百合が見たいだけです(切実)   作:オパール

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その想い、その願い、その感情

名付けるならば―――傲慢である


縛ってけZENRA

夜の街に突如として現れたアルカノイズの軍勢。

パヴァリア光明結社の錬金術師、サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティがそれぞれ三手に別れ、装者達を分断させての陽動と本命を兼ねた策によるものだった。

 

『……サンジェルマン、うまいことやれてるかしら?』

『さてな。どちらにしろ、私達の役目はシンフォギア共の足止めなワケダ』

 

大軍、そう呼んで差し支えない数のアルカノイズ。

軍勢は二ヶ所に同時に発生、S.O.N.G.は現リディアン組と歌姫+セレナのチームに別れ、それぞれ掃討に当たっていた。

 

「―――だぁクソッ! ちょっせぇクセに数だけは百人前かよ!」

「クリスちゃん、危ないッ!!」

「っと……悪ぃ助かった!」

「行くデスよ調! ぶっちKILLデース!!」

「うん、切ちゃん!」

 

たった四人、されど四人。

正規適合者のクリスに誰よりもポテンシャルが抜きん出た響、連携における相性と爆発力は他の追随を許さない切歌と調。

四人の奮闘を、文字通り高見の見物を決め込んでいたプレラーティは静かに見下ろしていた。

 

「……ふむ。想定してたよりもやってくれるワケダ。そちらはどうだ、カリオストロ?」

 

 

 

「こっちの子達もなかなかネ。二人おクスリ頼りなのに粘る粘る」

 

場所を移し、奏、翼、マリア、セレナの四人を見物するのはカリオストロ。

斬り裂かれ、突き砕かれ、細切れにされるアルカノイズとそれを行う装者達の様を楽しそうに見下ろしていた。

 

「うぅおおらぁ!!」

「奏、あまり無茶は!」

「このくらいなら無理の外! 後ろいるぞマリア!」

「わかっている!」

「道を開けるよ! 翼、行って!」

「ああ、助かるぞセレナ!」

 

減らせども減らせども後から湧き出る圧倒的な物量。

別の場所で戦う切歌や調と同様、奏とマリアがLiNKERの効果時間に迫られている関係上、次第にジリ貧になるであろうことを、元F.I.S.のメンバーは感じていた。

 

『あーあ。あーし達のファウストローブも出来てればすぐに終わらせられたのに。なんで焦っちゃったのかしらサンジェルマンたら』

『だが、シンフォギアもまたアダムへの策に為りうることも、お前も承知の上なワケダ。英断とは言えんが、連中の実力を計れる上に、相原ヒロ一人相手ならばサンジェルマンだけでも事足りる』

『あーしもあの子と遊びたかったナー』

『ならサンジェルマンの吉報を待つワケダ』

 

 

 

一方で、S.O.N.G.司令部では一つの疑念が上がっていた。

 

「……なにか、妙だな」

「どうしました、司令?」

「奴らの動きに、打倒の意志が見えん。そういうことだろう?」

「ああ。キャロルの言うとおり、アルカノイズの動き、並びに錬金術師達には、装者の皆の相手は……まるで、もののついで、という風に思えてならん」

「ついで、ですか?」

「加えて、あの二人の頭……サンジェルマン、とか言ったな。奴の姿も見えん」

「では、狙いはいったい……」

「―――司令!」

「どうした、藤尭!?」

 

「ヒロくんの位置に、錬金術反応を検知! 恐らく、サンジェルマンです!!」

「―――それが本命かァ!!」

 

 

 

『装者達! その場でのパヴァリア光明結社の動きは陽動だ!』

「ど、どういうことですか師匠!?」

「なるほど、攻勢が緩いわけだ、なァ!!」

「わたし達をこの場に釘付けにする……なら、狙いは!?」

 

