ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS
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バックトゥザだん吉

 

 

 

 クー・フーリンを弟子にしたスカサハ。

 

 彼の修行を見ることになった彼女は持ち得るルーン魔術の知識を彼に指南した。

 

 そして、クー・フーリンも熱心に彼女の教えに従って学べるものは学んだ。もともと、素材は一級品、学ぶ姿勢も良くスカサハはクー・フーリンを実に可愛がった。

 

 しげちゃんと呼ぶ彼は人間的にも人格者であり、よく人から好かれる性格である。親しみやすい彼のそんな性格が功を奏したというべきだろう。

 

 

「いいか? ルーン魔術はこうやってだな…」

「すごく…勉強になる…」

 

 

 持参した自作のメモ帳にスカサハから教えられた事を目をキラキラさせて書いていくクー・フーリン。

 

 仲間達を探すため、ルーン魔術を学ぶことは彼には重要な事であった。この魔術の知識が自分自身と仲間達の架け橋となる事を彼も理解しているからだ。

 

 学び、身体を鍛え、時には地面にへばりつこうとも彼は学ぶ姿勢を無くなさなかった。

 

 スカサハもこんな弟子の姿勢を見れば、自然とクー・フーリンには自分のとっておきをやりたいと思いはじめるのは自然な事であった。

 

 そして、スカサハはクー・フーリンにある日、一本の槍を授ける事にした。

 

 それは、ルーン魔術もある程度、板についてきた事を見計らってスカサハはクー・フーリンに槍の使い方、槍を使った体術を学ばせようという意図があったからである。

 

 スカサハは己が授ける槍の使い方を学びさえすればきっと彼は英雄として名を馳せるだろうという確信があった。

 

 

「…しげちゃん、よくここまでついてきた。褒美にこれをお主にやろう」

「これは…」

「ゲイ・ボルグ、今日からお主の槍だ」

 

 

 クー・フーリンがスカサハから手渡されたのは朱色の槍、刺し穿つ死棘の槍だった。

 

 それを静かに受け取るクー・フーリンはスカサハはまっすぐに見つめる。

 

 そう、これからはこの槍が相棒だと彼の瞳を見据えたままスカサハは静かに頷いた。

 

 その槍を持ったクー・フーリンはジッとゲイ・ボルグを見つめる。そして、槍の先端に視線を伸ばすとムゥとした表情を浮かべてスカサハにこう話をしはじめた。

 

 

「師匠! これ! 先端尖っとるやん! 危ないで! こんなん持ち歩いて人に刺さったら大事ですやん!」

「いや、槍なんだからそれは尖ってるのは当たり前だろう」

 

 

 そう言って、ゲイ・ボルグを授けたスカサハは自分が持っている二本のゲイ・ボルグをクー・フーリンに見せながら告げる。

 

 ゲイ・ボルグは槍なのだから先端が尖っているのは当たり前である。しかも、突けば心臓とかによく突き刺さったりする槍だ。

 

 先端が尖っているのは至って当たり前の事である。しかし、クー・フーリンは左右に首を振るとお説教をするようにスカサハにこう告げはじめる。

 

 

「あかん!もう、あんたはいつもそんな屁理屈ばかり! お母さんは許さへんよ! ちょっと! あんたのも先端尖っとるやん!残りのもお母さんに貸しなさい!」

「え? ちょっ!? 儂のゲイ・ボルグをどうする気だお主!」

「しばらく没収やで! こんな危ないもの持ち歩いてたらダメでしょ! お母さんに預けてちょっと待っときなさい!」

 

 

 そう言って、エプロンを淡々と装着したクー・フーリンはスカサハから強引に二本の槍を没収し、計3本になったゲイ・ボルグを担いで何処かに行ってしまう。

 

 彼の勢いに押されたスカサハは黙ってそのオカンになった弟子の後ろ姿を見つめることしかできなかった。

 

 それから、三日ほどの日が過ぎ、クー・フーリンは満足げに足取りを軽くして三本のゲイ・ボルグを担ぎ、再びスカサハの元に帰ってきた。

 

 

「ただいま帰ったでー、師匠」

「…何処に行っていたんだお前は…」

「はい!師匠、これお返しするわ」

 

 

 そう、彼がスカサハから没収し担いで帰ってきたゲイ・ボルグはもはや、ゲイ・ボルグだったものだ。

 

 彼女はクー・フーリンから手渡されたそれを見て目をまん丸くしている。一本はなんだか先端に金具のようなものが取り付けてあり鍬のようになっている。

 

