ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? 作:パトラッシュS
ピラミッド長岡が完成した。
期間は半年以上を有し、高さは147メートル、底部の一辺の長さが230メートルの超巨大ピラミッド。
さらに、バビロンの空中庭園の技術により、地面から浮かんだそれは壮大な光景。
ピラミッドの中の一部からはギルガメッシュ王が考案した水上建築の技術が用いられ、まるで、ピラミッドから滝が流れ出ているかのような錯覚さえ感じられる。
さらに、外観はローマン・コンクリートをふんだんに使い、ローマの皇帝、ネロが直々に監督した文化的で美しい外観。
これがエジプト県が誇る文化遺産確定建築物長岡である。
「絶景かな絶景かな」
「小次郎さんもそう思いますか」
「いやはや、トラックでエジプトを何往復した甲斐があったというものだ」
「助かりましたよ、ほんと」
まさに、この光景を見るためだけに今まで頑張って来た甲斐があるというもの。
当然、ピラミッドにはライブ会場まで取り付けてあるので、空中でのライブも可能。さらにピラミッドも移動式という優れものだ。
ーーーーもはや墓ではない。
墓という名の何かである。独創的な建物に仕上がってしまった。だが、彼らからピラミッドを作ってもらったニトクリスはというと?
「これが私のピラミッドなのですね! わー! なんという素晴らしい外観なんでしょう!」
「…なんかもう違う建築物な気もせんでも無いが」
「何を言っているのですか! オジマンディアス様! あれこそは私の長岡ですよっ!」
「そうか、それなら良いのだ。それならな」
そう言って、ぴょんこぴょんこと耳を跳ねらせ興奮するニトクリスの頭をポンポンと撫でてあげるオジマンディアス。
何というかエジプトの領地にまたとんでもないものが出来たとオジマンディアスは思う。
世界の技術を取り入れた最先端のピラミッド。というかピラミッドという名の何か。
「いやー、大変だったね、ピラミッド作り」
「みんなのおかげで完成ですよ」
「さあ、今日はパァーッと騒ぎましょう!」
そう言って、にこやかな笑顔で皆に告げる棟梁カルナ。
完成した長岡の前で歓喜に沸く建築に関わってもらった人達。彼らもよく頑張ってくれた。
アルジュナも感極まり涙を流している中、カルナは嬉しそうに彼と肩を組んで笑顔を浮かべる。
「カルナ…、私は今猛烈に感動している。お前から教わった建築の知恵がこんな風に形になって…」
「わかる、わかるよー、その気持ち、俺も最初はそんな感じだったからさ」
自身が初めて建てた建築物がこれほど素晴らしい物というだけで、胸が熱くなる。
棟梁カルナはアルジュナの気持ちがよくわかった。こうして、出来上がった建築物は何世代にも渡りきっと語り継がれる事だろう。
破壊されそうになっても上に逃げれる仕様であるし、綺麗な形のまま残っていくに違いない。
建築の奥深さを皆、肌で感じられたような気がした。
という事で?
「久々に本業やりますかステージもあるわけですし」
「半年ぶりかー、マジで歌ってなかったからね俺ら」
「いやはや、思いのほか長かったですな」
「ですなー」
お手製のステージがピラミッドに設置してあるのでライブをさせていただく事に。
長岡完成を祝う宴会の席でそれぞれ歌や芸を披露するという事になった。発案者は当然、ギルガメッシュとオジマンディアスの二人である
エリちゃんやネロちゃんはやる気満々のご様子でリハーサルしてくると、意気揚々と練習をしに。
そして、こちらでは?
