ハイスクールD×D~円卓の銀鴉~    作:Licht10

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 遂に、UA一万突破いたしました。
 読者の皆様、ご愛読ありがとうございます。

 一章もいよいよ大詰めになります。
 一誠君の活躍はなるか。

 二話連続登場のフリード君でお送りします。


十三話 討ち入り

「肝心な時に繋がらないじゃない! もう!」

 

「会長にも確認して頂きましたが、彼の所在は分からないようです」

 

 旧校舎の一室にて、喚き声が響いた。

 声の主はリアス・グレモリー。

 象徴たる紅の髪を振り回して、不満を顕わにしていた。

 

 事の発端は、昼間に結んだ協力関係。

 今までのように、リアスが一方的に押し付けるものでもなく、ラウルが気ままに手を貸しす訳でもない。

 書面による四角四面の契約であった。

 契約に基づき緊急時の連絡を行おうとしたのだが、応答はなかった。

 そのことが不興を買っているのだった。

 

「本当にどこに行ったのかしら?」

 

「……案外、単独で教会に乗り込んでいるのかもしれませんね」

 

「あり得そうで怖いわ……」

 

 保護対象を攫ったことに難癖を付け、堂々と教会に乗り込む麗人の姿が目に浮かぶ。

 

「リアス……そんなに心配なら行きましょう」

 

「ダメよ! 私まで出向いてしまっては、お兄様にご迷惑が掛かるもの」

 

 落ち着きのないリアスに、朱乃がそっと声を掛けた。

 ラウルに知らせようとしたのは、一誠たちのこと。

 アーシアを取り返しに教会へ討ち入りを仕掛けようと言うのだ。

 自身の生まれと、悪魔社会のことを考えると動くことができない。

 ただ、真剣な眼差しに負けて許可を出してしまった手前もあり、眷属の心配をして手を打ちたかったのだった。

 

「うふふふ」

 

「なにが可笑しいの、朱乃?」

 

 半眼をして、自身の片腕である朱乃を睨んだ。

 

「ラウルくんはきっとこうなることを読んでいたのですね」

 

 睨みを利かせる主に朱乃は一纏めの書類を差し出した。

 

「っ!? これを……どこで……?」

 

 リアスは目を剥いて驚きの声を上げた。

 手にするのは、近辺で活動する堕天使たちの調書。

 出生や経歴などの素性に始まり、ここ近年の活動内容、堕天使としての能力などが事細かく記されていた。

 中には堕天使幹部が連名で発行したと思われる文書まで存在していた。

 

「イッセーくんを迎えに上がった時にですわ。どうやって、こんなものを手に入れたのやら」

 

 その様子を見ながら頬に手を当てる朱乃。

 悩ましい声を出しながらも、ラウルと言う末頼もしい味方を手に入れことを喜んでいるようだった。

 

「後で聞いても……答えるわけないわね」

 

 リアスも朱乃に同調して深く息を漏らす。

 何度、思い浮かべようとも、麗人は不敵な笑みを浮かべるばかりであったが。

 

「いいわ、行きましょう! 朱乃、ジャンプの準備をして」

 

「了解しましたわ」

 

 最早、堕天使たちの不義が分かった以上、リアスを止めるものは何もない。

 朱乃に命じて、攻め入る準備を始めた。

 

「待ってなさい堕天使レイナーレ! 私の管理地で好き勝手したこと、後悔しながら消飛びなさい」

 

 教会にいるであろうレイナーレに向けて宣告する。

 リアスの瞳は決意の紅で彩られていた。

 

 

* * *

 

 

 暗雲が垂れ込める小夜。

 知らぬうちに、先陣を切ることになった一誠たちは、古びた教会前の茂みに潜んでいた。

 

「ラウルの奴、何処に行ったんだよ……まさか!? 捕まってるんじゃないだろうな」

 

 ラウルが出ないことを確認して、通信機を納める一誠。

 悪態を吐く中、ふと最悪の展開が頭を過る。

 狂気を宿した一誠の元彼女。

 ラウルを捕まえる為には手段を選ばないだろう。

 救出にきたラウルに対して、アーシアを人質に使う光景が容易に想像できた。

 

「それはないと思います」

 

「小猫ちゃん?」

 

 静かに口を開いた小猫は、一誠の懸念を否定した。

 

「ラウル先輩が捕まっているところなんて想像できません」

 

「確かに……」

 

 大胆不敵な幼馴染。

 例えアーシアが人質に取られた所で、捕まる振りをして、騙し討ちぐらいはやってのけそうであった。

 

「さあ、行こうか兵藤くん。援軍が期待できない以上、留まっても仕方ないからね」

 

