ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS

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カタッシュ村清潔計画 その1

 

 

  清潔の匠、ナイチンゲール師匠を迎え、カタッシュ村を清潔にすべく立ち上がったカタッシュ隊員達。

 

 現在、カタッシュ村の清掃活動中、楽器の代わりに箒や清掃道具を持ち、村のゴミを取り除く作業を行なっていた。

 

 

「あー、花が咲くー、理由もー無ーいけどー」

「最近やたら咲き誇ってるよね、マーリン師匠の周り」

「ベディの口から久々に聞いたかもそのフレーズ」

 

 

 そう言いながら、箒で清掃活動をするカタッシュ隊員達。

 

 と、ここで、ディルムッド、地面に落ちている糸状になった変わった紐の落し物を発見。摘み上げるようにそれを持ち上げた。

 

 

「ん? ディル兄ィ何よそれ」

「なんか拾った」

「いや、なんか拾ったって…」

 

 

 そう言って、拾いあげたそれについて告げるディルムッドに苦笑いを浮かべるヴラド。

 

 何でもかんでも彼らは拾う、そして、使えるものは使うというスタンスである。

 

 ちょうどそんな時だった。風呂から帰って来たモーさんが首を傾げながらそれを拾いあげているディルムッドを見つける。

 

 

「ふぅ…露風呂気持ちよかったぁ…、ところで兄ィ達何やってんの?」

「あ、モーさん、実はね…」

 

 

 そして、モーさんに事の経緯を話し始めるベティ。清掃活動をしている理由とナイチンゲール師匠についての話を風呂上がりの彼女にわかりやすく伝える。

 

 カタッシュ村を綺麗にするための清掃活動、清潔な村を目指すためにこうして、皆で掃除に勤しんでいるわけだが…。

 

 

「見て見て、これ! メデューサ!」

「いやいや、何やってんの!?」

「あはははは!! なんだそれ! おもしれー!」

 

 

 悪ふざけをしはじめるディルムッドの一発芸、メデューサに思わず笑い声をあげる風呂上がりのモーさん。

 

 しかし、これを目の当たりにしたヴラドとベディの二人も悪ふざけに乗っかるようにして頭に紐が纏めてあるロープを被るディルムッドから逃げはじめる。

 

 

 ーーー※アラフォーのおっさん達です。

 

 

 どうやら、このロープはカルナが作ったもので船の帆に使えるかもと彼が作り置きしていたものという事がわかった。

 

 そうとわかれば…。

 

 

「メデューサだぁー」

「助けてー」

「わー! 逃げろー!」

 

 

 そう言って、完全にディルムッドの悪ふざけに便乗する三人。はたから見れば微笑ましい光景である。

 

 

 ーーーだが、当然作業は進まない。

 

 

 そんな時だ、悪ふざけに乗じる彼らの側に近寄るメデューサよりもおっかない、拳銃を携えた婦長の影が…。

 

 婦長は四人の微笑ましい光景を目の当たりにしたまま、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。

 

 それは、一見すると天使の様な可愛らしい微笑みのように見えるが…。

 

 

「何をやってるんですか? 貴方達?」

 

 

 その目はどうやら笑っていなかったようだ。

 

 悪ふざけに乗じていた一同の動きがピタリと止まる。そして、ゆっくりとその満面の笑みを浮かべる婦長に視線を向ける。

 

 そして、暫しの間、顔を見合わせるモーさんとカタッシュ隊員達。

 

 紐を頭に乗っけて三人を追いかけていたディルムッドは声を上げて皆にこう告げる。

 

 

「妖怪殺菌婦長だァー!!」

「みんな! 死ぬ気で逃げろー!」

「待ちなさい!貴方達!?」

「やべぇ!? 銃撃ってきたよ! ガチだアレ!」

「ひぃ!? つ、捕まったら消毒されるのか!?」

「かもしんない!?」

 

 

 そう言って、ルパ◯三世さながらの逃走劇を婦長と繰り広げはじめる四人。

 

 婦長は容赦なく拳銃を発砲、目が本気であった。これは捕まったらお説教間違いなしである。

 

 一見すれば、まるで、小学生の男児を追い回す先生の図の様にも見えるが、本人たちは必死である。

 

 

「鬼ごっこを刑事さん百人とやった時より迫力ある!?」

「まぁちぃなぁさぁい〜!!」

「ぴゃー!?」

 

