ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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アンビシャス!

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでアーサー王に会うべくキャメロット城まで移動したYARIO一同。

 

 そんな彼らは今、ベディにより円卓の騎士達とアーサー王と顔合わせをする為に謁見の間にて面会を行なっていた。

 

 玉座に座るのは幼さを感じるも、まごうことなき王の気質を兼ね備えたアーサー王の姿がある。

 

 そして、アーサー王の周りには王に付き従う円卓の騎士達が控えており、品定めするかのようにベティとYARIO達に視線を送っていた。

 

 アーサー王は帰還したベディヴィエールに連れてきた者達について、こう語り始める。

 

 

「よく戻ってくれたベディ。先日の件は…その、すまなかったな…して、そちらの者達は?」

「よくぞ聞いてくれました!アーサー王!」

 

 

 そう言って、膝をついていたベティは勢いよくその場から立ち上がると目をキラキラと輝かせてアーサー王に告げる。

 

 すると、急なベディヴィエールの反応に円卓の騎士達は身構えた。

 

 もしかして、前回の一件でベティヴィエールが叛旗を翻しこの者達を使ってアーサー王を倒しにきたのではないかという疑念があっだからだ。

 

 しかし、ベディヴィエールは謁見の間において、キレの良いポーズを決めるとキリッとした表情を浮かべてアーサー王と円卓の騎士達に向かいこう告げる。

 

 

「太陽剣士!ベディヴィエール!」

「!?」

 

 

 思わず身構えた円卓の騎士達はポカンとしていた。

 

 そして、そのベディのポーズと名乗りを聞き、膝をついていたYARIOのメンバーも自己紹介を兼ねて、その場から立ち上がるとベティのように次々とポーズを決めると名乗りを上げはじめる。

 

 

「激烈騎士!ディルムッド!」

「!!!?」

 

 

 なにか、カッコイイポーズを次々と決めるYARIO達にビクリ! と身体を硬直させて反応する円卓の騎士達。

 

 しかし、何だかわからないが妙にカッコよかった。それを見ていた円卓の騎士の一部の中からは『おぉ!』と感心するように声もあがる。

 

 まるでヒーローの名乗りのようなシュールさがあった。それを間近で目撃したスカサハも思わず目をキラキラさせている。

 

 

「冒険勇士!カルナ!」

「…そのポーズは何か果たして関係が…」

「いや、我が王、あれは名高い英雄達に違いありません!」

 

 

 そのポーズと名乗りを挙げているYARIO達の姿に思わず、全身を甲冑に身を包んだ円卓の騎士の一人が興奮気味にアーサー王に告げる。

 

 ポーズ自体は特に意味はない、ただ単にかっこよく名乗りを挙げたいだけに単純に彼らが勝手にやっているだけである。

 

 

「博愛勇者ヴラドン!」

「!!?」

 

 

 なんだか、かなりシュールな光景がそこにはあった。

 

 変な立ち絵でポーズ取りながら名乗りを挙げるYARIO達にアーサー王も円卓の騎士もなんとも言えない表情を浮かべるしかない。

 

 

「友愛戦士!クーフーリン!」

「五人揃って!」

「「英雄戦隊!YARIO!!」」

 

 

 バーン! という音と共にかっこよくアーサー王と円卓の騎士達に自己紹介を簡潔に述べる我らがYARIOメンバー達。

 

 なんだか知らないが、妙にカッコいいその名乗りにポカンとしてしまうアーサー王と円卓の騎士達。

 

 ADフィンと小次郎とスカサハは拍手を送りながら納得したように頷いているが、明らかにいろいろとおかしかった。

 

 五人は決まったとばかりにハイタッチを交わしている。何も特段決まった訳ではない、ただ単にアーサー王と円卓の騎士達に名乗っただけである。

 

 そこで、円卓の騎士の一人、ガウェインはYARIOメンバーの名乗りを聞いて思わず気がついた事を話しはじめた。

 

 

「ちょっと待ちなさい、ベディ。太陽の騎士は私の名称ではありませんか」

「だから俺は!太陽剣士!」

「いやいやいや、そうじゃなくてですね、被ってるじゃないですか!」

「ガウェイン! 突っ込むとこはそこじゃないでしょう!」

 

 

 ベディの太陽剣士という名前に思わず声を挙げるガウェインを制するようにベディの友人である赤い髪の騎士、トリスタンが思わず声を挙げた。

 

 確かに重要なのはそこではない、重要なのは彼らが名乗った名前だ。

 

 クーフーリンと聞けば、円卓の騎士の者達にも聞き覚えがある英雄だ。それも、ブリテンの隣の国アイルランドの大英雄である。

 

 何故そんな伝承に記された英雄がここにいるのかの方が重要な事柄であった。

 

 