『ヒロ君だ! 二手で騒いでこちらの目を向けさせ―――彼の拉致こそが、連中の今回の狙い!!』

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

息が詰まる。身体が重い。血が足りない。

生傷は全身に出来てるし、利き腕の右に至っては直撃食らってズタボロになってる。指先動かすのが精々だ。

 

それでも―――膝を突くのはサンジェルマンさんで、立っているのは俺の方だった。

 

「おの、れ……この程度で……ッ」

「……やめましょうや、今日は」

「ふざけるな……こんな、こんなことでッ」

 

ラピス・フィロソフィカスのファウストローブを纏えば、俺程度はすぐに捕らえられると高を括っていたのか。

サンジェルマンさんにも大なり小なり俺から受けた傷はあれ、それでも負傷のレベルは俺の方がやばい。

けど俺はまだ自分の足で立てている。

 

サンジェルマンさんが、立てない理由―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この様な痛みに、絶対負けない、ぐはぁッ!?」キリキリ

「胃痛の時は無理は厳禁なんですって! やめましょ! ね!?」

 

胃痛だった。

締まらねーなぁチクショウ!!

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「落ち着きました?」

「……」

 

無言である。何かもう眼が死んでる。

ついでに言わせてもらうと、止まる気配がなかったので拘束させてもらってます。

 

「……哀れ、無様と笑うがいい。理想を掲げ殉じると定めたこの身が、臓器の痛み一つで動かなくなるなどと……」

「……中間管理職って大変ですよネ」

 

しかも上も下もフリーダムしかいないし。

……とりあえず司令に報告入れとこ

 

「……あ、司令。とりあえずサンジェルマンさんは拘束しました」

『単独でか!?』

「ええ、俺もズタボロですケド、まぁ一応。ラッキーが色々と重なりまして。今近くにいるんで、逃げないよう見張ってはおきます」

『……わかった。響君とマリア君がアルカノイズの包囲を抜けてそちらに向かっている。あちらもだいぶ落ち着いたようだ。そのまま、サンジェルマンの監視を頼むぞ』

「りょーかいです」

 

通信を切ってサンジェルマンさんに向き直る。

 

「もうちょいしたらこっちの援軍来ますんで。俺としても仕事ですんでネ、申し訳ないけど大人しくしててください」

「……仕事だからと」

「ん?」

「職務でしかないから、我々に抗すると。そう言うのか、貴様は」

「……あー。まぁ、他にも個人的な感情ありますケド」

 

カリプレが助けに来るっていう可能性はもう初めっから見越してる。

囚われのお姫様状態のサンジェルマンさん助けに来る(見た目は)女性の従者が二人とかそんなんおいしいやん?

 

「……ところで気になってたんですケド」

「……」

「黙秘貫きたいならご自由に。……なんでわざわざアダムの野郎に従ってるんです?」

「……答える義理は無い」

「んじゃ勝手に推測と憶測で語りますネ。パヴァリア光明結社を立ち上げたのはアダム。一枚岩じゃないとはいえ、幹部のアンタ見てる限り実力者揃い。でも正直それ纏められるだけの才覚って、ぶっちゃけアダムの野郎には無くないですか?」

「……」

 

前世から知ってる身、推測っつーか事実を述べていく。

 

「俺としてはあいつの実力直接見たこと無いんであれですケド……サンジェルマンさんでも勝てないんです?」

「……」

「無言は肯定と取られることありますよー」

 

テキトーぶっこく。まぁでもたぶん正解だという確信はあるからこれで当たりなんだろうネ。

 

「……まぁいいや。とりあえず……あいつの言うこと1から10まで鵜呑みはダメだと思うわけですよ俺は」

「……何がわかる」

「お?」

 

それまで口を閉じて無言を貫いていたサンジェルマンさんが顔を上げる。目をひん剥いて、怒り心頭と言った表情だった。

 

