魔法少女の俺による異世界冒険譚!   作:すぴか。

2 / 7
よろしくお願いします(何をだよ)


いつも通りの日常

チチチチ、チチチチチチ…

(…来やがったが、この時が…)

俺の名はユラ。ごく普通の高校に通い、ごく普通の生活を送る至極普通なDKだ。

どこぞのゴリラではない、男子高校生の略称だ。

学校は夏休みというフィーバータイムに突入し、俺はいま布団の中で自由を謳歌している。

チチチチ、チチチチチチ…

…が、今日は木曜日。この自由を破壊する悪魔の笑い声が鳴り響くとき、それはバイトの時間を意味する。

時給790円のコンビニバイトだ。今日は乗り気じゃないしサボろうか…

チチチチ、チチチチチチ…

「チチチチうっせえよ…もう起きてんだよッッ!!!!」

ドゴォォォォォン!!!!

「…ああ、またやってしまった」

勢いに任せて目覚まし時計をぶん殴る。轟音と煙が沸き上がり…やがて煙が晴れ、そこから姿を見せたのはさっきまで時計だったもの。俺の一撃によりそれは物言わぬ塊と化した。

「朝から元気だな兄ちゃん、おー、また壊したのか」

その声とともにドアを開け、俺の神聖なる部屋へ上がり込んできたのは我が妹、ミラだ。

成績も顔もいい、兄の俺から見てもなかなかにスペックの高い自慢の妹だ。

「おはようミラ、いやーこいつが起きてるのにチチチチ煩かったからさあ…」

「兄ちゃん、貴様が今まで破壊した目覚まし時計の数を覚えているか?」

「うーん、6個かな」

俺の回答を聞いたミラはどこからか袋を取り出し、その中身を俺に見せた。

「え、なにこれは」

そこにあるのは歴代の戦士たち…皆俺の攻撃を受けゴミと化した者達だ。

「全部で17個、これにその時計をプラスして、合計18個!」

声高にそう言い、クスクスと笑う我が妹…ミラは子供の頃から俺をからかうためなら手段を問わないのだ。昨日は俺の部屋にでかいGのぬいぐるみを置いて驚かせて来たり、先週もなんかやられた記憶があるし…、まあ、これもミラが俺を慕っている証拠だろう!

「兄ちゃん何ニヤニヤしてんの、きもいよ」

直球すぎる発言で精神に大ダメージを受けたが本当は俺のことが好きなんだろう。

「これだからツンデレは…」

「黙ってろ変態」

精神に効果は抜群だ。

「おう、取り合えず俺は後30分寝るから、30分経ったら起こしてくれ」

そういって俺は再び布団を被る。朝が苦手な俺はいつも目覚ましを家を出る30分早めに設定してある。なぜならば、二度寝がしたいからだ。それ以下でもそれ以上でも無い。

「んじゃ、おやすみ」

その言葉を最後に二度寝の世界に足を踏み入れようとしたその時…ふいに現実へ引き戻される。

「グヘッ…ちょ、ミラ…!?」

何を血迷ったかミラは突然寝ている俺を上から覆いかぶさるようにしてダイブしてきたのだ。中学生女子の体重とはいえ奇襲とは何たることを…。

「起きろ、起きろ、現実が来るぞ」

相変わらず無気力気味な声で上から俺をゆさゆさと揺らし始める。

「おいおい…甘えたいのは分かるが今は寝させてくれ、今は神聖な二度寝の時間なんだ」

寝返りを打ってミラを引き剥がそうとするが、ミラはどいてくれる気配がない。

「兄ちゃん…聞いて、実は私またいたずらしちゃて…」

むふふ、ミラは独特な笑い声を出すと、布団を一気に引き剥がした。

「いたずら?なにやらかしたんだ…?」

恐る恐る尋ねる。ミラがこの笑い方をする時は決まって洒落にならないいたずらをした時だからだ。

「むふふ、そんな大したことないよ、ちょっと目覚ましの時間を1時間遅くしただけだから…」

「なんだ、そんなことか」

思ったよりたいしたことなくて安心した。…ん?

「ちょっと待て、それってどういう意味だ?」

布団から顔だけを出す。ミラは笑顔で自身のスマホを俺に向けた。

「どういう意味って…そのままの意味だよ?」

そういい、スマホの画面を付ける。

そこには大きく現在の時刻が表示されていた………

 

「うあああああ遅刻だあああああ!!!!」

現在11時20分。バイトの時間は11時30分から…。

布団から跳ね起きて支度を始める。

「これからは二度と目覚まし触らせねえからなミラアアアアアア」

「もう目覚ましぶっ壊れたじゃんか」

「そうだったわ!!!!」

ミラとの一連のやり取りの後、俺は家を飛び出した。

この時点で残り5分。間に合うか…?

「間に合う間に合わないじゃねえ!!間に合わせるんだよ俺え!!!」

社畜並みの言葉を吐きながら全力で自転車を漕ぐ。今なら自動車にも引けを取らないスピードだ。

暫く走っているうちに遂に見えた。我が職場、プチストップに。

(よかった、間に合ったか!)

ザアア…渾身の力を込めてブレーキを握る。周囲に砂埃が舞い上がる。…周りに誰もいなくて助かった。もしいたら白い目で見られること間違いなしだったろう。駐輪場へ自転車を止め、転がるように店内に入った。

「いらっしゃいま…ユラ!?」

「はあ、はあ…タイム⋯タイムは!?」

「いきなり何言ってんだお前は…」

息が絶え絶えの中、俺は目を疑った。レジに立っているのは俺の友人だ。こいつも俺と同じバイトをしているが時間が違う。こいつが入ってる時間は毎週水金の午前のはずだ。

「お、おい…なんでお前が入ってんだ?今日は木曜日だろ?」

「え、今日水曜だけど」

「は…?」

今日が水曜?困惑している中、ふとミラからメールが来た。

「あ、ごめんね、実は目覚まし一日進めといたんだ、夏休みって曜日感覚分からなくなるよね~」

「ミラ…」

「ん、ユラどうし…」

「ミラアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッ!!!!」

嘆きにも似た咆哮が店内に響いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。