百合が見たいだけです(切実)   作:オパール

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もし後々にヒロが何かしらの決戦中にセレナがヒロを想って歌い始めたら死亡フラグと思ってください(挨拶)

AXZロスなところに数日後GX再放送とか人の心がわかりすぎてる


今回で思ったことは

俺ちゃんとしたラブコメとか向いてねーわ


筆頭、独走

秋の日差しが世界を照らし、涼風が吹き抜ける今日この頃。

街から少し外れた公園で佇む男が一人いた。

 

いやまぁ俺なんだけどネ

 

「あ゛ー……」

 

これから起こることに若干の不安を覚える。それもこれも、全部あの薔薇野郎のせいだ……

 

『何でもするって言ったよね?』

『いや、あの』

『じゃあ今日この後―――デートしよ』

『えっ』

 

そんな感じでトントン拍子、あれよと言う間に日時が決まり、これよと言う間に場所が決まり、それよと言う間にその時が来たというか来てしまったというか

 

「ヒロ、ごめんなさい!」

「おう」

「……あの、待たせちゃった、よね……?」

「いんや。待ち合わせの時間より普通に早いし」

「そ、そっか……えっと、その……じゃあ、行こ?」

「……おう」

 

きゅっ、と俺の手を握って隣に立つセレナ。バレないように息を一つ吐いて、二人並んで歩き出した。

 

……どうせならマリアさん誘ってセレナと仲良し姉妹してるの見たかったけどナー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ」

「なに、奏?」

「あいつ、あんな風に待ち合わせしてデート、なんてしたことあったか?」

「私の記憶には無いわね。翼、貴女達はどうなの?」

「……私の記憶にも、無い……」

「私と未来のお出かけに荷物持ちみたいな感じで来てくれることは何度か……でもあんな感じは一度も……」

「今朝帰ってきた時、妙にウキウキしてたのはこういうことだったのね、セレナ……」

「……顔赤くしてチラチラヒロのこと見てる。やっぱあざといな、流石お前の妹あざとい」

「うるさいわよ奏。誘い受け気質のクセして私の妹をディスらないで」

「誰が誘い受けだァ!」

「あ、移動した。行きましょう翼さん!」

「あ、あぁ……だがもう少し声を……」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「いらっしゃいませー! ただいまカップルのお客様限定でスペシャルメニューを提供させて頂いておりまーす!!」

「カップル違います」

「今はまだ」

「そんな予定はないです」

「フフッ、照れなくてよろしいんですよ彼氏さん。カップル一組様、ご案内しまーす!!」

「俺の話聞いて!?」

 

朝食は食ったとはいえ、今は昼前。二人して小腹も空いてたので早めの昼食にと選んだ適当な喫茶店でこのザマである。

なんでこういう時の女性店員ってテンション高いんだろうネ

 

「……むぅ」

「なんだよ」

「私とカップル扱いされるの、そんなに嫌?」

「嫌とは言ってねぇ。事実でもねぇのにそんな扱いされたくないだけだ」

「……そっか。嫌じゃ、ないんだ……」

「?」

 

あれーなんか好感度上がった音したゾ今

 

\ヨンメイサマゴライテンデース/

 

「……じ、じゃあせっかくだし……頼も、限定メニュー」

「はいはい、好きになさいな」

 

店員のねーさんに注文をするセレナを横目に見ながら、顔は窓の外に向ける。休日ということもあってか、道行く人達はどうにもカップルが多いようにも見えた。

 

「……ヒロ」

「ん?」

「お似合いだって、私達」

「社交辞令に決まってんだろ、んなもん」

「……」

「痛って!? お前スネ蹴んなや!」

「ヒロが悪いんでしょ!? ホントに女心がわかってない!」

「テンプレ鈍感系よりはわかってますぅー! その上での対応ですぅー!」

 

 

 

「……」

「奏、仮にも歌女がしてはいけない顔になってるわよ」

「仲良いのはわかってたけどさぁ……こうまで見せられると、なんだ……」

「……まぁ気持ちはわからないでもないけど」

「ていうかマリアは落ち着きすぎだろ」

「あら、セレナは私の妹よ? あの二人が結ばれるのなら、私としてはむしろ望むところだけれど。その結果になったとて、悔やみを感じこそすれど、邪魔立てなんてするわけがない」

