百合が見たいだけです(切実)   作:オパール

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あーあ、出会っちまったか(挨拶)

今回はギャラルホルン関連等ありますが、感想でちょっとした意見を頂いたのでそちらを参考にさせていただいております

今回の注意喚起
・下ネタ有り
・アダム覚醒
・独自&捏造設定有り
・AXZ11話ネタバレ有り

以上になりますので、注意です


LILY LOVERS XX

『へぇー。ギャラルホルン』

『うむ。近頃、どうにも不安定でな。了子君やエルフナイン君にも、詳しい原因はわからんらしい』

『平行世界を繋ぐ完全聖遺物、なんですよね?』

『ああ。反応するのは装者にのみというのが通説だが、君に限っては、完全聖遺物同士の感応が起こるやもしれん。間違ってもこの場では……』

『……』ヒュンヒュン

『……おい。何故ここで鎖を振り回している』

『いやほら、男たるもの冒険心の一つも、ネ?』

『今はそれはいら……ヒロ君!!』

『うおっまぶしっ』

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「実験成功っ」

 

ギャラルホルンが光ったと思ったら、俺の身体は見覚えある公園にあった。

 

前世でXDプレイしてた頃から気になってたこと、ズバリ『ギャラルホルンが反応するもの』

一般的にシンフォギアを纏う者を装者と呼んでいる。けど、大昔に生まれた完全聖遺物が、何故造られて数年のシンフォギアと装者にのみ反応するのか。

シンフォギアの大元は神話に語られるアイテムである聖遺物、それを加工したのがFG式回天特機装束、つまりシンフォギア。

つまり、ギャラルホルンが反応するのはシンフォギアとかその装者ではなくそのルーツである聖遺物なんじゃね? みたいな解釈を俺はしてる。

まぁ俺に限らず考察してる人はそういう結論を出すのも大勢いたけどネ。

 

そこで、完全聖遺物扱いされてる鎖と乖離剣持ってる俺にもワンチャンあるんじゃね? というアホみたいな考えでやってみたら大成功したってわけ。

 

失敗したりアクシデントで、最悪死ぬ可能性も考えなかったわけじゃないケド

まぁ一度死んでる手前、死ぬ時はサパッと死ぬわけだし、いや出来れば死にたくないけどホントその時はあっさり死ぬんだから、そうなったらそうなったで、まぁ良いかなって

 

「さーて、ここはどの世界線かなー。原作? 片翼? それとも閃光かもしくは未発見かな?」

 

辺りを見回しながらうろつく。見覚えしかない景色だし月も欠けてるしで、たぶん原作に近い世界なんだろうと思う。

 

ふと、後ろから何かの気配

 

「?」

 

俺が振り向くのに合わせたかのように、ひょっこりと茂みの陰から現れたもの

 

「……」

『……』

「……」

『……』

 

 

 

「アルカノイズさんチィーッス!!!」

 

 

 

しばしの間の後、俺に向かって突っ込んできた小型のアルカノイズを横っ跳びで避ける。

姿勢を正してパッと前を見た瞬間

 

「oh…」

 

見事に団体様がご到着なさってた。

 

「さっきまで影も形も無かったはずなんだけどナー」

 

こっちを値踏みするかのようにうごうごとしてるアルカノイズ軍団。息を一つ吐いて、いつものように鎖を取り出して、構える。

 

 

 

「―――来いや雑音ッ!!」

 

その声に反応したのかどうかは知らんが、一斉に躍りかかってきた軍団。

ギャラルホルンで繋がる世界である以上、こっちにも装者はいるはず。この鎖じゃノイズを倒せないのは知ってるケド

 

―――時間稼ぎは俺の得意分野だったりするんだよネ!

