ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? 作:パトラッシュS
さて、前回、農民枠の聖人を無事確保できたカタッシュ隊員達。
ニトクリスのピラミッドの製作を見据えての人員補充なのだが、大成功! まさかの農民聖女ジャンヌ・ダルクだけでなく、フランスの兵士達までオマケについてきたのだ。
ちょうどカタッシュ村にも酪農の手伝いや畑を大きくする人員が欲しかったところなのでこれは有り難い話である。
そして、そんなカタッシュ村にも活気が出てきたちょうどその頃、我らがリーダー達はなんと紀元前800年頃のアッシリアへ。
というのも? 今回、ニトクリスちゃんのピラミッド作りに是非取り入れておきたい技術があった。
「山城作りのモデルをね」
「だねー、モーさんの立派な納屋作り(居城)もいずれはあるわけだからねー」
「やっぱり専門家はいるよね」
「確かにな、あ奴なら空中庭園作りにも詳しかろう」
そう言いながら、ディルムッド、カルナ、リーダーの言葉に瞳を瞑ったまま笑みを浮かべるギルガメッシュ師匠。
バビロンの空中庭園、すなわちバビロンといえばこの人! といった具合で思いつきで今回は彼にご同行をお願いした。
残念ながら、今回はスカサハ師匠とモーさん達はお留守番である。
今頃はエジプトで重機を操ったり、トラックを用いて物資の運搬をしているに違いない。
少なくとも、メイヴちゃんと小次郎さんは最早、世界最古の至高のデコトラ乗りになりつつある。
現場監督はネロちゃまが行なっているので何も心配無いはずだ。多分。
「あー、思い出した! ディル、そういや、お前の事、婦長さん呼んでたで?」
「ん? ナイチンゲール師匠が? なんで?」
「いやー、それがやなー、最近、看護婦が不足してるから看護師として手伝ってくれやって」
「あれ? ディル、ナースとかできたっけ?」
そう言って首を傾げるカルナ。
記憶が正しければディルムッドにはナースの経験はなかったような気がするが…。
すると、ディルムッドは笑みを浮かべ、カルナにサムズアップするとなんの問題もないと言わんばかりにこう返した。
「やってたよ! ナースマン。バリバリで!!」
「それフィクションじゃねーか!」
そう言って、冷静にツッコミを入れるカルナ。
確かにディルムッドにはナースマンの経験はあった、フィクションでの話だが。
すると、ディルムッドは何やら指で数えるようにしながら更にカルナに話を続け始める。
「他にはねぇ、家政婦とかもやってたねぇ、あと、ホストとかもしてたよ」
「だからそれフィクションでの話だよね?」
「我は見てたぞ、なかなかあれは面白かったではないか」
「えー! ほんとですかー! 嬉しいなぁ、いやー、俺かなり感動しましたよ! ギル師匠!」
そう言って、ギルガメッシュの手を握り締めて嬉しそうに笑みを浮かべるディルムッド。
フィクションであるが面白いと褒めてくれるギルガメッシュ師匠は流石は心が広い。流石は千里眼を伊達に使っていないとみえる。
さて、茶番はさておき、こうしてアッシリアまで建築の匠を訪ねに来た一同であるが、すぐに宮殿に赴き、協力を仰ぐ事に。
さぁ、今回はどんな癖者師匠に会えるのだろうか?
「思ったけど、俺達も大概癖者ばかりだよね」
「そんなこと言わない」
ーーーー自覚はあった。
確かにスカサハ師匠にモーさんも濃いが、もともとのリーダーを含めた五人もキャラが濃いすぎる。
今では更に濃いメンバーを迎えたせいか、色で言えば真っ黒か極端に凄い濃い色になっているに違いない。
そんな他愛ない雑談を交えながら一同はなんやかんやでアッシリアの宮殿へ。
「こんにちはー! 僕ら鉄腕/fateのYARIOという者なんですけどー!」
といつも通りに門番に話を通し。
「え! あのYARIOさんですか! こ、こちらです! どうぞどうぞ!」
と案内され。
「なんだお主ら? 我に何の用だ?」
と言った具合にトントン拍子で今回も匠に会うことができた。
しかも、隣にはあのギルガメッシュ師匠がついて来ている為、心強い。
さて、というわけで、今回、建築の達人はこちらの方、父さんが残した熱い思いを形にしたバビロンの空中庭園を作り上げた空中庭園作りの達人。
アッシリアの伝説の女王。セミラミスその人である。
彼女は美貌と英知を兼ね備えていたとも、贅沢好きで好色でかつ残虐非道だったという話しもあった。
彼女の在位はなんと驚異の42年間だという。
「今回、僕ら空中庭園作りに精通してる匠さんにいろいろ教わりたいなと…」
「…ふーん、変わった奴らよの」
そう言って、玉座に座るセミラミスは品定めするような眼差しで彼らを見つめる。
農業の格好、鍬にした槍を担いだアイドル。
こんな胡散臭い、もとい、アイドルがアイドルの定義を成してない人物達を見れば疑わしくも思われてしまうだろう。当然である。
「おい、我の弟子共の願いが聞けぬか? 雑種よ。貴様、誰を前にして玉座から見下ろしている」
「…1人礼節を知らぬ者がいるな?」
「ほう? よく吠えた。ならば是非もない、この我が直々に…」
「まぁまぁまぁ、お二人さん抑えて抑えて」
「そうだよー、ギル師匠、折角、ニトちゃんのピラミッドに師匠の水上建築と空中庭園の技術を取り入れようとしてるのにさ」
そう言って、すぐさま仲介に入るカルナとディルムッドの2人。