「貴様に! 貴様のような楽観した男に何がわかる!?」

「悪鬼外道の道にこの身を貶めるしか出来なかった私達に、あんな人でなしに従う道しか取れなかった私達に……気安く、わかった様なことを……!」

「……」

 

……断片的にしか、サンジェルマンさんの素性を俺は知らない

どれだけの地獄を歩いてきたのか、どれだけの苦難に苛まれてきたのか

その道の果て、辿り着いたのがアダムの下。今を生きる人間を犠牲にするしかないという悪の道。

 

自分で選んだ道とはいえ……まぁ、嫌だわな

 

「……まぁ、知った風な口利いたのは謝りますわ。けど」

 

だから、言っておく。これだけは言っておく。

その道の結末を知っているから。そして―――俺はそれに、今でも理解はしても納得はしてないから。

 

「あいつ―――」

 

 

 

 

 

 

 

『そこまでにしてもらうよ、悪いけどね』

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

「統制局長……何故!?」

 

辺りに響く、聞き覚えのありすぎるイケボ。

けど、見回しても姿は見えない。

 

『いやいや危ない。早死にするよ? 無駄な知恵をひけらかすと』

「こんの、全裸……!」

「何故です局長!? 相原ヒロについては、我々に一任すると!」

『よく言えたね、そんな無様を晒しておいて』

「……っ」

『それに……遅いんだよ、君は。色々とねぇ。亀が歩く方がマシだよ、これなら』

「ぐだぐだ倒置法晒してねぇで、出てこい全裸マン!」

「出てるよ、ここに」

「なっ!?」

 

遠巻きに聞こえてた声が、気付けば背後から。

振り向いたと同時に、炎を纏った帽子が俺の右腕を抉り抜いていた。

 

「―――いっ、ああああああ!!?」

 

傷口が裂けて拡がり血が吹き出て、肉の焼ける音と不快な臭い。

予想以上の激痛に、情けない声を出すことしか出来なかった。

 

「ハハッ! 脆いなぁヒトの身体は」

「……ヘッ。今日はちゃんと服着てるんだなこの野郎……!」

 

得意顔で俺を見下ろすアダムに返す。身体がもっとまともに動けば中指の一つでも立ててやったのにチクショウ

 

「……もう緩んでいるよ、鎖は。動けるだろうサンジェルマン?」

「……はい」

 

意識が腕の痛みに割かれたせいか、緩くなった拘束からサンジェルマンさんが抜け出し、再びファウストローブを纏う。

 

『逃げろヒロ君、無理に相手取る必要は無い! アルカノイズは掃討したと報告を受けた、直に皆が到着する!』

「やー、そうしたいのは山々なんですけどネ。たぶんこれ逃げられないと思います。それに……」

『まだ何かあるのか!?』

「この全裸野郎に、一発返してないんで」

 

それだけ言って立ち上がって通信を一方的に切る。

右腕がまともに動かない以上、左腕と両足だけで対処するしかない。

 

この二人を相手に、だ。

 

「……詰んでねぇか、これ?」

 

目の前に迫る帽子と錬成された弾丸。身体を横に倒しながら、弾丸は避けて帽子は鎖で弾き飛ばす。

 

こういう時の常套は―――!

 

「頭狙い!!」

「来たまえよ、聖遺物使い!!」

「相原ヒロッ!!」

 

向けられたサンジェルマンさんの銃、腕もろともそれに鎖を巻き付けて締め上げる。その間に、左の拳にも鎖を巻き付けて、狙うは全裸野郎の顔面。

 

「甘いよ、その狙いは!」

 

―――まぁ、当然防壁に止められたわけで

 

「っぶね、とぉっ!?」

 

銃声が聞こえた瞬間にバックステップ。着弾点から隆起する金色の岩を続けざまにギリギリで避けていく。

 

「先ほどからちょこまかと……!」

「数少ない取り柄なんで!」

 