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「アルカノイズ反応、確認!」

「こんな堂々と仕掛けてくるとはな……パヴァリア光明結社、形振り構う気は無いということか。……装者達への連絡、及び現在位置は!?」

「通達は既に完了しています! 各員、現場へ急行中……ッ、アルカノイズ反応の中心に、民間人!」

「なんだとォッ!?」

「で、ですが……!」

「どうした!?」

「同じ位置に、聖遺物の反応も検出! これは……完全聖遺物です!」

「……えぇい、どういうことだ……まぁいい、優先すべきは民間人の保護ッ! 一番近い装者は!?」

「このペースだと……装者より、彼女(・・)が真っ先に現着します!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「うおっ危ねッ!?」

 

時間計るのも億劫なんで、迫ってくる奴から順に弾いたり叩き落としたり。

無機物まで溶かすアルカノイズでも、この鎖までは対象にならないらしい。

 

「なんせ英雄王の無二の友の名前持ってる鎖なんでねぇ……って、サラッと街行こうとすんなオルァッ!!」

 

乱戦の中でも、余計な被害避けるために市街地に行こうとする奴を拘束して届く範囲に叩き落とす。

おかげでしんどい!

 

「ちょっと速く来てくれないとマジでやばいんですけ、どォ!!」

 

懐に飛び込んでくる奴は、鎖を脚や拳に巻いて殴る蹴る。

直接触れられなければノイズの炭化も無効になるのは、これまでで実証済みなんでネ!

 

「ぶはっ……あの、いい加減……来てくれって……!」

 

息を吸う度に肺が軋むように痛い。吐く度に口の中が乾く。乳酸溜まりきった全身が重い。

いっそ楽になりたいほどの疲労に、目の前が眩み始めた、その時

 

「―――うるっ、せ!?」

 

キィィィィィンッと、聞き覚えのあるような無いような、そんな奇音に思わず両手で耳を塞いでしまった

 

「あっ」

 

それを好機と捉えたか、さっきまでとは比べ物にならない数が、俺に殺到する

 

「―――ハハッ」

 

流石にこれは間に合わない、とどこか他人事のように思考する

鎖を放とうと、腕に巻き付けて弾こうと

それよりも速く、ノイズが俺に突き刺さる

 

―――調子に乗りすぎたかなぁ、これ

 

 

 

 

 

「えっ」

 

けど、それよりも更に速く

天から降り注いだ黄金の雨が、目の前と言わず辺り一帯のアルカノイズを悉く塵にした。

 

「なんっ……!?」

 

地面に突き刺さり、金色の粒子を纏ったそれを見て愕然とした

 

剣、槍、斧、矢

ありとあらゆる武器こそが、雨の正体

 

そして俺は―――その使い道を知っている

 

「―――王の財宝」

 

俺に与えられなかった、かの英雄王が誇る宝具

転生して、装者のみんなと共に戦う内に、求めるようになっていたその力

 

「誰だ……いったい……!」

 

そんな俺の後ろを、滑るようにすり抜けた影が一つ

 

その影は地面に刺さっていた剣と槍を抜いて両手に構えると、一撃で残っていたアルカノイズを斬り払った

 

「―――」

 

言葉を失う

 

長い髪に整ったスタイルの女性

こちらに振り向いたその顔立ちは、またしてもどことなく見覚えがあって

―――俺と同じ色の、髪と瞳だった

 

「……その鎖」

 

ぽつりと呟いて、俺へと歩み寄ってくる

疑問が尽きない。訊きたいことが次から次へと湧いてくる

 

だから、どうしても訊きたいことだけを訊くことにした

 

「……まず、訊いていいか?」

「どうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「百合の花は?」

「無垢な純愛」

「その花園は?」

「禁断の聖地」

「侵す奴には?」

「鉄槌」

「立花響」

「総攻め」

「雪音クリス」

「総受け」

「ひびみくは?」

「王道」

「奏さんとセレナとは」

「無限の可能性」

「我ら百合想う」

「故に我ら有り」

「俺がお前で!?」

「わたしが君で!」

 

「「ウィーアーッ!!」」

 

ダブルエーックス!! と叫びながらハイタッチを交わす俺と女性。

うん、やっぱこの人あれだ

 

―――こっちの世界での俺だ。理屈じゃなく、直感でそう感じた

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

平行世界の俺が女性だとは思いもよらなかった。

アルカノイズの第2波と錬金術師達の姿が見える気配も無いとのことで、とりあえずはその女性、相原ヒナと、合流してきたこれまた俺の世界と全く同じメンバーの装者達に連れられてやってきたのはいつもの潜水艦。

