ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか?   作:パトラッシュS
<< 前の話 次の話 >>

37 / 74
カタッシュ村清潔計画 その3(完成)

 

 ここはキャメロット城。

 

 カタッシュ隊員の1人、ネロちゃまことネロ師匠はこの日、1人でこのキャメロット城にいる王、アーサー王に謁見を求めていた。

 

 というのも、病院や建造物を建てるのに必要なローマン・コンクリートの仕入れを考えていたのだが、やはりそれにはこの国の王との協力が不可欠。

 

 貿易に疎い我らがリーダー達はちょっとそういった決め事をするのは向いていないとネロ師匠に今回お願いしたわけである。

 

 まぁ、事実はアーサー王を見たいと彼女が駄々をこねて泣き始めたので致し方なくだが。

 

 そして、手土産にヴラドとディルムッドが作ったお弁当を携えてキャメロット城に赴いたというわけである。

 

 

 ーーーはじめてのおつかい。

 

 

 さぁ、ネロちゃまは果たしてちゃんとおつかいはできるかな?

 

 

「うむ! 当然、余くらいカリスマ性に溢れた皇帝ならば青いのだろうが、ピンクだろうが、紫だろうが、色が被っていようがなんら問題はない! いざゆかん! キャメロットへ!」

 

 

 不安だが、自信満々に農作業着を着たネロ師匠は満面の笑みを浮かべながら、キャメロット城の門を訪ねる。

 

 しかし、そこには、門番が、どうする? ネロ師匠?

 

 

「む? その作業着は…?」

「うむ! 何を隠そう!余はローマ皇帝…」

「あ、農家のYARIOさんですねどうぞどうぞ! 先日の配達助かりました!」

「え!? そ、そうではなくてだな…」

「あ、入ってください! 我が王がお待ちしてますので!」

「う、うむ!」

 

 

 おっと、門番さんが気を使ってくれて通してくれたぞ! やったね! ネロちゃま! 門が潜れるぞ!

 

 しかし、ネロ師匠の顔はどこか不満げ、それはそうだろう、皇帝の威厳もまったく関係なく、農家のYARIOというだけで門が開かれたのであるネロ師匠の心境としては複雑だ。

 

 だが、ローマの皇帝はこれだけで心折れたりしない。

 

 さて、門番から案内されネロ師匠はアーサー王がいる王の間へと足を運んだ。さて? 無事にローマン・コンクリートは仕入れをできるようになるのだろうか?

 

 王の間には腹心の騎士達がズラリと並び、にこやかな笑顔を浮かべ、ネロ師匠を出迎えてくれている。

 

 これならば、一悶着ある事も無いだろう。

 

 

「遥々、よく足を運んでくれた。話は彼らからだいたい聞いている、私がアーサー王だ」

「うむ! 出迎え痛み入る! 我が名はネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス! ローマ…」

「ローマン・コンクリートを仕入れに来た業者の方だな? うむ、確かに彼らの仲間だけの事はある、立派な作業着だ」

「!?」

 

 

 しかし、アーサー王、アルトリアちゃん、まさかのローマ帝国の皇帝をローマン・コンクリートを仕入れる業者呼びである。

 

 これには流石のネロ師匠も動揺を隠せない。

 

 

 ーーーーだが、あながち間違っていない。

 

 

 円卓の騎士の1人、トリスタンはネロ師匠に近寄ると手を握り、嬉しそうに上下に振った。

 

 

「いやー、先日は助かりました。配達してくださった農作物や食べ物のおかげでいくつも村が救われまして…」

「いや…あの…余は…余はな…!」

「特にあの唐揚げという食べ物は実に美味でしたよ」

 

 

 涙目でプルプル震えているネロ師匠ににこやかな笑顔を浮かべ、さらっと追い打ちをかけるように告げるトリスタン。

 

 あー、ネロちゃま、ついに限界かな? プルプル震えている小柄な身体は可愛いが、流石に耐えかねてこう話をしはじめる。

 

 

「余は皇帝で…皇帝なんだぞ! ローマなんだぞ!」

「えぇ! もちろん! 皇帝でローマン・コンクリートの仕入れの業者さんなんですよね!」

 

 

 そう、間違いではないが、彼らの感覚は最早、麻痺していた。

 

 スカサハにメイヴと女王で農業やら鉱夫やらをしている人たちを見ていたので、皇帝で、さらに業者なのは別に普通であるという感覚に陥ってしまっているのである。

 

 ついに、ネロ師匠は涙を堪えきれずに泣き始めちゃいました。あらら。

 

 

「うぇぇぇぇぇぇぇぇん! 」

「えぇぇぇ!!?」

「ちょ! トリスタン!何泣かせてるんですか!」

「えっ…!? いや、えぇぇぇ!?」

 

 

 そう言いながら、唐突に泣き始めたネロに動揺を隠せずにオロオロするトリスタンにギャラハッド卿からの理不尽な声が上がる。

 