険悪な2人に対して仲良くしてほしいという彼らの言葉に不機嫌そうにしながら、仕方ないと言葉を一旦区切るギルガメッシュ師匠。
確かに、ギルガメッシュが本気を出せばこのアッシリアの宮殿を丸々壊滅させるのも容易く、目の前にいるセミラミスを屠るのも簡単だろう。
普段なら、煽る側の彼らとしても今回は抑えて貰わねば、最悪の場合はリーダーを生贄に捧げるしかないが…。
「まぁ良いだろう。そこまで言うなら空中庭園の作り方について教えてやらんでもない」
「ギルガメッシュ師匠…我慢ですよ我慢」
「抑えて抑えて」
「えぇい! わかっておるわ!!」
そう言うと、ギルガメッシュはため息をつくとイライラを抑え、セミラミスの言葉を静かに受け流す。
賢王というだけあって、自制心は保ててるようだが幸先が不安になってくる。こんな調子で大丈夫なのだろうか?
さて、一方、ニトクリスのピラミッド作りの方だが。
こちらの方も総動員に近い体制でガンガンと建築を推し進めていた。大型車がピラミッドの周りを往き交い、どんどんコンクリートや石が積まれていく。
石を運搬しているトラックから顔を出したメイヴは現場の大型車を誘導するモーさんに声をかける。
「メイヴちゃん到着ー! はーいバックするよー!」
「おけー! オーライ! オーライ!」
「余が思うに、この辺りなど良いのではないか?」
「おー、流石はネロちゃまは目の付け所が違うねー」
順調に進んでいた。トラックからの物資の運送もそうだが、大型車の活躍により作業も円滑化され効率的な建設作業が可能に!
アルジュナ達もそして、ジャンヌを慕うジル・ドレェ達も安全第一のヘルメットを被り作業に加わっている。
「アルジュナ殿、クレーンのフックはこの辺りでよろしいですかな?」
「いや、もうちょっと上だな! ちょっと巻いてくれ!」
「わかりました、聞いたな! もうちょっと上だ!」
「了解!」
キュルキュルと音を立てて、ローマンコンクリートを持ち上げるクレーン車に指示を飛ばすジル。
場所を確認しながら、アルジュナはコンクリートを下ろす位置を調整する。こうする事で噛み合わせが悪いズレを無くし、ピラミッドの綺麗な並びを実現させる事ができる。
ピラミッドの下部分は割と順調に組み上がっているようだ。これならば、予定よりも作業が終われるかもしれない。
「これ壮観だねー」
「だよねー、エジプト始まった感があるわ」
そう言って見晴らしの良いピラミッドの出来上がっていく様子に感心するヴラドとベディの2人。
そんな中、盛大なピラミッド作りを前にしてニトクリスは彼らの隣で目をキラキラと輝かせていた。
まさか、こんなおっきなピラミッドが自分のピラミッドになるなんて、なんて恐れ多い事か…。歴代のファラオに申し訳ないと思いつつも内心では舞い上がっている。
「す、凄い! …わ、私のピラミッドもしかしたらエジプトで一番大っきくなるのではないですか!」
「そりゃ、下があんだけデカければねぇ」
「ですよね! ですよね! やったー! 大変、嬉しく思います!」
満面の笑みを浮かべて嬉しがるニトクリス。
そんな姿に思わず2人も和む、巨大なピラミッドを作るのは大変だが、こんな風に喜んでもらえるなら本望だろう。
さて、そこでだが、2人は肝心な事を忘れていた。
その事を思い出したベディはハッとしたように手をポンと叩くと建築現場を見ているニトクリスとヴラドの2人にこんな話を持ちかけはじめる。
「あ! そうだ! 名前! 名前考えようよ! このピラミッドのさ!」
「まだできてないのに? もうニトちゃんピラミッドで良いじゃん」
「いや、それは捻りがないな、遊び心が無い」
「!? スカサハ師匠!」
そう言って、彼らの背後からいつのまにか現れるスカサハ師匠の姿に一同は驚きながら目を丸くする。
しかし、確かに彼女の言葉は正鵠を射ていた。ニトちゃんピラミッドだと可愛くはあるものの、捻りがなく普通。
もうちょっとインパクトが欲しいところだ。だが、ニトクリスは納得できないように突如現れたスカサハを指差すと異議を唱えはじめる。
「ちょっ!? それおかしくないですか! 私のピラミッドなのに!?」
「それは余もそう思う」
「お、オジマンディアス様まで!? 何故ェ!」
だが、これまたいきなり現れた同じくエジプトのファラオであるオジマンディアスのまさかの援護射撃には勝てなかった。
しかし、このピラミッドはニトクリスの物であるのだが、元々はYARIOが作ると言い出したものである。
そして、現にニトクリスのピラミッド作りに積極的に尽力してくれているのだ。
そういう意味で彼らの活躍した証を何かしら残しておくべきだとオジマンディアスは考えていた。
「名前はこやつらに付けさせよ、これだけ立派なピラミッドを建ててくれているのだ。それに応えるのもまたファラオの務めだぞ」
「!?…っは! …た、確かに言われてみれば…」
「え? 良いんですか?」
「これは貴様らの功績だ。良いか? ニトクリス」
「! は、はい! もちろんでございます! 彼らの付けた名前ならファラオたるもの喜んで受け入れます!」
オジマンディアスの問いにそう応えるニトクリス。それを聞いていたスカサハ師匠も満足そうにうんうんと頷いていた。
こうして、ヴラドとベディの2人はこの場にいない三人の分までニトクリスのピラミッドの名前を考えることに…果たしてどんな名前が良いだろうか?