 腰の剣を鳴らして佑斗が勇み出た。

 顔は強張り、瞳には憎悪が渦巻く。

 隠し切れない魔力が身体から立ち昇り、覇気と悪意が狂熱となりて吹き付ける。

 

「それにラウルくんが捕まっているなら助けなきゃ……ね! っと、ごめんね。アーシアさんを助けにきたんだったね」

 

「木場……」

 

 思わず息を呑んだ一誠であったが、その言動に何とも言えない様子で見ることになる。

 

「イッセー先輩の変態がどんどん広まってます……」

 

「違うよ、小猫ちゃん!? 俺のせいじゃないからね!!」

 

 一誠の変態が、ラウルに、佑斗にうつったのだと、小猫は白い目をして糾弾した。

 無実の罪を擦り付けられそうになった一誠は、必死に否定するのであった。

 

「図面は頭に入ってるよね」

 

 一誠たちの姿に絆された佑斗は表情を和らげた。

 

「入ってすぐの聖堂にある祭壇から、階段を下りて地下の祭儀場まで一直線だったよな!」

 

「うん、そうだよ。そこでおそらく、儀式が行われているからね」

 

 最終確認を終え、遂に教会への討ち入りが始まる。

 

「皆、準備はいいかな?」

 

「おう」

 

「……はい」

 

 佑斗を先導に彼らは正面より侵入する。

 入口の扉を僅かに開ける騎士。

 空いた隙間に抜身の剣を差し入れ、反射により聖堂の様子を確認する。

 

見通しよし(クリア)。聖堂には誰も居ないみたいだね」

 

 刀身に映るのは静かな祈りの間。

 人気一つない様子に、神父たちは地下で待ち構えているものだと断定した。

 

「待ってろよ、アーシア!」

 

「いま行くよ、ラウルくん」

 

 勢いよく開けた扉の向こうに、男子二人が勇み足で踏み入れる。

 雲の切れ間より光が差し込み悪魔たちを照らし出す。

 それは今宵の宴の参加者を歓迎しているかのようだった。

 

「ところがぎっちょん!!」

 

 月の祝福に同期するかのように、覆いかぶさる人影。

 咆哮を上げ、天井より降下する神父の洗礼が襲いかかる。

 

「っ!? 下がって、兵藤くん!!」

 

「ふ、フリード!?」

 

「やあやあやあ。ご対面だね! 再開だねぇ! 俺、感動してきちゃったよ! 悪魔くんに名前を憶えられてるなんてな! ホント涙が出てきそうですよ。もちろん、悲哀の涙でござんすが」

 

 佑斗が前に出て神父の剣を受け止める。

 奇襲を防がれたフリードと呼ばれた少年神父は下種な笑みを浮かべた。

 

「兵藤先輩」

 

「ああ、そうだったな! セイクリッド・ギア!!」

 

『Boost!!』

 

 子猫に促されて一誠は左手を掲げた。

 翠緑に輝く左腕。

 神器の輝きが止んだ時には、赤き籠手が装着されていた。

 同時に、籠手の宝玉から機械音が流れる。

 

 部室を出る前にリアスより受けたアドバイスの一つ。

 それは、一誠に宿る赤龍帝の籠手の使い方だった。

 

「天井の梁から奇襲だなんて……はぐれ悪魔狩りは、何でもやるんだね」

 

「最近、連敗! 連敗! こうでもしなきゃ、やってられねえんっすよ!! あのお姉さんたち、ちょー強かったんですよ!! って! ふざけんな!! なんで俺様が二度もやられなくちゃならないんだよ!! そこのクソ悪魔をぎっちょんする時に、邪魔した糞アマは思い出せねえし!! 尻を振っていたあの蒼銀の髪のクソビッチにはボロボロにされるし! あ~ムカつく! チョーむかつく!! このフラストレイションを解放するぜ! 俺様!!」

 

 フリードは鍔迫り合いをすることなく、佑斗から距離を取った。

 彼が思いだすのは先日の二戦。

 ラウル一派に味わされた屈辱の傷痕であった。

 

「蒼銀の……髪?」

 

「そう! 尻軽姉ちゃんの蒼髪! あれが頭の中でちらちらと揺れるたびに、ぼくちん達しちゃいそうになるのです!!」

 

 佑斗はフリードの言葉に目を見開く。

 食い付いたのは、ラウルではなくもう一人の女性のこと。

 普段なら口汚い神父に注意を行うのだが、頭の中を埋め尽くす思考に、そのような余裕の一つもなかった。

 

「……その話、もう少し聞かせてくれないかな?」

 

「いいぜ! た・だ・し! その首と引か替えだけどな!!」

 