 これは、あんまりである。ペタリと座り込みわんわんと泣き始めるネロ師匠。そんな中、アーサー王はいつの間にか良い匂いに釣られ彼女の側にある風呂敷に興味を示していた。

 

 そして、中身を勝手に広げるとくんくんと匂いを嗅いでネロ師匠にこう訊ねる。

 

 

「くんくん…。あ、このお弁当は…もしや彼らからの差し入れですか?」

「王よ!? なんでこの状況でネロさんが持ってきてる風呂敷を覗き見してるんですか! あっ…!? 摘み食いしてはいけません! 何やってんですか!?」

 

 

 そう言いながら、食欲に負け歯止めが効かなくなりそうなアーサー王に突っ込みを入れるガウェイン。

 

 そんなこんなで、いろいろあったが、ネロ師匠は無事にローマからローマン・コンクリートを仕入れの許可を彼女から頂くことに成功したのだった。

 

 さて、そんな出来事を振り返りながら、翌日、スカサハが作った一日おいたカレーを頬張るネロ師匠はドヤ顔で彼らにこう告げる。

 

 

「やはり! 余は偉い! 外交の才も一級品だな!」

「いや、ネロ師匠、それ明らかに失敗してるよね」

「…そっからほんとにどう巻き返したんだろう」

 

 

 これが、泣き落とし外交だとばかりに勝ち誇るネロ師匠の言葉に愕然とするカルナとディルムッドの2人。

 

 多分、アーサー王の事だから、ローマン・コンクリートを許可したのは、また、弁当が食べたいからとか単純な理由に違いないが、兎にも角にもネロ師匠は無事にはじめてのおつかいを終えてきてくれたようである。

 

 ローマとブリテンの交易もはじまり、winwinな関係を今後、築いていけるに違いない。二国の未来は明るそうだ。

 

 カレーを食べているネロ師匠もこれには上機嫌に歌まで。

 

 

「だ〜れにも〜ないしょで〜♪」

「ネロちゃん、音程ズレてるズレてる」

「リーダーの裏声並みだね、可愛いけど」

 

 

 そう言いながら、ヨシヨシとネロ師匠の頭を撫でてあげるカルナ、何はともあれ、ネロ師匠の功績には違いない。

 

 さて、気を取り直して、不足していたローマン・コンクリートを仕入れて病院作りもこれで再開できる。

 

 カルナの腕にも気合いがみなぎってきた。

 

 いよいよ、病院作りも最終段階、不足していたローマン・コンクリートで外壁を組み立てていき、形が出来る筈。

 

 

「後は、屋根だねーやっぱり」

「棟上げですか…、ふむ、いい段階まできましたね」

「あのさ、ナイチンゲール師匠、違和感なくヘルメット被って土方の格好してるんだけどなんで誰も突っ込まないの?」

 

 

 そう言いながら、腕を組み、出来上がっていく病院の建物に満足気味のナイチンゲール師匠の格好に思わず突っ込むヴラド。

 

 しかも、カルナの隣でなんと仁王立ち、女ながらの逞しさと色気がにじみ出ているようだ。

 

 さて話は戻るが、屋根の工事は、棟上げの後に行う。まずは、屋根の下地工事を行い、下葺き材を施工し、最後に屋根の仕上げ工事へと工事が流れていく。

 

 さて、ここで、マーリン師匠から一言。

 

 

「屋根作りの話をしよう。屋根の最頂部に棟木があり、この棟木から軒桁へと垂木が架けられいる。この垂木は母屋と直交するように架けられていくんだね」

 

 

 そう、こうやって、建造物の屋根は組み立てられ作られていく。古くからある匠の技を存分に活かした建築法だ。

 

 そして、ここで、忘れてはいけない、そう、それは、今まで学んだ知識を活かすという事だ。

 

 次に作るのは、雨漏りを防ぐための瓦である。

 

 早速、学んだ知識を活かすため、カルナは以前、竹取物語で見つけた神社の屋根を思い出す。

 

 そう、それは、屋根作りのお手本、土葺き。

 

 

「やっぱ、屋根には杉の皮だよね」

 

 

 土を接着剤代わりに瓦を葺く場合、土の下に杉の皮を敷く。

 

 これによって、染み込んでくる雨水から屋根を守る事ができる。

 

 しかし、この島には皮を剥がせるような適当な木はない。

 

 そこで、カルナが持ち込んだのは、柿を発酵・熟成させた液体“柿渋"。

 

 かつて、福島県のとある村で古民家の柱にも塗って使った天然の防水・防腐材。

 

 柿渋に含まれる柿タンニンという成分が、酸化する事で防水効果を発揮する。

 

 以前、カルナとリーダーが新聞紙だけで自転車を作ったときにも、新聞紙の強度を上げるために塗ったのが、柿渋だった。

 

 これを、分厚い紙に塗れば、杉皮の代りに使えるはずとカルナは考えた。

 