 

 ナイチンゲール師匠と鬼ごっこを繰り返す事数時間。

 

 あちらこちらに逃げ回っていたカタッシュ隊員達だが抵抗虚しく御用となった。

 

 しかし、ナイチンゲールも彼らを追い回し続けたせいか、肩で息をしている。やはり、100人の刑事と鬼ごっこを繰り広げた事のある彼らを捕まえるのは彼女とはいえ骨が折れたようだ。

 

 息が上がっているせいか、彼女の髪が怒髪天の様に逆立っている様にも見える。正直言って怖い。

 

 そんな彼女を見てモーさんは恐ろしさのあまり涙をグスグスと流しながら正座をしていた。

 

 かわいそうなので慰める様にディルムッドとベディの二人がヨシヨシとモーさんの頭を撫でてあげ、敢えて婦長に目を合わさせない様にさせている。

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…、ふふふ…ふふ、さぁ、どんな風に消毒しようかしら…」

「ままま、まぁまぁ、ナイチンゲール師匠落ち着いて、この娘怖がっちゃってますから」

「はぁ…はぁ…、ほんとに…貴方達を捕まえるのには骨が折れましたよ」

「…いや、あそこまでガチで追い回されたらそりゃ逃げちゃうよ」

 

 

 もっともである。ヴラドが言い放つ言葉に追い回されたカタッシュ隊員の二人はモーさんの頭を撫でながら肯定する様に頷く。

 

 刑事さんより追い回されるのが怖かった。

 

 凄い勢いで拳銃を発砲されたり消毒液が飛んできたりされれば誰だってそうなるだろうと全員の見解である。

 

 正座をさせられたカタッシュ隊員達に婦長は顔を引きつらせながら笑顔を浮かべる。

 

 

「誰のせいですか誰の!」

「こいつのせいです! 婦長!」

「この紐の束の奴が俺にメデューサしろって言ってきたんです!」

「通りますか! そんな理屈!」

 

 

 そう言い切る三人に婦長も思わず頭を引っ叩いてツッコミを入れる。アラフォー軍団の言い逃れは流石に厳しかった。

 

 そんな婦長の勢いにモーさんも思わず恐縮してしまう、まるで、小学生に説教する学校の先生の様な図だ。

 

 

「ディル兄ィー妖怪殺菌婦長が怖いよー」

「大丈夫だぞー、こう見えてこの婦長さん優しいからなー」

「ほら、婦長さんが怖いから泣いちゃってるでしょう?」

「いや…もう息切れして私も結構キツイんですけど…」

 

 

 そう言いながら、怒り疲れた婦長はため息を吐くと呆れた様に彼らにこう話をし始める。

 

 どうやら、ひとしきり彼らを追い回したおかげで一周回って冷静になったようだ。別にそこまで怒こる事柄でもない。

 

 もっとも、掃除を放って遊んでいた彼らが悪いのだが…。

 

 しかし、ナイチンゲールはモーさんの聞き捨てならない言葉を訂正させる為、先ほどと、うって代わり彼女に柔らかい笑みを浮かべると視線を合わせこう告げる。

 

 

「これからは私の事はお母さんと呼びなさい、いいですね? 妖怪ではありません」

「え…?」

「いいですね?」

「…ひゃい!?」

 

 

 顔は笑っているが、目が笑っていない。

 

 そして、何故か呼び方がお母さん、モーさんに対して婦長の中にある慈愛に満ちた母性が目覚めたのか、それとも、彼女を教育しなければいけないという使命感が芽生えたのかは定かではない。

 

 そして、カタッシュ隊員達に対しても。

 

 

「良いですか?」

「イエスマムッ!」

「サー! イエッサー!」

 

 

 三人とも婦長の言葉に思わず敬礼。

 

 流石にこれから婦長からお説教と殺菌されるのは嫌だという全員が満場一致の意思だった。

 

 気がつけば、モーさんのオカンがもう一人増えている。女性にしても威圧が凄い、流石は元祖看護師、気の強さは段違いだ。

 

 そんな彼らの元へゲイボルクを箒にして清掃に励み仕事を終えたクーフーリンが現れる。

 

 

「何やってるん? 君ら」

「あ、リーダーじゃん、いやー、掃除をよそに遊んでたら婦長に怒られちゃって数時間、鬼ごっこやってた」

「…鬼ごっこって…、懐かしいなぁ」

「いや、そこは怒るところでないの?」

 

