ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? 作:パトラッシュS
さて、前回の鉄腕/fateでは間違えて来てしまったルーマニア、ワラキアにて仲間の一人であるヴラドを回収したクーフーリンとスカサハの二人。
が、しかし、二人の目的は本来ならこのルーマニアに来ることではなく、巨大弓矢に必要な素材、竹を手に入れる事。
早速、ヴラドと合流し、三人となった我らがカタッシュ隊員達は竹を入手すべく『だん吉』に乗り日本へと渡った。
「はぁ、巨大弓矢ねー、懐かしいじゃん、また、あれ作ってんだ」
「素材が足りへんから頓挫しとる真っ最中やけどね」
「ほほう、ここが日本とやらか…豊かな自然に包まれた国だな」
カタッシュ隊員達はそう言って、昔の日本の土路を歩きながら、昔ながらの風景を楽しみつつ足を進める。
日本に来たからには、できれば丈夫な竹を持ち帰りたい。
ならば、自ずとやる事は決まっている。まずは聞き込みからだ。先日、加わったカタッシュ隊員の一人、ヴラドは土路が続く先で民家を見つけるとスカサハ、クーフーリンにこう提案を投げかけた。
「ちょっとあそこでさ、聞き込みしてみない?」
「聞き込みかぁ、なんだかこの感じ久々やな」
「じゃあ、ブランクもある事だし、俺、行ってみてもいい?」
そう言って、リーダーのクーフーリンに民家での聞き込みを自ら行って良いかの確認を取るヴラド。
クーフーリンはなんの問題もないと言わんばかりにそれにサムズアップで応えた。さぁ、ここからはYARIOの腕の見せどころだ。
ヴラドは早速、民家へと足を進めると戸を叩き、中の人が出て来るまで待つ、そして、戸が開き中から人が出て来るといつもの様に笑顔を浮かべたまま、現れた農家のおばさんにこう話をしはじめる。
「こんにちはー! あ、今、お時間よろしいですか? 僕たちYARIOというものなんですけどもー」
「ん? あんた達みない顔だね? YARIO?」
「はい! そうです、僕ら今、鉄槍カタッシュっていうのの企画で、竹が必要なんですけど」
「安心してや、僕らも農家の人やから」
そう言って、農家のおばさんを安心させる様にヴラドのフォローに入るクーフーリン。
ーーーーー農家のYARIO。
フォローの為とはいえ、農家の人という言葉を自然と発するクーフーリン、その光景は確かに彼らが着ている作業着の格好からして妙な説得力を帯びていた。
クーフーリンの言葉を聞いた農家のおばさんは少し考え込む様な素振りをし、こう話をしはじめる。
「あー…、竹の在り処ね、そうだねぇ、この路をまっすぐ行くと確か竹藪があった筈だけどねぇ」
「ほんとですか!」
「あぁ、ホントさね、あそに柳洞寺って寺があるんだけれども、最近、刀振ってる陣羽織を着た男がいるだろうから話を聞いてみたらええよ」
おばさんはにこやかな笑顔を浮かべるとクーフーリン達にそう告げて、家の中へと入っていった。
聞き込みした甲斐があった。どうやらお目当ての竹は柳洞寺という寺の周りに沢山生えているらしい。
そうなれば、話は早い、早速、 一同は竹が大量に生えている柳洞寺周辺に向かった。
軽い足取りで歩く事数分、辺りは田舎の田んぼの風景から進むにつれて竹藪へと変わってゆく。
「はぁー竹やね、立派な竹藪や」
「夏場とかなら蚊がいっぱい湧きそうだね」
「嫌やなー、スズメバチならなんとかできるんやけど、蚊は痒くなるから嫌いや」
そう言って、思い出しながら顔を引きつらせるクーフーリン。夏の風物詩とはいえ、蚊に刺されて痒い思いをするのはやはりYARIOとはいえ辛いものがある。
野外での活動が多い彼らだが、蚊に刺されて痒い思いをした事は数え切れないほどあった。
