仮面ライダーソング   作:天地優介

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今回で全てを終わらせるはずだった。最終回は四千字程度の後日談で…………
ああああああああああああ!!文が散らかってるうえ、まとまんねえ!
すみませんでした……。でも今回はここで切るのが一番だと思いました。


託された希望を胸に

「仮面ライダー……ディソナンス?」

『ふん……いまさらお前達旧ディソナンスが、なにができるっていうんだ!』

 

  仮面ライダーディソナンスへと変身したキキカイ達3人を前にして、音成はそう言う。確かに、音成のDレコードライバーにはディソナンスを苦しめる機能がある。ゼブラと共に一度その苦しみを受けたことのある乙音にも、3人が音成の相手が出来るとは思えなかった。

 

「3人とも! 私を心配してくれるならいいから、身体に戻って!」

 

  そう言う乙音だったが、3人……ディソナンスは何も答えない。音成は呆れたように息を漏らすと、ディソナンスに向けて手をかざした。

 

『もういいよ……苦しみたいなら、お望み通り味あわせてあげよう!』

 

  そう言う音成ーーだが、ディソナンス達はなんのリアクションもしない。その動きに驚愕を露わにし、もう一度手を突き出し、ディソナンスに向けてかざす。それでも何も起きず、思わずベルトを持つ音成。

 

『どういうことだ? ホープソングとの戦いで、故障したのか!?』

『いや、そうじゃない』

 

  そう言う音成だったが、ここでディソナンスが喋った。その声は男とも女ともつかないもので、動きも声の調子も、3人が混ざっているかのようだった。

 

『このレコードライバーは、一度壊れた乙音のものを再利用して()()の能力に合わせ、調整したものだ……』

『調整……!?』

『そうだ。このレコードライバーによって、我等はもうお前の支配から脱したんだ!』

 

  音成とフィンとの戦闘の後、キキカイはあの戦闘で得たDレコードライバーのディソナンスを苦しめる能力のデータを解析し、いま装着しているレコードライバーにその対抗策をインプットしたのだ。

  3人は前々からとある目的のために勝や香織、ロイドにショット博士まで巻き込んで乙音のものをベースにレコードライバーを用意していたが、問題点が2つあった。

  ひとつは、ディスパーの能力への対抗策。これに関しては、先述の通りホープソングの戦闘データを解析・導入することで解決した。

  そして、もう一つはーー

 

『だが、ディソナンスの統合! あまつさえライダーへの変身などっ……! 耐えられるわけがない!』

『……ああ。この変身が最後だ』

「まさか!」

『これを最後に、我等は消滅する。それが、我等の選択だ』

 

  もう一つの問題点。それはらディソナンス3人の統合とライダーへの変身の負荷による、3人の消滅。

  音成が作り上げた新ディソナンスならば、音成自身の調整によって他のディソナンスとの融合にも耐えられる。しかし、本来単なるハートウェーブの塊であるキキカイ達旧ディソナンスでは、融合に意志が耐えられない。

 

  精神生命体であるディソナンスにとって、意志の消失は死に等しい。そしてこの変身を行った時点で、3人の意志は『仮面ライダーディソナンス』として統合されている。つまり、もう死んでいるに等しい状態なのだ。

 

『我等はある仮説を立てた。それはゼブラが生きているという前提に成り立つものだが……』

「えっ!?」

『……彼女なら、もう僕に吸収されたはずだ!』

 

 そう、キキカイたちが同じディソナンス相手の融合でも消滅してしまうのならば、今はディソナンスの身体である音成に吸収されたゼブラも消滅してしまっているはずだ。しかし、ゼブラは生きていると、仮面ライダーディソナンスは言った。

 

『我等は乙音と融合した時、同じ心の中にいたにも関わらず、消滅はしなかった…我等はそれも覚悟していたというのに』

『…!!まさか、ありえない!』

『いいや、その通りだよ天城音成。…ディソナンスは精神生命体だ。しかし、お前の心は人間のもの……!』

「えっ、どういうこと!?」

 

 音音の疑問に、ディソナンスが答える。

 

『ディソナンスは、自身と似て非なる存在である人間の『心』にならば、消滅せず融合が可能、というわけだ。そして、ゼブラは今、天城音成の人としての『心』と融合している』

