ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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カタッシュ村開拓記 その3

 

 

 さて、出来上がったスズメバチの巣茶。

 

 リーダークーフーリンが飲んだそれを次はモードレッドとカルナ、そして、スカサハ師匠が口に付け飲み始める。

 

 その味は…?

 

 

「…うっ…!」

「もがっ…!」

「ん……」

 

 

 口に入れた途端に顔色が豹変するモードレッドとカルナの二人。

 

 そして、二人は飲んで間も無く口に含んだお茶をペッ…! と後ろを向いて吐き出し、ゲホゲホと噎せ始める。

 

 これは…?

 

 

「ぴゃあ!? なんだこれ! なんだこれ! くっそすっぺぇ!?」

 

 

 そして…?

 

 

「にっが!? なんじゃこれ! ぺっ! ぺっ!」

 

 

 つまり…?

 

 

「「くそ不味い!?」」

 

 

 声を揃えて涙目になるモードレッドとむせ返るカルナ。

 

 その味はあまりにも酸っぱく、そして、盛大な苦味があった。飲んだ途端の鼻に突き刺さる匂いもさることながらザラザラとした気色悪い食感も…。

 

 だが、このお茶を口に入れたスカサハ師匠はというと?

 

 

「うむ、少し濃いが身体には良いだろうな」

 

 

 ポーカーフェイスで何事なく飲んでいた。

 

 心なしか、お茶の風味を楽しんでいる節も…、やはり、年季が違う。そんなお茶を平然と飲むスカサハを横目に見ていた二人は顔をひきつらせる。

 

 この師弟、揃って味覚がぶっ飛んでるんじゃないのか? と、あの強烈なお茶は申し訳ないがカルナもモードレッドも飲める気がしない。

 

 

「…うぇー…舌がおかしくなっちまう」

「…うん、モーさんには少し早かったな」

「意外といけるが? そんなに不味かったか?」

「どうなってんのよ、あんた達の味覚」

 

 

 思わず後引くスズメバチ茶の後味に、舌を口から出して涙目になるモードレッドを見ながら、一方で冷静に何事なくその不味いお茶を飲む二人に突っ込みを入れるカルナ。

 

 カルナは優しく涙目になったモードレッドの背中を摩ってやる。上級茶はやはり、年若なモードレッドには早かったようだ。

 

 口直しにモードレッドにはそのあと水を差し出してあげた。流石に後引くあの強烈な味はなかなか忘れられまい。

 

 何はともあれ、こうしてお茶作りも無事に済んだ。

 

 

「さてと、慣例の不味いお茶も飲み終えた事だし、開拓に戻りますか」

「せやねー、ほんじゃ何から植えるかな?」

「あ、土はもうできてんだ?」

「モーさんがよく耕してくれてたからやね」

 

 

 そう告げるクーフーリンはニコリとモードレッドに笑いかける。

 

 モードレッドもそうだが、他のカタッシュ隊員達も農業に関してはベテラン揃い、この面子ならば下地である土はそこまで日を跨かずとも出来上がる。

 

 となれば、後は植える野菜、穀物を何にするかが重要だ。

 

 

「ブリテンの気候を考えると、せやねー」

「小麦、大麦、オーツ麦が良いんでない? 米はちょっと厳しい気がすんだよね」

「確かに、麦ならお酒も作れるしオーツ麦はフレークなんかも作れるしな」

「なんで兄ィ達こんなに農業に詳しいの?」

「農家だからな」

 

 

 もっともらしいモードレッドの疑問をその言葉で一刀両断してしまうスカサハ。もう彼らの本業が何かは既に彼方に忘れ去られているようだ。

 

 ーーーー農業歴ベテランの風格。

 

 何はともあれ、穀物に関してはその方向で行く事に決まった。続いて野菜、野菜の生産だが。

 

 

「最初はジャガイモ、ニンジン、レタス、キャベツ、ソラマメから、きゅうりにトマトとだんだん野菜の作る幅を広げていく形にしたいんやけどね」

「ジャガイモかぁ作りやすいもんね、火星でも作れる気するし」

 

 

 そう告げるカルナはクーフーリンの話を聞きながら納得したように頷く。

 

 確かにジャガイモやニンジン、レタスやキャベツなどならイギリスでもよく生産されている野菜だ。これならば、日本と気候が異なるこの場所でも生産ができる。

 

 そして、今回はそれだけではない、新たな試みを彼らは挑戦しようと心に決めていた。

 

 その挑戦とは…?