そんな中、師匠であるスカサハは首を傾げクーフーリンに訪ねはじめる。
「ん? 蚊? 虫か?」
「せやねん、刺されると痒くなるんやで師匠」
「それは私も嫌だな」
そんな他愛のない雑談を繰り返し、柳洞寺へ続く階段を歩いていく一同、すると、階段の途中に長い刀を振るう綺麗に結った長髪に陣羽織を着た男性の姿が見えてきた。
もしかしたら、柳洞寺の住人なのだろうか? ヴラドは早速、こんな階段の途中で刀を振るう男性に接触を試みる事にした。
「すいませーん、ここの寺の方ですか?」
「ん? どなたかな?」
「あ、僕達YARIOというものなんですけどもこの周りにある竹を分けてもらえたらなと思いまして」
「ふむ、竹…、竹とはこの柳洞寺の周りに生えている竹の事か?」
そう言って、振るっていた剣を降ろし、周りを見渡しながら訪ねる男性。どうやら、彼はみた感じこの柳洞寺に関連した男性のようである。
それに、剣を振るうのをみた限りなかなかの達人と見た。鋭く長い剣はキラリと光を放っている。
ひとまず、刀を鞘に納める男性は目を瞑り、冷静な面持ちでこう話をしはじめる。
「ふむ、見たところお前達は変わった服装をしているな、名はなんという?」
「あ、僕はクーフーリンって言います、そんでこっちがヴラドに僕の師匠のスカサハ師匠です」
「うむ、師匠のスカサハだ」
「よろしくねー」
軽いノリの彼らは男性に名前を紹介するクーフーリンに続き、簡単な自己紹介を男性に行う。
見たことがない格好の三人組、しかし、その格好とは裏腹に隠せない何かを男性は感じとっていた。
これは武芸を極めるものだからわかる直感のようなもの、だが、間違いなく彼らは只者ではないと男性は確信する。
もしかすれば、望んでいた強者と今日この場で刃を交わせるのではなかろうか? そんな期待感が彼の中で膨らんだ。
刀の鞘を背に仕舞った男性はゆっくりと竹を手に入れる為に柳洞寺まで訪れた彼らに自分の名を語りはじめる。
「私の名は小次郎。農民の出だが、ここで刀の修行に明け暮れている変わり者よ。して、お主らは只者ではないな? 物腰や格好を見ればすぐにわかる」
「えぇー!! ほんとでござるかー!」
そう言って、キリッとした表情でこちらを見ながら告げる小次郎と名乗る男に間髪入れずに応えるクーフーリン。
そして、それと同時に周りに漂う微妙な空気、小次郎も含め、その場にいたカタッシュ隊員達は無言で言葉を発したクーフーリンに視線を注ぐ。
ーーーーーホントでござる。
しかし、それを聞いた小次郎は悲しげな表情を浮かべながらそのセリフを発したクーフーリンに対しこう告げた。
「あ、それ、拙者のセリフでござる」
「しげちゃん、他の人のセリフ取ったら駄目だよ」
「あ、ごめん、なんか身体が勝手に反応してもうた」
「それはあんまりだぞ、私のゲイボルクを鍬にした時くらい酷いと思う」
そう言って、小次郎の言葉に同調するように頷く二人、確かにセリフを取られては彼の立つ瀬がなくなる。
それは、あまりよろしくない、司会業をよくこなした経験があるヴラドが言うのだから間違いない。
スカサハに関してはあのゲイボルクを当初没収されクーフーリンから鍬にされて落ち込んではいた。
しかし、クーフーリンが知る限りでは、しばらくしてYARIOの活動であの鍬やツルハシにしたゲイボルクを使うようになり、それを握っていた時は生き生きしていたようにみえたが…。
「…そ、そこまで酷かったですかね! 師匠しばらくしたら、あれノリノリで使ってたやないですか!」
「だって使いやすかったんだもん、仕方ないじゃないか」
「使いやすかったんだもんって…、貴女…」