強がってはみるものの、普通に劣勢。ていうかヤバい。

サンジェルマンさんに注意を割けばアダムの帽子、かといってそっちに気を取られればサンジェルマンさんにやられて下手すりゃオタッシャ重点でサヨナラ案件。

ラピス・フィロソフィカスのファウストローブのガードの硬さは折り紙つき、軽いダメージ与えるだけでも全力で殴らないと通らない仕様。決め手に欠ける手札な上に、ボロクソのこの身体には厳しすぎる。

 

そんなことを考えていた弊害か

 

「いっ!?」

 

脚を掠める弾丸に、思わず回避の動きが止まる。

 

続けざまに来るのは、アダムの帽子ではなく錬金術での攻撃。

 

それを見て俺は―――思わず笑った。

 

 

 

「―――マリアさんッ!!」

「任せな、さいッ!!」

 

気合一閃。

俺の目の前に躍り出たマリアさんのその槍が、迫る一撃を両断した。

 

「どぉおりゃああああああああッッッ!!!」

 

その隙を逃さないのが、S.O.N.G.随一のイケメン系女子。

咆哮と共に放たれたその拳は、サンジェルマンさんがいた場所に大穴を開けていた。

 

「シンフォギア……!」

 

忌々しげに呟くサンジェルマンさん。

それを尻目に、俺は走った。

 

「アダムッ!!」

「だから遅いと―――なに!?」

 

また防壁でも張るつもりだったのか、けどそれは今度は通さない。振り上げられたその手を、背後の空間から直接呼び出した鎖で縛り上げる。

硬直して生まれたその隙、逃がすわけが無い!

 

「右腕の借りじゃ、貰っとけ!!」

「ご、ぅっ!?」

 

鎖を巻き付けた左の拳、おおきく振りかぶって真下からアダムの顎を打ち抜く。

痛打と衝撃に一瞬意識が飛んだようだけど、すぐに持ち直して退避。空中待機しやがった。

 

「ヒロさん、遅くなりました!」

「いや、ナイスタイミングよ響ちゃん!」

「ああ、ヒロ、こんなにボロボロに……!」

「毎度のことなんで、いや痛ぁい! 右腕触るの禁止ィ!」

「ご、ごめんなさい!」

 

フラつく俺を支えようとしたんだろうけど、不幸にも右腕側からやってきたから引き離す。

わー、改めて見るとズタボロどころかズタズタだー俺の腕

 

「……やるじゃないか」

「ナメてかかりすぎなんだよ。そんなだから今みたいに俺みたいな生身のガキにカウンター食らうんだ、この慢心野郎」

 

一歩踏み出して、動く左手の指を向けて、続ける。

 

「良いか、全裸。お前には足りてないものがいくつもある」

「―――なに?」

「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ! 加えて速さも足りてねぇが、それよりも何よりも―――」

 

言ってやる。言いたかったことを言ってやる。

 

造物主に造り出された、完全であるが故に発展性の無い、不完全な人形。原初のアダム。

生まれの素性的にしゃーない所もあるだろう、けど、生まれつきこいつに決定的に足りてないもの、それこそが

 

 

 

「―――想像力が足りないよ、この不完全野郎」

 

 

 

「―――不完全、だと?」

 

そして、その言葉はこいつにとって逆さ鱗でもあって。

 

「僕を―――不完全と言ったか貴様ァァァァ!!!」

 

予想通りガチギレ。たぶんもうこいつの眼には俺しか映っていないだろう。

 

「つーわけで響ちゃんとマリアさん! みんな来るまでサンジェルマンさんの相手ヨロシク!」

「ええ!? いや、私出来れば話し合いたい」

「向こう聞く耳持たないみたいだから、今回は見送って!」

「そんな!?」

「というかヒロ! あなた、そんな身体でまだ戦うつもり!?」

「来てますヨ!」

「はっ!?」

 

俺に飛び込んできたアダムを避ける。二人はサンジェルマンさんの攻撃を捌きつつ、マリアさんは適度に反撃を加えていた。

 

「マリアさん、LiNKERの効果時間は!?」

「……肌でわかる。もうあまり残っていないわね」

「だったら、私が」

「いいえ、それには及ばない―――イグナイトで一気に決める!!」

 

―――あっ、やべぇ。忘れてた!

