ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? 作:パトラッシュS
エジプトでのピラミッド作りが始まってから数ヶ月。
紆余曲折はあったものの、エミヤさんの手伝いもあって大型建築車を作る事に。
そもそも、だん吉というモデルがあるからして製造はさほど困難ではなく、英雄達が協力し合う事で急ピッチで進めることができた。
「おー、見事なシャベルやなぁ」
「クレーンもあるし、これならやれんね」
「アルちゃん達もわざわざ手伝いに来てくれてありがとうね」
そう言って、カルナは壮観な大型建築車がズラリと並ぶ光景を目の当たりにしながら、わざわざインドからだん吉で駆けつけて来たアルジュナ達に感謝を述べる。
アルジュナはカルナの手を握りながら、左右に首を振り満面の笑みを浮かべてこう語りはじめた。
「何を言う、我が建築の師である貴方とこうして実践で建築ができるのだ。断る理由なぞない」
「いやいやーそれは大袈裟だよー!」
「…貴方が急にインドから居なくなってどれだけ毎日が寂しいものになった事か…」
「…何これ? 男同士の会話だよね? なんで単身赴任の夫を待つ嫁みたいな会話になってんのよ」
「さぁ? 兄ィだからじゃない?」
ヴラドは苦笑いを浮かべながらベディに訊ねるが、ベディもこれには肩を竦め首を傾げるだけだ。
さて、何はともあれ、インドから頼もしい助っ人達が駆けつけて来てくれたおかげでピラミッド作りも捗りそうだ。
早速、建築の図面を見ながら皆でどうやってピラミッドを建てるかを相談しはじめる。
「じゃあ、アルちゃんとお前達はここを中心に石を組んでもらって」
「よし、わかった」
「それでもって、モーさんは俺とここ、リーダーは重機使えるやつと組んでもらって…」
「この辺に石を積み上げとけばええかな?」
「そだねー」
そう言って、軽いノリで打ち合わせを進める彼ら。果たしてこんな調子で大丈夫なのだろうか?
さて、心配はあるのだが、一方、その頃、エミヤとディルムッド達はというと?
「これとかどうかな? えみやん?」
「むっ…これは、…いい感じのモロヘイヤではないか! グッジョブだ!」
「でしょ! やっぱり野菜普段から扱ってるとわかんだなぁこういうの」
エジプトの名産野菜、モロヘイヤの栽培をさせていただいていた。
モロヘイヤは春から夏にかけて収穫され、刻むととろろ芋のように粘りが出るのが特徴。カイロではこの季節になると市場や八百屋で大きな束になって売られている事が多く、国民から愛されている野菜だ。
日本ではあまり馴染みのない野菜だったが、ここ数年、鉄分の豊富な野菜と言うことで名前もそのまま「モロヘイヤ」として日本のスーパーでも売られるようになった。
食べ方としては塩水でゆでて細かく刻み、ネギやしょうゆを加えてかき混ぜるととろろのようになる。そのままご飯にかけたりお蕎麦にものせてみても良い。
これを、是非カタッシュ村でも栽培したい。
「やっぱり和食って大切だよな、えみやん」
「そうだな、日本人が長寿なのは和食が栄養価があり健康的であるという事に他ならない」
「たまに無性に焼き魚とか、味噌汁食いたくなるよね」
「わかる」
そう言って、農作業着を身に纏うエミヤは通じあったとばかりにディルムッドと拳を突き合わせ互いに頷きあう。
トロロのような食事があれば、また食の幅も広がるし、何より、ご飯が美味しく食べれるようになる。
これからピラミッドを建てるのだからしっかり皆には栄養をつけてもらわねば、腹が減っては戦はできぬという奴だ。
そして、一方、モーさん達だが…。
「むぅー、あー、面白くねぇー」
「何を拗ねておるのだ」
「だってよぉ、あいつがいるせいでぇ…その…」
「はぁ、カルナに構って貰えないからか?」
そう言いながら、綺麗な髪の毛をお湯で梳かすスカサハは首を傾げながら拗ねているモーさんに問いかける
ここは宮殿の近くにある川近辺。
お湯が入ったドラム缶をドラム缶風呂にしながら彼女達は疲れを癒しつつ、作業によって汚れた身体を洗い流していた。
「ナイル川の水を焚いてこんな使い方をするなんて…このドラム缶というもの、凄い業ですね」
「な、ななな! んなわけねーだろ! ばーかばーか! 年増!」
「…はぁ、全く…。おい、今、最後なんと言った? 小娘」
「あだだだだだ! う! 嘘です! ごめんなひゃい!!」
そう言いながらスカサハ師匠は片手で顔を真っ赤にして照れ隠しからか、言ってはいけない失言を言い放ったモーさんの頭を持ち上げると凄い勢いでアイアンクローをお見舞いする。
ーーーー女性に年齢は厳禁。
虎の尾を踏むとはこういう事だろう。頭を片手で持ち上げられたモーさんはしばらく抵抗はしたものの、それから時間がたたないうちに力なく手足がプラーンと垂れ下がってしまった。