「……!それってつまり!」

『ああ。ゼブラは未だ眠る状態…我等がこのレコードライバーに残るお前の思いと、我等三人…いや、四人の力で目を覚ましてやる!』

 

 そういうと、全身に力をみなぎらせながらディソナンスは音成に向けて駆け出す。猛烈な勢いで迫り来る相手に、音成は動じず正面から迎え撃つ。

 

『お前たちごときが、一つになったところで、僕に叶うと思っているのか!』

『……!』

 

 瞬時にディソナンスの目の前まで移動した音成は渾身の力を込めてパンチを繰り出し、咄嗟のガードの上からディソナンスを吹っ飛ばそうとする。

 しかしディソナンスはその拳を受け大きく後退はするものの、乙音の目の前で踏みとどまる。

 

『ほう……?』

『……乙音』

「なに………?』

『……お前に、全てを託す』

「えっ…」

『行くぞ!天城音成!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音成とディソナンスの戦闘は、悲しいまでに一方的だった。

 

『だから言っただろう……お前たちが今更僕に歯向かったところで、もう手遅れなんだよ!』

『ぐうっ!が、はあっ……!』

 

  音成は一切の容赦なくディソナンスに攻撃を重ね、殴り、蹴り、踏み、投げ飛ばしといった基本的な暴力手段から、周囲の地形を操作しての攻撃など、特殊なものまで。ありとあらゆる暴力をもって、ディソナンスを甚振っていた。

 

『ハ、ハ、ハァ………いい加減、理解したらどうだい?』

『ぐ、う……ま、まだ………』

 

  しかし、ディソナンスは倒れない。何度膝をつかされようとも、何度叩き伏せられようとも、必ず立ち上がって音成に向け攻撃を放つ。その攻撃の勢いは落ちていたが、音成言い様のない圧迫感のようなものを感じていた。

 

(………なんだ?この感覚………)

 

 ドゴォッ!

 

『グボッ!? ぐ、が……』

 

  音成の拳が、ディソナンスの腹部に突き刺さる。その時音成はディソナンスでなく乙音の様子をちらりと伺ったが、乙音はその頬に涙の跡を残しながらも、強い意志を感じさせる瞳で音成達を見据えていた。

 

(……あの目だ)

 

 グシャッ!!

 

『があっ!!』

 

  音成を蹴り上げようとしたディソナンスの動きを、音成はつま先を先んじて潰すことで止める。その攻撃を喰らうディソナンスの姿はあまりにも痛々しいものだったが、それでも乙音は目を逸らさない。

 

(……あの目だ!)

 

 メキャアッ!!!

 

『ぐ…うおおっ!!』

 

  音成が繰り出した拳が、ディソナンスの胸部装甲を砕く。しかしディソナンスは一瞬ひるんだ後、すぐにまた拳を繰り出した。

 

 バチィ

 

『……ええい!鬱陶しい!』

 

  力なく叩きつけられる拳に、音成は雑に反撃する。明らかに適当に繰り出された一撃も、ディソナンスにとっては強烈なもの。地面を転がり倒れ伏すが、また立ち上がる。

 

『……まだ、だ。まだ…………』

『……もういいよ、お前』

 

【カーテンコール!!】

 

  ディソナンスの姿にしびれを切らしたのか、それとも何か別の理由か。音成は瀕死の相手に対しついに必殺技を発動する。それに対し、ディソナンスも必殺技を発動しようとベルトに手を伸ばすが………。

 

【Dissonance……エラー】

 

「…………!」

『……?フフ、ハハッ!ハハハハハ!!ついにベルトからも見放されたか!まあ、当然だね。そもそもレコードライバーで変身できたことがーーいくら改造品だとしても、既に無理矢理なことなんだからねえ!』

 

【オーバーライド!!!】

 

  音成の身体に、緑色のオーラが纏われていく。それは星から吸い上げた、殺戮と破壊のためのエネルギー。たった三体の怪物の融合など問題にならないその力。いま、ディソナンスは星そのものと相対しているに等しいのだ。

 

『おとなしくホープソングになっていればまだ望みはあったものを………何を企んでいたか知らないけど、これで終わりだ』

「…………」

 

  俯いたまま、動く様子のないディソナンスを見て気をよくしたのか、乙音から向けられる視線にも余裕を保つ音成。莫大なエネルギーをわざと彼女達の肌に感じさせる。

 