『Boost!!』

 

 険呑な雰囲気を纏って問い質す佑斗。

 フリードは剣を以ってして応えた。

 

「いきなり斬り掛かってくるなんて、ひどいね」

 

「なに防いでんだ! 『騎士(ナイト)』くん!! おかげで、頭が爆発しちゃいそうですよ! ストレスが溜まり過ぎて、溜まり過ぎて……憤死してしまいそう」

 

 打ち捨てられた聖堂に響く甲高い衝突音。

 フリードは防がれたことに腹を立て、瞳に怒りを映した。

 

「それは困るな……最悪、達磨の状態にしてでも、吐いてもらうことにしよう」

 

 佑斗が振るう剣が闇に染まる。

 それは以前に、ラウルとの戦いで見せた魔剣。

 『光喰剣(ホーリー・イレイザー)』であった。

 

「今、流行のヤンデレっすか!? それに神器持ち!? もしかして……もしかしなくても、俺様流行に乗り遅れてる!?」

 

 佑斗が神器を出したことにより、神父は狼狽を顕わにする。

 

「小猫ちゃん、木場が言っている蒼銀の髪の女性って……」

 

「はい、間違えないかと思います」

 

『Boost!!』

 

 着々と力を溜める一誠には心当たりがあった。

 なにせ、自身を救った騎士。

 感性豊かな彼女は蒼銀の髪を揺らしていたのだ。

 

「喰われてる! 喰われてる! 俺様大ピーンチ!? ……なんちって」

 

 闇が光を喰らい浸食を始める。

 得物を無力化されて、慌てふためくフリードであったが、一転して嘲る。

 

「ぐっ!」

 

「木場っ!?」

 

 左手で隠し持っていた短銃を抜き、佑斗に突き付けて引き金を引いた。

 死角から放たれた祓魔弾は佑斗の脚を貫く。

 身体を奔る激痛と不意を打たれたこともあり、踏ん張りが利かず佑斗は体勢を崩した。

 不覚を突かれた佑斗は死に体を晒した。

 決定的な隙を晒した悪魔に、神父は勝ち誇った目をして裁きを下す。

 

「隙ありー。悪魔くんの首をちょん――」

 

「……させません」

 

 絶体絶命の佑斗を救うべく、一誠たちが動いた。

 舞う長椅子。

 それはフリードの行動を妨害する為に、小猫が投げつけたものであった。

 

「うぉい!? なに邪魔してんだ! この糞チビッ!!」

 

「……チビ……」

 

 フリードは堪らず佑斗から離れる。

 いくら凄腕の悪魔祓いとて人間である。

 圧倒的質量を持つ小猫の一撃に、後退を余儀なくされたのであった。

 

『Boost!!』

 

「木場から離れろ! このクソ神父!!」

 

『Explosion!!』

 

 力強い輝きを放つ宝玉。

 浮かび上がる刻印。

 外殻が幾つも開き厳つい棘が飛び出す。

 赤龍帝の籠手は武張った姿に変貌を遂げる。

 一誠は溜めに溜まった力を解放してフリードに迫る。

 

「しゃらくせぇ! 邪魔くせぇ!! 悪魔が粋がってんじゃねぇよっ!!」

 

 フリードは口悪く罵り声を上げながら、降り注ぐ長椅子に対処する。

 当然、一誠たちへ祓魔弾による牽制を忘れない。

 

「プロモーションッ! 『騎士(ナイト)』ッ!!」

 

 張られる弾幕の前に、一誠は昇格を成し得る。

 

「『騎士』の特性。それは比例なき速さ」

 

「! プロモーション! 『兵士(ポーン)』か!」

 

 俊敏な動きを始める一誠。

 祓魔弾による弾幕を振り切って、仇敵である神父に迫った。

 

「幾ら足が速くなっても、先読みできりゃ世話ねぇぜ!!」

 

 されど、所詮は付け焼刃。

 百戦錬磨のフリードの前には到底届かない。

 

「プロモーションッ! 『戦車(ルーク)』ッ!」

 

 故に一誠は一度、兵士の駒に戻して再び昇格を果たす。

 

「『戦車』の特性は、城塞の如き堅硬な防御力と!」

 

 フリードの張った弾幕に有無を言わせず突入する。

 襲いかかる祓魔弾は展開する魔方陣が弾き返した。

 そのまま一誠は、戦車の特性に騎士の飛翔を上乗せして、拳を振り翳した。

 

「マジですか…………なんてな!!」

 