「前は一文字づつ取って山城だったからねー」
「そっか、それじゃ、今回もおんなじ感じで一文字づつ取って付けようか」
「よし、おっけー、…んー……」
ヴラドの提案に納得したように頷き考えはじめるベディ。折角、名前を付ける機会を得たのだ、ここはよりインパクトのある名前を。
そうして、考え込む事数分あまり、ベディは何か閃いたようにカッ! と目を見開くと、紙と筆を用いて全員にニトクリスのピラミッドの名前について書きはじめる。
丁寧な文字でささっと書いていくベディ。そして、完成した文字をその場にいる皆の前で公表しはじめる。
「それでは、このピラミッドの名前は長岡と命名する事にします」
ーーーーーーピラミッド長岡。
明らかに和風な名前のピラミッドであるし、いろいろ突っ込みたいところだが、なんだか、しっくりくるところもある。
そのベディから公表されたピラミッドの名前を見たヴラドがここで一言。
「え? 新潟県だっけここ?」
「今更何言ってんだよー、エジプト県長岡市に決まってんじゃん」
「そっか、エジプト県だったんだここ…ってんなわけあるか!」
ーーーーエジプト県長岡市。
恐らくはベディがこの名前にしたのは、山城同様の付け方なんだろうが、ピラミッド長岡というネーミングセンスには流石にヴラドも突っ込まざる得なかった。
ならわかったと、ベディは納得できない様子のヴラドを見かねて更に訂正を加えはじめる。
そして完成したのがこちら。
「ピラミッド長岡国」
「市から規模でっかくしただけだよね、それ…。場所は相変わらず新潟だよね、明らかにさ」
「だからエジプト県長岡国だって」
「ふむ、ではもうそれで良いな」
「ちょっと待って! オジマンさん! せめて国だけ消させて!」
こうして、ヴラドの要望により、国だけ消され、ただの長岡になる事に。
さらに、ニトクリスの名前をここに加えていき、略称は長岡だが、結果的にこんな名前になった。それがこちら。
ーーーーピラミッド長岡ニトクリス 。
もう芸名か何かではないかと疑ってしまうが、これが略されとりあえずピラミッドの名前は長岡になる事になった。
この名前にニトクリスもとりあえず満足した様子だが、明らかになんの建物か、意味不明な名前になってしまった感は歪めない。
だが、本人が満足ならそれで良いと言うことに、こうして長岡という名前も決まり一同は満足した様子であった。
「長岡か…悪くないな」
「確かに良い響きだ」
「ちょっと俺には何言ってるかわかりませんね」
満足げに頷くオジマンディアスとスカサハの言葉に容赦なく突っ込みを投げかけるヴラド。
至って普通の反応である。エジプトに長岡とかいう変な名前のピラミッドがあるらしいと言われてもなんらおかしくはない。
さらに、このピラミッドの正式名称は芸名みたいな名前である。
こうして、ピラミッド、正式名称、長岡ニトクリスの命名も無事に終わり、一層やる気がみなぎってきた。
完成まではまだかかりそうだが、これに水上建築や空中庭園の技術も取り入れて凄いピラミッドを完成させたい。
果たして、長岡は無事に建てられるのか?
この続きは…! 次回! 鉄腕/fateで!
今日のYARIO。
1.空中庭園の技術を学びにアッシリアへ
2.ピラミッド名『長岡』
3.ピラミッドの正式名称『長岡ニトクリス』
4.建築予定地 エジプト県長岡市。
5.大型車が普通に走るエジプト。