『ーーああ、この醜い怪物を始末した後は、君に屈辱の限りを味合わせながら、まずはライダー達を最も残酷な方法で始末してあげよう。今度は映像越しでも、塵ほどにも役に立たないディソナンス任せでもない。この僕自身の手で!君の眼の前で!……その後は、湊美希に、大地香織……ショット・バーンにその息子。他にも君が関わってきた人間どもを、丁寧に殺していこう。ああ、楽しみだよ。彼等がどんな悲鳴の歌を上げるのかがねぇ!ハハッ、ハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ハッ、ハハハハハハハハハ!!!』

 

  身振り手振りを加えながら、そう歌うように語る音成。

  だが、彼はひとつ思い違いをしている。それは、ディソナンスはこの状況においても、カケラも諦めていないということだ。

 

『死ね……!』

 

【ライダー エンド ソング!!!】

 

  音成の身体に集まっていたエネルギーがその右脚に集約していき、その身が跳躍する。

 

『ハァァァッ!!』

 

  明確に死という名の脅威が迫る中、ディソナンスは乙音の方をひっそりと伺いーーそして、笑みをこぼした。

 

『フッ………』

 

(やはり…………間違いではなかった)

 

  ディソナンスは覚悟を決める。決して諦めない彼女とーー彼女から生まれた同胞のために、その命を使う覚悟を。

 

『う……オオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

  咆哮を上げ、上空から蹴りかかってくる音成へ拳を繰り出すディソナンス。

  その身体からは白と黒のオーラが噴き出し、音成の纏う緑色のオーラに干渉・拮抗する。

 

『まさか…………!』

『ウアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

  しかし、ディソナンスの身体は徐々に崩れていく。

  その身体から粒子のようなものが零れだすと同時、力も、意思も、その心ですら……全てが奪われていく。

  ボロボロと、まるで砂糖菓子を砕くかのような容易さと残酷さで、ディソナンスは崩壊していく。粒子となって、散らばり、空へと還っていく。

  ーーだが、乙音は目を逸らさない。涙で視界を遮るようなこともしない。ただ、ただ、ディソナンスの姿をーーその勇姿を見続ける。

 

『終われ……終われええええっ!!』

『まだだあああああああああっ!!』

 

  ディソナンスの半身は既に崩れ去った。彼/彼女はそれでも、全霊の力と思いを込めて、抗う。

 

『……うおおおおおおおおおっ!!!』

 

  一瞬の閃光とともに、エネルギーどうしの干渉による爆発が起きる。

 

『がああああああああああああっ!!??』

「……!」

 

  光とともに広がった爆煙の中から、音成が吹き飛ばされ、飛び出してくる。

  その身体には粒子が纏わり付いており、それを見た乙音はすぐに走り出し、爆煙の中へ突っ込んでいく。

 

「くっ!ゲホッ、ゲホッ………」

 

  爆煙にやられ、咳き込みつつもディソナンスを探す乙音。だが、探しても探しても、ディソナンスの姿は見えない。

 

「爆煙で見えないの……!?」

 

  煙で見えないだけ。まだ生きている……そんな一縷の望みにかけて探す乙音だが、煙が晴れた後には、彼らの放っていた粒子しか残っていなかった。

 

「…………!」

 

  その粒子を掴み、目を見開く乙音。そんな彼女の耳に、耳障りな声が聞こえてくる。

 

『あんな力が残っていたとはね……!だが、もう遅い!』

 

  吹き飛ばされた音成が瓦礫を吹っ飛ばし、這い出てくる。

  確かにダメージは喰らっているようだが、その身体を包む緑色のオーラによってすぐに回復してしまうようだ。

 

「……天城、音成!」

 

  未だに、毅然とした態度で音成を睨め付ける乙音。しかし音成にとって、もはや乙音は変身すら出来ない小娘に過ぎない。

 

『木村乙音………君にはさんざん苦しめられたが、もう終わりだな。仲間も死んではいないだろうが、あの戦いだ!1人残らず、この星と共に死ぬがいい!!』

 

  音成がそう高らかに宣言すると共に、強烈な揺れが乙音を襲う。この星ーー地球の核に到達したこの巨大兵器が、ついに惑星の崩壊へ向けたカウントダウンを始めたのだ。

 