 

 

「やっぱり酪農だよね、ここはさ」

「牛を捕まえに行くか、そんでもって馬も野生馬ひっ捕まえてこないとね」

「いや、それは流石に買おうよ…兄ィ達」

「俺達に買うっていう発想はない!」

 

 

 冷静なモードレッドの一言にそう言い切ってしまうカルナ。そう、彼らには買うという発想は皆無。

 

 ーーーー買うくらいなら作る。

 

 という信念の元で動いてる彼らは買うという行為自体が主に存在していない。実に生産的だが、シャルルマーニュ十二勇士の中性的な理性が蒸発している某英霊でも今の彼らを見たら迷わずこう言うだろう事は間違いない。

 

 

『YARIOはどんな人達だって? うん! 馬鹿だよ!』

 

 

 あらがち間違っていない、事実その通りである。

 

 さて、話は逸れてしまったが、こうしてカタッシュ村に盛大な穀物畑と野菜畑、そして、牛や山羊、馬などを飼育し、乳や乳製品を生産する酪農を目標に計画を立てる事に。

 

 

「いよいよ俺たちも酪農家か…」

「酪農は初めてやから、いろいろ人に教えてもらわなかあかんね」

「ヨーグルト作ろう! ヨーグルト!」

 

 

 思わず、新たな試みに心も踊る。

 

 新たに酪農という手段。豊かな村にする為にブリテンという国で彼らは力を合わせ、ここに福島の村よりも壮大な村を作りたいと思っている。

 

 自分達の為ではない、強いて言えばこの村で、そして、この村を通してたくさんの笑顔を皆に届けたいから。

 

 ここから、カタッシュ村の開拓が始まる。

 

 

 

 それから、約数週間後。

 

 無事にだん吉を使い掻き集めた農作物の種も植え終え、ひと段落ついた。野菜もこれならば来年にはよく実る筈だ。

 

 

「いやー、やっぱりスイカ植えるよね」

「一応、野菜だしなぁ」

「俺ら結構スイカ作ってきたからね」

 

 

 その畑には、追加できゅうりと共に見慣れたスイカも一緒に植えた。

 

 この育てたスイカがいずれ、ブリテンの市場に出回ると考えると心が踊る。スイカ作りならば彼らの専売特許だ。

 

 続いては、酪農だが、これは…?

 

 

「今、兄ィがADフィンと柵作ってんだっけ?」

「せやねんなー、牧場作りってなかなか難しいらしいから心配やね」

「モーさんは?」

「スカサハ師匠と元気に野馬狩りと羊とか山羊とか捕まえいっとるよー」

「いよいよあの人達も本業忘れてきたね」

「ホンマやな」

 

 

 クーフーリンとディルムッドの二人は畑の土を整備しつつ、鍬を担いだまま顔を見合わせそんな話をしていた。

 

 

 ーーーーまごう事なきブーメラン。

 

 

 おそらく、ブーメランが頭部に突き刺さって抜けないだろう本業を忘れている第一人者達。

 

 さて、話を戻すと野菜も穀物も酪農も始める事になったカタッシュ村だが、ここに来て欠けている大事なものがある。

 

 それは、言わずもがな…。

 

 

「あ、そろそろちゃんとした拠点もぼちぼち作らなあかんのやない?」

「確かにそうだね、モーさん領主なのに城なしじゃ、可哀想だしね」

 

 

