百合が見たいだけです(切実)   作:オパール

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「クリスちゃんをヒロインにするのです」
と言わんばかりの超先史文明からの無言の圧力を受けているような気がして止まない今日この頃。具体的にはガチャ的な意味で

拙作のお気に入り登録数が1200件を越えました。
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にしてもミキシン局長いっつも脱いでんな


ザババは神じゃなくて天使だから(確信)

「切ちゃんのわからず屋!」

「何デスか調の頑固者!」

「金髪バッテン!」

「あざといツインテール!」

「デス娘!」

「なんちゃってクール!」

 

「えっなにこれは」

 

「あぁヒロ。良かった……」

「おう、セレナ。……いや、何これ」

 

セレナから「助けてほしい」みたいなメールを受けて自転車飛ばしてやってきた元フィーネチームの家。鍵は開いてたから入ったところ、これ以上無いくらいの仲良しザババコンビこと切歌ちゃんと調ちゃんが珍しく怒鳴り合っていた。

 

「いや、それがね」

「あっ、ヒロさんデス!」

「……丁度いいね。ヒロさんにも聞いてもらおうよ切ちゃん」

「上等デス。後で謝っても遅いデスからね調」

「何か穏やかじゃない空気」

 

剣呑とした雰囲気で睨みあう二人。そこで、ふと気づく。

 

「……あれ。そういえば二人ともその格好は?」

 

いつもの服とは一味違う、要するに他所行きの格好だネ

 

「いつになくおめかししちゃって。なに、まさかデート?」

 

冗談めかして言ってみたり

 

「……はい」

「……デス」

「えっ」

 

頬を染めて若干俯きながら頷く二人。

……えっ、ちょっと待って

 

「ちょ、ちょちょ、どういうこと、どこのガキ!? いつの間に!」

 

思わず二人の肩に掴みかかる。お兄ちゃん許しませんよ!?

 

「デデデデース!?」

「あ、あの、ヒロさん…!?」

「チクショウ、とりあえず俺に、あとマリアさんがいる時に連れてきて! 良い奴だろうと悪い奴だろうととりあえず全力で殴るから!!」

 

ドチクショウが俺とマリアさんとセレナあとナスターシャ教授に断りも無くきりしらに迫るとかクソがッ!

母さん直伝の相原流クリティカルコンボ決めても足りねぇ所業だぞゴルァッ!!

 

「えっと、あの……違うんデス。男の人とかじゃなくて」

「はい。デートというか、わたしと切ちゃんでお出かけするから……」

「あ、そうなの。ごめん、早とちりして」

「いえ、大丈夫です」

「デスデス」

「……あれ、でもだったら何でお出かけ前に喧嘩なんて」

 

そこまで言って、後ろのセレナから溜め息ひとつ。何やと思って見ると、きりしらに向けて目配せしてた。

 

「……いきなりですけどヒロさん。切ちゃんの格好見てどう思いますか?」

「え? いや、もちろん可愛いよ」

「ありがとデス。じゃあ調はどうデスか?」

「そりゃ言うまでもなくメチャクチャ可愛いケド」

「ありがとうございます。じゃあ……」

 

 

 

わたし(あたし)切ちゃん(調)どっちの方が可愛いです(デス)か?』

 

 

 

「………ッ!!」

 

その時俺に電流走る―――!!

 

「どう見ても調の方が可愛いデス! フリフリのお洋服なのにお人形さんみたいな雰囲気ゼロなんデスよ!?」

「それを言ったら切ちゃんだって! 活発な印象の中に女の子らしさもしっかり! これじゃ絶対街中で声かけられるよ!」

「調の方がもっと可愛いデス!」

「切ちゃんの方がずっと可愛い!」

「調ッ!!」

「切ちゃんッ!!」

「え、待ってこれ喧嘩なの? ノロケてるようにしか見えないってかこういう理由の喧嘩なら俺止めたくないんだけど」

「ヒロ、そういうところ本当に狂ってるよね……」

「ヒロさんも切ちゃんが可愛いって言ってあげてください!」

「調が一番可愛いって教えてあげるデスよヒロさん!」

「……こういうことで言い合えるって、二人とも本当にお互いのこと大好きなんだネ」

 

