ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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木の気持ちになってみればわかる

 

 

 そして、その夜。

 

 前回のコノートでの採掘の結果持ち帰ってきた鉱石物を並べながらカタッシュ隊員達は会議を開いていた。

 

 というのも? 三種では未だ聖剣作りに必要な種類の鉱石は集まっていない。残り三種の鉱石が必要なのである。

 

 現在、手元にあるのは血の涙石、レアルタ鉱石、そして、エードラム合金に使える鉱石物が一種のみ。

 

 呪獣胆石はおそらく、魔猪から採れるだろう事はスカサハとマーリンから彼らは教えてもらった。

 

 残りは剣の秘石、そして、エードラム合金に使う鉱石物の一種が必要な鉱石物である。

 

 いよいよ聖剣作りも大詰めに差し掛かってきた。

 

 

「農具が手に慣れてきたよね」

「近頃、手にしっくりくるんだなぁ、これが」

「兄ィ達も!? 実は俺もマイク握るより金槌が手に馴染んで来てさ!」

「もうさ、これなんの会話? アイドルのする会話じゃないよね?」

 

 

 そう言って、円になりながら話を繰り広げるクーフーリン、カルナ、ベディの三人の会話に冷静に突っ込みを入れるヴラド。

 

 

 ーーー確かにアイドルの活動はやってない。

 

 

 アイドルらしい事と言えば、ブリテンに来てから一回歌ったくらいのもので、あとはほぼ聖剣作りの採掘やら酪農やら農業やら機械いじりやらしかしてないのである。

 

 そろそろ本業しなくても大丈夫なのか? とは思いつつも、副業になりつつあるアイドル活動に一同は何故か身体がもう慣れてしまっていた。

 

 

「てかさ! てかさ! 早く鍋食べようぜ! 俺と兄ィがとってきた猪なんだ! こいつ!」

「おぉ、せやね!」

「へぇ、こんな料理もあるのね…」

 

 

 そう言って、ひょっこりとクーフーリンの背後から顔を出して囲んでいた鍋を見つめながら呟く、メイヴちゃん。

 

 そんなメイヴちゃんのいきなりの登場に一同は目を丸くしながら突如現れたメイヴちゃんに首を傾げていた。

 

 いつの間に、一同の内心での反応をそのまま言葉で表すのならそんなところだろう。

 

 

「あれ? リーダーこちらはどちらさん?」

「あ、この人はメイヴちゃんっていってコノートの国作りの職人さんやで、僕らの採掘作業手伝ってくれてなー」

「はぁい♪ コノートのアイドルメイヴちゃんでーす♪」

「あ、同業者さんだったんだ」

 

 

 そして、一同はメイヴちゃんの言葉に納得したように頷く。確かに同業者なら何ら疑う余地もない、同じアイドルならば志もきっと一緒の筈だ。

 

 ならば、仲間として迎え入れるのは当然の事、しかしながら、モーさんはカルナの背後からメイヴをジーッと見つめると、猫のような鳴き声で『シャー!』 っと声に出して威嚇していた。

 

 そして、威嚇していたモーさんは声高にこう皆に話をし始める。

 

 

「…こいつはクセェ! 俺の母様と同じ匂いがプンプンしやがる!」

「お、私も同意見だな、流石は私の弟子だ!モードレッド!」

「まだ脳筋のスカサハ師匠が可愛く見えるくらいだ! 俺の勘がそう言っている!」

「よし気が変わった。明日からお前をしごき倒してやる」

 

 

 そう言って、胡散臭いメイヴに対してのモードレッドの自分との同意見に喜ぶのもつかの間、モードレッドの言葉に思わず真顔になりスカサハはパキパキと指を鳴らしている。

 

 モードレッドはそのスカサハの変貌に思わず『ひぃ!お師匠様! 勘弁!』 と声を上げると再びカルナの背後に逃げた。

 

 余計なこと言うからと顔を痙攣らせるYARIO達一同、さて、鍋の具合もだいぶ良くなってきた頃。

 

 マーリン師匠は閉じていた鍋の蓋をあける。

 

 

「おぉ…これは…」

「霊草を出汁に使ってみました」

「猪の肉も寄せて、名付けて! 山菜ときのこと猪の霊草水炊き鍋!」

 

 

 蒸気と共に広がる匂いに一同は思わずその鍋に釘付けになる。

 

 余った具材も寄せて、天然の深淵の霊草から取れた栄養価満点の出汁に猪の肉が加わり、さらに、とれたてのきのこや山菜が彩りよく鎮座している。

 

 味付けもしっかり行い、ポン酢で食べれば絶品間違いなし、YARIO特製の鍋、さてそのお味はいかに?