 

「うん、こんなもんか」

 

 

 柿渋を仕入れた紙にしっかり染み込ませ、あとは天日干しで乾かすと強度が増し、水も弾くようになる。一時間かけ、ひたすら干した柿渋紙120枚、これが乾くと、手触りは油紙を固くしたようなパリパリした感じになる。

 

 試しに水を掛けてみると、ちゃんと弾いて水も通さない。

 

 これを晴れの日を選び、カタッシュ隊員が代わる代わるで二日間、120枚の柿渋紙を屋根に貼り、下準備は完了。

 

 後はこの上に水で練った粘土質の土を乗せ、そして、肝心の瓦は。

 

 

「こんにちはー! あのー、僕ら鉄腕/fateという企画で、実はこの辺に使われなくなった古びた民家とかありませんかね?」

 

 

 わざわざ、だん吉を使って仕入れてきた。

 

 さて、粘土を練る作業は水と土の比率を調整しながら、練っていく。これは、なぜか練る作業が得意なベテランアイドル、クーフーリンがモーさんに教えながら仕上げた。

 

 こうして出来上がった屋根には瓦が貼り付けられる。

 

 手順は、まず屋根の下地に粘土質の土を載せ、その上に瓦を置いていくが、ここで必要なのが柄の部分に目盛りが付いた金槌。

 

 

「クーちゃんどうかしら?」

「うん、ええやん、その調子」

 

 

 メイヴの作業具合を確認するクーフーリンの顔からも思わず笑みが溢れる。

 

 金槌を軒に当て、瓦を目盛りに合わせて、出っ張り具合を調整すれば、何枚葺いてもズレることはない。

 

 最後に、瓦に開けた穴と打ち付けた竹ひごに番線を通して固定する。

 

 瓦は1000枚以上、わずかなズレも最後には大きな狂いに。作業はカタッシュ隊員達が力を合わせ慎重かつ、急ピッチで進んだ。

 

 

「それでは私はそろそろ鬼瓦の制作に入りますね」

「…もう母ちゃんがそのまま屋根に仁王立ちしてた方が良いんじゃ…」

「モーちゃん? 何か言いました?」

「いえ! 何にも言ってないですっ!」

 

 

 そう言いながら、にこやかな笑みでモーさんに告げるナイチンゲール師匠。これには、モーさんも思わず背筋が凍りついた。

 

 

ーーーー鬼瓦よりおっかない婦長

 

 

 お寺など瓦屋根の上に構えられている、魔除けの鬼瓦。

 

 その起源は諸説あるが、古代ローマで建物の入り口に飾ったメドゥーサ。

 

 それが1400年前に伝わり、始めは蓮華(れんげ)模様、後に鬼の全身へと変わり、さらに現在の鬼の瓦へ。

 

 これは厄除けだけではなく、雨水の浸入も防いでいるという。

 

 この出来上がる病院にもナイチンゲール師匠は守り神を据えようということらしい。むしろ貴女が守り神なのでは? と言うと問答無用で拳銃の弾が飛んでくるのはご愛嬌だ。

 

 鬼瓦の作り方としては、板状にした粘土をそのまま使ったり、ちぎって・丸めて・盛りつけて、鬼瓦の形を作っていく。

 

 今回は型などは用いず、ナイチンゲールの盛り付けでオリジナルの形を作る。

 

 まずは、鬼瓦の基本となる図面を板状の粘土の上に敷き、上から線をなぞることで大体のパーツの位置を下書きする。

 

 そして、輪郭を切り取ったら、これを土台に顔のパーツを盛っていく。

 

 こうした過程に加え、その後、いろいろと手を加える。

 

 最終段階として、鬼瓦を乾燥させ、若干、縮んだ鬼瓦に、つや出しを吹き付けていく。あとは、窯に入れ、焼き上げれば出来上がりだ。

 

 そして、それらを屋根につけていけば…。

 

 

「立派な病院やな」

「はい、文句のつけようがない見事な出来です」

 

 

 待ち望んでいた、カタッシュ村に病院が建った。

 

 見た目は和風ながらも、そのナイチンゲール作の鬼瓦が病魔を払わんと目を光らせている。死神もこれならばなかなかこれまい。

 

 斬新な出来栄えにナイチンゲール師匠もこれにはほっこりしていた。

 

 さて、ついに完成を迎えたナイチンゲール師匠とYARIO達の手で建てられた病院。

 

 これから先、ブリテンに巣食う病魔や怪我に立ち向かわなければならない最前基地、まだスタートラインに立ったばかりである。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 カタッシュ村に病院を建てたーーーーNEW!

 

 ネロ師匠の泣き落とし外交術ーーーーNEW!

 

 屋根作りに詳しいマーリン師匠ーーーNEW!

 

 ローマン・コンクリート輸入開始ーーNEW!

 

 ブリテンで瓦屋根ができるーーーーーNEW!








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。