソナンス自体、ほぼ全てDレコードライバー開発者である天城音成自身の手によって作られたか、解析されたものであるからだ。

  ーーSレコードライバーは、音成以外の人類の知恵と科学。その総力をもってして作られたものである。そもそもが能力の効きも少なく、その僅かな妨害すら、キキカイ達3人の力で防がれていた。

 

『ならばっ!!』

 

  デューマンが乙音に向けて手をかざす。Dレコードライバーの機能の一つである、ディソナンスを痛めつける能力を使用するつもりだろう。だが、なにも起きることはない。

 

『………なんだと!』

「…希望は、折れない。私が前に体験したことだ。このホープソングの力で、その能力は既に対策済みだ!」

 

  ホープソングの能力により、ディソナンスを痛めつける能力は完全に対策されている。もうその能力を使っても、乙音自身はおろか、デューマン自身が生み出したディソナンスすら痛めつけることはできないだろう。

 

『……貴様!』

「邪魔だあっ!!」

 

  乙音に自身の主人を愚弄されたとでも思ったか、フィンが光弾を放ちながら突貫する。しかし乙音はエモーショナルハートウェーブを生成して拳に纏わせると、突っ込んできたフィンにカウンターパンチを浴びせ、吹っ飛ばす。

  自身の横を吹っ飛んでいくフィンを気にも止めずーーいや、気にする余裕すらないデューマンは、乙音に向かって駆け出す。

 

『ぬうううううあああっ!!』

「……っ、はあ!」

 

  転移からの高速パンチに、しかし乙音は対応する。それを避けたうえでデューマンの腹に拳で一撃。少し下がった彼の頭部にキックを一撃。最後にサマーソルトキックを顎に浴びせ、大きく後退させる。

 

『ぐっ………』

「デューマン、お前は恐れている!」

『なんだと!? この、ぼ……私が、なにを恐れているというんだ!』

 

  乙音の放つ連続攻撃をなんとか捌くデューマンだったが、先ほどまでと比べ明らかに反応が遅れており、既に数瞬の攻防で明確に押されてしまっていた。

  その後退は焦りを生み、焦りはさらに後退と隙を生む。

 

「お前は、私達を始末するために7大愛を送り込んできた……いくら強化されているからとはいえ、お前自身が来た方が確実だったのに」

『それは………』

 

  乙音が言葉と共に殴りかかる。それをデューマンは腕を交差して防御するが、一撃を防いでも、大きく後退してしまう。

 

「お前が3年という猶予を人類に与えたのも!」

『ぐうっ!?』

 

  一撃。乙音のパンチでデューマンのガードが解かれる。

 

「私達の始末を7大愛に押し付けたのも!」

『があっ!?』

 

  二撃。乙音のキックでデューマンの体勢が大きく揺らぐ。

 

「ゼブラちゃんの肉体を使い続けるのも!」

『ううおっ!?』

 

  三撃。乙音が生み出した槍が、デューマンの肉体を切り刻む。

 

「そもそも、その身体になったのも……!」

『………!』

 

  四撃。乙音のキックによって、デューマンの身体が大きく吹っ飛ばされる。

 

「全ては、恐れていたからだ! 私達という……希望を! そして……仮面ライダーを!」

【ソング アクト!】

【ソング! ライダー ダブルストライク!】

『ぐうああああああああああ!!』

 

  2人に分身した乙音が、デューマンにライダーキックを放つ。

  左右からのキックに対応できず、デューマンはその攻撃をモロに喰らって吹っ飛び、ビルの壁に衝突する。

 

『がっ……』

「そして………もうわかってる。お前の正体は」

  『わ、私の……正体?』

 

  乙音の言葉に、地面に膝をつきながら戸惑うデューマン。それは乙音の中のディソナンス達も同じだぞ。

 

『デューマンの正体? 乙音ちゃん、何を……』

『……まさか!』

「そう……デューマンなんて名前を変えても、お前の全ては天城音成から受け継いだもの……いや、違うな。お前の中の意識は全て、天城音成のもの! お前こそが天城音成なんだ!」

『…………!』

 

  乙音の指摘に、膝をついていたデューマンーーいや、『天城音成』はピクリ、と肩を震わせる。

  ぷるぷると震えていた彼だが、やがて堪えきれないとばかりにバッ、と起き上がると、その口から悍ましいまでの爆笑、笑い声を発した。

 

『フ……フハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハ!! …ハー………答えろ、いつから気づいていた?』

「電話の時だ。……お前は、私の心を苦しめようと、ホープソングを弱体化させようとゼブラちゃんの声色で電話をかけて来た。……でも、それが仇となったな。急に声を変えたのは慣れなかっただろう? ……すぐに、話し方が音成そっくりだと気づいたよ」

『……そんなことからバレるとはね。……くそっ、今日は僕の負けかな』

 

  そう言う音成の声色は、デューマンのものとも、ゼブラのものとも違う。彼本来の持つ声だった。

 

『……木村乙音』

「…………」

 

  その声のまま、彼は乙音の名を呼び、彼女を見据える。いまこの瞬間、天城音成はようやくはっきりと認めたのだ。木村乙音こそ、自身の目的の前に立ちはだかる、最大の敵だと。

 

『…僕の目的は、自身の限界を突き詰めること。だが、そのためにはお前と……この惑星そのものが邪魔なんだ。僕は、こんなちっぽけな星に収まる器じゃない』

「……だから、滅ぼすのか!」

『そうさ。理解できないかい? フフ……ハハハ、それが君の『限界』だよ』

「……お前は…」

『……悪いが、今日は疲れたんでね。ここまでにさせてもらおうか!』

 

  音成がパチン、と指を鳴らすと。彼の後方から巨大なエネルギー弾が連続して乙音に放たれる。フィンによる攻撃なのだろうそれを咄嗟に後方に避ける乙音だったが、着弾時の衝撃で吹き上がった煙幕によって、音成を見失ってしまう。

 

『もうすぐだ……もうすぐこの星を滅ぼすほどの兵器が完成する! その時……君達と決着をつけよう! 仮面ライダー!』

「ぐっ……待て!」

 

  煙幕を振り払う乙音だったが、その時には既に音成は消えていた。

 

『……逃げられたか』

『チッ、卑怯な野郎だな。相変わらず』

『それで乙音ちゃん、どうするのお?』

「……先輩達ももうすぐ復帰できる。多分、その時が……」

 

「私達仮面ライダーと、天城音成の…決着の時になる」

 

  瓦礫の街の中で、音成がいた場所をじっと見つめる乙音。

 

  ーー決戦の時は、近い。





もうガバガバじゃねーかお前ん家の展開ぃ!
次回からついに決戦となります。本当に長かった……
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