しかも両者とも全裸でこれをやってるのだから、その場にいたら凄い光景に違いない。
現にドラム缶風呂に浸かっていたニトクリスちゃんは顔を真っ青にしながらそれを呆然と見ていた。
「ふむ、手がかかる弟子がいると師匠は大変だな全く」
「………………」
「…だ、大丈夫ですか? 死んでないですよね!? これ!?」
「手加減した心配ない」
「なんだか聞いてはいけない音が聞こえたような気がしたんですけど!?」
チーン、という音が聞こえるかの様に意気消沈してスカサハ師匠からドラム缶風呂に投げ込まれたモーさんの様子に思わず声を上げるニトクリス。
ーーーーこれがケルト式お仕置き術。
おいたが過ぎるとこうなるので皆様ご注意ください。
照れ隠しからか、失言は命取りになる。こうしてモーさんはまた一つ大人の階段を登った。この調子ならいつかはシンデレラになる日も近いだろう。
デレも最近出てきた気がするモーさんだが、以前に比べて随分丸くなったものだ。
さて、こちらは再びスフィンクスの近くにある建築予定地だが…。
「ここらへんかー、しげちゃんは?」
「ロードローラー取りいったよ」
「よし! それじゃ取り掛かりますか」
打ち合わせも終わり、いよいよ、土台作りに入る段階に来ていた。
古代エジプトにおけるピラミッドは、巨石を四角錐状に積み上げ、中に通路や部屋を配置した建造物である。
まずは、ピラミットを作るにあたって、地盤がしっかりした場所でなければならないという条件がある。あれだけ巨大な建造物を建てるのだから、地盤がしっかりしていなければ、後に崩れたり傾いてしまうのだ。
以前にカタッシュ村で病院作りを行った際に地縄張り、縄張りを行なったように今回もその経験が生きる。
「高さは147メートル、底部の一辺の長さが230メートルくらいかなぁ」
「でっかいねぇ」
「まぁ、ピラミッドだからね?」
「俺たちこれ作れたら多分、スカイツリーも作れるよ」
そう言って、だいたいのピラミッドの大きさを述べるカルナにヴラドは真顔でそう告げる。
途方も無いでかさ、しかし、ピラミッドはこれくらいデカくなければピラミッドでは無い気がするというのは彼らの持論だ。
ーーーそれは石の数にして約300万個。
途方も無い数の石をこれから積み上げ、建設し、ニトクリスちゃんのピラミッドを形にしなければならない。
建造完成予定日としては…。
「だいたい半年くらいじゃない? みんなでクレーンとか建築車使ったら」
「長い年月だなぁ…これまた」
「石とかカットしなきゃいけないしねぇ」
長い期間が予想される。それに、ギル様の水上建築の技術も教わりながらこのピラミッドに取り入れたい。
とはいえ、このまま作業するとしても監督役が足りないような気もする。人材の補充もいるだろう。
「ネロちゃんに頼むかなぁ」
「ネロちゃまねぇ、確かにあの娘、建築に関してはほんとにいろいろ知ってるから」
「ローマなピラミッドにしよう! とか言わないように釘刺しとかないとなぁ」
ーーー余がローマ建築である!
ネロちゃまを呼ぶのは既定路線として、駄々をこねられる前に何かしら買収する必要も視野に入れとかなければならない。泣かれても困る。
しかし、それはそれでギル様の水上建築と組み合わせてみても面白そうだ、ヴェネツィアのような外観のピラミッドなら美しい光景に見えるかもしれない。
と、そこへ…。
「おーい! 持って来たでー、このへんでええのー!」
「オーライ! オーライ!」
「そうそう! そこら辺!」
我らがリーダーがロードローラーを運転し、到着。久方ぶりの運転に大ベテランの腕も唸る。
ーーー重機歴13年のベテラン
そう、何を隠そう、我らがリーダーはなんと複数の重機の資格を持ち合わせており、こう見えて重機を操るのはもはや本業のそれだ。
安全第一のヘルメットが今日もキラリと光る。
「とりあえず、道を整備しなきゃね」
「道路作りますか、セメントとローマンコンクリートで固めてピラミッドの周りに大型車停めれるようにしないとね」
「よし、それじゃみんなはじめるよー!」
さて、いよいよ、本格的に始まるニトクリスのピラミッド作り。
次回はこのピラミッド作りの為、力になってくれる建築の匠を求め、カタッシュ隊員は古代のバビロニアへ!
果たして、その強力な助っ人とは?
この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!
今日のYARIO。
1、エジプトの道の整備をはじめる。
2、ピラミッドつくり開始。
3、快適なナイル川ドラム缶風呂。
4、スカサハ師匠、年齢を気にする。
5、エジプトの名産モロヘイヤ採取。