 もう一本はしなっていて、先端には糸のようなものと浮きがついていた。早い話が釣竿になっている。

 

 スカサハはクー・フーリンから没収され、鍬と釣竿になったゲイ・ボルグを見て言葉を失っていた。

 

 

「お主、これ…。儂のゲイ・ボルグは…」

「しっかりできてるやろ? この竿ならマグロも釣れるし! この鍬ならスイカ畑とかも問題なくできる! しかも尖った先端がないからみんなも安心やで! ほら、僕のも鍬にしてきたんですよ!」

 

 

 そう言ってドヤ顔で晴れやかな笑顔でサムズアップして、お手製、ゲイ・ボルグだった鍬を見せるクー・フーリン。

 

 皆が変に先端に突き刺さらないようにゲイ・ボルグったものの先端は綺麗に金具になってるかもしくは丸くなっていた。

 

 これでは心臓に突き刺さらないどころか槍として使い物にならない、使い道があるとすれば農業だけである。

 

 

「……………」

「よし! 師匠! 早速、この鍬の使って畑を耕してみましょ!」

「私の…ゲイ・ボルグが…鍬に…」

 

 

 まさか、こんな事になるとは思いもよらなかったスカサハは鍬になってしまったゲイ・ボルグを静かに見つめる。

 

 しかし、クー・フーリンは水を得た魚のように生き生きとそのゲイ・ボルグ(鍬)を使って地面を耕していた。

 

 感触はいい、これならどんな畑でも耕せそうだとクー・フーリンは確信する。槍なんて危ないものより、やはり、クー・フーリンには鍬が一番しっくり手に馴染んでいた。

 

 

「やっぱり、連日、槍持つより僕は鍬持った方が落ち着きますね」

「そうか、しっくりくるか…私も思いの外、この鍬が手に馴染んでいてびっくりしてるよ」

 

 

 そう言いながら静かに涙を流すスカサハは土をゲイ・ボルグ(鍬)で耕しながらクー・フーリンの言葉にがっくりと項垂れていた。

 

 スカサハは槍の使い方を教えたいはずなのだが、 気がつけば槍が鍬になっていた。しかも思いのほか自分の手にしっかりと馴染んでいる。

 

 それから、しばらくゲイ・ボルグ(鍬)で畑を耕す2人。

 

 その後、仕方ないのでスカサハは槍の代わりに鍬で槍の使い方をクー・フーリンに指導せざる得なかった。

 

 クー・フーリンの目の前で槍を使うと怒って彼がゲイ・ボルグを没収し、また鍬や釣竿にしてしまうので致し方ない。

 

 ゲイ・ボルグをこれ以上、鍬にして欲しくないスカサハには苦渋の決断であったのである。

 

 

 それから、月日がそれなりに経ったある日、

 

 スカサハは槍という名の鍬の使い方を指導し終え、何やらカチャカチャと工具を使って何かを一生懸命に作るクー・フーリンの姿を見つけた。

 

 それは、スカサハが見た事の無い、鉄で出来た箱のようなものだ。不思議に思った彼女はそんな箱のようなものを一生懸命に作るクー・フーリンに声をかける。

 

 

「何を作っておるのだ? お主」

「おー! 師匠やん! これか? これはな、車やで!」

「車?」

「せやで、名前は『だん吉』っていうんやけど…バック・トゥ・ザ・フューチャーって師匠見た事あるかな?」

「いや、無いが…、それは車というのか…」

 

 

 そう言って、鉄で出来た箱をまじまじと見つめるスカサハは煤だらけのクー・フーリンの顔を見つめながら不思議そうにそれを見つめていた。

 

 今の時代は移動手段は馬が主流であり、車などの知識は彼女には無かった。

 

 しかし、長年、生きてきた彼女にはそれが実に興味深いものに映る。

 

 クー・フーリンは煤だらけの顔を指でこすりながらにこやかな笑顔を浮かべてスカサハにこう語りはじめた。

 

 

「このデロリアンもとい『だん吉』で仲間達のいる世界に渡ろうかと考えてまして…。ほら、ルーン魔術とかを応用で使って」

「ほほう…それは、面白い発想だな、どれ、私も協力してやろう」

「ほんまですか!?」

「あぁ、その代わりこの『だん吉』には私も乗せてくれよ?」

「もちろんですよ! それじゃまずはですね…」

 

 