「優しいねぇ……んで、翼と響はなにをうんうん唸ってんだ?」

「いやそのー……お高いなって。値段もそうですけど、カロリー的な意味で」

「……普段ドカ食いしてる子が何を言うのよ」

「いや、その……流石に太すぎるのは、ヒロさんも嫌かナー、なんて」

「口にした分は鍛練で消費……問題ない、無いのだが……」

「わからないでもないけど、そこまで悩むところなの……?」

「マリアは良いよなぁ。食った分の色々が全部ソコに行くんだから」

「食器で人の胸をつつかない!」

 

 

 

「!」ガタッ

「ヒロ?」

「……いや、なーんか俺好みな百合的な展開が店内で繰り広げられてる気配したんだケド」

「……せっかく二人きりなのに、他の人に気を取られないでよ」

「?」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「……ねぇ」

「ん?」

「こうして、その……二人きりってあんまり……というか、初めて、だよね?」

「言われてみりゃそうだなぁ。俺も特にデートしたいとかそういうのは無いし。出かけるにしても荷物持ちがほとんどだし」

 

転生してからこっち、ネフィリムの一件から始まり例のライブ、響ちゃん騒動から飛んでルナアタック。今日に至るまで何かとみんなと絡んでるけど、何だかんだでセレナと一緒、っていうのが割かし多いようにも思える。

まぁ他の人が学生かアイドルやってるってのも多いからなんだけどもネ

 

「言っとくケド、少なくとも悪い気はしてねぇから」

「え?」

 

繋がれたままのセレナの手を軽く握り返しながら言う。視線は逸らす、恥ずかしいジャン

こっちはともかく、セレナは純粋にデートしたかった以上、少なくともその意を汲んでやらねば男が廃る。

本音を言えば百合デート見る方が好きだけど……まぁ男だからネ! 美少女と出かけるなんてレアなイベントだからネ!

 

「まぁ、なんだ……楽しまなきゃ損だし。お前の気が済むまで付き合うよ」

「……ズルいよ。そういうこと言うの」

 

頬を染めたセレナ、繋がれたその指が少し動いて、俺の指に絡んできた。

……まぁ、拒否する理由もあるまいて

 

「次、どこ行く?」

「んー……歩こ。もう少し、こうしていたいから」

「……りょーかい」

 

その仕草に妙に照れ臭く感じながら、繋がれた手はそのままに歩き出す。

こういうこと受け入れちまうからカップル扱いされんのかナー

 

 

 

「入り込みたい……」

「おい、さっきまで言ってたことと真逆だぞ」

「だ、だって、あんなに仲睦まじく歩いているのよ……もっと近くで見たいと思うじゃない」

「そんなだからただのやさしいマリアなんて呼ばれるんだよ……」

「つ、翼さん、男の人と手を繋ぐって、どういう感じなんでしょうか?」

「私に訊いてくれるな……経験など無い……」

 

 

 

「……」

 

あの四人はあれで隠れられてると思ってるのか……?

 

「ヒロ?」

「いや、なんでもない」

「……もうちょっと」

「?」

「もう少しだけ、近くに行って……いい?」

「……お好きにどうぞ」

 

俺の言葉に表情を緩めながら、セレナが腕に抱きついてくる。

 

……ああ、なるほど。なんでこういう時のセレナを相手にしてるとここまでざわつくのか、何となくわかった

 

この態度が……最初のあの女を、思い出させるからだ

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

まぁ、だからといって邪険にする理由は無い。あの女とセレナは別人なんだから。先のことはどうなるかわからないけど、少なくとも、今だけは、セレナのしたいようにさせたいと思う。

結果がどうなろうと、誰かを好きになるだけなら、自由なんだから。

 

「ヒロ、あーん」

「ったく……こんな人目に付く所でやるか、普通? ……あむ」

「そんなこと言いつつ食べてくれるんだから」

「照れ臭いけど拒むほどでもないしネ」

 

……恋人ごっこ、なんだろう。少なくとも、セレナは笑ってはくれてる。その胸の内はどうあれ、楽しんではいるんだ。無論、俺も。

 

「……はいJK百合の気配キマシタワァ!!」

「学生相手にそんな感情抱かないの!」

「だって! 今のリディアン組以外の女子高生の百合なんてめったに見れないし!」

「通報されるよ!?」

 

仲良さげな女性同士の何かしらがあれば、俺がそれに反応してセレナがツッコミを入れてきて。

 