「………あなたは、どうするつもりなの?」

『僕は最早この星程度には収まりきらない……!この宇宙を!無限の闇を!全てを手にして……そして、僕だけが創り出すことの出来る命を新たに生み出す!今度は失敗作の人工ディソナンスでも、偶発的に生まれた天然のディソナンスでも、人間でも、あらゆる動物でもない!!僕だけの……忠実な駒となる生命をねえ!』

 

『ハッ……ハハ………!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』

 

 

  今まで、決してーー自ら作った新ディソナンス達にすら明かさなかった真の野望を、乙音に明かす音成。自身にとって乙音がーーソングがもう何の障害にもならないと確信した今、これは単なる乙音への挑発と嘲りでしかない。

 

  もう、お前には何も出来ない。

 

  そこで、指をくわえて滅びを待て。

 

 

『そうーーなんなら、僕自身の手でこの星が滅びる前に、君を殺してやってもいい。なに、心配はない。痛みすら感じ取れないさ………生まれ育った故郷も、友人も、守ってきたものも、全てが崩壊していくのをこの兵器の中から眺めるってのは、君にはこれ以上無く絶望的だろうからねえ!』

 

 

 

 

 

「ーー黙れ」

 

 

 

 

『……は?』

 

「黙れってーーそう、言ったんだ」

 

『……君、状況を解って言っているのかい?ここまで愚かだとはーー「わからないの?」……なんだと?』

 

「お前の……その、『心』の中に潜むものが………なんなのかっ!!」

 

  ーー乙音の叫びが、心の波が、音成の中に潜み、機を伺っていた者達を呼び覚ます。

 

『……グ!?馬鹿な、なんだ、これ、はぁ………!』

『乙音ちゃん!今よ!』

『一発、こいつにぶち込んでやれっ!!』

『行け!木村乙音っ!!!』

『この声は…………まさか!!』

 

  音成の中から響いてくる声に導かれるように、乙音は走る。

 

「うおおおおっ!!」

『な、何故……身体がっ!お前達は……!』

 

  自分の身体が制御権を失っているという事実に、音成は戦慄すると同時、彼の頭脳は原因を探り始める。この事態を引き起こしたのはキキカイ達が合体した『ディソナンス』で間違いないが、何故そのディソナンスが、いや……キキカイ達の意識がまだ存在しているのかーー

 

『……まさかっ!』

『そうだ!我等はお前の中に進入するために………ゼブラを救うために、この賭けに出た』

『力比べで勝利して、一瞬出来る隙を突いて、粒子となってお前の心に進入する……だいぶ無茶やったが、この通り成功した!』

『敵を騙すには味方からーー乙音ちゃんにも相談しなかったけど、さすがね。私達の残りカス……粒子を手にした瞬間、私達の存在を感知したんだもの』

 

  そう、キキカイ達ディソナンスは、乙音にも秘密にして音成の中ーー心へと進入する計画を立てていた。

  そして、その目的は…………

 

『乙音ちゃん!ゼブラちゃんはまだ、まだ無事よ!後はーーあなた次第!』

「………!!」

 

  キキカイの言葉を受け、乙音の速度が増す。キキカイ達が音成の心の中へと進入しているという事実を乙音が知った時、脳裏によぎったのは、音成に吸収されたというゼブラのことだった。

 

『音成ーーお前、おかしいと思わなかったのか?どうして、自分が【天城音成】としてそこに存在しているかーー!』

『なに、が……いいたい!!』

『お前は、ディソナンスの肉体を得る時に人の心を捨てたーーいや、そんなもの、お前には初めから存在していなかっただろうが……精神生命体であるディソナンスとなるためには、人の精神構造を捨てる必要があったはずだ』

 

  そう、今の音成の肉体は7大愛の最後の一体にである、デューマンのものだ。元々、デューマンは音成自身の知能や精神をコピーされた存在であり、オリジナルの『天城音成』をその手で殺すことで、デューマンは進化を遂げた。

 

  だが、ディソナンスは精神生命体である。音成によって生み出された人工ディソナンスも、それは変わらない。当然、デューマンは『デューマン』であり、『天城音成』の全てを受け継ぎながら、確かに違う存在のハズである。

 