今は司令への面通しのために前後からこっちのS.O.N.G.に挟まれて通路を歩いているのだが。

 

有り体に言おう、死にそう

 

「むー。なんで奏さんとマリアさんがヒナさんの両腕陣取ってるんですかぁ」

「悪いな響。先着だ」

「まったく、ヒナ? あなた防御はからっきしなんだから、先走らないようにいつも言ってるでしょう?」

「ははっ、ごめんなさい……あの、あと出来れば人目があるんで腕組むの勘弁してもらえません?」

 

平行世界の俺はS.O.N.G.おっぱい三銃士のうち二人に挟まれていた。

どうしよう、俺百合なら女の自分でも対象になるのか! 知りたくなかったそんな事実!

 

「やだっ、ここってまさか俺にとって天国……!?」

「他人事と思ってこの野郎……!」

 

肩越しに睨み付けてくるヒナ。ふむ、見た感じヒナ本人はそのケは無い、と。

 

「平行世界の俺だけどさ、応援するよ装者のみんな!」

「ゴルァッ! わたしはノンケだぁッ!!」

 

こっちじゃ『相原ヒロ』に対して恋愛云々無い以上自由にやれるとか、そうかこれが愉悦か! ちぃ覚えた!

 

 

 

その後は司令や緒川=サンを初めとしたいつも通りのS.O.N.G.メンバーと邂逅(櫻井女史やキャロルもいた)。

シンフォギア装者でもない俺がギャラルホルンから繋がってきたってことにみんな驚いてたみたいだけど、『完全聖遺物ならしゃーない』という結論に落ち着いた。ゆるいな。

 

ほいで今はヒナと二人。持ってる宝具が近しい以上、やっぱり境遇も同じなんだろう。

お互い性癖も百合好きだしネ!

ただ、二人で話したいとヒナが言った瞬間の装者みんなの真顔はちょっとメンタルにキた。

 

「お前も転生してここに来たんだよな?」

「うん。ある日ポックリと。そんで、こっちの意見もガン無視で蔵だけ与えられてポイー、って感じ」

「俺もそんな感じだわ。まぁこっちは鎖と乖離剣だけどさ」

 

やっぱりと言うかなんと言うか、辿った経緯、家族構成、今日に至るまでの道筋まで俺と全く同じと言っていいほどに似通っていて。

聞くところによると、ヒナは蔵を与えられたは良いものの、蔵そのものと鍵だけで中身はスッカラカンだったらしい。まぁAUOが財宝ぶっぱ出来るのって生前にお宝集めまくったっていう逸話があってこそのあの戦法と蔵だから、そこは何となく理解できる。たぶん俺に蔵が与えられててもそうだっただろうし。

 

が、そこで生きてきたのが、蔵の本質。

 

蔵に納められているのは、ザックリとした言い方をすれば遠い過去から遥か未来に至るまでの『人の手で生み出されるもの』その原点。

つまり、それにこの世界での技術や生まれるものを当て嵌めた結果、ノイズを倒せる唯一の武装である『シンフォギアシステムの原点』が、完全聖遺物という形でそのままヒナに与えられた蔵に置かれることになった、ということらしい。

まぁ実際あの宝具そのまんまゲットしてたらそれこそただのチーターだから是非もないネ!

ちなみに俺が戦闘中に聞いた怪音は、位相差障壁無効にするシンフォギアの調律と同じ周波数の音だったらしい。んなもん使えるとか普通に羨ましいわ。

 

ここまでの話でだいたいの違いと共通点はわかった。けど、それ以外に決定的な違いが一つ

 

「……百合ハーレムですか」

「その顔やめて。第一、わたしノンケだから」

 

俺の方じゃあくまで友人なクリスちゃんや妹分のきりしらまでヒナに惚れてるこの世界。それどころかエルフナインやキャロルにまで意識されてる辺りやっぱ俺得すぎるよこの世界線!