「私も…ですか?」
「はい、ジャンヌさんとマルタさんの二人で聖女ユニットを組んでもらえたらと思いまして」
「えーと、それは…」
「メイヴさんもスカサハさんと共に出演するみたいなので是非」
なんと、ジャンヌちゃんとマルタさんにADフィンから歌わないかというオファーが。
というのも、今宵限りのお祭りで宴会芸で歌うだけ、こればかりは楽しんでおこうという事で二人は承諾してくれた。
YARIO達のメドレーでもよかったのだが、やはり、華がなければという彼らなりの心遣いである。
やはり、皆が楽しめてこその宴会だ。
という事で賑やかな祭りの最中、派手な登場と共に歌姫達がYARIOと共にライブを彩る事に。
可愛い、もしくはカッコいい衣装と共に彼女達の歌が皆に届く。
一部、例外があったがこれはこれで盛り上がりを見せていた。
「〜〜〜♪」
特に意外だったのはモーさんが歌が上手いというところだろう、本人もノリノリであった。
このライブにはなんとエジプトの至る所から商人や住民が駆けつけ、膨大な興行利益を生む事に。
この時代にはCDなどの技術が未発展なのが悔やまれるところであるが…。
「ボエ〜〜〜♪」
同時に無くて良かったという事もある。
そんな具合で祭りが進行する中、舞台裏ではYARIOのメンバーが楽器の調整を行なっていた。
こんな風に本格的に歌う機会はそうそうない、ツアーをする時のように気を引き締めてライブをしなければ。
さて、前座という形ではあるものの、歌姫達の歌が歌い終わり、いよいよ、彼らが歌う時が近づいてきた。
久方ぶりのライブ、それも半年ぶりである。
「さて、じゃ、いきますか」
「しゃあ!」
ギター、ベース、ドラム、キーボード。
彼らはそれぞれ自分の持ち場につくと演奏する構えを見せる。そして、ある程度音量を調節したところでベディがルーン魔術を施したマイクを握りしめた。
そして、ディルムッドのドラムに合わせ、カルナがベースを弾き始めると、それに続くようにギターを持つリーダーも指を動かす。
さらに、ベディが歌を歌いはじめた事で宴会はより盛り上がりを見せた。
「願うのなら〜〜♪」
厳しい事もあった。挫けそうになりそうにも間違えた事もあった。
それを乗り越えて今がある、そう、みんなに伝えたい。
時には壁にぶつかる事もあるかもしれないが、そんな時はふと思い出して欲しい、常に困難に挑戦するアイドルがいるという事に。
ーーー渡り歩くこの世界は時に厳しいけど。
彼らにはまだまだ知らない世界がある。
だけど、旅をして、仲間を集め、村を作り、そして、これからも彼らの道は続いていく。彼らがYARIOであり、旅人である限り。
自分たちが訪れた事で人々の中で夢が生まれ、ほんの少しでも強くなって貰えたら。
彼らのライブを聞いていた観客からは拍手とアンコールが巻き起こる。
「…凄い…これが本物のアイドル」
「うむ、…さすがだな」
そう言って、彼らの曲に感心するように声をこぼす二人。
たしかに歌詞はたまに間違えるが、それでも、ベディの声、カルナやヴラドのハモり、そして、リーダーの裏声などは聞いていて痺れる。
それはやはり、人々の事を思って歌を伝えようとして歌っているからだろう。
自己満足ではない、歌を歌うこと、農業をする事で人々の力になりたい、そんな、心情が身体に伝わってくる。
それからも、彼らのライブはメドレーのように次々と曲を歌いながら進行していった。
合いの手はもちろんの事ながら、ステージにいる五人全員が一体になっているような気がした。
しばらくして、ライブも終わり全員裏に引っ込んだところでようやくひと段落。
久方ぶりの本業、流石に彼らも緊張したのか胸を撫で下ろしている。
それからしばらくして、ベディが舌を出してこんな事を言いはじめた。
「やっべー! また歌詞間違えちった!」
「てかリーダーまた声裏返ってたし!」
「え!? ほんまに!? うそやん!」
「もー、この人達は本当にー、モーさん達やジャンヌちゃん達の方が上手かったじゃんか」
「め、面目ない」
駄目だしに次ぐ駄目だし、本業を最近してなかったのでブランクはあるものの、これには全員苦笑いをして反省するしかなかった。
今回は即席で作った曲を歌ってくれたスカサハ達が盛り上げてくれたおかげでライブが上手くいってよかったと感謝するばかりである。
と、ここで、彼らの歌を聞いていたモーさん達がやってくる。
「やっぱり上手いなー、兄ィ達歌うの!」
「ありがとうー、けど主に歌ってるのベディだけだけどね」
「兄ィのハモりカッコ良かった! 色っぽいって言うのかな!ああいうの!」
そう言って、満面の笑みを浮かべるモーさん。
こうやって来る彼女を見ていると本当に和む、以前の彼女なら到底考えられない姿だろう。
すると、リーダーも自身を人差し指で指差しながらモーさんにこう問いかけはじめた
「あ、僕は僕は?」
「しげちゃんはまた裏返ってただろう」
「うげぇ!? やっぱりバレとったんかー」
話を聞いていたスカサハ師匠からのダメ出し。
小綺麗なステージ衣装を着ているスカサハ師匠は新鮮だが、大人の色気に満ち溢れていた。
スカサハの隣にいるメイヴは露出が多いが、大胆でカッコいい衣装を着ており、同じく妖艶さを全体に押し出している。非常に動きやすそうだ。
ちなみにYARIOのメンバーはなんと農作業着、お洒落もへったくれもあったもんじゃない。
しかしながら、しっくりはまっていてステージにその格好のまま居ても違和感がなかったのは流石だとしか言いようがない。
こうして、夜は更けていく。
エジプトでの建築を終えたカタッシュ隊員達。
楽しい宴の時は過ぎ、ピラミッド作りで知り合った新たな師匠達とのお別れの時は近づいていた。
果たして、次はどんな地に向かうのか? 彼らの挑戦はこれからも続いていく。
今日のYARIO。
1.久しぶりの本業。
2.モーさん達のアイドルデビュー。
3.YARIO、本番で歌詞を間違える。
4.世界最古のライブフェスが行われる。
5.ピラミッドという名の何かができる。