ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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0円卓の食堂編
天空の花嫁


 

 

 前回の鉄腕/fateでは無事に幻の食材、魔猪を狩ることに成功したクーフーリン達。

 

 前回、巨大弓矢と石橋ヒルフォート、ローリングストーンズで見事に倒した魔猪の死体は一旦、低温で保存が効く貯蔵庫へと運び、霊草と共に無事に保管した。

 

 これで、深淵の霊草と合わせ、二つの伝説の食材を手に入れた訳だが、ここで彼らにはある事について未だスッキリしないでいた。

 

 それは…。

 

 

「やっぱり末っ子いないと俺ら締まんないよね」

「ボーカルがいないとなぁ」

 

 

 そう、我らがYARIOのボーカルが現在不在である事だ。

 

 幻の食材、魔猪を倒した今、新たな伝説の食材を手に入れ、YARIOメンバーの再結成するというミッション。

 

 これをクーフーリン達はこなさなければならない、次なる幻の食材の目処が立たない今、優先すべきは我らがYARIOのボーカルの回収となる。

 

 

「行きますか、迎えに」

「せやねー、師匠それでええかな?」

「あぁ、私は構わんよ」

「ADフィンと小次郎さんは?」

「自分もそのつもりでしたから」

「大丈夫だ、問題ない」

 

 

 メンバー全員の総意は一致した。

 

 寂しくはなるが、フィニアンサイクルから末っ子の回収にだん吉で異世界に向かう事になる。

 

 とはいえ、食材はこのフィニアンサイクルのアルム砦の近くにある冷凍保存が効く地下洞窟の貯蔵庫に保管してある為、いずれは戻ってくるのだが、しばらくの間はこの場所とはお別れだ。

 

 ひとまず、だん吉で世界を越えて残りのYARIOメンバーを探しに行く事に決まったが…ここである問題が。

 

 

「だん吉、五人乗りなんよね」

「あー、じゃあ往復して移動すればいいんじゃないか?」

「これも不便だよねー、今度、なんか考えようか」

 

 

 そう、だん吉は五人乗りなのである。

 

 これでは全員乗る事は出来ない、仕方ないのでスカサハのいう通り今回は往復して移動する事になるがこれはこれで手間がかかる。

 

 この改善点もいずれは解消していかなくてはならないだろう。少なくとも伝説の食材や大量の物を運ぶには大きさが足りなくなってくる。

 

 前に竹を運んだ際は、小次郎さんが竹をコンパクトにしてくれたおかげで荷台にも詰めたが、今度からはそうはいかなくなるに違いない。

 

 

「それじゃ運転は僕と…」

「………………」

「いや、師匠、そんな目を向けられても…」

 

 

 そこで、往復する運転手を決めるクーフーリンだが、その言葉を待ってましたと言わんばかりにスカサハはジッと彼の顔を見つめていた。

 

 だん吉を運転したくて仕方ない、そう言わんばかりの無言の訴え、そんな彼女の視線からクーフーリンは視線を逸らすが暫くして根負けしたのか、ため息を吐いてこう告げはじめる。

 

 

「もー、仕方ない子やねー! お母さん今回だけ許したげる! しっかり頑張らなあかんで!」

「あ、久々のオカンフーリンだ」

「!?…ほんとか! よし! 任せておけ!」

 

 

 ふんす! と胸にトンと自信ありげに拳を置いてオカンになったクーフーリンに告げるスカサハ。

 

 その光景にディルムッドは思わず微笑ましく笑みを浮かべていた。久しぶりのオカンクーフーリンの姿になんだか一同も懐かしさを感じる。

 

 さて、こうして、次の行き先は最後の仲間がいるであろう世界。そして、ついでにできればラーメンに必要な材料もそこで手に入れたい。

 

 

「さーみんな、だん吉に乗るでー」

 

 

 異世界に渡る為、すぐにだん吉に乗り込む彼らはいつものように火花を散らしてお世話になったフィニアンサイクルを後にする。

 

 果たして、最後の仲間がいる世界はどんな世界なのか?