『はい! 大好きです(デス)!!』

 

「ありがとうございまいっだぁッ!?」

「バカなこと言ってないで早く止めてよ!」

 

思わず頭下げた瞬間、セレナに思いっきり叩かれた

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ヒロさん優柔不断すぎると思うんだよ」

「デスデス」

「……でも、ヒロさんの言うことにも一理あるから」

「今日のおでかけで、どっちの方が可愛いか白黒ハッキリさせてやるデス!」

「まぁわたしよりも切ちゃんの方が可愛いのはわかりきってるけどね」

「そう言ってられるのも今だけデス。調の可愛さに敵うモノは無いということを思い知るデス」

 

「「むむむむむ……!」」

 

 

 

「尊い……きりしら尊いよぉ……」

「……まだ言うつもりなら姉さんに報告するからね」

「やめてくださいしんでしまいます」

 

夜までかかりそうだったきりしらの言い合いを何とか宥めて、今は街に出た二人をセレナと二人で影から見守り中。

監視であって盗み見とかじゃないよ。二人も知ってるから合法だヨ。

 

「それにしても、『言葉で決着つかないならお出かけの中で決めれば良いじゃん』なんて」

「だって甲乙付けがたくてさー。てかそもそも、選ばなかった方じゃなくて、選んだ方の好感度下がるとかどんなクソゲー?」

「私や姉さんからすれば二人とも同じくらい可愛いんだけどね」

「俺から見てもそうだよ」

「……あ。動くみたい」

「んじゃ追っかけますか」

「そうだね」

 

「……あの、腕を組む理由は?」

「……だめ?」

「いや、別に良いんだけど」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「この帽子はどう切ちゃん?」

「くっ……色と良い形と良い、あたしのためにあるかのような帽子のチョイス……やるデスね調。ところが!」

「!?」

「そんな調にはこれデス! ちょっとオサレな、けど小柄な調にもジャストフィットなハットをえんぷてぃーデース!」

「くぅ…!? なんて可愛い物を……流石だね切ちゃん。でもまだ勝負は終わりじゃないよ」

「望むところデス!」

 

「これぞ調のための小さなコーディネート! フリフリによく合うアクセを食らえデス!」

「このチョイス……わたしのことを誰よりも見てくれてる切ちゃんだからこそ出来るもの。けど!」

「デス!?」

「あえていっそ大胆に! 激しく、けれどクサくない装飾の自己主張!」

「デースッ!?」

 

「」カシャー

「ちょっ、撮らないでよ切ちゃん…!」

「ふっふっふー。えすえぬえす? とかいうのに載せてやるデス。ゆるゆるになった調の顔をみんなに見せてやれば……!」

「わたし達の勝負に無関係な人達を巻き込むなんて!」

「これも全て調を思えばこそデス! 調の可愛さはフィーネも思わず裸足で逃げ……アッー!? 違うデス違うデス、間違えてこっそり撮ったマリアのだらしない寝顔写真投稿してしまったデェェェスッ!?」

 

 

 

「それを選ぶあたり、やっぱり調がナンバーワンデス!」

 

「あぁ、可愛いよ切ちゃん。やっぱりわたしよりも切ちゃんの方が可愛い」

 

「まだまだ!」

 

「何の!」

 

「調ー!!」

 

「切ちゃん!!」

 

 

 

「あれ端から見たらただのケンカップルじゃん最高かよ」

「それよりも姉さんの寝顔写真がとんでもない勢いで反響出てるんだけど」

 

 

 

「くっ……くふっ、っ……!!」

「……マリア」

「なに、翼? ……奏は何を笑っているのよ」

「いや、その……なんだ。とにかく見てくれ」

「? ……なっ、何なのよこれはッ!?」

「も、ダメ。……あはははははッ!!」

「貴女は笑いすぎよ奏!! あぁもう、いったい誰がこんな……って、切歌じゃない!!」

 

 

 