「あ、ちなみに僕らのADのフィン・マックールとスカサハ師匠、農業スタッフの小次郎さんです」

「どもっ!」

「うむ、こいつらの師匠のスカサハだ。影の国を治めさせてもらっている」

「農業スタッフの小次郎だ。お初にお目にかかる」

 

 

 そう言って簡単な自己紹介でさらりとYARIOメンバーをアーサー王と円卓の騎士達に紹介するクーフーリン。

 

 王の御前だというのに無礼だとかそう言った類でなく、なんだかもう呆気に取られるばかりだ。

 

 クーフーリンはサラッと自己紹介をしたがスカサハは影の国の女王だ。それに、ADフィンはあの伝承逃げあるフィオナ騎士団の騎士団長だ。

 

 あまりに面子が面子だけにもうなんと言っていいかわからない、ベティヴィエールが何故彼らを連れてこれたのかも不明だ。

 

 そのことも相まって、なんだか、円卓の騎士達は頭が痛くなってきた。一部の騎士は名乗りを上げた彼らに目をキラキラさせている。

 

 

「…クーフーリンに…スカサハだと?」

「あ、これゲイボルクです」

「…鍬ではないか!」

 

 

 声をあげてクーフーリンが提示する鍬になったゲイボルクに突っ込みを入れる円卓の騎士が一人、白銀の甲冑を纏った騎士湖の騎士、ランスロット卿。

 

 確かに言われてみればそうだ。鍬を見せられてこれが名高いゲイボルクですよと言われてハイそうですかとなるわけがない。

 

 そこで…。

 

 

「あ、これ、こうしてやな…こうしたら、先端が取れるんやで」

「嘘ォ!?」

 

 

 なんと、先端の金具を外せば、鍬が槍になった。

 

 それを目の当たりにした全身に鎧を身にまとう円卓の騎士が一人、アーサー王の息子であるモードレッドはまさかの展開にびっくり仰天する。

 

 確かにみれば、言われる通り朱色の魔槍だ。

 

 しばらくして、円卓の騎士達にゲイボルクを見せたクーフーリンは金具を取り付け再びゲイボルクを鍬にした。

 

 そして、それに続くようにスカサハは…。

 

 

「ゲイボルクならたくさんあるぞ? ほら」

「いや、もう大丈夫だ。なんだか頭が痛くなってきた…」

「大丈夫か?アグラヴェイン卿」

 

 

 そう言って、頭を抑える険しい顔立ちの、真っ黒な鎧を来た偉丈夫のアグラヴェイン卿を気にかけるように声をかけるアーサー王。

 

 目の前に鍬やツルハシなんかにもなった宝具がたくさん、これをみれば頭も痛くなってくるというもの。

 

 挙げ句の果てに包丁になった宝具まで、これには、もはや言葉が出ない。

 

 

「と、とりあえず名高い英雄の方々。遠路はるばるようこそブリテンへ、大したもてなしはできないかもしれないがゆっくりしていってくれ」

「あ、お気遣いどうもです」

「アーサー王、という訳でビアンカ派の俺は円卓の騎士を抜けてYARIOになります」

「円卓の騎士を抜けるだと! 何を言ってるのかわかってるのか!?」

「うん、だって元々、俺、YARIOだし」

 

 

 ガウェインの言葉に頷き、何事もないように告げるベディヴィエール、これには周りも騒然とした。

 

 ベティヴィエール本人は円卓の騎士をもう辞める算段らしい、それを聞いていたアーサー王と円卓の騎士達は頭を抱える。

 

 ハイわかりましたと円卓の騎士を簡単に辞めさせるわけにもいかない、しかし、本人がそう言い出した以上はその意思は固いだろう。

 

 アーサー王はしばらく思案した後、ゆっくりと口を開くとベディヴィエールにこう告げた。

 

 

「わかった…。しばらく暇を与えよう」

「王!?」

「ベディヴィエールがこう言っているのだ。しばらく考える時間を与えるべきだろう、それに、見たところ腕前に自信があるであろう英雄達が側にいる、心配は不要だ」

 

 

 そう言って、アーサー王は寛大な心でベディヴィエールの出奔を認める事にした。

 

 腕前に自信があるとは言っても料理だとか農業だとかの腕になる。戦闘経験はあの魔猪狩りだけで、スカサハとフィン以外はあとはほとんど無いに等しい。

 

 それに、ベディ本人が選んだ事を捻じ曲げて忠義を尽くせと言ったところでそれは束縛でしかない、アーサー王としては彼の居場所が円卓の騎士ではなく違う場所だったという事だと納得している。

 

 こうして、正式にYARIOとして復帰する事になったベディヴィエール。彼らの側にいるならばアーサー王に弓を引くことは無い筈だ。

 

 

「それじゃ僕らもしばらくこちらでお世話になります。それでお礼と言ってはなんですけど」

「ん? なんですか…これ?」

 

 

 すると、クーフーリンは首をかしげるアーサー王を前にして笑みを浮かべるとある紙を王の側に立つそっとガウェインに手渡した。

 