 

 

 

 英国、大昔のブリテン島。

 

 今もなお知名度の高い英雄譚として語り継がれているアーサー王の聖剣の物語。

 

 その物語にはアーサー王に仕えた精鋭の騎士たち。各々魔法の円卓に席を持つ円卓の騎士達がいる。

 

 その中に登場する円卓の騎士の一人でエクスカリバーを湖の貴婦人に返還した人物として知られる者が居た。

 

 古くからアーサー王伝説に登場し、巨人王イスバザデンが使っていた巨大すぎる槍を投げ返した逸話を持つ。

 

 さて、そんな彼だが、現在。

 

 

「ニンゲン…カエレ…」

「いや何やってんの?」

 

 

 完全に野生に放たれた完全なゴリラ状態で近くに生い茂る森の中にある小屋の側で木の上に登っているところをだん吉から降りたYARIO達から発見される事になった。

 

 彼の名はベディヴィエール、YARIO最後のメンバーにして、ボーカルを務めている末っ子だ。

 

 そんな彼が居たのはなんとアーサー王がいるお城ではなく山にある質素な小屋である。円卓の騎士と名高い彼が何故こんなところに…。

 

 

「ポケ◯ンのトレーナーって多分こんな感覚なんやろうね」

「野生のベディが現れた! みたいな?」

「おーい降りておいでー」

 

 

 まるで、生い茂る木々が重なりもの◯け姫の様な場所、そんな場所で野生化した仲間がいれば見過ごすわけにはいかない。

 

 YARIOのメンバーの呼びかけに応じて、スルスルと木から降りてくる円卓の騎士が一人、べディヴィエール。

 

 そして、リーダーやカルナ達の姿を見た彼は涙を流しながらすぐさま駆け寄ってきた。

 

 

「ぐすっ…! うああああ! リーダァァ!みんなぁー」

「お、おう、…なんかわからんけどお帰りやな」

「泣きすぎだってば」

 

 

 そう言いながら、泣きつくベディヴィエールの背中をポンポンと叩いてやるクーフーリン。

 

 どうやら、彼もまたこのブリテン島で苦労を重ねていたらしい。そして、気になるのはどうしてここに彼が居たのかという事だ。

 

 皆との感動の再会を済ませた後、クーフーリンはベディヴィエールに師匠であるスカサハを紹介した。

 

 

「こいつらの師匠のスカサハだ。今日からはお前の師匠になる。よろしくな」

「うわっ! リーダー! この人めっちゃべっぴんさんじゃん! しかも、おっぱいめっちゃデカいし!」

 

 

 そう言いながら、たゆんと弾む豊満なスカサハの胸部に対して目を丸くしながら告げるとベディヴィエール。

 

 すると、スカサハは首を傾げ笑顔を浮かべたままベディヴィエールの肩をポンと叩くと、サムズアップをしてこう告げる。

 

 

「ん? 心配するな。胸なぞ鍛えていればそのうちお主も大きくなるぞ」

「師匠、それ多分おっぱいやなくて大胸筋やで」

 

 

 冷静なクーフーリンの突っ込みが冴え渡る。本来なら彼もボケる立場なのだが、自身のおっぱいに関して爽やかな笑顔を浮かべ告げるスカサハ師匠に今回は流石に彼も突っ込みを入れざる得なかった。

 

 ーーーー胸が無念。

 

 確かにスカサハが言うように大胸筋を鍛えれば胸は大きくなるだろう。多分、それは硬い筋肉ほうになるのだろうが…。

 

 

「すげー! みんなこんな美人の弟子なんだ!」

「今日からはお前も私の弟子だ」

「え! ほんとですか! めっちゃ嬉しい! アキオさん思い出すなぁ」

「やっぱりみんな思い出すよねー」

 

 

 それは、昔。まだ、皆が農業に関して知識が足りなかった頃。

 

 福島の村でお世話になった師匠、そして、その師匠の愛犬だった柴犬。

 

 彼らは間違いなく自分達の仲間であり、今でも敬うべき相手、自分達がここでこうして今でも農業が出来ているのも彼の教えがあったからこそだ。

 

 彼から学んだ農業の知恵、そして、受け継いだ業は今でも彼らの中に生き続けている。そんな受け継いだ彼らがこうして再び集まる事が出来たのも自分達の師匠であった彼が背中を押してくれたからに違いない。

 

 時には諦めそうにもなった。自分達の時代で英雄らしく一生を終えようかと挫けそうにもなった。

 

 けれど、彼らは…。

 

 

「…リーダーのお陰だよなこうして俺たちがまた会えたのも」

「生まれ変わっても、やっぱりこうして俺たちは集まるんだな…やべ…涙出てきたわ」

「…あー、せやなぁ…ホンマにお前ら大好きやわ」

 

 