『だが、傷を癒すのと、乙音への精神攻撃のためにゼブラを吸収してしまったのがアダとなったな』

『アイツは人間ーー乙音から直接生まれてきた『ディソナンス』だからな。たく、カナサキの野郎には感謝しねえとな……アイツがゼブラを生んでいなけりゃ、世界は終わってた』

『馬鹿、な……ゼブラに、人間としての『要素』がっ!……そんなものが、残っていただと!?』

『ええ、そうよ』

 

  そもそも、ディソナンスであるのなら、膨大なハートウェーブを生み出すゼブラならば、変身しなくともライダー達と同等の戦闘能力を有していてもおかしくはない。

  だが、彼女は人間より遥かに優れた走力など、一部の身体的スペック以外は、人間の少女とそう変わらないものだ。

  それは、彼女がーー『人間から生まれたディソナンス』であり、すなわち『人間の心を持つディソナンス』であるからだ。

 

『私達も、ゼブラが生きているって確信は無かった。でも、可能性の高さに賭けた!ーー天城音成、アンタの愚かさもここに極まれりねっ!』

『こ、このクソ共……っ!僕がハートウェーブさえ発見していなければ、貴様等など生まれてはこなかったんだぞっ!!歪な、生命体はーー排除されるべきだっ!!』

『ああ、そうだなーー俺達も、そう思うぜ。だけど、いいのか?』

『ーーなにが、だ!』

『……我等に気を取られていては、『小娘』1人の拳すら避けられんぞ?』

 

『…………っ!?』

 

 

「う、お、おおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

  ーー渾身の叫びと共に、乙音の細身だが、しなやかな筋肉で包まれた肉体が躍動する。

  拳を握りしめ、ありったけの力を込める少女を見て、音成は思った、恐ろしい、と。

  だが、ディソナンス達は違った。かつては宿敵どうしとして争い、今は共闘する間柄となったこの人間の少女を見てーーこう思った。

 

 ……ああ

 

 

 

 

 信じて、良かった

 

 

 

 

 

 

 

「とぉ、どぉ、けええええええええええええええええっ!!!」

 

  変身もしていないというのに、乙音の持つあらゆる感情が彼女のハートウェーブを増大させ、その拳に虹色の光を纏わせる。

  そして、それを見た音成は直感的に悟るーー『アレ』をくらったらマズイ!と。

 

  だが、その足も、手も、顔さえも動かない。音成のDレコードライバーの力によって、もうほとんど消えかけているキキカイ、ドキ、バラクが、それでも、それでも音成の身体を縫い止める。

 

「ゼブラァァァァァァァァァァッ!!!」

 

  自らの半身の名を叫びながら、乙音の拳が音成の心臓部へと当たり、そしてーー

 

『ぐっ……なんだ、この感覚はーーっ!?』

「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

  ぞぶり、と乙音の拳が音成の中へ沈んでいく。乙音の放つ大量のハートウェーブと、キキカイ達が開いた道が合わさり、音成の心の中へ乙音が進入しているのだ。

 

  全身を作り変えられるような、奇妙だが、地獄のようなーーまるで、全身の肉と骨を同時に引きちぎられ、砕かれるような苦痛を伴う感覚を覚える音成。

  Dレコードライバーの副作用から逃れるため、早々にデューマンに知能を移した音成は知らないことだったが、その感覚と苦痛は、かつてボイスがDレコードライバーの副作用によってディソナンスになりかけたいた時、常に感じていたものと同じだった。

 

『ぐ、おお……!』

 

  今、乙音の意識は音成の心の中へと進入している。そのため、音成に拳を突き立てている乙音の肉体は完全に無防備である。だが、激しい苦痛とキキカイ達の抵抗によって、音成は絶好の機会を目の前にしながら、指一本動かすことはできない。

 

『ちくしょオオオオオオオオ!!』

 

(ゼブラ……!)

 

  音成の怨嗟の絶叫も聞かず、ただ必死になってゼブラを探し求める乙音。荒野を、あるいは深海を1人彷徨うかのような感覚を覚えながら、しかし彼女は不安を抱くことは無かった。

 

(……わかる。キキカイも、バラクも、ドキも………それだけじゃない。あの日託された全ての願いが、私を守ってくれてる)

 

  音成の心の中という、宇宙の深淵より深き暗黒を進む乙音。しかし、ホープソングへと変身したあの日のように。あるいは、ディソナンス達に後を頼まれた時のように。彼女に託された全ての願いと祈りと希望が、彼女を絶望から守っていた。

 

  ーーそして、彼女は光を見る。

 

(ゼブラちゃん……!!)