 

「いやー、短時間とはいえ凄く良い上に濃いの見せてもらったわ」

「ホントにやめて……そ、そっちだってハーレムみたいなもんでしょう!?」

「違わい! 誰に手ぇ出すつもりも無いし、童貞にはハードル高すぎてむしろ困ってるわ!」

「こっちだって百合でハーレムにする気なんて微塵も無いし!」

「俺は!」

「わたしは!」

 

「「百合が見たいだけです!!(切実)」」

 

考えや悩みも一緒な辺り、やっぱり性別違うだけの同一人物なんだなと改めて思った。

 

 

 

「……改めて見ると、ホントにどことなくヒナさんと似てますね」

「髪とか眼の色もそうだし……お、つむじの位置同じだ」

「待ってください奏さん。なんでわたしのつむじの位置知ってるんです?」

 

場所を移して休憩スペース。興味深そうに俺を囲んでヒナと見比べてくる装者のみんな。

俺の素性は話し終えているため、自分の好意を寄せる相手が別世界では男だった、というのも物珍しいようで。

 

「そこでキャロルとエルフナインを膝に乗せてるヒナちゃん。百合ハーレムな感想どうぞ」

「ぶん殴るよ?」

「あの……ヒロさん、で良いんですよね? あまりヒナさんをからかうのは……」

「大丈夫だよエルフナイン。あとでシバくから」

「んん……」

「……オレの顔でその反応はやめろ」

「ツンデレ乙」

「誰がツンッ……やめ……」

「薄々わかってたけど荒いなお前」

 

俺におずおずと注意をするも、ヒナに撫でられて大人しくなるエルフナイン。それに目付き悪くしたキャロルだったけど撫でられてあっさりコロリ。……それで百合ハーレムごめんは無理があるよこっちの俺。

 

「……んー」

「ヒロ? どうかした?」

「いや、なんでも」

 

こっちのセレナが声をかけてくるも、どことなく距離感を感じる。

……まぁ、こっちのみんなにしてみれば俺はポッと出の余所者だし。

 

それでも、平行世界の別人とはいえ一応は見知った相手から他人行儀ってのは……まぁ、多少クるものがあるのは否定出来ない。

当たり前こそが一番の幸福ってよく言うけど、ホントにそうなんだなとこういう状況になって、よーく思い知ったよ

 

そうして、一応は静かに続いていた時間も、終わりは来るもので

 

その後どれだけ待ってもアルカノイズの後続の反応や錬金術師達が来る気配は無く、そのまま解散と相成った。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

俺の処遇はヒナに一任すると言われた。本来なら艦内に留まるかさっさとゲートから帰るべきだったが

 

『……ヒロ。君が通ってきたゲートってどの辺り?』

『え? いやこの辺だけど?』

『……見当たらないんだけど』

『うそん』

 

帰ろうと思ったら閉じてた。

やばくね? と誰もが思ったけど、俺の住む世界のギャラルホルンが不安定なように、こっちのギャラルホルンも他世界との繋がりが安定してたり不安定だったりしているらしい。だから、安定した時を見計らえば帰れる可能性はなきにしもあらず、とのことで。

今日のところは未だ動きを見せない錬金術師達との遭遇の可能性を考えて、一人暮らししてるヒナの家にお互いの護衛も兼ねて厄介になることになった。

だったら二人して艦内待機が理想だろとも思ったけど、ヒナはアパートの自分の部屋じゃないと安眠出来なくなってしまったらしい。こっちのみんな何してんのよ。

 

「ごめん。だいぶ歩かせちゃって」

「気にしなくていいって。距離的にも俺の世界と変わんないし」

 

百合についてだったりこっちのみんなについてだったり百合だったり百合だったり色々話しながらヒナに着いていく。

 

「……ねぇヒロ」

「ん?」

「君……寂しいとか、思ってる?」

「……そりゃ、まぁ。まだ半日くらいしか経ってないけどさ……向こうのみんなとの繋がりって、俺の中でだいぶ大きくなってたんだなー、って思ってる」

「そっか……まぁ、来れたんだったら帰れるよ」

「だな」

「うん。……さっ、ここがわたしの住んでるアパート」

「おぉ、俺の住んでるとこと同じだ」

「そこまで同じなんだ。まぁ、女一人のやもめ暮らしだけど、良ければ上がって」

「んじゃ遠慮なく」

 

鍵を開けて部屋に入るヒナに続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったじゃないか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァンッッッ!!!!