 

「マリアさん、イグナイトはちょっと待っ」

「抜剣!!」

 

自分の記憶力のアホさ加減を殴りたくなる。

制止は間に合わず、マリアさんは決戦形態―――イグナイトモジュールを起動させてしまっていた。

 

「響ちゃん! マリアさんを退かせて」

「余裕だねぇ、余所見とは!!」

「っぶねぇ!?」

「連れて帰ろうと思ったけど、変わったよ、気が! 残っていればいいさ、君の聖遺物が!!」

 

直に自分の手で屠るとでも決めたのか、錬金術を多用しながら俺へと殴りかかってくる全裸。鎖と手足でどうにか捌くも、伝えそびれたことが頭から離れない。

 

「邪魔なんだよゴルァッ!!」

「ぐっ……!?」

「マリアさ……!」

 

鳩尾辺りに拳を打ち込んで、鎖巻いた蹴りで吹き飛ばす。

その間に改めて伝えようとしたけど―――もう、遅かった

 

「マリアさん!?」

「かっ、ぁ……イグナイト、が……なぜ……」

 

ギアも解除され、倒れ伏すマリアさん。響ちゃんはそんなマリアさんを庇いながら、サンジェルマンさんを相手取っていた。

 

「……ああ、クソ」

 

それに気を取られて、アダムから目を離していた。

奴を探す中で上を見れば―――

 

「黄金錬成とかやめろよお前……ここ都心のど真ん中だぞ!?」

 

服が消し飛び、いつもの全裸。掲げた右手には、金色の光。

 

「っ、局長、なにを!?」

「造るんだよ、金を! 『錬金術師』だからねぇ、僕達は!!」

 

光は徐々に大きくなって、たぶんもう止められない。

 

「……ヒロさん、師匠が退避しろって。つんぐーすか級? とかなんとか」

「それ、戦略兵器って、ことじゃない……」

「……消し飛ぶぞ、ここら一帯。なのに響ちゃん、逃げれる?」

「絶対に嫌です」

「んじゃ、マリアさんのことよろしく」

「ヒロさん……?」

「ヒロ、あなた……」

 

錬成を果たすのに、多少なりとも時間がかかるのは知ってる。でも、たぶん臨界点を越えてる以上、途中で阻止はたぶん無理。

 

なら、残された選択肢は一つだけだよネ。

 

「―――起きろ、エア」

 

俺の言葉に、金色の波が立つ。

そこから現れたのは、久しぶりに抜く乖離剣。

 

「起き抜けで悪いけど―――久々にデカいの往くぞ」

 

柄に右手を添えて、鎖で無理矢理に雁字絡め。なんとか動く指先で落ちないように固定して、左手も使って構える。

 

「ヒロさん!? それ使ったら……!」

「例によって死にかけるネ!」

 

言ってる間にも、黄金錬成の光は強くなる。サンジェルマンさんは俺の拉致という目的を諦めたのか、既に退避の姿勢に入っている。

 

「思い上がったのかい、止められると!?」

「おう! 撃ってこいよド三流! 格の違いってやつを見せてやる!!」

「―――消し飛べ、それならばァ!!」

 

そして撃ち込まれる、その光。

 

―――爆破しきる前に、消し飛ばす。頼むぞエア!!