 その紙には、なんと、ブリテンの城下町で歌うという宣伝用の紙であった。

 

 そう、ようやくここに来て、YARIO達は五人揃った事を祝して、ブリテンの街で本業をしようという訳である。

 

 

「…って訳で僕等、この街で演奏したいんですけど、ええですかね?」

「ほほう、これはまた興味深い催しだな、よし、いいだろう。許可しよう」

「ほんまですか!? いやぁ、助かりました!」

 

 

 そう言って、許可を出してくれたアーサー王の言葉に嬉しそうに微笑むクーフーリン。

 

 ようやく、久しぶりの本業である。久々という事もあってカタッシュ隊員達のテンションもだだ上がりだ。

 

 そうと決まれば話は早い、楽器をブリテンに持ち込み早速、歌う場所を確保しなければ。

 

 

「何故がトントン拍子に話が進んでますが、この人達は大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫さ、考えすぎだ。ベディヴィエールの友人達だ。間違っても問題は起きないだろう。奴の人柄はお前も知ってるだろ?」

 

 

 円卓の騎士の一人であるモードレッド卿は不安げな表情を浮かべているトリスタンの肩をポンと叩きそう告げる。

 

 それに型破りな彼らがなんとなく、モードレッド卿は気に入っていた。

 

 ベディヴィエールは前から面白い奴だとは思ってはいたがこうもあっさり円卓の騎士を辞めるあたり、やはり思った通り面白い人間であった。

 

 彼の仲間も仲間で武器を農具にするなど、面白すぎる。あのアグラヴェイン卿が頭を抱える姿など見たのは彼女も初めてだった。

 

 それから、しばらくして、楽器を寄せ集めてブリテンの城下町に降りたYARIO達は久々に握る楽器を手に晴れやかな笑顔を浮かべていた。

 

 旅をし、仲間達を集め、新たな出会いをしながら冒険をする彼ら。

 

 そんな彼らが歌うのは、やはり、それを思い起こさせてくれた曲だ。

 

 ルーン魔術を施した手作りギターを握るリーダークーフーリンは何がはじまるんだと集まってきたキャメロット城の城下町の人達を見渡しながら笑顔を浮かべる。

 

 ーーーー全ての職人と出会いに感謝。

 

 そして、ディルムッドが頷くと、ドラムをパン! と叩いてリズムを取り始め、カルナとクーフーリンがベースとギターで合わせて、キーボードのヴラドがそれに続き、曲が流れはじめる。

 

 スカサハがルーン魔術を施し、音響が響くマイクを握るベディヴィエールはそれに合わせて曲を歌い始めた。

 

 

「未来に向かってまっしぐら〜〜♪」

 

 

 いつも、五人揃って演奏し、歌っていた曲を噛み締めながら久々に声を出すベディヴィエール。

 

 それを聞いていたブリテンの城下町の人達からは手拍子が巻き起こる。皆さんは鍬や建築物を作る彼らを見慣れているかもしれないがらこれが、彼らの本業であり本来やるべき事なのである。

 

 そして、極め付けは裏返る我らがリーダーの声高な声。

 

 彼らの歌を遠目から聞いていたアーサー王と円卓の騎士達はそれを聞きながら思わず目を丸くする。

 

 先ほどまで、顔も知らない他所者の筈だったYARIOの者達がブリテンの人々に受け入れられているその光景に。

 

 彼らの全てのきっかけは逢いたい人に会いに行くため、その為だ。

 

 盛り上がりを見せるブリテンの城下町、そんな五人の姿を見つめるスカサハは五人の奏でる曲に耳を傾けながら瞳を瞑る。

 

 

(よかったな…、クーフーリン)

 

 

 彼らが集まる事を望んでいたリーダーであるクーフーリン。

 

 彼の願いが叶った事がこの旅をしてきて一番の収穫だった。時を越えてフィニアンサイクルへ行き、インドへ行き、ルーマニアへ行き、日本へ行き、そして、今度は隣の国であるブリテン島へ。

 

 長い旅路の中で、伝説の食材を探し、ラーメンを作る為に魔猪とも戦った。石橋作りの知識を活かしたヒルフォートも作った。

 

 しかし、彼らの旅路は今ようやくスタート地点に立ったばかりだ。

 

 これから、様々な挑戦が彼らを待ち受けるに違いない。果たして、このブリテン島で彼らは何を残して行くのか見届けよう。

 

 彼らの師匠として、名を上げたスカサハは改めてそう心に決めたのだった。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 英雄戦隊になるーーーーーーーーーNEW!!

 

 ベディ暇を貰うーーーーーーーーーNEW!!

 

 鍬が槍にできるーーーーーーーーーNEW!!

 

 ブリテンの城下町で本業ーーーーーNEW!!

 

 モーさんYARIOがお気に入りにーーNEW!!

 


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