 

 まさかのリーダーの返答に思わず突っ込みを入れるヴラド、寛大にも程があるが、リーダーらしいといえばリーダーらしい。

 

 鬼ごっこと言えば対百人で行った懐かしい企画。思い出せば、色んな事があった。

 

 とはいえ、今はそんなことよりも清掃活動の方だが作業が進んでいない事が重要だ。

 

 

「さぁさ、みんなでやるで! ほんとにもう!あんた達は世話が焼けるんやから!」

「はい! オカン! 了解しました!」

「みんなでやれば早いしね」

 

 

 そんなわけで清掃再開、カタッシュ村を清潔な村にする為に一同は心を一つにする。

 

 消毒や殺菌により、疫病を流行らせない村作り、昔は彼らがいた時代よりも医療は発達しておらず、病で亡くなる方も多かった。

 

 だが、それを未然に防ぐ事はできる。何故ならば清潔のプロフェッショナル、ナイチンゲール師匠がいるからだ。

 

 医療にも精通している彼女なら、この村から病気の予防や治療法などを発信していけるようになる筈。

 

 妖怪殺菌婦長なんて呼んではいけない、彼女は紛れもなく皆の天使であり、白衣の母なのだ。

 

 さて、一方、ADフィンと共に病院建築の為に土地の下見を行っているカルナ親方達は…?

 

 

「うん、この辺かな?」

「ですかね、この立地なら割と場所も取りませんし人も通いやすいかと思います」

「なるほどな」

 

 

 病院を建てるのにいい具合の立地を発見していた。

 

 傍らにいるスカサハ師匠もカルナとADフィンの言葉に納得したように頷いていた。しかし、いまいち、彼女には病院がどういったものかが理解できていない部分がある。

 

 病や怪我を治療する施設とは聞くが、彼女自身、不死身の身体故、ピンとこない。

 

 

「ちなみにその病院とやらはほんとに必要なのか?」

「そうよねー、ほんとに逞しい身体とかなら別に病や怪我なんて無縁だし」

「これはこの村に住む人達の為の施設だからねー、やっぱり万が一って事もあるからさ」

 

 

 そう言ってカルナは疑問を口にするスカサハとメイヴの二人に病院の必要性について語る。

 

 この施設があるだけでも遠方から人が集まるかもしれないし、そうなれば、カタッシュ村の発展にも当然繋がる。

 

 さて、そうとわかれば話は早い、すぐさま作業に取り掛かる。まずは木材の調達だが、これは以前、風呂作りに伐採した木材が余っている。

 

 ならば、これに木材をさらに追加し、骨組みを作り上げる過程は割とスムーズに行えそうだ。

 

 さぁ、ここで建築について、皆さんにはマーリン師匠からの建築についての解説をご視聴して頂こう。

 

 

「建築の話をしよう。まずは地縄張りと縄張りから、住宅の建築の初めに行うもので、敷地内における建物の配置を示していく作業だ」

 

 

 そう、建築において、基礎となる地縄張りとは縄張り、住宅の建築の初めに行うもので、敷地内における建物の配置を示していく作業。

 

 後は、地盤の調査や建造物をどうやって建てるのかの段取り、そして、建て方。カルナは以前、納屋を建てた経験もあり、インドでは建造物をいくつも建てたベテランの大工、これくらいは朝飯前にやってのける。

 

 

 ーーーー出来るだけ丈夫な病院に。

 

 

 建て方にも工夫を加えて、皆が安心できる病院を建てる。

 

 

「さぁ、そんじゃ作りますか」

 

 

 ヘルメットを着用するカルナの安全第一の文字がキラリと光る。

 

 何事も安全が一番、無事にこの病院が完成する事を願いつつ、カルナの指導の元、スカサハ達は作業に取り掛かりはじめた。

 

 さて、果たしてどんな病院が出来上がるのだろうか?

 

 

 この続きは、次回、鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 婦長と本気の追いかけっこーーーーーNEW!!

 

 婦長、モーさんの母になるーーーーーNEW!!

 

 マーリン師匠の建築の話ーーーーーーNEW!!

 

 初めての病院作りに挑戦ーーーーーーNEW!!

 

 ディルムッド、メデューサになるーーNEW!!


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