 そう告げるクーフーリンは納得したように話すディルムッドの言葉に静かに頷く。

 

 確かに拠点という拠点は無い、今は簡単な家という名の小屋がポツンとあるだけでこれでは立派な村作りには程遠い。

 

 モードレッドはもう農業に没頭していて本人は忘れているだろうが一応、領主であるし、自分達としてもちゃんとした拠点は欲しい。

 

 

「納屋建てるか」

「建てるしかないね、山城」

 

 

 そう、そうなれば建てるしかないのだ。

 

 このブリテンで神聖なる居住地、山城を建てるしかない。匠たちから学んだ家作りの技術を生かせる今ならこの場所にも建てれる筈だ。

 

 しかし、普通に納屋を建てるなら普通にできてしまう。これでは面白くない、そこで、二人は考えたどうすべきかを。

 

 そして、出した結論は。

 

 

「なんか、どうせならかなり丈夫やつ建てたいよな」

「せやねー、このご時世物騒やし、どうせなら破壊光線受けてもビクともせんやつがええよね」

 

 

 そう、雨風だけではなく、この物騒なご時世。

 

 破壊光線みたいなビームや爆発や攻撃を受けたとしてもビクともしない納屋をこの地に作りたい。

 

 となれば、その材料はより最上級の木材とより最上級の防御魔術を施された納屋。

 

 これならば、世知辛い世の中であっても、たとえ特大な天災や洪水が来ても生きていける筈だ。

 

 

「ま、まずは兄ィと要相談だわな」

「せやね、あれ? そういやヴラドとベディは?」

「あー、マーリン師匠のとこだね、聖剣作りするって息巻いてたからさ、あの二人」

 

 

 ディルムッドは問いかけてきたクーフーリンに笑みを浮かべ肩を竦める。

 

 そうヴラドとベディは現在、聖剣作りの為に様々な書物を王様作りの第一人者であるマーリン師匠の元で勉強していた。

 

 モードレッドに抜かせるための聖剣作り、この素材に相応しいものを用意する事から始める必要がある。

 

 そちらには流石にクーフーリン達は手が回らないのでヴラドとベディに任せっきりである。

 

 いろいろ作るにもまだ、風呂敷は広い、何をするにしてもまずは一つ一つやり遂げなくてはならないだろう。

 

 

「伝説のラーメンもあるしなぁ」

「あ、それやねんけど、どうする?」

「麺がいるよね、麺が、丁度、小麦作ってるけど最上級って訳じゃないからねぇ…」

「どうせなら最上級の小麦使いたいもんなぁ…、小麦の起源っていつやっけ?」

「確かエジプトじゃない?」

「あーそっか、ならだん吉を使ってエジプトに取りいかなあかんな」

 

 

 そう言ってにこやかな笑顔を浮かべるクーフーリン。

 

 つまり、小麦の起源から取ってきた小麦なら全ての小麦の神様に成る。これをカタッシュ村に植えて育てれば最上級の小麦が出来る筈だ。

 

 そうと決まれば話は早い、とりあえず、ひと段落ついたら古代エジプトまで飛び小麦を仕入れて来なければ!

 

 二人はひとまず目の前にある畑を急ぎで整備しにかかる。伝説のラーメン作りもこの地でできるならばなんら問題も無い。

 

 まだ、メンマなどのラーメンに使う具材も集めていない状況、それに、そんな伝説のラーメンを入れる器も確保に至っていない。これはこれで進めなくてはいけないノルマだろう。

 

 次々とカタッシュ村、ラーメン作りに納屋作りとやる事は山積みだが、果たして彼らは無事に村を発展させる事ができるのか?

 

 

 そして、来週はマーリン師匠の元で書物を読んでいた二人から聖剣作りに必要な素材の情報が明らかに…!

 

 その続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 ブリテンに畑を作るーーーーNEW!!

 

 山城計画浮上ーーーーーーーNEW!!

 

 スズメバチ茶レンジ失敗ーーNEW!!


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