 一誠の暴挙に一瞬、気を取られたフリードではあったが、すぐさま体勢を立て直す。

 左手の短銃を投げ捨てると、袖口に隠し持っていた光剣の柄を握る。

 二振りの祓魔礼装にて、一誠を迎え撃つ。

 

「やらせないよ」

 

 一誠とフリードの間に割り込む影。

 佑斗が光喰剣で二振りの光剣を受け止める。

 

「砲撃の如き……ありえない攻撃力だ!!」

 

 がら空きになった腹部を一誠の拳が捉えた。

 倍加の力を以って為す、人外が生み出した衝撃。

 吐瀉物を撒き散らしながら、フリードの身体は毬球の如く弾かれる。

 

「背中から切ってくれた分だ!! めっちゃ痛かったんだぞ!」

 

『Reset』

 

 折り重なった長椅子。

 跡形もなくなった祭壇。

 石壁は崩れ、外気が流れ込む。

 赤龍帝の籠手より機械音が響くと、荒れ果てた聖堂に静寂が戻った。

 一誠は瓦礫の向こうへと消えたフリードに、恨みを晴らすことに成功したのだった。

 

「木場、フォローありがとうな」

 

「当然のことをしたまで、なんだけど……はぁ。これは期待できないかな」

 

 佑斗が見据えるのは、外壁を突き破りフリードが姿を消した方向。

 上級悪魔に匹敵するような腕力にて吹き飛ばされ、あちらこちらに身体をぶつけたのだ。

 生身の人間では生存は期待できなかった。

 

「佑斗先輩……」

 

「大丈夫だよ、小猫ちゃん。手がかりはきっとあるから」

 

 力なく笑う佑斗に、小猫は首を振る。

 

「そのことなんですが……」

 

「ラウルの奴が絶対知ってるぜ」

 

「っ! ラウルくんが……」

 

 小猫の言葉を継いだ一誠の発言に、佑斗は目を見開く。

 

「そうか! ラウルくんが! 僕のことについて知ってたのも、やっぱり!」

 

 佑斗は納得がいったと言わんばかりの顔を見せる。

 あの日、ラウルが告げたこと。

 

 ――貴方が背負っているものを知っていると。

 

 今なら、あの言葉の意味が理解できた。

 

 落ち着きを取り戻した佑斗は、薄笑いを浮かべて一誠の向き直る。

 

「本当に食えないね彼は」

 

「木場もそう思うか? きっとアイツは煮ても食えねぇぜ」

 

 一誠も佑斗の意見に同意する。

 あの麗人は頼りにはなるが、何処が気が許せない。

 油断していると、間違えなく掌で踊らされることになるであろう。

 

「佑斗先輩、足は大丈夫ですか?」

 

 落ち着きを取り戻した佑斗に、小猫が沈痛な面持ちで話し掛けた。

 佑斗の右脚に空いた小さな穴。

 神父に穿たれた銃創からは血が溢れ、制服を赤に染めていたのだ。

 

「歩くのは大丈夫だけど、戦闘は無理かな。剣を振るうぐらいならできるけど」

 

「……そうですか」

 

 佑斗は足を動かして、止血が終わっていることを教える。

 ただし、身体の中に回る猛毒は、佑斗を蝕んでいたのだ。

 

「ここからは小猫ちゃんと二人で――」

 

「ううん。僕も行くよ」

 

 堅い表情を崩さない佑斗を見て、一誠は決断する。

 戦力は厳しいものになるが、佑斗をここに置いて先に進むと。

 しかし、決意を目に宿した佑斗が一誠の言葉を遮った。

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』の使い方は、これだけじゃないからね」

 

 自身の創り出した魔剣を掲げ、未だ見ぬ力があるのだと誇示する。

 魔剣も佑斗の思いに応えて鈍い輝きを放つ。

 その覚悟を一誠も、小猫も、確かに受け止めた。

 

「そっか……頼むぜ、木場。小猫ちゃんも一緒に、アーシアを連れて帰ろうぜ」

 

「うん、ラウルくんに聞かないといけないこともあるからね」

 

「はい……みんなで一緒に帰りましょう」

 

 アーシアを救出にきた彼らは、それぞれの思いを胸に教会の地下へと踏み出した。

 

 

* * *

 

 

「いらっしゃい、悪魔の皆さん」

 

 祭儀場に突入した一誠たちを出迎える声。

 十字架に吊られたアーシアの隣で、レイナーレが不気味に微笑んだ。

 

「アーシアァァ!!」

 

 一誠は祭壇の上でぐったりしているアーシアに、声を張り上げて名前を呼んだ。

 

「……イッセーさん?」

 

「ああ、助けにきたぞ!」

 

「イッセーさん……!」

 