 苦楽を共にする仲間に再び出会い、こうして結集する事が出来た事にメンバーの目からは涙が溢れ落ちる。

 

 見えない強い絆で結ばれた五人。そんな五人は涙を流しながら、再び会えた事に感謝しADフィンを含めて抱き合い、喜びを分かち合う。

 

 そんな彼らの姿を見ていたスカサハは笑みを浮かべ暖かい眼差しで見守り、小次郎さんもまた瞳を閉じ静かに頷きながら笑みを浮かべていた。

 

 そして、彼らは…。

 

 

「よっしゃ! せっかく五人揃ったし久々に本業やるか!」

「ん? 本業? あ、あれか!」

「いや、本業忘れちゃダメでしょ、リーダー。俺たちYARIOだよ?」

 

 

 そう言いながら、笑顔を浮かべて笑いを溢す五人。

 

 懐かしい感覚、五人がこうして揃った事で胸の中にポッカリと空いた穴が塞がった。

 

 …とここで、クーフーリン。話題を変え何故、ベディヴィエールがこんな山の中の小屋にいたのかについて訪ねることに。

 

 

「そういや、お前なんでこんな山奥におったん?」

「あー…それね! それなんだけどね…」

 

 

 そう言いながら、YARIOのリーダー、クーフーリンの問いに答えはじめるとベディヴィエール。

 

 それは、数日前の出来事に遡る。

 

 ある日、円卓の騎士達はアーサー王を含めてある話をしていた。

 

 それは、元々、とベディヴィエールが振った話題でとある勇者の結婚相手についての話であった。

 

 幼少期と青年期を共にした金髪に青い瞳の可愛い幼馴染の村娘と、富豪の娘で、おしとやかで心優しい可愛いお嬢様どちらを選ぶのかという話題であった。

 

 早い話がなんとこの円卓の騎士の会議の場で、ベディヴィエールはドラクエの話を振ったのである。

 

 そこで、円卓の騎士達とアーサー王が答えたのが…。

 

 

『私はフローラですね、品がありそうだ』

『王がそう仰るなら私も』

『あ、それでは私もフローラで』

『嘘だ! ビアンカだろ!』

 

 

 という理由で円卓の騎士の大半がフローラ派に占拠され、ベディヴィエールは円卓の騎士でありながらわざわざ森の小屋まで泣き寝入りに逃亡したという経緯だった。

 

 確かに王であるアーサー王がフローラ派と言えば従者である円卓の騎士達は従うしかない。

 

 そうなれば肩身が狭くなったビアンカ派のベディヴィエールが泣いて逃亡するのもなんとなくわかる。

 

 ーーー王にはビアンカの気持ちがわからない

 

 というわけで、ベディヴィエール、円卓の騎士から絶賛逃亡中という訳である。これにはクーフーリン達も思わず頭を抱えてしまった。

 

 

「相変わらずアホやなぁ…」

「だって! フローラ派だよ!」

「いやいやいや、なんでドラクエの話題出してんのよ」

 

 

 そう言いながら、カルナも苦笑いを浮かべて目を見開いて訴えるベディヴィエールに顔をひきつらせる。

 

 一方、スカサハ師匠とディルムッドは絶賛大爆笑中だった。どこの世界に勇者の結婚相手が村娘派か富豪の娘派で逃亡する英雄がいるのか。

 

 なんと目の前にいた。しかも、先ほどまでゴリラ状態で木に登り木の実をとっていたのでこれまたびっくりである。

 

 

「しゃあないなー、こうなったら、ちょっとその王様に会いに行かないかんね」

「世話が焼けんね〜もう」

 

 

 そう言いながら、笑みを浮かべる一同。

 

 こうして、YARIO達の行き先は円卓の騎士達がいるであろうアーサー王の居城、キャメロット城へ赴く事になった。

 

 あわよくば、彼らから新たな伝説の食材についての情報を得られるかもしれない。

 

 最後の仲間、ベディヴィエールを仲間に迎えたYARIO一行はだん吉と近くの村で馬を借りキャメロット城へ。

 

 果たして、彼らを待ち受ける新たな挑戦とは?

 

 この続きは次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 アーサー王、フローラ派ーーーーーNEW!!

 

 円卓の騎士フローラ派になるーーーNEW!!

 

 本業を思い出すYARIOーーーーーーNEW!!

 

 YARIO!ついに集結!ーーーーーーNEW!!

 

 YARIOブリテン島上陸ーーーーーーNEW!!

 

 


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