 

 

「…この染み渡る締まった食感、良い、実に良いな…」

「そうですね、美味です、ほんとに」

「うん! 美味い! こんな料理は食べるのは初めてだけど! 悪くないね!」

 

 

 これには小次郎とADフィン、そして、マーリン師匠はご満悦のようだ。

 

 鍋料理としても、霊草の出汁が実に効いていて身体に染み渡るようであった。モーさんやスカサハ師匠、メイヴちゃんも続いて口の中に鍋料理を放り込む。

 

 確かに染み渡るように広がるポン酢の風味によく効いた霊草の出汁が更に食欲を掻き立てる。

 

 

「はむ!…んんー! 美味い! こころなしか身体が軽くなったみたいだ!」

「あ、これ、寿命が延びるらしいからね、なんでも不老不死になるとかなんとか」

「…っ! ぶっー!?」

「ま、マーリンさぁん!? 大丈夫ですか!?」

「ゲホ! ゲホ!…え!? この出汁! 不老不死効果あるの!? 聞いてないよ!?」

「私は元から不老不死だから問題ないな」

 

 

 そう言って、思わず食べてしまった鍋の効力に思わずびっくり仰天するマーリン師匠。

 

 それはそうだろう、気づかず食べた鍋が実は不老不死効果がある伝説の食材が入ってましたと聞かされればそうなることは必然だ。

 

 しかも、彼らはこれを昆布と同じくらいにしか考えていないのである。

 

 気づかず食べてしまっていつの間にか寿命がカンストしてしまいましたという話なのだから、マーリンがこんな反応をしてしまうのも無理はない。

 

 

「あ、確かになんか身体の感覚がいつもと違う感じだ。いまなら盗んだプリドゥエンでビッグウェーブに乗れそうな気がする」

「盗んじゃダメだよー」

「そうだよ、盗むくらいなら作れば良いじゃん、兄ィなら作ってくれるよ」

「君たちさりげなく宝具作るとか軽々と言うのやめてもらえないかな」

 

 

 そう言って、プリドゥエンくらい自力で作れると豪語する彼らに真顔で告げるマーリン。

 

 実際作れそうだから怖い、というより、既に聖剣作りなんかしているので今更、宝具が作れないなんて事は無いだろう、むしろ、聖剣が作れるならなんでも作れる。

 

 彼らにはその確信があった。

 

 

「おいおい、俺でも流石にプリドゥエンとかいうのは無理だよ、多分」

「そっかー、やっぱりそうだよなぁ…」

 

 

 そう言って、カルナの言葉に思わずシュンと縮こまり落ち込むモードレッド。

 

 しかし、それからしばらくして、カルナはサムズアップすると落ち込むモードレッドの肩をポンと叩き満面の笑みでこう告げる。

 

 

「だって、俺、プリドゥエンより凄いの作っちゃうからな!」

「…っ!? マジかよっ!? やっぱり兄ィは最高だな!!」

 

 

 サムズアップするカルナの言葉に嬉しそうに目をキラキラさせるモードレッド。その言葉に一同は納得したように無言で頷く。

 

 だが、約1名、マーリンのみ、真顔でブリドゥエンより凄いものを作ると断言するカルナに明らかに目を丸くしていた。

 

 そんな中、マーリンが心の中で呟いたのはたった一つのシンプルな言葉であった。

 

 

(それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?)

 

 

 全くもって、ギャグにしか聞こえない。しかし、ところがどっこい彼の場合はギャグではなく大真面目で言っているのだろう。

 

 さて、ブリドゥエンはさておき、猪の肉を使った霊草の水炊きは皆から高評価であった。やはり、栄養価が高い霊草の出汁は良い出汁が取れている。

 

 さて、そんなこんなで皆が霊草の鍋を囲んでいると、ここである事をポンと手を叩きクーフーリンは思い出す。

 

 それは…。

 

 

「あ、風呂がまだ無いな、そう言えば」

「あ、言われてみれば…」

「確かにくたくたに帰って来て、お風呂無いのは困るよねぇ」

 

 

 そう、カタッシュ村にお風呂が無いという事実。

 

 近くには水場らしきところはあるものの、やはり、ここは疲れた身体を癒すためにお風呂に入りたいところ、そこで…?

 

 

「檜風呂作っちゃいますか?」

「そうしますか」

 

 

 そう、彼らはなんとこのカタッシュ村に檜風呂を作ることに決めた。

 

 以前、ダッシュ村に露天風呂を作った彼らならば、ここでもその経験が活かせるはず、カルナに関してはインドでも檜風呂は作っていた。ならば…。

 

 

「木から作るか」

「斧使うよね? ちょっくらもって来る」

「今から作るのかい!?」

 

 

 彼らが取る行動は早い、即決で決めてしまうとすぐさま作業に取り掛かるべく準備を始める。

 

 という事で、今回から始動する新たなる企画はこちら。

 

 YARIOはカタッシュ村に露天風呂は作れるか!?