「……今度フォロー入れとくか」

「そうだね……」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「はぁ…はぁ…い、いい加減に認めてよ切ちゃん……」

「し、調こそ……!」

 

もう夕方。

二人の自分より相手の可愛さの競い合いはまだ決着ついてなかった。

 

「ヒロ。そろそろ止めた方が……」

「だなぁ。あれはあれでウマいけど、それで二人の仲悪くなるのは望むところじゃないし」

「じゃあ……あっ!」

「?」

 

声を上げたセレナに釣られて切歌ちゃんと調ちゃんの方を見る

 

やはりというか何と言うか、見るからにガラの悪い連中に取り囲まれていた。

 

「……お決まりのパターンだよクソが。セレナ、ちょっと待っとけ」

「えっ。……まさか喧嘩するつもり?」

「手っ取り早いからな」

「だっ、ダメだよ! 昔それで警察に捕まったことあるって響が……!」

「やりすぎないようにするし、お前らがきっちり証言してくれれば一晩留置所泊まりで済む可能性ワンチャン」

「でも!」

 

 

 

「……行こ、切ちゃん」

「デス」

「まぁ待ちなってー。もう遅いし送るよー?」

「っ……離して」

「調に触るなデスこの!」

「はいはい良いから良いからー」

「うっ、く、離すデス!」

「切ちゃん!」

 

 

 

「あ、もう無理行くわ俺」

「ヒロッ!」

 

二人が無理矢理掴まれたのに堪忍袋の尾が切れる。そのままセレナの制止を振り切って―――

 

 

 

「っ……調ッ!」

「うん!」

 

その時、二人が一瞬にして拘束から脱出、そのまま俺に向かって手を繋ぎながら駆けてきた。

 

「ヒロさんには、もう一人で無茶なことなんてさせないデス!」

「自分のことは自分で守ります!」

「……オッケィ! よくビビらなかった!」

 

二人が俺の後ろに回ったのを見届けて、同時にセレナも後ろに立つ。

 

「大丈夫デスか、調?」

「わたしは平気。切ちゃんは?」

「へーきへっちゃらデス!」

「ヘイヘーイチンピラ共。うちの妹分に何か用事?」

「あ゛ぁ?」

 

睨み利かせて凄んでくるけど、ぶっちゃけ怒ってるセレナの方がよっぽど怖い。そのまま人数ついでに顔を見ていくと、一際目立つ、頭にデカい傷痕付いてる奴に目が留まる。

 

「…………あ゛」

「お? お前確か……」

「ヒロ、知り合い?」

「知り合いってか…ねぇ?」

「パイセン? どうかしたんすかパイセン!?」

「俺はともかくお前さんは忘れるわけないよネー……そのデッカい傷、俺が付けたんだもんネ!」

 

よくよく見て思い出したのは、響ちゃんを詰ってた奴らの一人、要するに俺が昔病院送りにしてやった奴だった。

 

「にしても、まだこんなことやってたのネ」

「ぐっ、ぐぎぎ……」

「ん、なに。またやる? 今度は病院送りじゃ済まないかもだけど」

「な、何をビビってんですか! やっちまいましょうよパイセン!」

「あぁ、ちなみに前回の時はお前らの倍以上の人数いたからネ。フカシじゃないよ」

「……」

「ぱ、パイセン……」

 

尻込みして足踏みしてるチンピラーズ。……あと一押し

 

「……あの時は言う必要無かったから今言うけどさ、俺って実はお前らみたいなのが心底嫌いなの。何でかわかる?」

「……」

「……にひっ」

 

ニヤリと笑って歯を見せる。目の前のこいつがビビりまくってるのはわかりきってるわけで。

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

「―――テメェらみてぇなのに付き合ってた人寝取られたからだよとっとと失せろ殺すぞッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ヒィィィィッ!?」

「ああっ、パイセン!? パイセーン!!」

 

頭が逃げれば後は早い。情けない悲鳴を上げてトンズラこいた奴に続いてチンピラーズも一目散に駆け出していった。

残ったのは、もう俺達だけ。

 