 

勢い良く閉められるドア。軽く壁軋んだ音したけど。

 

「………」

「……なぁ今」

「キノセイ」

「えっ」

「キノセイ。ナニモイナイ」

「いやでも」

「キノセイ。ナニモ、イナイ。ナニモ、イナカッタ。イイネ?」

「アッハイ」

 

いるわけないいるわけない戸締り完璧なわたしの部屋にあの男がいるわけない……

とぶつぶつ呟きながら、ヒナがもう一度ドアを開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頑なだねェ相変わらず。だがそれでこそ僕の」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッデェムッッッ!!!!」

 

スパァンッッッ!!!

 

今度は小気味の良い音と共に。これご近所迷惑じゃね?

 

「……わたしの唯一の安息の地がァ……!」

 

ドアにもたれかかって絶望するヒナ。

 

……いやー

 

 

 

「見覚えのある―――全裸だったネ」

「言わないでよぉッ!!」

 

 

 

見間違えるはずもない、あのインパクトはこっちでも健在らしい。

つか何やってんだあいつ

 

「もうやだ、ホントにやだぁ! 何でわたしのたった一つの心安らぐ場所まで侵されなきゃなんないのよォ!!」

「………」

 

顔を覆って泣き崩れるヒナに、同情的な視線しか送れない。何かもう、哀れとか可哀想とかそういう次元じゃなかった。

 

「……い、いや、流石に三度目は無いんじゃない!? ほら、いくらあの全裸でも二回も邪険にされれば考えるって!」

「………」

 

気休めにもならない慰めだけど、それをどう感じたのか立ち上がってドアノブに手をかけるヒナ。

 

「……まだいたらあの粗末なモノぶらさげてる股間全力で蹴り上げてやる」

「怖ぇこと言いなさんな……ていうか、そんなこと出来る身体じゃないはずなのに思いっきりエレクトしてたなあいつ」

「考えないようにしてたのにッ!!」

 

こうなりゃ自棄じゃい!! と叫びながら思いきってドアを開け放つヒナ。

ぶっちゃけこの後の展開は読めてる。

 

 

 

「ヒナ! 今日こそ君に僕の」

「 死 に さ ら せ オ ラ ァ ッ ! ! ! 」

「ぅ゛ん゛ッ゛」

 

 

 

有言実行

一歩大きく踏み込んだ後に振り上げられたその右足は、全裸で不法侵入の変態錬金術師―――アダムの股座を的確に蹴り抜いていた。

 

「……やっぱ荒いよお前」

 

正直、見てるだけの俺の息子も怯えてました。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

その後は何の問題も無く夜が明けた。

いや、アダムが深刻なダメージを受けたことに気付いたサンジェルマンさんが来たりはしたんだけど。

 

『サンジェルマァァァァンッ!!』

『あ、相原ヒナ!?』

『なんで! なんでこの変態錬金術師がわたしの部屋にいるわけ!? 戸締り完璧なわたしの部屋に!』

『そ、そんなこと私が』

『シャラップ、このポンコツ中間管理職! こいつはあれからいつもいつもいつもいつも! このドグサレさっさと持って帰って燃えないゴミにでもぶちこんで! そして二度とわたしの前に顔出させるな!!』

『………ご、ごめんなさい』

 

あなたが謝る必要無いんですがそれは

 

そんなこんなで、荒れ狂ったヒナを何とか宥めてその日は就寝。

翌朝、つまり今しがたヒナへと司令から連絡が入って、俺が通ってきたゲートが開いたとのことらしかった。

 

なんで、今はその公園にいる。

 

「……見苦しいものしか見せられなかったネ」

「気にすんな。お前に非は一切無い」

「そう言ってもらえると気が楽になるよ……」

 

あはは……、とヒナが力無く笑う。

 

「……もし疲れたら、さ」

「うん?」

「こっちの世界、避難所にしてくれても良いと思うぜ」

「―――」

 