 

 という具合である。聖剣作りのために鉱石を掘りに行って帰って来たばかりだというのに大忙しである。

 

 

「露天風呂…ふむ、和を感じるな、どれ、私も合力致そう」

「おー! 小次郎さん! 頼もしいね! その長い剣って大木切れたりできんの?」

「気合いを入れれば出来るな」

「スゲェ…俺も剣技を見習わないと…」

 

 

 ーーー気合い入れて剣を振れば木は倒せる。

 

 

 剣技歴ベテランの小次郎さんが言うのだから間違いない、振るう太刀筋が多重次元屈折現象を引き起こしてツバメを落とせるようになってからが本番だとか。

 

 何はともあれ、大木を長い刀一本で切り倒せると豪語する小次郎の言葉に目をキラキラとさせるモードレッド。

 

 しかし、その話を聞いたスカサハ師匠はと言うと?

 

 

「そんなもの本気で殴ったら倒れるだろう」

「いや無理でしょ!?」

 

 

 真顔でとんでもない事を口走っていた。

 

 大木なぞ、殴れば倒せる。と豪語してしまうスカサハ師匠の言葉にコノートのアイドル、メイヴちゃんも思わず突っ込みを入れざる得なかった。

 

 

 ーーー女子力よりも素の腕力には自信がある。

 

 

 流石はスカサハ師匠、一筋縄ではいかないのがこの人である。

 

 さて、話は纏まったところで、食事をあらかた終えて、風呂作りに取り掛かり始める。

 

 女性陣も風呂作りに協力すべく、木材を調達しにカタッシュ村の近くの森へカタッシュ隊員達と向かう事に。

 

 

「斧の使い方はモーさんとメイヴちゃん初めてじゃない?」

「…そうね、木は切り倒した事ないかしら」

「えーとね、まずは持ち方なんだけど」

 

 

 そして、もちろん初参加の女性陣にはカタッシュ隊員のヴラドとベディがわかりやすく丁寧にレクチャー。

 

 モーさんもメイヴちゃんも初めて教わる斧の使い方を真面目に聞きながら、木の切り倒し方について学ぶ。

 

 そして、そんな二人を見たカルナは一言。

 

 

「一番は木の気持ちになる事だね」

「木の気持ち?」

「俺らは木の気持ちみんな分かるから」

「マジかよ!? スゲェ!?」

 

 

 ーーーー木の気持ちになれば分かる。

 

 そう、木材を加工するにあたり、木の気持ちを理解する事が何よりも大切な事。YARIOのメンバーは全員、木の気持ちがよく分かる。

 

 リーダーやカルナに関しては木と土の気持ちも理解できるのだ。

 

 アイドルたるもの、木と土の気持ちくらい理解できなくてはいけない。(※特にアイドル活動には必要ありません)。

 

 さて、というわけでまずは木の気持ちになる事を頭に入れつつ、斧を持った二人は初めての伐採作業に移る。

 

 

「ふむ、それじゃ私も久々にゲイボルクで木を…」

「槍で木を倒すなんて聞いた事無いんだけど」

「当初、素手で倒そうとしてたからね、この人」

 

 

 ーーーー槍で木を倒す。

 

 クーフーリン、ディルムッドの二人は木の伐採に槍を使おうとするスカサハ師匠の行動に度肝を抜かされていた。

 

 まさかの槍の使い方である。その発想は流石の彼らにも思いつかなかった。

 

 

「ほんまにやり放題やな、槍だけに」

「しげちゃん、久々だね寒いやつ」

「せやね」

 

 

 さぁ、こうして寒いクーフーリンの親父ギャグと共に始まった木材調達の為の伐採作業。

 

 カタッシュ村での露天風呂作り。果たして彼らは無事にカタッシュ村に露天風呂を作り上げる事ができるのだろうか?

 

 聖剣作りの鉱石、さらに、伝説のラーメン作りにカタッシュ村の開拓とまだまだやるべき事はたくさん山積みだ!

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 霊草で水炊きを作るーーーーーーーーーーーNEW!!

 

 大木を刀で切り倒せる農業スタッフーーーーNEW!!

 

 木の気持ちまで分かるアイドルーーーーーーNEW!!

 

 槍で伐採を試みる師匠ーーーーーーーーーーNEW!!

 

 多分、宝具を作れると断言できるアイドルーNEW!!

 

 アイドル活動をやってないアイドルーーーーNEW!!


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