 一誠の登場に気付いたアーシアは瞳を潤ませる。

 感動の再開もおざなりにレイナーレが前に出る。

 

「あら、あの憎ったらしい人間たちは一緒でないのね。いいわ、私が至高の力を手に入れた試しに、遊んであげる。生き残ったら、誘き寄せるための餌にしてあげるからね。光栄に思いなさい」

 

「誰が、そんなことを」

 

 アーシアの力を手に入れ至高の存在へと、昇格を果たすつもりのレイナーレ。

 彼女は一誠たちを以って、小手調べをすると語る。

 その上、生き残ることが出来たら、ラウルに対しての釣り餌として用いると伝えた。

 厚かましいレイナーレの好意に、一誠が喰って掛かる。

 

「あなたたちよ、主に見捨てられた下僕悪魔くん」

 

「部長はそんなことをする人じゃねぇよ! お前と違ってな」

 

「あははは! ならなんで、貴方たちの主はここにいないのかしら?」

 

「部長には部長の都合があるんだよ、きっと!」

 

 渋い顔をしながらも一誠たちを送り出した彼らの主。

 情の深い彼女のことだ。

 必ず何かしらの手を打とうとするだろう。

 何をするかまでは、一誠には分からない。

 それでも、姿を見せない主のことを信じていた。

 

「まあ、いいわ。いま、儀式が終わるから、おとなしく見ていなさい」

 

 レイナーレが指を鳴らすと、アーシアを拘束する十字架を幾何学的な文字が隙間なく覆いつくした。

 

「……あぁあ、いやぁぁぁぁぁッ! 助けて……イッセーさん!」

 

 堪え難い激痛に悲鳴を上げる少女。

 アーシアは掠れた声で一誠に助けを求めた。

 

「アーシアッ!!」

 

 一誠は駆け出した。

 心優しき聖女の下へ。

 ようやく夢の叶った、か弱き少女の下へ。

 ただただ、一誠は駆け出したのだった。

 

「邪魔はさせん!」

 

「悪魔め! 滅してくれるわ!」

 

「死に逝った者の無念……いまここで晴らしてみせる!」

 

 一誠と祭壇の間。

 数え切れないほどの神父が一誠に牙を剥いた。

 

「どけ! クソ神父ども! お前らに構っている暇なんてないんだよ!!」

 

 一刻の猶予もない一誠としては、神父たちは邪魔者以外のなんでもない。

 そんな先を急ぐ彼の下に仲間たちの支援が届いた。

 

 ――『魔剣創造(ソード・バース)

 

 魔力を振り絞った佑斗の渾身の一撃。

 神父たちは地より出でる剣軍に、腹部を貫かれ血を垂れ流す。

 剣の花が咲き誇り、一誠の道を創り出した。

 

「早くいってください、兵藤先輩」

 

「っ! 待ってろよ、アーシア! いま行くからな!!」

 

 剣花を越えてくる神父に小猫が対応する。

 己の道を創り出してくれた仲間たちの行動に、胸の底から熱いものが湧き上がってくる。

 しかし、感動している暇などない。

 一誠は力強く右手を握ると、愚直に走り出した。

 

「いやぁぁぁぁっぁぁ……!?」

 

 走り出した一誠の目の前で、心優しき少女の断末魔が上がる。

 胸の中から飛び出す翠色の光球。

 無情にも、神器を抜き出す儀式は終わるを迎えたのだった。

 

 

 一誠の顔が絶望に彩られ――――。

 

 

「ほう……これが『聖女の微笑(トワイライト・ヒーリング)』か」

 

 地下の祭儀場に響くのは不敵な調べ。

 アーシアの吊られる十字架の先端にその声の主は現した。

 

 




 うちの主人公未登場回(?)でした。

 赤龍帝の籠手を宿した一誠君の活躍。
 連続でのプロモーションが引っ掛かりましたが、どうにか描くことができました。

 兵士のプロモーションは連続で可能だったでしょうか?
 京都であれを手に入れるまで、描かれてなかったような気がしました。
 謎です。


 ルチアさんの存在を知ってしまった木場君。
 私はやられ役としてしか描いてないような……。

 次章の活躍はこの人! 
 ……とはいかないのが現実です。


 忘れてはいけないのが、フリード君。
 前回も言いましたが、弱強化済み。

 故に木場君を騙し討ちしました。
 顔を狙うより足だと思いましたので。
 騎士を殺すには、まずその特性からということで。


 そして、祭儀場にて黒幕登場(?)

 彼の者に関しては触れてはいけません。
 誰かはバレバレな気がしますが。
 次回までお待ちを。


 次回、一誠君は元カノとサシで、殺り合います。
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