「……ヒロさんが怒ってるの」

「初めて見たデス……」

「……」

「……はい終わり。やー危なかったネ!」

 

振り返ってみんなに。まぁきりしらはちょっと怖がってる風だったケド

 

「あの……ありがとうございました、ヒロさん」

「正直、あいつらちょっと怖かったデス……」

「一時はどうなるかと思った……」

「はっはっはっ。……んで、切歌ちゃんに調ちゃん」

「は、はいっ」

「デスっ」

「どっちのが可愛いかは決まらなかったみたいネ」

「……はい」

「デス……」

 

しゅんとして俯く二人。そんな二人の肩を叩いて続ける。

 

「まぁ二人はお互いのこと大好きだし、相手を尊重したいのもわかるけどさ。……その辺まで気ぃ遣わなくても良いんじゃない?」

「え……?」

「セレナも言ってたけどさ。マリアさんやセレナや俺、S.O.N.G.のみんなからすれば二人は可愛い末っ子みたいなもんだし。……あぁ、今はエルフナインがいるか。とにかく、そんな感じなのよ」

「……」

「切歌ちゃんも可愛いし調ちゃんも当然可愛い。でも二人一緒なら更に可愛い。俺は勝手にそう思ってる。セレナは?」

「私も同じ。二人にとって今日のことは大事なことなんだろうけど、それでもギスギスするよりはもっと楽しんでるところ出してほしいよ」

「……ちなみに、楽しかった? 二人とも」

 

俺の言葉に顔を見合わせる二人。少し間が空いて、次に二人が見せたのは―――とびきりの笑顔

 

『―――とっても楽しかったです(デス)!』

 

「ならよし!」

「……じゃ、あとやることは一つだね」

「だな」

「?」

「デス?」

 

「「ごめんなさいは?」」

 

「あっ……」

「デス……」

「二人とも意地張って、酷くないとはいえ口喧嘩までしたんだから」

「出来るよネ、切歌ちゃん、調ちゃん?」

 

二人を向き合わせて、それを待つ

 

「……色々言っちゃった。ごめんなさい、切ちゃん」

「あたしもたくさん悪口言っちゃったデス。ごめんなさい、調」

 

ぺこり、と示し合わせたようなタイミングで頭を下げた二人。そんなとこまで仲良しな光景に顔緩む。

 

「……じゃ! 仲直りも済んだところでお開きにしますか!」

「はいっ」

「うーん! 安心したらお腹空いてきちゃったデス!」

「ふふっ……じゃあ早く帰ろう」

 

切歌ちゃんと調ちゃんを先頭に、俺とセレナが続いて夕暮れ道を歩き出す。

前を歩く二人は手を繋いで、明るい笑顔を浮かべながら言葉を交わす。こんな姿を見て百合だなんだと騒ぐほど道徳捨ててないからネ俺。

 

「日本ではこういうこと何て言ったっけ?」

「えーと確か……雨降って地固まる」

「……固まってるね」

「ああ」

「……あ、そうだヒロ」

「ん?」

 

名前を呼ばれてセレナを見る。何か妙に目が据わってた

 

「さっきの人達に言ってたことなんだけど」

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

「付き合ってた人がいたって本当?」

 

 

 

 

 

 

 

「」

「ねぇ」

「……さぁダッシュで帰ろう! 最速で最短でまっすぐに一直線に! きりしらコンビ俺に続けィッ!!」

「はい!」

「デス!」

「ちょっ、ヒロ!!」

「ごめんセレナ俺にも永遠に秘密にしときたいことあるんだよネ!」

 

やべぇ勢いで前世でのこと口走っちまった!

死にたい!!

 

 

 

 

 

※おまけ【とあるグループトーク】

 

『ヒロ、昔彼女がいたらしいです』

 

『えっ』

『えっ』

『えっ』

『えっ』




Q.何で主人公NTR被害者設定にしたん?
A.特に鈍感でもない男に恋愛回避させる理由付けだからまぁ多少はね?

次回でのセレナの話を終えた後が本番、つまり原作設定だとか展開だとか突き抜けに突き抜けたギャグ時空始めるつもりです

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