 

 

 

「エヌマ―――エリシュ!!!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

結論から言って、黄金錬成をエアで打ち消すことには成功した。

直後にぶっ倒れた俺が目覚めた後に伝えられたことの顛末としては、こう。

 

黄金錬成とエヌマエリシュの衝突が終わった直後に、カリオストロとプレラーティ、装者のみんなが到着。

結社側はアダム奥の手とアルカノイズの軍団を潰されたこととファウストローブを持つのがサンジェルマンさんだけなこと、S.O.N.G.側はマリアさんと俺が倒れ、残りのLiNKER使う組が使用限界に到達したことで動けるのが四人。

そのまま続けても痛みわけに終わるか、最悪、双方全滅の憂き目に遭うだろうことを察したサンジェルマンさんとカリプレが真っ先に撤退。アダムも気付けばいなくなっていたらしい。

 

市街地は、いくらかの建物が溶かされたらしいけど人的被害はゼロ。今回のアルカノイズの使い途が装者のみんなの陽動だったことが幸運だったらしい。

 

そしてS.O.N.G.は今、かつて響ちゃんの身体から零れ落ちた欠片―――要は愚者の石の捜索にあたっているらしい。

 

「……なんで納得いってないんだろうなぁ、俺」

 

ラピス・フィロソフィカスのファウストローブはイグナイトモジュールを無効化する。それによって、装者達は一度敗北する。そこから反撃の糸口として、愚者の石に辿り着く。その流れは、形は多少変われど原作に沿っている。

なのに、少なくともこれで良いはずなのに―――

 

何故、俺の胸の内はこんなにももやつくのだろう




サンジェルマンのR-18を考えてるとカリオストロとプレラーティがケツから領土侵犯(♂)してキやがる……!





※本編を台無しにするif
~黄金錬成阻止が間に合ったら~

「結局脱ぐんじゃねぇかテメコラァッ!!」

アダムの足下の空間から鎖を射出。そのまま両足縛って、こちらに向かって引き摺り下ろす。

「なっ、しまっ……!」

臨界に達する寸前だったそれを慌てて消すアダム。
思った通り、自分の魔力で放たれるそれの熱量は、アダム本人でも受けるには持て余すらしい。
ある程度落下してきたところを見計らって、今度は俺の後ろから鎖を射ち出す。先に出した分を解除、新しく出した鎖で、より勢いを付けてこちらに引っ張る。
その途中で、また新しく取り出した鎖を束ねる。
新聞紙を固く丸めれば即席の鈍器になるように、縄を短く束ねれば鞭みたくなるように、その要領で鎖を持つ。

アダムの体重×落ちてくる速度+俺が鎖を振り抜く力×遠心力=破壊力

狙うは急所。人体である以上、痛打を受ければ老若男女問わず大ダメージを受けるその急所。
ある日の出来事をヒントに、俺はそこに狙いを定める。チャンスは一瞬、すれ違い様のその刹那。

狙う場所は、ただ一つ―――!



「 死 に さ ら せ オ ラ ァ ッ ! ! ! 」
「ぅ゛ん゛ッ゛」

ア ダ ム の 股 間 ! !





ひっでぇなこれ(白目)

察しの良い方はお気付きかと思われますが、前書きの文は今回のヒロに向けての一文です
今までがうまいこと行ってた分、「あれ俺これ結構やれるんじゃね?」と調子に乗ってます、彼。しかも本人無自覚です

原作AXZとの基本的な相違点として
・ラピスの初陣ながら完成してるのはサンジェルマンの分のみ。カリプレのは鋭意制作中
・イグナイト強制解除喰らったのがマリア一人
・黄金錬成行った場所が松代じゃなくて都心のど真ん中
・補足としてGXまでは原作沿い
・カリオストロとプレラーティがアダムに早い段階から疑念を抱いていることを初め、既に色々変わり始めてるのはヒロも勘づいてる

ギャグ時空として始めたはずの作品が改変した原作に取って変わられる形になってしまうのが作者の悪い癖
ずっとギャグで通したいけどそれだといずれにしろネタ切れでエタる可能性も作者の中にはありまして

あ、でも次回はギャグ時空で行きます

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