 

  心の深淵の中でさえ、なお小さく星のように輝く光を、乙音は見つけた。

  彼女にはわかった。あれは、ゼブラだと。自分の半身であり、家族でもあり、共に戦う相棒でもある存在だと。

 

(この手よ……届けええええええっ!!)

 

  乙音の手が、か細い光を掴む。彼女の小さな手に収まるほどの、更に小さな光が、その手に包まれた瞬間……確かな意思をもって光を放ち始める。

 

 

「はああああああああああああああっ!!!」

 

 

  乙音は、思い切り思いを込めてその光を引き戻す。力は必要ない。必要なのは、ありったけの彼女を思う心。

 

「ゼブラちゃんっ!!戻ってこぉーいっ!!!」

 

  裂帛の気合いの込もる叫びが、光を更に強くする。

  暖かな光は音成の身を焼き、彼の心すら希望で染上げようとする。

 

『こ、こんな…こんなものぉぉぉぉっ!!』

 

  当然、音成は拒絶した。もはや彼にとって希望とは救いではなく、倒すべき怨敵なのだから。

 

  束縛から解き放たれた音成の拳が、乙音の顔面を捉える。常人であるはずの乙音ならば、頭が粉微塵となって死んでいただろう。

 

「「それでも……私/僕はっ!!」」

『なん…………ぐわっ!?』

 

  だが、ダメージを受けたのは音成の方だった。彼は乙音『達』の発するハートウェーブに怯み、咄嗟に飛び退いた。ーーもう、彼は束縛されていなかった。

 

『ハァ……ハァ………一体、何が……』

 

  困惑する音成。彼を尻目に、乙音は音成の拳が当たる瞬間、自分を包んだ光を見つめていた。どこか暖かく、覚えのある光……

 

「まさか………!ゼブラちゃん!」

 

  光が彼女の身体から離れ、その横に徐々に人の形をとりながら集まっていく。

  そして……

 

「……お姉ちゃん」

「ゼブラ、ちゃん……」

 

 

「………ただいまっ!」

 

 

 

  その言葉を聞いた瞬間、乙音は無意識にゼブラを抱き締めていた。

  もう二度と会えないかと思っていた、半身であり妹のような存在。彼女を前にして我慢ができるほど、乙音は大人ではなかった。

  ゼブラも乙音の行動に驚きもせず、そっと彼女を抱き返す。泣いてこそいなかったが、その表情には彼女のありったけの安堵と喜びが浮かんでいた。

 

「……少し、痩せた?」

「心配で」

「ごめんね?」

「ううん。それより、ゼブラちゃん」

「うん」

 

  音成には、今の状況が理解できなかった。

  ゼブラの復活も、自分がディソナンス達に出し抜かれたことも、全てが自分の望む方向とは真逆に進んでいるこの状況の理解を拒んでしまったのだ。

  そして、彼が正気に戻った時には既に遅かった。

 

「……いくよ、これが私達の!」

「うん………!」

 

【ディスクセェェェット!!】

 

【ドライバー イン ホーープ!!!】

 

  乙音がSレコードライバーにディスクを挿入し、ゼブラは乙音と手を合わせて彼女と再び1つになる。

 

  そして2人は叫ぶ、今まで彼女達が唱えてきた、あの言葉を。

 

「「………変身!!」」

 

【オーバー ザ ライド!!】

 

【オーバー ザ フューチャー!!】

 

【Yes! ……ソング イズ ホォォォォォプッ!!!】

 

 

「「さあ………私/僕達の音、響かせるっ!!」

 

 

  仮面ライダーソング、復活ーー!

 

 





次回仮面ライダーソングは!

絶望とーー

希望の戦いーー

ついに、決着の時!

「私が響かせる音はーー希望だ!!私が、この宇宙全てに希望を響かせてやる!!!」
『貴様!ただの……ただの小娘が!!』

「これで……最後だああああっ!!!」


最終話
『The Heart Song』

10月前半中までには公開予定
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