俺の言葉に少しだけ息を呑むヒナ。

だけどすぐに首を横に振って、今度は明るく笑った。

 

「……それは無理」

「なんでさ?」

「確かに疲れるし、色々としんどいよ。けどさ……今の状況は、わたしの行動したことの結果だから。特にS.O.N.G.のみんなには、わかってくれるまで言葉を尽くすよ。わたしは百合が見たいだけでソッチのケは無いって」

「……」

 

こちらに駆け寄ってくる装者達を見ながら告げられたその言葉に、今度は俺が言葉を無くす番だった。

 

望まない状況になっても、疲弊するだけだったとしても、ヒナは逃げる道を選ばない。

蔵といいこの意志といい―――平行世界の同一人物であっても、やっぱり俺とは別人なんだと、改めて痛感させられた。

 

「……強いな、お前」

「そう?」

「ああ……俺とは、違う」

「……ヒロ」

 

それと共に差し出された右手。それが何を意味しているかは、わかった。

 

「縁があったら、またいつか」

「……ああ。また、いつか。……百合のケ無いなら耐えろよ?」

「……がんばる」

 

言葉と一緒に握手を交わす。

俺とは違う俺、俺よりも色んな意味で強い俺

 

相原ヒナ―――やっぱり、羨ましい

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、いつまで握ってるの?」

「いや、こうしてれば蔵の財宝いくらか俺に回ってくるかなって」

「……だったら鎖だけでも頂戴よ」

「やだ」

「あははっ、面白い冗談だねー」

 

 

 

「「―――っだテメ、やんのかァッ!?」」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ただいまー」

「ヒロー!!」

「エ゛ン゛ッ!?」

「バカ! バカバカバカァ!! 心配したんだからねホントにぃ!」

「いって……わ、悪かったよセレナ……」

「私だけじゃなくて、みんなにも謝って!」

「えー、あー……すみませんでした……」

「……まぁ、お前がバカやらかすのはいつものことだけどさ、流石に今回のはシャレにならないところだったぞ」

「はい……仰る通りです、奏さん」

「司令から聞いたが、冒険心、などと宣っていたそうだな」

「反省してます……」

「無事で何よりだけれど、もうこんなことはしないこと。良いわね?」

「はい……」

「ヒロさん……」

「待って響ちゃん、そういう顔されるのが一番効く」

「……けどよぉ」

「どした、クリスちゃん?」

「先輩達以上にぶっちキレてるのが一人いんだけど」

 

「…………」ゴゴゴゴ

「ヒエッ」

「……ヒロ君」

「ハイッ」

「言いたいことは山程あるが、とりあえずは無事に帰ってきたことを喜ぶとしよう」

「はい」

「だが皆に心配と迷惑をかけたことへの償いはキッチリ取ってもらう」

「はい、心得ております」

「では、まず一つだけ言っておこう」

「……なんでしょう?」

 

「―――金輪際、君はギャラルホルンへ接触禁止だ」

「そんなッ!? あの百合に溢れる最高の世界に行けないなんて!?」

「反論を受け付けてもらえると思ったかァ!!」

「二度と触りません!!」




王の財宝の解釈はこれで合ってるはず……強引なのはギャグ時空補正ということでゴリ押していただけると幸いでございます…

Q.ヒナちゃん前とキャラ違いひん?
A.これが素です。むしろ追い詰められてるせいでちょい荒れてます

Q.アダムただの変態やん
A.「僕だけだよ。ティキのあちこちに触れていいのは」なんてセリフを作者に聞かれたのが運の尽き

Q.どのくらいの変態目指してるん?
A.鰤

Q.アダムって人間じゃないんだからそういう機能無いんじゃないの?
A.試作体で廃棄されるくらい完全だったんだからあっても良いんじゃね?という解釈。あと正直そっちの方が面白いと思って

Q.アダムが他の女に粉かけてるのにティキちゃんは?
A.花嫁修業してる



おまけ

ヒロ(そういや……ギャラルホルンが反応する時って、だいたい繋がる側の世界でカルマノイズみたいな、何かしらの異常事態が起こってたハズ)

ヒロ(向こうでの異常って何だったんだ……?)

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