普段聞けないような言葉を師匠から聞き苦笑いを浮かべるクーフーリン。確かにそうだ、手に馴染むものを使わないとやはり作業は捗らない。
あまりに使いやすいものだから、スカサハはあれはあれで気に入っている。元は自分の槍なのだから当たり前の話であるのだが。
ーーーーーー使い易さは、大事やね。
仕事において、何よりも使いやすさは大事である、仕方ない。
何はともあれ、ひとまず、本来の目的はこの柳洞寺の石の階段の周りにある竹が頂けるかどうかだ。
すると、竹に関して、柳洞寺の小次郎さんからこんな情報が…。
「それなら、私が修行の為に切った竹がそこら中に倒れていると思うが…」
「え! その切っちゃった竹って、もしかして、この後使ったりする予定とかあったりします?」
「いや、なかろうよ、いつもそのままにしておるからな」
そう言って、農民侍の小次郎さんは肩を竦めながら、刀の修行で切ってしまった竹についてヴラド達にそう告げた。
確かに柳洞寺の周りにこれだけ竹が生えていれば、刀の修行にはもってこいだろう。ならば、切ってしまった竹はそのままにしてしまうのも頷ける。
だが、これだけ良い竹が切られたまま捨てられるのは非常にもったいない、それならば、我らがYARIOが取る手段は1つだけだ。
「え! その竹って捨てちゃうって事ですよね! …って事は僕らが頂いちゃっても…」
「あぁ、構わぬだろうよ、私は柳洞寺の僧侶とは仲が良くてな、ここをよく使わせてもらっておるのだ。倒れた竹なぞ持って行っても問題なかろう」
「リーダー! これって…」
「セーフです」
「しゃあ!」
なんとヴラド、柳洞寺にて修行を積む謎の農民侍の小次郎さんとの交渉の末、上質な柳洞寺の竹をタダで手に入れる事に成功した。
これならば、何本か倒れた竹を半分に分けて切り『だん吉』に積めば持ち帰ることができるはずだ。
すると、ここでこの修行で切ってしまい、捨ててしまう予定の竹について小次郎さんから提案が…。
「この竹は結構重いだろうから、私も運ぶのを手伝おう、それに、この竹が何に使われるか少し興味が出た」
「え! ホンマですか!」
「いやー、助かるねー。それじゃ折角提供してもらったし、どうせなら完成品見てもらおうよ!」
「お! 名案やな! 流石はヴラドや!」
そう言って、小次郎さんが刀で切り倒してしまったという竹の回収をはじめる我らがカタッシュ隊員達。
まずは、竹を運搬し易いように鋸などで分けていく作業を行わなければならない、さて、ここで活躍してくれたのがこの小次郎さんである。
持ち前の長い刀でスパスパと竹を運搬し易い大きさまで切り分けてくれた。切り分けてもらった竹は柳洞寺のお坊さんから紐を分けて貰い、1つに括ってしまう。
「さて、それでは参ろうか」
「サーちゃん師匠大丈夫? 重くない?」
「平気だ、これくらいならば後何百くらい軽く持てるな」
「頼もしい師匠やね、ほんまに」
クーフーリンは苦笑いを浮かべながら自信有り気に応えるスカサハにそう告げる。
こうして、我らがカタッシュ隊員達は謎の剣士小次郎さんと共に放置される予定だった良質な竹をたくさん抱えて『だん吉』へ向かい歩きはじめる。
これだけの竹があれば、頓挫していた巨大弓矢作りにも大きな前進が見込めるだろう。
そして、フィニアンサイクルに残りヒルフォート作りを行うカルナ、ディルムッドにも進展が…!
カタッシュ隊員達は果たして幻の食材、猪の豚骨スープを手に入れることができるのか?
この続きは! 次回の鉄腕/fateで!
今日のYARIO。
捨てられる上質な竹を入手ーーーーNEW!!
農民侍小次郎さんが仲間にーーーーNEW!!
農家のYARIOーーーーーーーーーーNEW!!