 そう言って、クー・フーリンはスカサハに自家製自動車『だん吉』の設計図を見せながらその詳細について話をしはじめる。

 

 だん吉とは本来はソーラーカーである。太陽光の光をエネルギーに変えて走る地球に優しい車だ。

 

 しかし、このだん吉のエネルギーにはルーン魔術を使ったエンジンを用いる。

 

 なぜ、太陽光エネルギーではないのか? それは、時速140kmで世界を超えられるルーン魔術によるシステムをクー・フーリンが考えていたからだ。

 

 太陽光のエネルギーだけでは140kmのスピードは出ない、すなわち、クー・フーリンはこの140kmのスピードを出させる為にルーン魔術を使おうと考えたのである。

 

 そこからはスカサハとの綿密な話し合いだった。

 

 タイヤに必要なゴム、そして、機械類に使うネジや加工品をこの世界では一から調達しなければいけない。

 

 タイヤはゴム(合成ゴム、天然ゴム)と配合剤(カーボンブラック、硫黄、オイルなど)を混ぜ合わせ、板状にするところから始まる。

 

 そして、天然ゴム、オイル、カーボンブラックはこの時代には存在しない手に入らない代物だ。

 

 よって、クー・フーリンとスカサハはまず、これらを集める為、世界を旅する事になった。

 

 

 まず、2人はオイルとカーボンブラックを得る為に石油を探すところから始める事にした。

 

 

 黄色いヘルメットを被り、クー・フーリンとスカサハはツルハシにしたゲイボルクを担いで石油を掘り当てる為に中東まで遠征。

 

 

「師匠、おそらくこの辺かもしれないですね」

「そうか、ここのどこかに石油とやらがあるのか」

 

 

 そして、石油を掘り出す為に2人でゲイ・ボルグ(ツルハシ)を使い、地面を掘り進めた。

 

 石油の加工方法はクー・フーリンは知識としてある。

 

 石油は原油にし、さらに分留によって成分を分ける。精製することにより、天然ガス、ナフサ(ガソリン)、灯油、軽油、重油、潤滑油、アスファルトなどの成分に分けられる。

 

 この石油を原油にしさらに分留してカーボンブラックやオイルを手に入れる必要があった。

 

 

「む、石油とは?これか?」

「おぉ! 師匠! グッジョブです!」

 

 

 そして、石油を掘り当てたスカサハはそれを一部を入れ物に入れてクー・フーリンに見せる。

 

 確かに黒い油、石油であった。

 

 その石油を持ち帰るため、たくさんの容れ物に入れて2人はさらに旅を続ける。

 

 次の目的地はゴムノキの樹液に含まれる天然ゴムを得る為にタイへと向かった。

 

 道は険しかったが、クー・フーリン、スカサハの2人は名高いYARIOの英霊、これだけでへこたれるほどヤワではない。

 

 タイについた彼等は現地人の人に頼んでゴムノキまで案内してもらった。

 

 

「これが…ゴムノキ…」

「よし! ゴム回収しましょ! 師匠!」

 

 

 そして、天然ゴムをタイにて大量に回収。

 

 こうして、2人の旅は帰り際の道で硫黄を手に入れる事でようやく終わりを迎えた。手に入れた素材を用いて加工、配合を行なっていく。

 

 作成した3つのパーツを貼り合わせる成型から、金型に入れて加熱・加圧し、化学反応させることによって、強力な弾力のあるタイヤに仕上げ、一通りの加工を済ませればタイヤの完成品が出来上がる。

 

 それをクー・フーリンはだん吉へとはめ込んでいった。

 

 

「まさか…タイヤを作る為に石油を掘らなあかん事になるとは思わんかったけど師匠がいてくれて助かりましたわ」

「ふふん、そうだろう」

 

 

 そう言って、クー・フーリンの褒め言葉に鼻を高くするスカサハ。

 

 デロリアン、もとい『だん吉』がだんだんと形になってくる姿はスカサハもなんとも言えない感動があった。

 

 この調子なら『だん吉』の完成も近い、あとはルーン魔術などでタイヤを強化したり、エンジンや世界を渡るシステムを作り上げれば良い。

 

『だん吉』の完成に向けて、ふたりは意気揚々と車作りに没頭していくのであった。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 石油採掘ーーーーー←NEW!!

 

 タイヤ作りーーーー←NEW!!

 

 ゲイ・ボルグ加工ーー←NEW!!

 

 

 

 








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