「……良いな、この新曲」

「姉さん達、三人での曲って意外と珍しいよね」

「やっぱ三人並んで歌ってんのかネ」

「……余計なこと考えない」

「アッハイ」

 

立ち寄ったCDショップで奏さん、翼さん、マリアさんの曲を探して、聴いて。

 

そんな時間、優しい時間、暖かい時間。

こんな時間を過ごしている間は、嫌なことも思い出す必要も無くて。

いつか、セレナやみんなも、誰かとこんな時間をずっと過ごすようになるんだと、心のどこかで思っていて。

 

そうなってくれればいい、百合でなくともいい。幸せに生きてくれればいい。

 

―――俺とじゃなくても、いい

 

 

 

「……あの、奏さん」

「なんだ、響?」

「ヒロさんの、あの表情」

「何も言うな……そう簡単には割りきれないんだろ、あいつも」

「でも……」

「相原の過去、相当に根が深いのは、わかっている。だが……」

「彼を想う私達、ヒロが選ぶのが誰であれ、祝福するつもりはある。けど、まずは」

「ああ。……帰ろうぜ、あたしらは」

 

 

 

 

 

 

 

「……もう夜だな。送るよ」

「うん……」

 

時間は過ぎて、秋になったこの時期は日が落ちるのも早くて、もう夜。

繋がれた手は、いつの間にか離れていて。セレナの手は俺の手に近付いては離れてを繰り返している。

 

「……ヒロ」

「ん?」

「なんだか無理矢理に誘った形になっちゃったけど……楽しかった?」

「……ああ」

「ホントに?」

「楽しかったよ。昨日ロクでもない目に遭ったしな」

「……そう」

 

会話が途切れる。楽しかったのは本当だ。

無言のままに二人で歩を進めて、その内、セレナがみんなと住む場所へと到着する。

 

「……じゃ、ここで」

「……」

「セレナ?」

「……ヒロっ」

 

そのまま踵を返そうとした俺に、セレナが飛び込んできた。

 

「っと……なんだよ?」

「……信じられないのは、なんとなくだけどわかってる」

「え?」

「だから、信じて、なんて簡単には言わない。けど、これだけはわかってほしいから……」

 

赤く染まった頬、潤んだ瞳。その奥に見える感情。

何が言いたいかは、わかってる。信じてほしい、と言外に語ってるのもわかってる。

セレナ自身も、俺が何て言うかもわかってるんだろう。

 

だから

 

「……セレナ」

「……ヒロ」

 

「また、明日な」

「……うん。また、明日」

 

だから、お互い何も言わず、また明日、とだけ伝える。

セレナから離れて、足早に帰路につく。

 

途中で振り返れば、そこには小さく手を振る、セレナの姿があった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

・後日

 

「ヒロさん」

「どした調ちゃんに切歌ちゃん?」

「マリアがちょっとしたお仕事のお相手探してるデス」

「え、なに。怖いんだけど」

「えーっと……どれデス調?」

「これです。アイドル以外にも色々とお仕事あるらしくて……」

「うん、やだ」

「即答デス!?」

「なんでラブコメ定番のブライダル雑誌の撮影パートナーに俺を選ぶんだよ! 緒川=サンで良いジャン!」

「セレナとデートしたんだからマリアにも良い思いさせてあげてもいいと思います!」

「それでいらん噂立ったら迷惑かかるのマリアさんなんだけどなぁ!」

「うぅっ……それを言われると痛いデス……」

「わかったら他当たりなよ。俺には荷が重すぎる」

「……なぁヒロ」

「次は奏さんですか……どうしました?」

「今度のオフにあたしと翼、響と未来でWデートするんだけど、お前こっそり見に来るか?」

「 是 非 行 き ま す ! ! !」

 

「ヒロの趣味に的確につけこんだ巧妙な手口……!」

「大丈夫だよ、姉さん」

「けど、セレナっ」

 

「たぶん、今すぐどうこうってことにはならないから」

 

そう口にしたセレナの表情は、どことなく翳っていたと、後にマリアはそう語る―――




トラウマ引きずってるからって卑屈がすぎる上に好いてくれてる異性に対してドライすぎませんかねこの主人公(ぶん投げ)

珍しくネタが二つ同時に降って湧いたので近い内に次が投稿出来ると思います

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